セキュリティ最前線

サプライチェーン攻撃の起点は中小企業にある — ランサムウェアのカラクリと、ホームページ・メール・ブラウザ「3つの接点」

著者:青山裕一(株式会社ガーディアン 代表取締役社長)
公開日:2026年10月20日

中小企業のサイバー被害は、自社の業務停止では終わらず、取引先の業務と情報管理に波及します。ランサムウェアの「カラクリ」と、ホームページ・メール・ブラウザ「3つの接点」の守り方を、2026年の公表事例158項目とともに解説します。

鋼の鎖のうち、1つだけ錆びてひびの入った輪

この記事の要点

中小企業のサイバー被害は取引先に波及し、2026年の公表事例では委託先への侵入が大企業の情報漏えいの起点になった。警察庁統計では2026年上半期のランサムウェア被害123件のうち79件が中小企業。対策はVPN機器の更新・多要素認証と、ホームページ・メール・ブラウザ3つの接点の点検から始める。

1. はじめに — ランサムウェアの「カラクリ」は、サプライチェーン攻撃にある

一社の弱点が、取引先のリスクに

結論から申し上げます。中小企業のサイバー被害は、自社の業務停止では終わらず、取引先の業務と情報管理に波及します。 そして、ランサムウェアを動かす犯罪の分業構造は、守りの弱い組織を「入り口」として選びます。だから、サプライチェーン攻撃の起点は中小企業にある。これが本稿の主張です。

私はWEB業界で26年、現在76,325サイト(2026年10月時点)を運用しています。その立場から見える景色は、報道とは少し違います。ニュースでは「大手企業の情報が漏えい」と報じられますが、公表資料で経路をたどると、「委託先」「取引先」「海外子会社」「利用していたクラウドサービス」という中小規模の組織に行き着く事案が目立ちます。

本稿の主張と、根拠の範囲

主張を支える根拠と、その根拠が示していないことを先に整理します。統計が示す範囲を超えて断定しないことが、本稿の方針です。

主張根拠として示すもの根拠が示していないこと
中小企業の被害は多い警察庁の規模別統計(2026年上半期:ランサムウェア被害報告123件のうち中小企業79件・約64%)被害組織の構成比であり、国内の中小企業の64%が被害に遭ったという意味ではない
中小企業の被害は取引先に波及するIPA調査(サイバー被害を受けた中小企業の約7割で取引先に影響)、2026年公表事例(事例一覧)「取引先に影響した」ことと「取引先のネットワークへ侵入した」ことは別
委託先・取引先への侵入が、大企業の情報漏えいの起点になる2026年の公表事例(スカラコミュニケーションズ→大和証券・損保ジャパン・シチズン時計、ApplyNow→吉野家・はなまる、YCC情報システム→AGS)大企業の被害のうち何件が取引先経由かを示す公的統計はない。「大半」とは言えない
ランサムウェアのカラクリはサプライチェーン攻撃にあるRaaS(Ransomware as a Service)の分業構造。侵入口の売買、委託先・連携先経由の侵入。IPA10大脅威で「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」が8年連続上位ランサムウェア(手口)とサプライチェーン攻撃(経路)は別の概念。本稿では「ランサムウェア攻撃者が入り口を得る仕組みの一つ」として扱う

数字で見る「中小企業の被害」と「取引先への波及」

指標数値出典
2026年上半期のランサムウェア被害報告件数123件(半期として過去最多)警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等」(2026年9月)、警察庁 公式掲載ページ
うち中小企業79件・約64%(大企業31件・約25%、団体等13件)同上
侵入経路(2026年上半期、経路に有効回答があった36件が母数)VPN機器18件(50%)、リモートデスクトップ9件(25%)同上
2025年通年の被害件数と中小企業の割合226件、うち中小企業143件(63.3%)。侵入経路は有効回答ベースでVPN機器66.3%+リモートデスクトップ20.7%警察庁「令和8年警察白書」解説
二重恐喝型(暗号化+データ公開の脅し)の割合(2025年)88.9%同上
調査・復旧費用が1,000万円以上だった組織(2026年上半期、回答35件が母数)21件(60%)、うち1億円以上が4件警察庁 令和8年上半期
警察庁の観測網(センサー)が検知した脆弱性探索等の不審なアクセス1日・1IPアドレスあたり13,687件(前年同期比+50.7%)。観測網の平均値で、個々の企業のサーバーでの実測値ではない同上
中小企業で組織的なセキュリティ体制がない割合約7割。直近3期にセキュリティ投資なしは62.6%(4,191社調査)IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」、同 プレスリリース
不正アクセス被害を受けた中小企業の原因(419社、複数回答)脆弱性の悪用48.0%、認証情報の窃取36.8%、取引先・グループ会社経由19.8%同上
サイバー被害を受けた中小企業のうち、取引先に影響が及んだ割合(975社)約7割(サービス停止・遅延36.1%、賠償負担32.4%)同上
中小企業でHPのログイン情報が露出している割合38.6%(約11万社を当社が独自調査)株式会社ガーディアン2025年8月7日プレスリリース
中小企業でセキュリティ対策を一切していない割合63.4%(同上)同上

警察庁の割合は「報告された被害の構成比」であり、侵入の起点がどの組織かを示す統計ではありません。侵入経路の割合も、経路に有効回答があった件数を母数とするものです。ただし、IPA調査の「被害企業の約7割が取引先に影響」と合わせて読めば、中小企業の被害がそのままサプライチェーンの被害になる構造は明らかです。

2026年、公表された被害は158項目(企業・グループ単位)

当社が一次資料(各社の公表文書)だけを基に集計したところ、2026年1月1日から10月8日までに、日本発祥の企業とその国内外子会社で公表されたサイバー被害は158項目に達しました。企業・グループ単位の掲載項目数であり、独立した攻撃の件数でも、国内の全件数でもありません(全件の一覧と集計条件は「2026年 日系企業のサイバー被害事例一覧」)。注目すべきは、「委託先が攻撃され、複数の大企業の情報漏えいにつながった」事案が複数あることです。

  • FAQシステム「i-ask」を提供するスカラコミュニケーションズへの不正プログラム設置(2026年10月2〜3日)→ 大和証券(約11万名・約22万件)、損害保険ジャパン(延べ約6万件)、シチズン時計へ波及。最大5社・最大713,126件(延べ問い合わせ件数)が対象。
  • 採用管理クラウド「ApplyNow」が利用するBIツールの脆弱性悪用(2026年8月9日〜9月7日)→ 吉野家(応募者4,998件)、はなまる(368件)へ波及。マイナンバー・口座情報も対象となり得た。
  • 両毛システムズのVPNアカウント悪用によるランサムウェア(2026年8月12日侵入)→ 広島ガス等の利用企業へ波及。
  • 再委託先YCC情報システムのランサムウェア(2026年4月2日)→ 委託元AGSが漏えいの可能性を公表。

いずれも、大企業の情報が、委託先への侵入によって漏えいした構図です。「他社にも影響した」ことと「他社のネットワークへ侵入した」ことは別ですが、業務が止まり、顧客情報が漏れるという結果は同じです。ランサムウェアの裏側で動く分業構造が、サプライチェーンを経路として使う。これが本稿で言う「カラクリ」です。

なぜ中小企業が起点になるのか — 3つの根本原因

  1. 脆弱性:古いVPN機器、更新されないWordPress、SSL未対応のページなど、技術的な穴が放置されている。IPA調査では不正アクセス被害の原因の1位(48.0%)。
  2. 知識不足:「何を」「誰に」「いくらで」頼めばよいかが分からず、対策が止まっている。投資しない理由の2位は「費用対効果が不明」24.2%。
  3. 意識不足:自社が対象になる想定がなく、対策の優先順位が決まらない。投資しない理由の1位は「必要性を感じない」44.3%(IPA)。攻撃者は会社の規模ではなく「公開された弱点の有無」で選ぶ。

本稿では、この3つを具体的な事例と対策で解き明かし、当社が提供する「SCAN DOG」「SCSC Dog」がどの範囲を支援でき、どの範囲は自社で行う必要があるかを、国のSCS評価制度との関係を含めて、私の判断としてお伝えします。

2. サイバー攻撃のカテゴリと種類と特徴

サイバー攻撃を、4つの目的で読む

サイバー攻撃は「目的」で4つに分類すると全体像がつかめます。IPA「情報セキュリティ10大脅威2026」(2026年1月29日公開)の組織編では、1位「ランサム攻撃による被害」、2位「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」、3位「AIの利用をめぐるサイバーリスク(初選出)」、4位「システムの脆弱性を悪用した攻撃」が上位を占めました(出典:IPA 10大脅威2026解説)。重要なのは、上位4つがすべて、中小企業の弱点と結びついている点です。

