急増する「Windowsサポート」詐欺の実態
サポート詐欺は、2016年頃に出現して以来、少しずつ形を変えながら現在も続いている詐欺手口です。かつては特定のサイトでしか見られなかった偽警告が、今では誰もが訪れる一般的なウェブサイトにまで広がり、被害が急速に拡大しています。
900%増加した偽警告の手口
2024年のサポート詐欺被害の増加率は、まさに異常事態と言えるレベルに達しています。各機関の調査結果が示す数字は、この脅威の深刻さを物語っています。
被害の急増を示すデータ:
2024年の増加率
- 前年比2.6倍(260%増)の詐欺サイトアクセス
- 2023年だけで年間900万件以上のアクセス数
- IPAへの相談件数が過去最高を記録(2023年度)
- 10大脅威で「犯罪のビジネス化」が2年連続ランクイン
金銭被害の実態
- 100万円を超える高額被害が複数発生
- 金銭被害者の約60%がGoogle広告経由で誘導
- 70歳以上の被害が大幅に増加(国民生活センター調査)
手口の巧妙化
- 2023年7月〜:時世の話題を使った誘導広告
- 2023年12月〜:サイトの構成要素に偽装したボタン
- 2024年2月〜:通常の広告と見分けがつかないデザイン
- 2024年6月〜:実際にPCを操作不能にする新手口
この900%増加という数字は、単純計算で10倍近い増加を意味しています。特に注目すべきは、被害者の多くが「まさか自分が騙されるとは思わなかった」と証言していることです。
- ブラウザ全画面表示での脅迫
偽警告の最も特徴的な手口は、ブラウザを全画面表示にして、あたかもWindowsシステムからの警告のように見せかけることです。
全画面表示の特徴:
1. 画面全体を覆う警告
- F11キーで全画面モードに自動切り替え
- 画面の端が見えなくなり、ブラウザであることが分からない
- タスクバーが隠れて他の操作ができないように見える
2. 操作不能を装う演出
- マウスカーソルを非表示にする
- 右クリックを無効化
- Alt+F4などのショートカットキーをブロック
- 「×」ボタンを隠す、または無効化
3. システム警告の偽装
- Windows Defenderのロゴを不正使用
- 「Windows セキュリティセンター」の名称を騙る
- システムエラーのような画面デザイン
- 青い画面(ブルースクリーン)を模倣
4. 心理的圧迫の演出
- 赤色の警告バー
- 点滅するエラーメッセージ
- 「重大なエラー」「深刻な脅威」などの強調表現
2024年の新手口:実際の操作不能化
2024年6月以降、より悪質な手口が確認されています:
- 正規ツール「Lock My PC」を悪用
- キーボードやマウスを完全に無効化
- 再起動しても状況が変わらない
- ランサムウェアに近い手法- 偽の電話番号への誘導パターン
電話番号への誘導は、サポート詐欺の核心部分です。詐欺グループは様々な心理的テクニックを駆使して、被害者に電話をかけさせようとします。
典型的な電話番号表示パターン:
1. 国際電話番号(010で始まる)
- 例:010-72*-00*
- 海外のコールセンターに接続
- 高額な通話料金が発生
2. フリーダイヤル風の番号
- 0120-*-(実際は有料)
- 050--(IP電話)
- 0800-*-(フリーダイヤル偽装)
3. 緊急性を演出する文言
- 「5分以内に電話しないとデータが削除されます」
- 「今すぐ連絡しないと被害が拡大します」
- 「24時間365日対応」(実際は詐欺グループ)
電話誘導の心理的トリック:
- カウントダウンタイマー(残り4分59秒...)
