悪意あるUSB(BadUSB等)とは?
悪意あるUSB(BadUSB等)とは、見た目は普通のUSBメモリやスマートフォンの充電器なのに、パソコンに接続すると自動的にマルウェアをインストールしたり、キーボードとして認識されて勝手にコマンドを実行したりする物理的な攻撃デバイスです。内部不正・現場のリスク(人と物理)の中でも特に検知が困難な脅威で、USBデバイスのファームウェア(内部プログラム)を改ざんすることで、ウイルス対策ソフトでも検知できない攻撃を実行します。数秒の接続で、パソコン全体を乗っ取ることが可能な恐ろしい攻撃手法です。
悪意あるUSB(BadUSB等)を簡単に言うと?
普通の鍵に見えて、実は合鍵を作る機能が隠されている「スパイ鍵」のようなものです。見た目は普通のUSBメモリですが、パソコンに挿すと「私はキーボードです」と嘘をついて、人間が高速でキーボードを打っているように見せかけて、悪意あるコマンドを実行します。例えば、1秒間に1000文字も打てる「見えないハッカー」が、あなたのパソコンを操作するようなものです。さらに怖いのは、このUSBは「充電ケーブル」や「マウス」「キーボード」など、日常的に使うものに偽装できることです。コーヒーを飲みに席を離れた数秒の間に、パソコンが完全に乗っ取られてしまうのです。
悪意あるUSB(BadUSB等)で発生する被害は?
悪意あるUSBにより、瞬時のシステム侵害、機密情報の窃取、企業ネットワーク全体への感染拡大が発生します。内部不正・現場のリスク(人と物理)として、物理的にアクセスできる環境では防御が極めて困難で、数秒の接続でパソコンの完全な制御を奪われます。特に、セキュリティが厳重な環境でも、「充電するだけ」という口実で接続を許可してしまうケースが多く、被害が深刻化する傾向があります。
悪意あるUSB(BadUSB等)で発生する直接的被害
- 瞬時の管理者権限奪取
BadUSBがキーボードとして動作し、PowerShellコマンドを高速実行して管理者権限を奪い、数秒でシステム全体を掌握される
- 機密データの自動窃取
USB接続と同時に重要ファイルを自動検索・コピーし、外部サーバーに送信されて、企業秘密や個人情報が大量流出する
- 永続的なバックドア設置
システムに潜伏型マルウェアを仕込まれ、攻撃者がいつでもリモートアクセスできる「裏口」を作られて、長期間監視される
悪意あるUSB(BadUSB等)で発生する間接的被害
- ネットワーク全体への感染拡大
感染したパソコンを起点に、社内ネットワーク全体にマルウェアが拡散し、全社的な業務停止に追い込まれる
- 物理セキュリティへの信頼崩壊
USBポート使用禁止などの極端な対策が必要となり、業務効率が大幅に低下して、従業員の不満が高まる
- サプライチェーン経由の攻撃
取引先から提供されたUSBデバイスが悪意あるものだった場合、信頼関係が崩壊し、取引停止や損害賠償請求に発展する
悪意あるUSB(BadUSB等)の対策方法
悪意あるUSBへの対策は、USBポートの物理的・論理的な制限、デバイス制御ソフトの導入、従業員への教育が基本となります。内部不正・現場のリスク(人と物理)から守るために、不明なUSBデバイスは絶対に接続しない、USBポートを物理的に塞ぐか無効化する、承認されたデバイスのみ使用可能にするホワイトリスト方式の採用が重要です。また、USBデバイスの貸し借りを禁止し、充電は専用の充電器のみを使用するルールを徹底することで、リスクを大幅に低減できます。
悪意あるUSB(BadUSB等)の対策を簡単に言うと?
家の鍵の管理に例えると、知らない人から「これ、便利な鍵だよ」と渡されても絶対に使わない、鍵穴(USBポート)には蓋をして簡単に使えないようにする、使う鍵は全て登録制にして、登録外の鍵は使えないようにすることです。また、スマートフォンの充電は、データ通信ができない「充電専用ケーブル」を使い、駅やカフェの充電器は使わず、必ず自分の充電器を使います。「USBメモリを貸して」と言われても断る勇気を持ち、どうしても必要な場合は、IT部門が管理する安全なUSBメモリだけを使います。物理的な対策と、「疑ってかかる文化」の両方が、悪意あるUSBから組織を守る鍵となります。
悪意あるUSB(BadUSB等)に関連した攻撃手法
内部不正・現場のリスク(人と物理)において、悪意あるUSB(BadUSB等)と密接に関連する3つの攻撃手法を解説します。
- 覗き見/端末盗難/USBドロップ
悪意あるUSBの典型的な配布方法がUSBドロップです。駐車場や会議室に「重要」と書かれたUSBメモリを落として、拾った人が興味本位で接続することを狙います。BadUSBとUSBドロップの組み合わせは、ソーシャルエンジニアリングと物理的攻撃を融合させた強力な手法です。
- なりすまし入室(テールゲーティング)
悪意あるUSBを仕込むために、攻撃者が物理的にオフィスに侵入します。テールゲーティングで内部に入り込んだ後、無人のデスクでBadUSBを数秒接続するだけで、目的を達成できます。物理的侵入と悪意あるUSBの組み合わせは、防御が極めて困難です。
- 内部不正(インサイダー脅威)
悪意ある内部者がBadUSBを使用するケースが増加しています。正規の従業員や委託業者が、データ窃取や破壊活動のためにBadUSBを持ち込み、通常のセキュリティ対策では検知できない攻撃を実行します。内部の人間によるBadUSB攻撃は、最も防ぎにくい脅威の一つです。
悪意あるUSB(BadUSB等)のよくある質問
いいえ、充電ケーブルに見せかけたBadUSBも存在します。公共の充電ステーションは避け、モバイルバッテリーや信頼できる充電器のみを使用してください。データ通信を遮断する「充電専用ケーブル」の使用も効果的です。
多くの場合、検知できません。BadUSBはハードウェアレベルで動作し、正規のキーボードやマウスとして認識されるため、通常のウイルス対策ソフトでは防げません。
完全に安全な確認方法はありません。重要なシステムでは使用せず、可能であれば隔離された専用の検査用PCで確認するか、使用を避けることが最善です。
正規の調達ルートで購入し、IT部門が管理しているものは比較的安全です。ただし、紛失して戻ってきたものや、他人に貸した後のものは、改ざんされている可能性があるため注意が必要です。
はい、スマートフォンもBadUSBとして機能する可能性があります。特に、不正なアプリがインストールされた端末や、脱獄・root化された端末は高リスクです。必要最小限の接続に留めることを推奨します。
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