カテゴリ別の全体像

カテゴリ目的代表的な攻撃の種類中小企業との関係
A. 金銭目的身代金・不正送金・カード不正利用ランサムウェア、ノーウェアランサム、ビジネスメール詐欺(BEC)、フィッシング、Webスキミング被害報告の63.3%が中小企業(警察庁、2025年)
B. 情報窃取・諜報機密情報・個人情報・知的財産の窃取標的型攻撃(APT)、国家背景の攻撃(MirrorFace等)、内部不正取引先の設計図・見積・顧客名簿が狙われる
C. 業務妨害・破壊サービス停止・信用失墜DDoS攻撃、Webサイト改ざん、データ削除改ざん・不正ファイル設置は2026年事例(事例一覧)で11項目
D. 踏み台・悪用他者への攻撃の中継点にするアカウント乗っ取り→なりすましメール、メール配信基盤の不正利用、サプライチェーン攻撃「加害者側」に回り、取引停止・損害賠償に発展

攻撃の種類と特徴(2026年の国内事例つき)

攻撃の種類手口の特徴主な侵入口2026年の国内事例(事例一覧より)
ランサムウェア(二重恐喝型)暗号化+データ公開の脅し。確認153件中136件(88.9%)が二重恐喝型VPN機器66.3%、リモートデスクトップ20.7%西山製作所(VPN脆弱性と認証情報を起点に侵入・情報流出)、精電舎電子工業(VPN経由で大半のサーバー暗号化)、フェース(VPNから侵入、EC出荷に影響)
ノーウェアランサム暗号化せずデータを盗んで対価要求。2025年は17件認証情報の窃取ワサビ(開発DBからAPIキー・管理者認証情報を盗まれ、データ削除と身代金要求)
Webサイト改ざん・不正ファイル設置CMSやプラグインの脆弱性を突き、バックドア・改ざんページを設置ホームページ(CMS・プラグイン)学研メディカルサポート(WordPressの脆弱性で不正アカウント作成)、ナカバヤシREVEX(製品サイト改ざん、問い合わせ3,631件)、まちあい徳山(検索結果タイトル改ざん)
Webスキミング(決済ページ改ざん)ECサイトの決済画面に不正スクリプトを仕込みカード情報を盗むホームページ(EC・決済アプリ)佐嘉平川屋(約1年間改ざんに気づかず、カード情報6,303件)、ファイン(カード情報912件)、原田産業「ビールの縁側」
フィッシング/アカウント乗っ取り偽メールでID・パスワードを窃取し、正規アカウントで侵入。2025年上半期の報告は119万6,314件(前年比約89%増)メールアイネックス(フィッシング起点でメール・クラウド不正利用)、Axcelead(約7,000件のメール閲覧)、カインドオル(従業員アカウント奪取で136,464人分窃取)
ビジネスメール詐欺(BEC)取引先・役員になりすまし、支払先口座の変更を依頼メール小田原エンジニアリング(出向社員のメール侵害、支払先変更依頼で顧客に金銭被害)、ポラリス(Booking.comアカウント侵害で受取口座改ざん、約900万円の不正送金)
なりすましメール送信(踏み台)乗っ取ったアカウントから取引先へ大量送信メールJEMS(取引先へ223件)、東洋紡せんい(約1,500件、受信した関連会社2名も被害)、TENTIAL(配信システムのキー悪用で約11万通)
リスト型攻撃・API悪用流出済みID/パスワードやAPIの不備で大量ログインブラウザ/Webアプリエン・ジャパン(2,503件の不正ログイン)、2りんかんイエローハット(API悪用で317万9,454人分)
委託先・SaaS経由(サプライチェーン攻撃)共通基盤を1つ破り、利用企業すべてに波及委託先のホームページ・システムスカラコミュニケーションズ「i-ask」→大和証券・損保ジャパン・シチズン時計、ApplyNow→吉野家・はなまる、両毛システムズ→広島ガス等
標的型攻撃(APT)・国家背景特定組織を長期間執拗に狙う。中国関与が疑われるMirrorFace、北朝鮮TraderTraitor(約482億円相当窃取)メール・VPN警察庁 令和7年上半期資料に記載
DDoS攻撃大量通信でサービス停止。2025年は#OpJapanで6〜10月に集中公開サーバーKDDIウェブコミュニケーションズ(CPI)2月26日の断続的DDoS
クラウド・リソース不正利用認証情報を盗み、スパム送信や暗号資産マイニングに利用漏れた認証情報つくるAI(AWS SESから大量スパム)、ジーニー(クラウド計算リソース不正利用)

出典:警察庁 令和7年上半期 サイバー空間をめぐる脅威の情勢、警察庁 令和8年上半期(2026年9月公表)、令和8年警察白書 解説、Check Point Japan Threat Landscape 2025、「2026年 日系企業のサイバー被害事例一覧」(各社公表資料に基づく)

3. 狙いは大企業ではない — 知名度の低い中小企業こそ「立派な標的」である理由

知名度が低くても、標的になる

企業の規模や知名度にかかわらず、公開された機器やアカウントの弱点は悪用され得ます。 ハッカー集団にはレベル(階層)があり、下の階層ほど「破りやすい相手」を自動で探しています。会社の知名度は選定基準に入っていません。 専任担当者を置けない企業でも、対象と優先順位を決めれば対策は進められます。本章は、そのために知っておきたい「相手の仕組み」の説明です。

ハッカー集団の4つのレベル

レベル主体目的・手口標的の選び方代表例
レベル1:国家支援型(APT)国家機関や国家の支援を受けた集団諜報、知財窃取、インフラ破壊。年単位で潜伏政府・防衛・先端製造・シンクタンク、およびその取引先MirrorFace(中国関与の疑い)、Salt Typhoon、TraderTraitor(北朝鮮、約482億円相当窃取)
レベル2:RaaS運営者(オペレーター)ランサムウェア開発・インフラ・交渉・決済を提供する「犯罪企業」身代金の一定割合を受け取る。自らは手を汚さない標的は選ばず、アフィリエイトに委ねるQilin(日本向けランサム活動の約19%)、Cl0p(約7.5%)、LockBit 5.0
レベル3:アフィリエイト(実行犯)RaaSを借りて攻撃する実行部隊。技術力は中程度侵入・横展開・暗号化を実行し、身代金の大半を得る「入りやすい」組織。規模より脆弱性の有無アサヒグループ(2025年、Qilin)、2026年の中小製造業の多数の事例
レベル4:初期アクセスブローカー(IAB)・下請け侵入口だけを探して売る専門業者。スクリプトキディ含む自動スキャナで脆弱なVPN・CMS・認証情報を収集し、ダークウェブで販売インターネット全体を無差別に走査不正アクセス禁止法違反の検挙者の約41%が14〜19歳(警察庁 令和7年上半期)

出典:Sophos「Ransomware as a Service」解説、Check Point Japan Threat Landscape 2025、警察庁 令和7年上半期資料、警察庁 令和8年上半期資料

分業化が「中小企業=標的」を生む3つの理由

  1. 標的選定は人間ではなく自動スキャナが行う。 レベル4のブローカーは、脆弱性のあるVPN機器やCMSをインターネット全体から自動収集します。警察庁の観測網(センサー)が検知した不審なアクセス(脆弱性探索行為等)は、2026年上半期に1日・1IPアドレスあたり13,687件(前年同期比+50.7%)に達し、大部分が海外発です。これは観測網の平均値であり、個々の企業のサーバーでの実測値ではありませんが、公開サーバーが常時探索されている実態を示しています。
  2. 侵入口は「商品」として売買される。 認証情報の売買で複数の関与者が役割分担する攻撃態様が確認されています(警察庁)。中小企業のVPNアカウントは、本人の知らないうちに値札を付けられて取引されています。
  3. 脆弱性公開から悪用までの時間が極端に短い。 Patchstackの観測では、悪用が確認されたWordPress関連の脆弱性について、公開から悪用までの加重中央値が5時間で、影響の大きい脆弱性の約半数が24時間以内に悪用されていました。全脆弱性の平均ではなく、悪用が集中した脆弱性群の観測値です(Patchstack 2026)。「月に1回更新する」運用では間に合いません。

2026年の事例一覧が示す「名もなき標的」

2026年の事例一覧の158事例には、自転車小売、スキー場、歯ブラシ製造、食品卸、鞄店、仏壇店、地域情報サイトまで含まれます。いずれも全国的な知名度とは無縁の企業です。

  • 食創(食品卸):2026年6月2日、ランサムウェアで社内サーバー暗号化
  • ガーラ湯沢(スキー場):リフト券発券システム障害、最大1,518名の顔写真を含む情報が漏えいの可能性
  • ファイン(歯ブラシ・介護用品):通販サイトの脆弱性でカード情報912件が漏えいの可能性。警察からの連絡で発覚
  • 村瀬鞄行(ランドセル製造小売):オンラインショップへの不正アクセスでサイト一部停止
  • まちあい徳山(地域情報・Web制作):企業サイトと地域情報サイトに不正ファイルが置かれ検索結果を改ざん

攻撃者が企業を知名度で選んだ形跡は、これらの公表資料にはありません。公開された弱点が見つかった順に侵入されるのが、分業化した攻撃の実態です。これが「知名度の低い中小企業も立派な標的」である理由です。