- 「無料サポート」の強調
- 「Microsoft認定技術者が対応」という虚偽
- 「他の方法では解決できません」という脅し- 音声や警告音を使った心理的圧迫
音声による警告は、被害者の判断力を奪う効果的な手段として使用されています。
音声警告の種類と特徴:
1. 機械音声による警告
- 英語の自動音声(権威性を演出)
- 日本語の合成音声(不自然な発音)
- 「Your computer has been infected」の繰り返し
- 緊急性を強調する早口での説明
2. 警告音のパターン
- ビープ音の連続
- サイレンのような音
- エラー音の繰り返し
- 音量が徐々に大きくなる
3. 心理的効果
- パニック状態の誘発
- 冷静な判断力の低下
- 「早く止めなければ」という焦り
- 周囲への迷惑を気にする心理
音声警告への対処法:
1. 音量をミュート(消音)にする
2. スピーカーの電源を切る
3. ヘッドフォンを外す
4. 落ち着いて対処することが重要
実際の詐欺例
実際の詐欺画面を知ることで、遭遇した際に冷静に対処できるようになります。以下、よく使われる詐欺のパターンを詳しく解説します。
- 「Trojan.Win32.Generic」などの偽診断結果
詐欺グループは、実在するウイルス名や専門用語を使用して、信憑性を演出します。
よく使われる偽のウイルス名:
1. Trojan系の偽警告
- Trojan.Win32.Generic(最も一般的)
- Trojan:Win32/Wacatac.B!ml
- Trojan.JS.Generic
- Trojan.Downloader.Generic
- Trojan:Win64/Reveton
2. その他のマルウェア名
- Adware.Generic.1234567
- Spyware.Keylogger.ABC
- Ransomware.Locky.A
- Backdoor.Win32.Agent
3. システムエラー風の表示
- Error Code: 0x80072EE7
- System32 Error: Critical Process Died
- Registry Error: 0xC0000005
- Memory Error: 0x00000050
偽診断結果の特徴:
- 「検出された脅威:13個」など具体的な数字
- 「感染度:重大」「リスクレベル:高」などの表示
- プログレスバーで「スキャン中」を演出
- 「削除には専門家の助けが必要」という誘導
本物との違い:
- 本物のWindows Defenderは詳細な技術情報を表示しない
- エラーコードだけで電話を促すことはない
- 複数の脅威を一度に大量検出することは稀- カウントダウンタイマーの心理トリック
カウントダウンタイマーは、被害者に考える時間を与えず、衝動的な行動を促す効果的な手法です。
カウントダウンの種類:
1. 時間制限型
- 「あと5分以内に対処してください」
- 「3:59...3:58...」とカウントダウン
- 赤色で点滅する数字
- ゼロになると「手遅れ」と表示
2. 進行状況型
- 「ウイルスが拡散中:45%完了」
- 「データ削除まで:70%進行」
- プログレスバーが徐々に進む
- 100%になると「完全に感染」と脅す
3. 段階的脅威型
- 「第1段階:検出」→「第2段階:拡散中」
- 時間経過で状況が悪化する演出
- 「今なら間に合います」というメッセージ
心理的効果と対策:
- 焦りによる判断力の低下を狙う
- 「今すぐ」という切迫感の演出
- 実際には何も起きていない(単なる表示)
- 落ち着いて画面を閉じることが重要- Microsoft公式ロゴの悪用パターン
詐欺グループは、Microsoftの信頼性を悪用して、被害者を騙そうとします。
ロゴ悪用の手口:
1. 公式ロゴの不正使用
- Windows のロゴマーク
- Microsoft の企業ロゴ
- Windows Defender の盾アイコン
- 「Microsoft Partner」の偽バッジ
2. 偽の認証表示
- 「Microsoft認定サポート」
- 「Windows公式サポートセンター」
- 「Microsoft Gold Partner」
- 偽の認証番号やID
3. URLの偽装
- microsoft-support-jp.com(偽)
- windows-security-alert.net(偽)
- ms-defender-support.org(偽)