4. 中小企業の3つの接点 — ①ホームページ、②メール、③ブラウザ

ホームページ・メール・ブラウザを守る

中小企業がホームページを運営し、メールやWebサービスを業務に使ううえで、攻撃が入り込む接点は「①ホームページ、②メール、③ブラウザ」の3つに整理できます。本稿はこの3つを軸に、攻撃が入り込む仕組みと具体的な対策を解説します。3つの接点は、経営者が日常業務を点検するための編集上の整理であり、侵入経路の統計分類でも、企業のサイバーリスク全体を網羅した分類でもありません。

本稿が扱う範囲と、扱わない範囲

接点本稿で主に説明する対象記事内で区別すること
①ホームページ自社の公開サイト、CMS、EC、問い合わせフォーム、会員向けWebアプリケーション、API公開サイトの改ざんと、業務用Webアプリ・APIの認可不備は別の弱点。各サービスが診断できる範囲とも区別する
②メールメールの受信・送信、添付ファイル、リンク、なりすまし偽メールの受信、正規アカウントの侵害、自社ドメインのなりすましを分けて説明する
③ブラウザWebサービスの利用、偽サイト、ブラウザに保存されたパスワード、ダウンロード、拡張機能ブラウザを使った通常のアクセスと、ブラウザ側の弱点の悪用を区別する

企業全体の対策では、この3つに加えて、VPN等の公開機器、認証基盤、端末、社内ネットワーク、委託先の管理を別途点検します。警察庁の統計では、ランサムウェアの侵入経路として有効回答があった36件のうち27件(75%)がVPN機器とリモートデスクトップでした(2026年上半期)。VPN機器の更新と多要素認証は、3つの接点の点検と並行して、最優先で確認してください。VPN機器の認証情報がメールやブラウザ経由で盗まれる事例はありますが、VPN機器そのものの脆弱性管理は、本稿の3つの接点とは別の対策項目です。

①ホームページ:24時間公開された「玄関」

侵入パターン仕組み2026年の事例
CMS・プラグインの既知脆弱性公開済みの脆弱性を自動スキャナが発見し、管理者権限を奪取学研メディカルサポート(WordPressの脆弱性で不正アカウント作成・パスワード上書き)、セントラルコンサルタント(不正管理者アカウントと外部通信)
決済ページ改ざん(Webスキミング)ECの決済画面に不正スクリプトを埋め込み、入力されたカード情報を外部送信佐嘉平川屋(2025年3月〜2026年3月の約1年間、カード情報6,303件)、ファイン(912件)、原田産業(管理者権限奪取を経て不正プログラム設置)
放置された旧サイト・旧DB使わなくなったシステムが同じサーバーに残り、そこから侵入山田ボデー工業所(管理ツールの脆弱性→同じサーバーの旧ECサイト顧客DBを閲覧)
管理画面URL・IDの露出→総当たり/wp-admin等がそのまま公開され、パスワードを機械的に試行CSアカウンティング(海外からの総当たり攻撃)。当社調査では中小企業の38.6%がログイン情報を露出
SEOスパム・検索結果改ざん不正ファイルを置いて検索結果を乗っ取り、訪問者を詐欺サイトへ誘導まちあい徳山(企業サイトと地域情報サイトの検索結果タイトルを改ざん)
フォーム・APIの設計不備認可処理の不備で他人のデータを閲覧できてしまう2りんかんイエローハット(API悪用で317万人分)

ホームページは「名刺代わり」ではなく、社内ネットワークと顧客データにつながる「公開サーバー」です。特にホームページと基幹システム・メールサーバーが同じサーバーに同居している中小企業は、ホームページの脆弱性がそのまま全社停止に直結します。

②メール:人間の判断を突く「裏口」

侵入パターン仕組み2026年の事例
フィッシング→メールアカウント乗っ取り偽のログイン画面でID・パスワードを入力させ、正規アカウントでメールボックスを閲覧Axcelead(約1か月で約7,000件のメール閲覧)、アイネックス、じほう(アドレス帳宛てにフィッシングメール送信)
乗っ取ったアカウントから取引先への連鎖信頼された送信元から届くため、受信側も感染。これがサプライチェーン攻撃の典型東洋紡せんい(約1,500件送信→受信した東洋紡エムシー従業員2名も被害)、JEMS(取引先へ223件)、TRUNK(取引先へなりすましメール)
ビジネスメール詐欺(支払先変更)メールを盗み見て取引の文脈を把握し、振込口座の変更を自然に依頼小田原エンジニアリング(5か月間・約3,500件のメールを閲覧され、顧客が金銭被害)
役員・取引先になりすました業務依頼「至急対応して」と心理的圧力をかけ、添付ファイルやリンクを開かせるマリモホールディングス(役員を名乗るフィッシングで約1,360名分窃取)、共立メンテナンス(フィッシング起点で端末を遠隔操作)
メールサーバー・配信基盤自体の侵害メールの「土台」が破られ、利用者全員が被害KDDIのISP向けメール基盤(第三者製ソフトの未知の脆弱性、1,223万人分漏えい)、石川コンピュータ・センター(添付分離メールサーバーへの攻撃)

生成AIの普及で、不自然な日本語で見抜ける時代は終わりました。Proofpointが観測した2025年の新種メール攻撃のうち、82.8%が日本を標的としていました(Proofpoint 2026年1月14日、同社の観測範囲における割合。上原哲太郎氏対談)。

③ブラウザ:パスワードが漏れる「窓」

侵入パターン仕組み2026年の事例
インフォスティーラー(情報窃取マルウェア)ブラウザに保存したパスワード・Cookieを一括で盗み、VPNやクラウドの「正規アカウント」として侵入メディカ出版(正規アカウント情報の悪用からランサムに発展、約64万1,000人分)、新エフエイコム(不正取得された認証情報)、両毛システムズ(VPNアカウント悪用)
パスワード使い回し→リスト型攻撃他サービスから漏れたID/パスワードを機械的に試すエン・ジャパン(2,503件の不正ログイン)、ハルメク(従業員1名の認証情報で管理画面に侵入)
偽警告(サポート詐欺)・悪性サイト誘導「ウイルスに感染しました」と表示して遠隔操作ソフトを入れさせるIPA 10大脅威2026個人編で「サポート詐欺(偽警告)」が7年連続選出
外部SaaS・管理アカウントの乗っ取り予約サイトやチャットツールの管理者アカウントをブラウザ経由で奪取ホテルプリンセス京都(Expedia管理者アカウント)、ポラリス(Booking.com、約900万円被害)、OAG(Chatwork)
開発者トークン・APIキーの漏えいブラウザや個人環境に残った認証トークンから社内クラウドへCAMPFIRE(従業員の個人開発用サーバーに置かれたGitHubトークンの悪用、22万5,846件)

3つの接点は「連鎖」する

実際の攻撃では、この3つが連鎖します。典型例は「メールでフィッシング→ブラウザで認証情報を入力→その認証情報でVPNやホームページ管理画面に正規ログイン→社内へ横展開→ランサムウェア」という流れです。一つの事案が複数の接点に関わることは珍しくなく、本稿の分類は重なりを許容しています。接点をひとつだけ塞いでも、残りが開いていれば意味がありません。

5. ケーススタディ① サイバーセキュリティ体制の「脆弱性」— 事例と具体的対策

弱点を見つけ、塞ぎ、被害を抑える

脆弱性とは「直せるのに直していない穴」のことです。2026年の事例で侵入原因が公表されたものの多くは、未知の高度な攻撃ではなく、修正パッチが公開済みの既知の穴や、設定の不備を突かれたものです。

事例1:西山製作所(引抜鋼管製造)— VPN機器の脆弱性

2026年1月22日、ランサムウェア感染でサーバー内データにアクセス不能となりました。調査で、VPN機器の脆弱性と一部認証情報を起点とする侵入が判明し、情報流出も公表されました(同社公表資料)。同様のパターンは、精電舎電子工業(VPN経由で大半のサーバーと複数PCを暗号化)、東京鋪装工業(ネットワーク機器の脆弱性)、オリエンタルダイヤモンド、D&M、フェースでも繰り返されています。警察庁の統計でも「最多の入り口」です。

事例2:佐嘉平川屋(食品製造・通信販売)— 1年間気づかなかった決済ページ改ざん

ECサイトの決済アプリ(ペイメントアプリケーション)が改ざんされ、2025年3月21日から2026年3月10日までの約1年間に決済したお客様のカード情報6,303件が漏えいした可能性があります。2021年4月6日以降に入力された個人情報7万3,213件も、漏えいした可能性があると公表されています(同社公表)。ホームページの見た目は何も変わらないため、脆弱性診断をしていなければ発見できません。ファイン(歯ブラシ製造)は警察からの連絡で初めて気づきました。

事例3:学研メディカルサポート — WordPressの脆弱性

2026年8月3日、WordPressの脆弱性を悪用され、不正なアカウント作成と既存アカウントのパスワード上書きが確認されました(同社公表)。管理者権限を奪われれば、改ざん・バックドア設置・サーバー内部への侵入は時間の問題です。

事例4:フィーチャ(AIソフトウェア)— 7か月間の潜伏

最初の侵入痕跡は2025年7月9日、ランサムウェア被害の判明は2026年2月9日。32台のサーバーに不正アクセスされ、13台が感染、144個のGitHubリポジトリが外部コピーされました。攻撃者は侵入後すぐに暗号化しません。最も価値のあるデータを探し、持ち出してから暗号化します。

具体的対策(優先順)

優先対策具体的な基準
1公開資産の棚卸しドメイン、サーバー、VPN機器、旧サイト、テスト環境を全部リスト化。「知らないサーバー」をゼロにする
2VPN機器の更新とEOL確認サポート終了機器は即更新。ファームウェアは深刻度「緊急」は24時間以内、「重要」は1週間以内に適用。多要素認証を必須化
3CMS・プラグインの即時更新悪用された脆弱性の加重中央値は公開から5時間(Patchstack)。自動更新を有効化し、使っていないプラグインは削除。更新できない構成ならCMS自体を見直す
4管理画面の防御管理URLの変更、IPアドレス制限、多要素認証、ログイン試行回数制限。全ページSSL化
5WAF(Webアプリケーションファイアウォール)既知攻撃パターンを入り口で遮断。ただし従来型防御の遮断率は12〜26%にとどまる(Patchstack)ため、脆弱性の修復と併用が前提
6定期的な脆弱性診断年に1回では不十分。最低でも月次、できれば週次の自動診断。金融庁ガイドラインも「プラットフォーム診断に加えウェブアプリケーション診断も実施」を求めている
7バックアップの3-2-13つのコピー、2種類の媒体、1つはオフライン。復元テストを半年に1回
8EDR(端末検知・対応)CSアカウンティングは総当たり攻撃をEDRで検知・隔離し、漏えいを回避した

出典:金融庁「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」(2024年10月)、Patchstack State of WordPress Security 2026、「2026年 日系企業のサイバー被害事例一覧」

6. ケーススタディ② サイバーセキュリティ体制の「知識不足」— 事例と具体的対策

知識を、会社を守る仕組みに変える

知識不足とは「安全なつもりで危険な設定・運用をしている」状態です。製品に脆弱性がなくても、設定と運用を誤れば穴は開きます。2026年の事例では、「リモート接続の構成」「個人の環境に置かれた認証情報」「盗まれたアカウント情報」「補助的に使っていたシステム」が、繰り返し入り口になっています。

事例1:エイテックプロ(建材補修)— リモート接続機能からの侵入と、ログの欠損

在宅勤務のために使っていたリモート接続機能の、構成上の脆弱性を悪用されて侵入され、ランサムウェアで一部サーバーが暗号化されました。約7万件の個人情報の漏えいを否定できず、「一部のログ欠損(攻撃者による削除含む)」により、調査で痕跡を完全には特定できなかったと公表されています(同社公表)。ログを別の場所に保全していないと、被害範囲を特定できず、最大想定で通知するしかなくなります。

事例2:CAMPFIRE — 従業員の個人開発用サーバーに置かれた認証トークン

従業員が個人開発で利用していたサーバーに置かれたGitHubトークン等が悪用され、社内クラウドへ侵入されました。対象者22万5,846件(ユニーク件数)の個人情報等が漏えいのおそれとなりました(同社公表)。認証情報の置き場所に関するルールがない、あるいはあっても周知されていないと、従業員一人の便宜が全社の穴になります。

事例3:いえらぶGROUP — 利用企業から盗まれたアカウント情報

悪意ある第三者による不正アクセスと、システムの脆弱性が発端となり、データが流出しました。攻撃者はインフォスティーラー(情報を盗むマルウェア)等を使い、同社のクライアント企業のアカウント情報を盗んでいた可能性が高いとされています。流出した可能性がある情報は、氏名・メールアドレス・電話番号・住所・物件の希望条件など、物件を探す人と不動産会社とのやり取り履歴の一部です(同社公表)。自社のシステムを固めても、利用企業の端末からログイン情報が盗まれれば、攻撃者は正規の利用者として入ってきます。

事例4:山田ボデー工業所・ホソカワミクロン・扶桑電通 — 「補助的に使っていた」システム

山田ボデー工業所では、同じサーバーに残っていた旧ECサイトの顧客データベースが閲覧されました。ホソカワミクロンでは「補助的に使うクラウドストレージの1アカウント」から1,728件の個人データが漏えい。扶桑電通ではクラウド共有フォルダーの認証情報悪用で26,489件。いずれも「主要システムではない」と思われていた場所が入り口でした。

事例5:風の旅行社 — 委託先の被害でデータを失う

利用していた外部メール配信サービスが不正アクセスを受け、登録データを復旧できず、個別連絡ができないままメールマガジンを停止しました。委託先に預けたデータのバックアップを自社で持っていないと、委託先の被害がそのまま自社の資産喪失になります。

具体的対策(知識を「仕組み」に変える)

対策内容参照すべき基準
「情報セキュリティ6か条」の実践OS・ソフトの最新化、ウイルス対策、パスワード強化、共有設定の見直し、脅威の把握に、第4.0版(2026年3月27日公開)で「バックアップを取ろう」が加わったIPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版、SECURITY ACTION(一つ星・二つ星)
認証情報の置き場ルールAPIキー・トークン・パスワードはシークレット管理ツールに集約。個人サーバー・チャット・ソースコードへの記載を禁止。最小権限と定期ローテーションCAMPFIRE・ワサビ・TENTIALの事例。SCS評価制度★3「4-1-6 パスワード管理ルール」
ログの外部保全最低1年間、改ざんできない場所に保存。被害範囲の特定と警察・個人情報保護委員会への報告に必須エイテックプロの事例
設定レビューの定期化リモート接続、クラウド共有設定、認可処理を四半期ごとに第三者が点検エイテックプロ・扶桑電通の事例。SCS★3「4-5-1 ネットワーク境界防護」
委託先契約へのセキュリティ要件バックアップの自社保有、インシデント時の報告期限、再委託の承認、契約終了時のデータ削除を契約に明記
(ApplyNowの事案では契約終了後の情報削除について利用企業と提供側の認識が異なっていた)
金融庁ガイドライン2.6節、SCS★3「2-1-2 機密情報の取扱い」「2-1-4 インシデント時の役割・責任」
外部の専門家を「定額で」使うひとり情シスや兼任担当に全てを負わせない。定期診断と相談窓口を外部に持つ「サイバーセキュリティお助け隊サービス」(IPA)、SCAN DOG

知識は属人化します。担当者が辞めた瞬間に失われます。だからこそ「知っている人を雇う」より「知らなくても回る仕組み」が中小企業の現実解です。

7. ケーススタディ③ サイバーセキュリティ体制の「意識不足」— 事例と具体的対策

サイバー対策を、経営の判断に入れる

意識不足とは「自社が標的になり得ること、そして自社の被害が取引先の被害になり得ることが、経営の判断材料に入っていない」状態です。IPAの2024年度調査では、セキュリティ投資をしない理由の1位が「必要性を感じない」44.3%でした(IPA)。当社の約11万社調査でも、中小企業の63.4%がセキュリティ対策を一切実施していませんでした。誰も「やらないと決めた」わけではありません。多くの場合、「自分の会社が対象になる」という想定が、判断の材料に入っていないだけです。知識・人材・予算に制約がある企業ほど、対象と優先順位を決めることが出発点になります。

以下の事例は、各社の公表資料で確認できる事実のみを記載しています。当該企業の教育状況や組織文化を推測して評価するものではありません。経営者が自社で確認すべき「想定場面」としてお読みください。

事例1:小田原エンジニアリング — 5か月間のメール閲覧と、顧客に生じた金銭被害

ドイツ子会社への出向社員のメールアカウントが2026年3月27日から8月31日まで侵害され、約3,500件のメールが閲覧されました。なりすましによる支払先変更依頼で、金銭被害を受けたのは顧客です(同社公表)。メールの閲覧だけでは被害が小さく見えますが、取引の文脈を知られることが、取引先の金銭被害につながる典型例です。

事例2:東洋紡せんい→東洋紡エムシー — グループ内で被害が連鎖

従業員のメールアカウントが侵害され、約1,500件のフィッシング誘導メールが送信されました。受信した関連会社の従業員2名も不正アクセス被害を受けました(東洋紡エムシー公表)。送信元が知っている相手であっても安全とは限らない、という前提が、サプライチェーン全体で必要になります。

事例3:カインドオル(ブランド古着小売)— 従業員1名のアカウント侵害から136,464人

フィッシングで従業員アカウントを奪われ、顧客データを2回不正エクスポートされました。対象は136,464人(同社公表)。巧妙な日本語のフィッシングを個人の注意力だけで見抜くことは困難で、アカウント侵害を前提にした多要素認証と、大量エクスポートの検知が必要になります。