- 正規URLに似せたドメイン
見分けるポイント:
- Microsoftは突然の警告画面を表示しない
- 公式サポートは電話番号を画面表示しない
- URLが公式の microsoft.com ではない
- 日本語表記に不自然な点がある
偽警告と本物の見分け方チェックリスト
偽警告と本物の警告を確実に見分けることが、被害防止の第一歩です。以下のチェックリストを活用して、冷静に判断しましょう。
偽警告の特徴10選
偽警告には共通する特徴があります。以下の10項目のうち、1つでも該当すれば偽警告の可能性が高いです。
- 1. ブラウザ内でのみ表示される
偽警告の表示場所:
- Webブラウザのウィンドウ内
- Chrome、Edge、Firefox、Safariなどのブラウザ上
- タブを閉じれば消える(ように見える)
- URLアドレスバーが存在する(隠されている場合も)
確認方法:
- F11キーで全画面表示を解除してみる
- Alt+Tabでウィンドウを切り替えてみる
- タスクバーが見えるか確認
- 他のアプリケーションが動作するか確認- 2. 電話番号が表示される(0120、050番号など)
詐欺で使われる電話番号:
- 0120-*-(無料に見せかけた番号)
- 050--(IP電話、追跡困難)
- 03--(東京の番号を偽装)
- 010-*-(国際電話、高額請求)
本物は電話番号を表示しない理由:
- Microsoftはシステム警告に電話番号を含めない
- 正規のサポートは別ルートで提供
- セキュリティ上、電話誘導はしない- 3. 日本語が不自然
不自然な日本語の例:
- 「あなたのWindowsは感染されています」(受動態の誤用)
- 「直ぐに連絡して下さい」(ひらがなと漢字の不自然な混在)
- 「キャンセル」を「Canbel」と誤記
- 「ウィルス」と「ウイルス」の表記揺れ
- 敬語の使い方が不適切
翻訳ソフトの痕跡:
- 直訳的な表現
- 文法的に正しくない文章
- カタカナ表記の不統一
- 専門用語の誤訳- 4. 「今すぐ」「緊急」などの煽り文句
典型的な煽り文句:
- 「今すぐ対処しないと取り返しがつきません」
- 「緊急:5分以内に電話してください」
- 「重大な脅威が検出されました」
- 「あなたの個人情報が漏洩する危険があります」
- 「銀行口座が危険にさらされています」
心理的圧迫の手法:
- 赤色や黄色の警告色を多用
- 大きな文字で脅威を強調
- 点滅や動きで注意を引く
- 複数の警告を同時表示- 5. システムの損傷度を具体的な数字で表示
怪しい数字表示:
- 「システム損傷度:66.7%」
- 「感染ファイル:1,234個」
- 「脅威レベル:89%」
- 「28.1%のファイルが破損」
- 「あと3分12秒でデータ消去」
なぜ具体的な数字が怪しいか:
- 実際のスキャンをしていない
- ランダムに生成された数字
- 信憑性を演出するための手法
- 本物は曖昧な数字を表示しない- 6. 音声ガイダンスや警告音
偽警告の音声パターン:
- 英語の機械音声
- 不自然な日本語音声
- ループする警告メッセージ
- 徐々に大きくなる警告音
本物との違い:
- Windows標準の警告は音声ガイダンスなし
- システム音は短い効果音のみ
- 繰り返し音声は使用しない- 7. 画面を閉じることができない(ように見える)
操作妨害の手口:
- 「×」ボタンが効かない
- 右クリックメニューが出ない
- キーボードショートカットが無効
- 別の警告が次々表示される
実際は閉じることが可能:
- Alt+F4で強制終了
- Ctrl+Alt+Deleteからタスク終了
- ESCキー長押しで解除- 8. 複数のポップアップが連続表示
しつこいポップアップの特徴:
- 閉じても次が表示される
- 複数のウィンドウが同時に開く
- 画面全体を覆い尽くす
- 操作を妨害する位置に表示
対処法:
- ポップアップブロッカーを有効化
- JavaScriptを一時的に無効化
- ブラウザごと終了する- 9. 個人情報の入力を要求
要求される情報:
- 氏名、住所、電話番号
- クレジットカード番号
- 銀行口座情報
- パスワード
- メールアドレス
絶対に入力してはいけない理由:
- 正規の警告は個人情報を要求しない
- 入力した情報は犯罪に使用される
- 二次被害の原因となる- 10. 有料ソフトの購入を促す
購入を促される内容:
- 「ウイルス除去ソフト」
- 「システム修復ツール」
- 「年間サポート契約」