事例4:マリモホールディングス — 役員を装った業務依頼のフィッシング

公表資料から確認できるのは、グループ役員を名乗る業務依頼のフィッシングにより、退職者を含む従業員約1,360名分の情報が不正取得されたことです(同社公表)。同様の被害を減らすには、役職や差出人にかかわらず、機密情報の提供依頼を別経路(電話や社内チャット)で確認する手順が有効です。

具体的対策(経営者が行うべき5つ)

  1. 経営者が責任者だと宣言する。経済産業省「サイバーセキュリティ経営ガイドラインVer3.0」の3原則は、①経営者がリーダーシップを発揮する、②自社のみならずサプライチェーン全体の対策を行う、③関係者とのコミュニケーションをとる、です(経産省・IPA)。担当者任せにした瞬間、対策は止まります。
  2. 「自社の被害=取引先への被害」と数字で認識する。2026年上半期に調査・復旧費用を回答した35件のうち21件(60%)が1,000万円以上でした(警察庁)。これに取引停止・損害賠償・信用失墜が加わります。年間数万円からの対策費と比較してください。
  3. 年に2回の標的型メール訓練と「報告した人を褒める」文化。開封率より報告率を評価する。怒られる組織では被害が隠されます。
  4. 支払先変更は必ず電話で確認するルール。メールだけで振込先を変えない。この1行のルールでBECの多くは防げます。
  5. 第三者の目で定期的に「健康診断」を受ける。佐嘉平川屋は約1年、フィーチャは約7か月、小田原エンジニアリングは約5か月、被害に気づけませんでした。自社で気づけないものは、外から見てもらうしかありません。

出典:経済産業省「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」、警察庁 令和8年上半期資料、株式会社ガーディアン 独自調査(2025年8月)、「2026年 日系企業のサイバー被害事例一覧」

8. WordPressの脆弱性と、CMSの選び方

WordPress は「世界で最も使われ、世界で最も攻撃されているCMS」です。

問題は「オープンソースかどうか」ではなく「誰が、どの頻度で、どう直すか」です。

WordPressの脆弱性の7つのポイント、被害実績が多い理由、自治体・公的機関が調達仕様書で「WordPress」を排除する理由と公正取引委員会の見解は、「WordPressの脆弱性と、CMSの選び方」で詳しく解説しています。

9. 世界的に見て、なぜ今、日本企業が世界のハッカー集団から狙い撃ちされているのか

日本企業は、なぜ狙われるのか

日本は「身代金を払わない国」にもかかわらず、攻撃が増え続けています。Proofpointの2024年調査では、身代金支払率は日本32%に対し世界平均54%。それでも、Proofpointが観測した2025年の新種メール攻撃の82.8%が日本を標的としていました(Proofpoint 2026年1月14日、同社の観測範囲における割合。上原哲太郎氏対談)。「払わないのに狙われる」には理由があります。

理由1:地政学的に「最前線」にいる

Check Pointは、日本が標的になる理由として、NATO・米国・イスラエルとの安全保障上の連携、台湾情勢、北朝鮮の活動を挙げています(Check Point Japan Threat Landscape 2025)。警察庁は、中国の関与が疑われるMirrorFaceによる政府・シンクタンク・マスコミへの攻撃、北朝鮮を背景とするTraderTraitorによる約482億円相当の暗号資産窃取を公表し、Salt Typhoonについては2025年8月に国際アドバイザリーを発出しました(警察庁 令和7年上半期)。2025年6~10月には親ロシア派ハックティビストによる#OpJapanのDDoSキャンペーンが続きました。IPA 10大脅威2026でも「地政学的リスクに起因するサイバー攻撃」が6位に入っています。

理由2:世界のサプライチェーンの「中心」にいる

先端製造、半導体、ロボティクス、自動車、精密機器。日本企業は世界のサプライチェーンの中心におり、産業スパイと知財窃取の標的になります(Check Point)。しかもそのサプライチェーンは、世界でも稀な「多層の中小企業」で構成されています。大企業を直接破るより、Tier2・Tier3の取引先を破る方が圧倒的に安上がりです。

理由3:「日本語の壁」が生成AIで消えた

かつて不自然な日本語は、海外の攻撃者を遠ざける防壁でした。生成AIは正しい敬語と文脈に沿ったフィッシングを量産し、特定地域の中小企業や地方銀行の顧客をリストアップすることさえ可能にしました(Proofpoint)。日本は「言語の防壁が消えた直後の、対策が追いついていない市場」です。

理由4:基本対策の不徹底が「数字で」見えている

  • 日経225企業の92%がDMARCを導入しているが、なりすましを拒否する「Reject」設定は15%。有効に阻止できる設定の割合は36%で18か国中最下位(Proofpoint)。
  • ランサムウェアの侵入口は、2026年上半期も有効回答36件中27件(75%)がVPN機器とリモートデスクトップ。つまり「パッチ未適用」と「多要素認証なし」で破られている(警察庁)。
  • 中小企業の約7割に組織的なセキュリティ体制がなく、62.6%が直近3期に投資していない(IPA 2024年度調査)。当社調査では63.4%が対策を一切実施していない。
  • 国内のサイバーセキュリティ人材は約11万人不足(当社SCAN DOG正規版ページ)。従業員300~500人規模でも「ひとり情シス」が常態。

攻撃者から見れば、日本は「豊かで、重要で、言語の壁がなくなり、そして穴が多い」市場です。身代金を払わなくても、盗んだデータは売れ、大企業への侵入口は売れ、破壊そのものが目的の攻撃もあります。「払わないから狙われない」は成立しません。

10. サイバー攻撃に対する国の所感と対策方針、具体的な対策

国の対策と、企業の実践をつなぐ

国はすでに「企業の自助努力」から「国が積極的に関与する」段階に軸足を移しています。2025年12月23日に閣議決定された新「サイバーセキュリティ戦略」は、「深刻化するサイバー脅威」と「厳しさを増す安全保障環境」を踏まえ、今後5年で「世界最高水準の強靭さを持つ国家」を目指すと宣言しました(内閣官房 国家サイバー統括室 戦略本文、解説記事)。

国の所感(脅威認識)

  • 警察庁:ランサムウェア被害は「規模や業種にかかわらずターゲット」。2026年上半期は123件で半期過去最多、うち中小企業79件。サイバー警察局便りで「ランサムウェア被害拡大中」と注意喚起(警察庁 便り2026 Vol.16、2026年9月18日)。
  • 警察庁・旧NISC:MirrorFaceによる国内組織への攻撃を「日本の安全保障や先端技術の情報窃取を目的とする、中国の関与が疑われる組織的な攻撃」と評価(注意喚起2025年1月8日)。
  • IPA:サプライチェーン・委託先を狙った攻撃が8年連続で上位、AIリスクが初選出で3位(専門家の審議・投票による順位で、件数の順位ではない)。
  • 政府戦略:「サプライチェーン全体のレジリエンス確保」を明記し、供給者の責務の制度化、取引先への対策要請に関する法令適用関係の明確化を計画。

対策方針と具体的対策(2026年10月8日時点の法制度・制度一覧)

施策所管時期・状況内容中小企業への影響
サイバー対処能力強化法等(能動的サイバー防御)内閣官房・内閣府・警察・自衛隊2025年5月成立。官民連携の強化は2026年10月1日施行。基幹インフラ事業者のインシデント報告は10月1日から義務化、導入済み機器の資産届出は2027年3月まで。通信情報の利用等は段階施行①基幹インフラ15分野258事業者の資産届出・インシデント報告義務、②通信情報の利用による攻撃検知、③攻撃インフラへのアクセス・無害化、④国家サイバー統括室(NCO)体制。官民協議会に約100組織が参加予定直接の義務は基幹インフラ事業者。その委託先・システム連携先は、対策状況の説明と被害時の迅速な情報連携を求められる(内閣官房・内閣府 施行説明資料、INTERNET Watch(2026年10月1日)、トレンドマイクロ 解説)
サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)経済産業省・NCO・IPA制度構築方針2026年3月27日公表。ガイダンス2026年秋頃、評価機関公表2026年12月頃、★3・★4の申請受付開始は2026年度末(2027年1~3月頃)予定★3:26項目・81件、専門家確認付き自己評価。★4:43項目(★3を包含)、第三者評価機関による文書確認・実地審査・技術検証(インターネット公開機器の脆弱性診断)、有効期間3年。対象はIT基盤(クラウド含む)、OTは対象外。発注者が取引条件として段階を指定する任意制度大企業から「★3を取ってください」と求められる時代が来る。特定の製品導入で取得できる制度ではない。中小企業向けに「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の新類型を創設(経産省、IPA FAQ、NTTドコモビジネス解説)
サイバーセキュリティ経営ガイドラインVer3.0経済産業省・IPA2023年3月経営者が認識すべき3原則と重要10項目。原則2は「サプライチェーン全体の対策」大企業が取引先に対策を求める根拠文書(経産省)
中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版、SECURITY ACTIONIPA2026年3月27日公開情報セキュリティ6か条(バックアップを追加)、一つ星・二つ星の自己宣言、資産管理台帳・インシデント対応の手引き等の付録IT導入補助金の申請要件。SCS★3の準備にもつながる最初の一歩(IPA)
金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン金融庁2024年10月4日(2025年7月技術的修正)サードパーティリスク管理、ウェブアプリ診断、パッチ期限、EOL管理、SBOM金融機関の委託先はデューデリジェンスと継続モニタリングの対象(金融庁)
地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン総務省2025年3月28日改定自治体の公開サーバー・委託先管理の基準自治体の受注事業者は同等の水準を求められる(総務省)
改正個人情報保護法(漏えい報告義務)個人情報保護委員会2022年4月施行不正アクセスによる漏えいは件数にかかわらず報告・本人通知が義務2026年の事例一覧の158事例の公表の多くがこの義務に基づく。「黙っていれば済む」時代は終わった
パブリック・アトリビューション警察庁・NCO2025年1月(MirrorFace)、2025年8月(Salt Typhoon)ほか攻撃主体を名指しで公表し、国際連携で抑止国家背景の攻撃が「対岸の火事」ではないことの証左