- 「リモートサポートサービス」
支払い方法の特徴:
- コンビニでギフトカード購入
- 仮想通貨での支払い
- 海外送金
- 前払いのみ
本物のWindows警告の特徴
本物のWindows警告を正しく理解することで、偽物を見抜きやすくなります。
- Windowsの通知領域から表示
本物の警告の表示位置:
1. 画面右下の通知領域(システムトレイ)
- タスクバーの時計の近く
- Windows セキュリティの盾アイコンから
- アクションセンターに記録される
2. 通知の特徴
- 小さなポップアップ通知
- 数秒で自動的に消える
- クリックするとセキュリティセンターが開く
- 音は短い通知音のみ
3. Windows セキュリティアプリ
- 設定→プライバシーとセキュリティから開ける
- スタートメニューから直接起動可能
- 白と緑のシンプルなデザイン- 電話番号は絶対に表示されない
Microsoftが電話番号を表示しない理由:
1. セキュリティポリシー
- なりすまし防止のため
- 詐欺との差別化
- ユーザー保護の観点
2. 正規のサポートルート
- Microsoft公式サイトから
- Microsoftアカウントにログイン後
- 購入した製品のサポート窓口
3. 表示される情報
- 脅威の名前と種類
- 推奨される操作
- 詳細情報へのリンク(電話番号なし)- Microsoftは電話サポートを求めない
Microsoftのサポート方針:
1. プッシュ型サポートはしない
- こちらから電話を促すことはない
- 突然のサポート提供はない
- ユーザーが能動的に問い合わせる
2. 公式サポートの利用方法
- Microsoft.comから問い合わせ
- チャットサポート
- コミュニティフォーラム
- 有償サポートは事前契約
3. 警告時の対応
- Windows Defenderが自動対処
- ユーザーの操作は最小限
- 電話は不要- 設定アプリから確認可能
正規の警告の確認方法:
1. Windows 11の場合
```
設定 → プライバシーとセキュリティ → Windows セキュリティ
```
2. Windows 10の場合
```
設定 → 更新とセキュリティ → Windows セキュリティ
```
3. 確認できる内容
- 保護の状態(緑のチェックマーク)
- 最近のスキャン結果
- 検出された脅威の履歴
- 必要な操作の有無
4. 偽警告との違い
- ブラウザではなくアプリで表示
- 一貫したデザインとレイアウト
- 詳細な情報と履歴が確認可能
偽警告が表示された時の正しい対処法
偽警告に遭遇した際、パニックにならず冷静に対処することが重要です。以下の手順に従って、安全に偽警告を除去しましょう。
即座に行うべきこと
偽警告が表示されたら、まず以下の3つの基本原則を守ってください。
- ブラウザを強制終了する方法(Alt+F4)
基本的な終了方法:
1. Alt+F4キーの使用
- キーボードのAltキーを押しながらF4キーを押す
- 現在アクティブなウィンドウが閉じる
- 効かない場合は次の方法へ
2. ESCキーの長押し(3秒以上)
- 全画面表示が解除される
- 画面右上の「×」ボタンが表示される
- 「×」ボタンで閉じる
3. ブラウザ固有の終了方法
Chrome/Edgeの場合:
- Ctrl+Shift+W(すべてのタブを閉じる)
- Ctrl+W(現在のタブを閉じる)を連打
- Shift+ESCでタスクマネージャーを開いて終了
Firefoxの場合:
- Ctrl+Shift+Q(ブラウザを終了)
- Ctrl+Q(Mac: Cmd+Q)
Safariの場合(Mac):
- Cmd+Q(アプリケーション終了)
- Cmd+W(ウィンドウを閉じる)- タスクマネージャーからの終了手順
Alt+F4が効かない場合の確実な方法です。
Windows 11/10でのタスクマネージャー起動:
1. Ctrl+Alt+Delete を押す
- セキュリティオプション画面が表示
- 「タスクマネージャー」を選択
2. Ctrl+Shift+Esc で直接起動
- タスクマネージャーが即座に開く
- より素早い対処が可能
3. タスクバーから起動
- タスクバーを右クリック
- 「タスクマネージャー」を選択
ブラウザの終了手順:
1. プロセスタブを選択
- 実行中のアプリケーション一覧
- CPU使用率でソート
2. ブラウザを選択
- Google Chrome
- Microsoft Edge