国の方針が中小企業に突きつけること

国の施策は、すべて同じ方向を向いています。「大企業は取引先の対策水準を確認せよ」「取引先は対策水準を証明せよ」。これまでは努力義務でしたが、SCS評価制度の運用開始で、2社間の取引契約で「取引条件」として示されるようになります。IPAの2024年度調査では、取引先のセキュリティ要求に応えたことが受注・維持の大きな要因になったと答えた中小企業が42.1%(投資企業では49.8%)に達しています。対策していない中小企業は、攻撃される前に、取引から外される可能性があります。なお、SCS評価制度は任意の制度で、個社間の商取引に関し規制措置を講じるものではありません(経済産業省・内閣官房「SCS評価制度に係る不適切な勧誘に御注意ください」2026年4月27日)。

ただし、国の制度は「何をすべきか」を示すもので、「どうやって、いくらで」は示しません。次章からは、当社がその空白を埋めるために用意した3つのサービスと、それがSCS評価制度にどこまで対応できるかをお伝えします。

11. 中小企業のサイバーセキュリティ現状を把握する「SCAN DOG簡易版」

ホームページの現状を知り、対策の順番を決める(SCAN DOG簡易版)

対策の第一歩は「今、自社に穴が開いているか」を知ることです。 SCAN DOG簡易版(セキュリティ・チェック・サービス)は、中小企業のホームページを外部から「健康診断」し、攻撃者の自動スキャナに引っかかる状態かどうかを短期間で判定します(SCAN DOGサービスページ)。

何を調べるのか

診断項目見ていることなぜ重要か
全ページのSSL化一部のページやフォームが暗号化されていないか入力情報の盗聴、ブラウザの警告表示、検索順位低下
管理画面URL・IDの露出/wp-login.php等がそのまま公開され、ユーザー名が列挙できるか総当たり攻撃の最短ルート。当社調査では中小企業の38.6%が該当
CMSの種類とバージョン管理状態WordPress等のバージョンが外から判別でき、既知脆弱性のあるバージョンか(独自手法「WPID」)悪用された脆弱性の中央値は公開から5時間(Patchstack)
新・七つの大罪脆弱性放置・法令違反・導線破綻・SEO不全・更新放置・成果不透明・戦略不在セキュリティだけでなく、ホームページが「経営資産として機能しているか」を同時に判定

こんな方に

  • 「制作会社に任せっきりで、今のホームページが安全かどうか分からない」中小企業の経営者
  • 「取引先からセキュリティ対策の状況を聞かれたが、答えられない」総務責任者
  • 「数千社の取引先のうち、どこから手をつければいいか分からない」大企業の調達・情報システム担当者

提供条件

項目内容
費用初回1~100社は無料
納期約10営業日でレポート提出(2,000社以上は別途日程調整)
必要なもの診断対象のURLのみ。サーバーへのインストールや設定変更は不要
サイトへの影響通常のHTTPリクエストベースで、公開サイトの表示に影響を与えない設計
結果の活用危険度の高い項目から優先順位をつけて報告。そのまま取引先への説明資料に使える

簡易版は「治療」ではなく「診断」です。ただし、診断なしに治療は始まりません。 決済ページ改ざんや潜伏型の侵入は、外部からの定期診断がなければ気づきにくい被害です。簡易版は、その「気づく機会」を作ります。なお、簡易版は外部から確認できる項目に限られ、ログイン後の機能、VPN機器、社内ネットワークは対象外です。

出典:株式会社ガーディアン プレスリリース(2025年8月7日)

12. 中小企業のサイバーセキュリティを守る「SCSC Dog」

成果を育てるHPに、続けられる守りを。

診断で穴が見つかったとき、中小企業に必要なのは「毎回自分で塞ぐ作業」ではなく、「攻撃される面を減らし、更新と監視を任せられる構造」に移ることです。 SCSC Dog(スクスクドッグ)は、当社のサブスクリプション型ホームページサービス「SCSC」のセキュリティ重視型です(SCSC Dogサービスページ)。

WordPressの7つの弱点に対する、SCSC Dogの設計

WordPressの弱点(WordPressとCMSの選び方)SCSC Dogの設計
プラグインが脆弱性の91%クローズドソースの自社CMS「OWLet」。第三者プラグインを入れられない構成
ソースコードが公開非公開。WordPress向けの自動スキャナのシグネチャには該当しにくい(非公開であること自体は安全の保証ではなく、更新・監視の運用とあわせて効果を持つ)
管理画面の場所が全世界共通管理画面は非公開・非共通。ログイン情報の露出が起きにくい
ユーザー名が列挙できる列挙できない設計
更新すると表示が崩れる更新作業はお客様も当社も行うが、当社が一元管理
公開サーバーに管理機能とDBが同居当社管理の基盤上で分離運用。WAFを標準装備
責任の所在がない運用責任は当社。24時間365日有人監視、直近365日の稼働率99.99994%(当社集計)

標準装備と条件

項目内容
初期費用0円(契約期間の縛りなし)
月額22,000円(税別)~。10プラン(月額2.2万~32.2万円)
セキュリティ標準装備(ホームページ)SSL、独自ドメイン、クローズドソースCMS「OWLet」、WAF、24時間365日有人監視、セキュリティヘッダー(Content Security Policy、X-Frame-Options)、Cookie属性(HttpOnly・Secure・SameSite)の最適設定
セキュリティ標準装備(メール)自社ドメインのなりすまし防止(SPF・DKIM・DMARC)を標準実装
サイト仕様完全オリジナルデザイン、フルCMS、アクセス解析、SEO機能、SNS連動、35ページ級
実績(当社集計)同一基盤での運用サイト数76,325(2026年10月時点)。15年間、CMS・サーバー側の脆弱性を起点とする改ざん・侵入・情報漏えい事故の確認なし(当社が構築・運用するサイトを対象とした当社インシデント記録に基づく)。直近365日の稼働率99.99994%。いずれも過去の実績であり、将来の安全を保証するものではない
対象SCAN DOG簡易版で脆弱性が見つかり、サイトを作り直したい中小企業。取引先から対策を求められた中小企業

機能・実績・診断結果は、別のもの

区分内容意味すること
機能(仕様)WAF、有人監視、セキュリティヘッダー、更新の一元管理、バックアップ攻撃される面を減らし、発見と対処を早める仕組み
実績15年間の無事故、稼働率99.99994%過去の運用結果。将来の保証ではない
診断結果SCAN DOGでの指摘ゼロその時点・その診断項目の範囲での結果。新しい脆弱性は次回以降の診断で確認する

ここで正直に範囲を示します。SCSC Dogが守るのは「ホームページと、自社ドメインのなりすまし」です。 従業員のメールアカウントそのものの侵害、従業員端末のブラウザやOSの更新、VPN機器、社内ネットワークは対象外です。3つの接点のうち「ホームページ」を構造的に守り、「メール」のうち自社ドメインのなりすましを防ぎ、「ブラウザ」に対してはサイト側のヘッダーとCookie設定で訪問者を守る。それがSCSC Dogの守備範囲です(当社解説「3大侵入口を守る防衛戦略」)。

なぜ「セキュリティだけ」のサービスにしなかったのか

中小企業にとって、セキュリティは「売上を生まないコスト」です。だから後回しにされます。当社は26年間、「儲かるホームページ」を作ることを生業にしてきました。SCSC Dogは、集客・SEO・成果計測を備えたホームページの「土台」をセキュアにするという発想です。セキュリティのために月額を払うのではなく、儲かるホームページにセキュリティが「ついてくる」。これが中小企業が対策を続けられる現実的な形だと考えています。

出典:株式会社ガーディアン プレスリリース(2025年8月7日)、ガーディアン 公式サイト

13. 大企業と中小企業のサプライチェーンを守る「SCAN DOG(正規版)× SCSC Dog」

取引先の公開Webを、継続して把握・改善する

(図14の中に「300項目の診断」の文字がある)