- Mozilla Firefox
- 該当するブラウザを見つける
3. タスクの終了
- 選択して「タスクの終了」ボタン
- または右クリック→「タスクの終了」
- すべてのタブが閉じられる
詳細な終了(プロセスツリーの終了):
- 詳細タブから該当プロセスを右クリック
- 「プロセスツリーの終了」を選択
- 関連プロセスもすべて終了- 絶対にクリックしない・電話しない
してはいけないこと:
1. 電話をかけない
- 表示された番号には絶対に電話しない
- 「無料」と書かれていても信用しない
- 国際電話(010)は特に危険
2. クリックしない
- 「今すぐ修復」ボタンを押さない
- 「詳細を見る」リンクをクリックしない
- ポップアップ内のどこもクリックしない
3. 情報を入力しない
- 個人情報を入力しない
- パスワードを入力しない
- クレジットカード情報を入力しない
4. ダウンロードしない
- 「修復ツール」をダウンロードしない
- リモートアクセスソフトをインストールしない
- 不審なファイルを実行しない
なぜ危険なのか:
- 電話をかけると詐欺グループにつながる
- クリックすると悪意あるサイトへ誘導
- 情報入力は個人情報の窃取につながる
- ダウンロードしたソフトは本物のマルウェア
偽警告を消す具体的手順
ブラウザごとに偽警告を確実に消去する方法を説明します。
- hrome/Edge/Firefox別の対処法
Google Chromeの場合:
1. 強制終了と再起動
```
1. Ctrl+Shift+Esc でタスクマネージャー
2. Chrome をすべて終了
3. Chrome を再起動
4. 「ページを復元しますか?」→「いいえ」
```
2. 閲覧履歴の削除
```
設定(⋮)→ その他のツール → 閲覧履歴を消去
- 期間:全期間
- Cookie と他のサイトデータ:チェック
- キャッシュされた画像とファイル:チェック
```
3. 拡張機能の確認
```
設定 → 拡張機能
不審な拡張機能を削除
```
Microsoft Edgeの場合:
1. InPrivateウィンドウでの確認
```
Ctrl+Shift+N で InPrivateウィンドウ
問題が再現しないか確認
```
2. Edgeの設定リセット
```
設定(...)→ 設定 → 設定のリセット
「設定を復元して既定値に戻します」
```
3. SmartScreenの確認
```
設定 → プライバシー、検索、サービス
Microsoft Defender SmartScreen:オン
```
Mozilla Firefoxの場合:
1. トラブルシューティングモード
```
ヘルプ → トラブルシューティングモード
アドオンなしで起動して確認
```
2. Firefoxのリフレッシュ
```
ヘルプ → その他のトラブルシューティング情報
「Firefox をリフレッシュ」
```
3. セキュリティ設定の確認
```
設定 → プライバシーとセキュリティ
詐欺サイトの警告:オン
```- ポップアップブロックの設定強化
今後の被害を防ぐため、ポップアップブロックを強化しましょう。
Chrome/Edgeの設定:
1. 基本設定
```
設定 → プライバシーとセキュリティ
→ サイトの設定 → ポップアップとリダイレクト
→ ブロック(推奨)
```
2. 詳細設定
- 「サイトがポップアップを送信したり...」:ブロック
- 例外サイト:信頼できるサイトのみ追加
- 通知の許可:最小限に
Firefoxの設定:
1. ポップアップブロック
```
設定 → プライバシーとセキュリティ
→ 許可設定 → ポップアップウィンドウをブロックする
```
2. 追加の保護
- 強化型トラッキング防止:厳格
- 危険な詐欺的なコンテンツをブロック:オン
JavaScript の制御(上級者向け):
- 一時的にJavaScriptを無効化
- サイトごとに個別設定
- 必要な時のみ有効化- 悪質なサイトの報告方法
詐欺サイトを発見したら、被害拡大防止のため報告しましょう。
報告先一覧:
1. Google Safe Browsing
- URL: safebrowsing.google.com
- 「フィッシングを報告」から送信
- Chrome/Edgeで自動ブロック対象に
2. Microsoft SmartScreen
- URL: microsoft.com/edge/report-unsafe
- Edgeブラウザから直接報告可能