取引先の公開Web資産の弱点を「継続的に、一元的に」把握することが、発注側ができる現実的な第一歩です。 SCAN DOG正規版は、大企業が取引先・委託先・グループ会社を一括契約するWEBアプリケーション脆弱性自動診断プラットフォームです(SCAN DOG正規版 サービスページ)。診断の対象は公開Webアプリケーションであり、VPN機器・端末・社内ネットワークは対象外です。

大企業が取引先対策を進められない「四重のジレンマ」

ジレンマ実態SCAN DOG正規版の解
①コスト従来のペネトレーションテストは1社50万円~。2,000社で年間10億円超1,000社一括で年額1,200万~1,800万円(1社あたり12,000~18,000円、最大で1社6,000円~)
②法的強制力の限界取引先への対策要請は努力義務。「やってください」で終わる大企業が費用を持ち、診断を「提供」する形にすることで取引先の心理的・金銭的障壁を下げる
③責任分界の未整理脆弱性が見つかった後、誰が直すのかが契約で決まっていない契約時に責任分界を設定。修正が難しい取引先にはSCSC Dogへの移行を提示
④可視化手段の欠如数千社の対策状況を調達部門が把握できないダッシュボードで全取引先の脆弱性と対応状況を一元管理。PDFレポートを自動生成

SCAN DOG正規版の仕様

項目内容
診断項目数300項目(クリティカル96・ハイ91・ミドル113)、16ジャンル。公表仕様であり、すべての脆弱性や侵入を検出できることを意味しない
準拠基準OWASP Top 10、CWE Top 25、IPA「安全なウェブサイトの作り方」の主要項目
主な検出対象SQLインジェクション・OSコマンドインジェクション・AIプロンプトインジェクション、JWT・OAuth・SAMLの不備、HTTP/2ラピッドリセット、GraphQL攻撃、既知CVE(DB9種・フレームワーク9種・OSS8種・言語8種)
診断対象コーポレートサイト、受発注ポータル、顧客ポータル、ECサイト等の公開Webアプリケーション。海外拠点の公開WEBアプリケーションも可。VPN装置・ルータ等のネットワーク機器、ログイン後の業務機能の一部は対象外
頻度毎日/毎週/毎月/半年/年1回
自動化診断実行・検出・レポート生成まで完全自動。通常のHTTPリクエストベース
契約大企業によるサプライチェーン一括契約(1年)。1社から可、50社のパイロットから段階拡大を推奨
料金例(税抜、1社あたり年額)1社単独:60万円(年1回)~90万円(毎週)/100社:2万円~3万円/1,000社:1.2万円~1.8万円

「簡易版 → 正規版 → SCSC Dog」の流れ

  1. 探査(SCAN DOG簡易版):大企業の取引先リストを基に、早急な対策が必要な中小企業を約10営業日で洗い出す。初回1~100社無料。
  2. 継続診断(SCAN DOG正規版):全取引先を300項目で定期診断。ダッシュボードで大企業が一元管理。新しい脆弱性が出たら次の診断で検出。
  3. 構造転換(SCSC Dog):修正しても指摘が繰り返される取引先は、更新と監視を当社が担う構成へ移行。以降の診断で指摘が減少・解消したことを確認する(指摘ゼロは、診断時点・診断項目の範囲における結果)。
  4. 証跡化(SCS評価制度への接続):診断レポートと対応履歴が、取引先が★3・★4の評価を受ける際の、脆弱性管理に関する証跡の一部になる。

費用対効果の考え方(当社試算の前提)

取引先1,000社・売上3,000億円規模の企業を想定し、サプライチェーン経由の事故による損失を8~30億円、年間の発生確率を5%と置くと、年間期待損失は4,000万~1.5億円です。SCAN DOG正規版の年間費用1,200万~1,800万円は、この年間期待損失の約8~45%に相当します。

ROI(投資利益率)の倍率は示しません。ROIを計算するには、対策によって減らせる損失の割合(低減率)が必要ですが、公開Web領域の診断はVPN・端末・基幹システムを起点とする事故を直接は減らさないため、低減率を事例ごとに裏づけられる段階にないからです。損失規模の参考として、小島プレス工業を起点とした2022年の大手自動車メーカー全工場停止(約13,000台の生産影響)、給食委託業者のVPNを起点とした2022年の大阪急性期・総合医療センター(復旧72日)、2024年の大手出版グループ(被害総額100億円超)があります。いずれもサプライチェーン経由または公開機器起点の事故で、損失規模の目安であって、本サービスで防げたことを示すものではありません。

※料金・試算は当社の提示条件と仮定に基づきます。第三者検証を経たものではなく、実際の条件は契約時にご確認ください。

出典:株式会社ガーディアン プレスリリース(2026年4月21日)、SCAN DOG正規版 サービスページ

14. SCS評価制度に「SCAN DOG(正規版)× SCSC Dog」はどこまで対応できるか

結論:SCAN DOG正規版とSCSC Dogは、★3の要求事項のうち公開Web領域に関わるものについて、対策の実施と証跡の作成を支援し得ます。適合の判断は、組織の適用範囲全体の運用状況と証跡で行われるため、サービス導入で「〇項目が完了する」とは言えません。

★3の要求事項ごとの「寄与」と「利用企業に残る対応」は、「SCS評価制度への対応 — Web領域でできること」に一覧でまとめています。

15. よくある質問(FAQ)

Q1.サプライチェーン攻撃とは何ですか?

標的とする大企業を直接攻撃せず、その取引先・委託先・利用サービスなど、防御の弱い組織を踏み台にして侵入する手法です。IPA「情報セキュリティ10大脅威2026」組織編で2位、8年連続で選出されています。2026年は、FAQシステムの提供会社1社が破られて大和証券・損保ジャパン・シチズン時計に波及した事例が典型です。

Q2.従業員10人の会社でも狙われますか?

狙われます。警察庁の統計では2025年のランサムウェア被害の63.3%が中小企業です。攻撃者は会社の規模ではなく、自動スキャナで見つけた「穴の有無」で選んでいます。2026年の事例一覧には、自転車小売、鞄店、食品卸、地域情報サイトが含まれます。

Q3.中小企業への侵入口で最も多いのはどこですか?

ランサムウェアに限れば、警察庁統計(2025年、侵入経路に有効回答があった件数が母数)でVPN機器66.3%、リモートデスクトップ20.7%です。その認証情報がメール(フィッシング)やブラウザ(情報窃取マルウェア)経由で盗まれる事例もあります。情報漏えいや改ざんを含めると、2026年の事例一覧ではホームページ(CMS・EC・Webアプリ)とメールアカウントが最も多く登場します。本稿では、VPN機器の更新と多要素認証を最優先としたうえで、日常業務の点検軸として「3つの接点」を用いています。

Q4.WordPressを使っていると必ず危険ですか?

「必ず」ではありませんが、安全に保つにはプラグインを最小限にし、脆弱性公開から数時間以内に更新し、管理画面を分離・制限し、定期診断を行う運用が必要です。2025年の新規脆弱性は11,334件、悪用が確認された脆弱性では公開から悪用までの中央値が5時間です(Patchstack)。その運用を自社で続けられるかが判断基準です。

Q5.自治体や金融機関は本当にWordPressを排除しているのですか?

自治体や国の機関の調達仕様書に「オープンソースCMSは不可」「商用パッケージであること」とする例があり(「WordPressの脆弱性と、CMSの選び方」に一次資料)、政府の「デジタル改革アイデアボックス」(2021年)にその是非を問う投稿があったほどです。ただし個別の調達における条項であり、全機関の統一方針ではありません。金融機関については名指しの排除条項を公開仕様書で確認できておらず、金融庁ガイドラインが求めるパッチ期限・EOL管理・診断の水準を、プラグイン依存の無保証ソフトでは満たしにくいという間接的な推定です。

Q6.国の制度で中小企業に直接関係するものは?

経済産業省の「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(★3・★4)」で、2026年度末(2027年1~3月頃)に申請受付開始予定です。発注側の大企業が取引条件として段階を指定することが想定されており、対策していない中小企業は取引から外れる可能性があります。また2026年10月1日にサイバー対処能力強化法(能動的サイバー防御)の官民連携部分が施行され、基幹インフラの委託先には対策状況の説明が求められます。IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」は2026年3月に第4.0版となり、情報セキュリティ6か条(バックアップを追加)が最初の一歩です。

Q7.まず何から始めればよいですか?

「現状把握」です。SCAN DOG簡易版(初回無料)でホームページの穴を確認し、並行してVPN機器の更新と多要素認証、支払先変更の電話確認ルールを導入してください。2026年の事例一覧の分類集計では、公表文から原因が読み取れる事例の多くが、既知脆弱性の放置、認証情報の窃取、Webサイトの脆弱性のいずれかに関係しています。この3つの基本対策は、それらの多くに有効です。

Q8.SCAN DOGは大企業でなければ契約できませんか?