- Windows全体で保護強化
3. フィッシング対策協議会
- URL: antiphishing.jp
- 日本国内の詐欺サイト情報集約
- 迅速な対応が期待できる
4. 警察庁サイバー犯罪対策
- URL: npa.go.jp/cyber/
- 犯罪として立件の可能性
- 被害届の提出も検討
報告時に必要な情報:
- 詐欺サイトのURL(完全なアドレス)
- スクリーンショット(証拠保全)
- アクセスした日時
- 表示された電話番号
- 被害の有無
サポート詐欺の被害に遭った場合の対応
万が一、サポート詐欺の被害に遭ってしまった場合でも、適切な対応により被害を最小限に抑えることができます。落ち着いて、以下の手順で対処してください。
金銭被害への対処
金銭的な被害が発生した場合は、迅速な対応が被害の拡大を防ぎます。
- クレジットカード会社への連絡
即座に行うべきこと:
1. カード会社への連絡(24時間対応)
- カード裏面の緊急連絡先に電話
- 「詐欺被害に遭った」と明確に伝える
- カードの即時停止を依頼
2. 必要な情報の準備
- カード番号(下4桁でOK)
- 被害発生日時
- 不正利用された金額
- 詐欺業者の名称(分かる範囲で)
3. カード会社での手続き
- 不正利用の調査開始
- チャージバック(返金)申請
- 新しいカードの再発行
- 不正利用補償の申請
主要カード会社の緊急連絡先:
- VISA:各発行会社の緊急ダイヤル
- Mastercard:各発行会社の緊急ダイヤル
- JCB:0120-794-082
- American Express:0120-020-120
ギフトカード・プリペイドカードの場合:
- 購入店舗に連絡(レシート必須)
- カード番号を控えておく
- 使用済みの場合は回収困難
- 警察への被害届が必要- 警察(サイバー犯罪相談窓口)への通報
警察への通報手順:
1. サイバー犯罪相談窓口
- 各都道府県警察に設置
- 専門知識を持つ担当者が対応
- オンライン相談も可能
2. 警視庁サイバーセキュリティ対策本部
- 電話:03-3581-4321(代表)
- 重大事案の場合は直接相談
3. 被害届の提出
- 最寄りの警察署でも可能
- 必要書類を持参
- 被害の詳細を説明
準備すべき証拠:
- 詐欺画面のスクリーンショット
- 通話録音(あれば)
- 支払い証明(振込明細、カード利用明細)
- メールやSMSの内容
- 相手の電話番号、口座情報
被害届提出のメリット:
- 捜査による犯人検挙の可能性
- 被害回復の公的記録
- 同様被害の防止
- 保険申請時の証明書- 消費者センターへの相談
消費者ホットライン:188(いやや)
1. 相談内容
- 詐欺被害の詳細
- 返金交渉の支援
- 法的アドバイス
- 他の被害者情報
2. 相談時のポイント
- 時系列で経緯を説明
- 証拠資料を準備
- 相手の連絡先を伝える
- 今後の対応を相談
3. 消費者センターができること
- 業者との交渉仲介
- 法的手続きの案内
- 被害情報の集約
- 注意喚起の発信
国民生活センターADR(裁判外紛争解決手続)
- 話し合いでの解決を支援
- 費用は無料〜低額
- 専門家による仲裁
リモートアクセスを許可した場合
リモートアクセスを許可してしまった場合は、システムの安全性が脅かされている可能性があります。
- システムの復元ポイント活用
Windows 11/10でのシステム復元:
1. 復元ポイントの確認
```
コントロールパネル → システムとセキュリティ
→ システム → システムの保護
→ システムの復元
```
2. 復元の実行
- リモートアクセス前の日付を選択
- 「影響を受けるプログラムの検出」で確認
- 「完了」で復元開始
- 自動的に再起動
3. 復元後の確認
- 不審なプログラムが削除されたか
- システムの動作確認
- セキュリティスキャンの実行
復元できない場合:
- Windows の初期化を検討
- 重要データのバックアップ必須
- クリーンインストールが最も安全- パスワードの全変更
リモートアクセスされた場合、すべてのパスワードが漏洩した可能性があります。
変更すべきパスワードの優先順位:
1. 最優先で変更
- オンラインバンキング
- クレジットカード会社のマイページ
- 証券口座
- 仮想通貨取引所
2. 次に変更
- メールアカウント
- Microsoft/Apple/Google アカウント
- SNSアカウント