中小企業単独でも契約できます(正規版は1社年額60万円~)。ただし、大企業が取引先を一括契約する形が1社あたり年額6,000~18,000円と大幅に安く、サプライチェーン全体の防御にもなるため、大企業からの導入を推奨しています。WAFとは併用が前提です。

Q9.SCAN DOGやSCSC Dogを導入すればSCS評価制度の★3を取得できますか?

導入だけで取得できる制度ではありません。★3は26項目を組織全体のIT基盤で満たす必要があり、専門家の確認を経た自己評価です。当社の判断では、「SCAN DOG正規版 × SCSC Dog」は公開Web領域に関わる要求事項について対策の実施と証跡の作成を支援し得ますが、適合は組織の適用範囲全体の運用状況と証跡で判断されます。規程・教育・端末・社内ネットワーク・インシデント手順等は、自社と他サービスで整える必要があります(「SCS評価制度への対応」)。

Q10.委託を終了したサービスも確認が必要ですか?

必要です。2026年のApplyNowの事案では、契約終了後の情報削除について利用企業と提供側の認識が異なっていたことが公表されています。契約終了時のデータ削除・アカウント停止・接続解除を作業記録で確かめてください。金融庁ガイドラインも取引終了時の管理プロセス整備を求めています。

Q11.SCSC Dogに移行すれば、会社全体が安全になりますか?

なりません。SCSC Dogが担うのはホームページの構造・更新・監視・復旧と、自社ドメインのなりすまし防止です。従業員のメールアカウント、端末、VPN機器、社内ネットワーク、委託先の管理は別途必要です。また、過去の無事故実績や診断での指摘ゼロは、その時点・その対象における結果であり、将来の侵害がないことを保証するものではありません。

16. 2026年 日系企業のサイバー被害事例一覧

2026年1月1日から10月8日までに公表された、日本発祥の企業とその国内外子会社のサイバー被害は158項目です。 企業・グループ単位の掲載項目数であり、同じ委託先への攻撃が複数社に波及した事案(スカラコミュニケーションズ→大和証券・損保ジャパン・シチズン時計、ApplyNow→吉野家・はなまる、YCC情報システム→AGS)を含むため、独立した攻撃の件数ではありません。各行の一次資料は各社の公表文書で、当社が一件ずつ確認しています。

158項目の一覧(企業・業種・公表日・被害と影響・判明状況・一次資料)と、この一覧の読み方、分類集計は、「2026年 日系企業のサイバー被害事例一覧」に掲載しています。各事例の解説記事は、このページの下の「関連記事」に順次追加します。

17. まとめ — 「最も弱い環」を「最も強い環」に

「最も弱い環」を、「最も強い環」に。

ランサムウェアを動かす分業構造は、守りの弱い組織を入り口に選びます。中小企業の被害は取引先に波及し、2026年の公表事例では委託先への侵入が複数の大企業の情報漏えいにつながりました。だからサプライチェーン攻撃の起点は中小企業にある。対策は「現状把握→修復・構造転換→継続監視」の順で行う。これが本稿の結論です。

中小企業の経営者へ

御社は、御社だけを守っているのではありません。御社のホームページとメールは、取引先の玄関につながっています。まずは無料のSCAN DOG簡易版で「今、穴が開いているか」を確かめてください。穴があれば、SCSC Dogで「更新と監視を任せられる構造」に移ることができます。VPN機器の更新と多要素認証、支払先変更の電話確認は、それと並行して今日から始められます。

大企業の調達・情報システム責任者へ

取引先の対策を「お願い」する時代は終わりました。SCS評価制度の運用開始を前に、数千社の取引先の公開Web資産の弱点を「見える」状態にすることが、調達部門の新しい責務になります。SCAN DOG正規版は、50社のパイロットから始められます。

あなたの立場に合わせた、次の一歩

まずは「今、穴が開いているか」を知ることから。立場に合わせてお選びください。

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出典一覧(クリックで開く)
区分出典
国・公的機関(統計)警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(2026年9月、本文PDF)、同 公式掲載ページ
国・公的機関(統計)警察庁 サイバー警察局便り2026 Vol.16「ランサムウェア被害拡大中」(2026年9月18日)、警察庁「ランサムウェア被害防止対策」
国・公的機関(統計)警察庁「令和7年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(2025年9月)、警察庁「令和8年警察白書」解説(セキュリティ対策Lab、2026年8月)
国・公的機関(統計)警察庁 サイバー警察局 注意喚起「MirrorFaceによるサイバー攻撃について」(2025年1月8日)
国・公的機関(統計)IPA「情報セキュリティ10大脅威2026」(2026年1月29日公開)解説
国・公的機関(統計)IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」、同 プレスリリース(2025年2月14日)
国・公的機関(ガイドライン)IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」(第4.0版、情報セキュリティ5か条・6か条を含む)
国・公的機関(ガイドライン)経済産業省・IPA「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」
国・公的機関(ガイドライン)金融庁「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」(2024年10月4日)
国・公的機関(ガイドライン)総務省「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」(2025年3月28日改定)
国・公的機関(政策・制度)内閣官房 国家サイバー統括室「サイバーセキュリティ戦略」(2025年12月23日閣議決定)、同 解説(@IT)
国・公的機関(政策・制度)内閣官房・内閣府「サイバー対処能力強化法(能動的サイバー防御)施行説明資料」(2026年10月1日施行)、トレンドマイクロ 解説(2026年8月14日)
国・公的機関(政策・制度)経済産業省「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」制度ページ、IPA「SCS評価制度 要求事項と評価基準」、IPA「SCS評価制度FAQ」
国・公的機関(政策・制度)経済産業省・内閣官房「制度構築方針」(2026年3月27日)、同 解説(ScanNetSecurity)、NRIセキュア 解説、NTTドコモビジネス 解説、josis365「★3要求事項の解説」
国・公的機関(政策・制度)経済産業省・内閣官房「SCS評価制度に係る不適切な勧誘に御注意ください」(2026年4月27日)
国・公的機関(政策・制度)公正取引委員会「CMSの仕様書案配布に係る確約計画の認定」(2022年6月30日)、デジタル改革アイデアボックスへの投稿(2021年)「官公庁や地方自治体が仕様書に『オープンソースCMSを禁止』する文言を禁止するべき」
調達仕様書(一次資料)中讃広域行政事務組合「ホームページ更新業務委託仕様書」(令和8年6月)
調達仕様書(一次資料)横浜MICEサイト「CMS構築メモ」(令和4年7月12日)
調達仕様書(一次資料)沖縄総合事務局 北部国道事務所「ホームページリニューアル特記仕様書」(平成31年2月)
調達仕様書(一次資料)IPA「IMIサイト運用・保守 入札説明書」(2026年2月2日、17~18ページ)、官公庁・自治体のCMS選定理由(4qualia)
脅威レポートCheck Point「Japan Threat Landscape 2025」(2026年5月)
脅威レポートProofpoint「攻撃は入口で防げているか」(2026年1月14日)、Proofpointレポート・上原哲太郎氏対談(レバテックLAB)
脅威レポートPatchstack「State of WordPress Security in 2026」(原典)、同 解説(The Repository)、WordPress.org「Hardening WordPress」
脅威レポートSophos「Ransomware as a Serviceとは」、OWASP「API Security Top 10 2023」
統計W3Techs WordPress市場シェア(barn2集計、2026年)、日本語CMSのWordPressシェア(ITmediaオルタナティブブログ)、wmtips日本のCMSシェア(2026年10月7日集計)
事例JPCERT/CC・IPA WordPress REST API脆弱性注意喚起(2017年、ScanNetSecurity)、まちあい徳山「不正アクセスの原因と対応」(2026年)
事例「2026年 日系企業のサイバー被害事例一覧」(株式会社ガーディアン集計、2026年10月8日時点、158項目+前年以前の参考10項目。各社公表資料の一次URLを事例一覧に掲載)
当社株式会社ガーディアン プレスリリース(2025年8月7日)SCAN DOG・SCSC Dog提供開始、同(2026年4月21日)SCAN DOG正規版
当社SCAN DOG、SCAN DOG正規版、SCAN DOG簡易版・SCSC Dog、当社解説「3大侵入口を守る防衛戦略」、株式会社ガーディアン公式サイト

※統計の数値は各出典の公表時点のものです。当社調査・試算に基づく数値と、SCS評価制度に関する判断(「SCS評価制度への対応」)は、いずれも筆者(青山)の見解である旨を明記しています。事例は各社の公表資料に基づき、「漏えい確認」と「漏えいのおそれ」を区別して記載しています(全件の一次資料URLは事例一覧)。

この記事の執筆者

青山裕一(あおやま ひろかず)
株式会社ガーディアン 代表取締役社長/WEB業界歴26年・現在運用中76,325サイト(2026年10月時点)

1970年京都市生まれ。著書『儲かるホームページ9つの兵法』。「3D-CMF理論」発明者。ホームページの制作と運用の現場から、中小企業のサイバーセキュリティを発信しています。