- ショッピングサイト
3. その他のサービス
- 動画配信サービス
- ゲームアカウント
- 各種会員サイト
パスワード変更のポイント:
- 別のデバイスから変更する
- 二要素認証を必ず有効化
- パスワードマネージャーの利用
- 使い回しは絶対にしない- ランサムウェア感染の確認方法
リモートアクセスによってランサムウェアが仕込まれる可能性があります。
感染の兆候:
1. ファイルの変化
- 拡張子が変更されている(.locked、.encrypted など)
- ファイルが開けない
- ファイル名が文字化け
- 新しいテキストファイル(身代金要求)
2. システムの変化
- デスクトップ壁紙の変更
- 起動時のメッセージ表示
- ファイルアイコンの変化
- システムの動作が極端に遅い
確認と対処:
1. 即座の対応
- ネットワークから切断
- 電源は切らない(証拠保全)
- 外付けドライブを取り外す
2. データの確認
- 重要ファイルの状態確認
- バックアップの有無確認
- 暗号化の範囲特定
3. 専門家への相談
- データ復旧業者
- セキュリティ専門企業
- 身代金は絶対に払わない
予防的措置:
- 定期的なバックアップ(3-2-1ルール)
- ランサムウェア対策機能付きセキュリティソフト
- Windows のコントロールされたフォルダーアクセス有効化
今後の詐欺を防ぐための設定と対策
サポート詐欺の被害を未然に防ぐため、セキュリティ設定の強化と家族を守るための対策を実施しましょう。
ブラウザのセキュリティ強化
ブラウザの設定を適切に行うことで、多くの詐欺サイトをブロックできます。
- SmartScreenフィルターの有効化
Microsoft Edge の SmartScreen:
1. 有効化の手順
```
設定(...)→ 設定 → プライバシー、検索、サービス
→ セキュリティ → Microsoft Defender SmartScreen
→ オンにする
```
2. 詳細設定
- 「悪意のあるサイトやダウンロードから保護」:オン
- 「望ましくない可能性のあるアプリをブロック」:オン
- 「Microsoft Edge の拡張機能の SmartScreen」:オン
3. 動作の仕組み
- URLをMicrosoftのデータベースと照合
- 既知の詐欺サイトをブロック
- 不審なダウンロードを警告
- リアルタイムで更新
Google Chrome のセーフブラウジング:
1. 設定方法
```
設定 → プライバシーとセキュリティ
→ セキュリティ → セーフブラウジング
→ 保護強化機能
```
2. 保護レベル
- 保護強化機能(推奨)
- 標準保護機能
- 保護なし(非推奨)
3. 追加機能
- パスワードの漏洩チェック
- 危険な拡張機能の警告
- ダウンロードの安全性確認- ポップアップブロッカーの詳細設定
包括的なブロック設定:
1. 基本設定(全ブラウザ共通)
- ポップアップとリダイレクト:ブロック
- 広告:ブロック(可能な場合)
- 自動再生:ブロックまたは確認
2. 例外設定の管理
- 信頼できるサイトのみ許可
- 定期的に許可リストを見直し
- 不要な例外は削除
3. 拡張機能での強化
- uBlock Origin(広告ブロッカー)
- Adblock Plus
- Privacy Badger
サイト別権限の管理:
```
設定 → サイトの設定 → すべてのサイト
→ 不審なサイトの権限をすべて削除
```- 信頼できるサイトのみ許可する方法
ホワイトリスト方式の導入:
1. 企業環境での設定
- グループポリシーで制御
- 業務に必要なサイトのみ許可
- それ以外は自動ブロック
2. 家庭での設定
- ファミリーセーフティの活用
- 子供用アカウントで制限
- 許可サイトリストの作成
3. ブックマークの活用
- 重要サイトはブックマーク登録
- 検索結果からのアクセスを避ける
- URLを直接確認する習慣
DNSフィルタリングの活用:
- OpenDNS、Cloudflare for Families
- 悪質サイトをDNSレベルでブロック
- ルーター設定で家庭全体を保護
高齢者・家族を守るための対策
高齢者は特にサポート詐欺のターゲットになりやすいため、家族全体での対策が重要です。
- ファミリーセーフティの活用
Windows ファミリーセーフティ:
1. 家族グループの作成
```
設定 → アカウント → 家族
→ 「家族のメンバーを追加」
→ メールアドレスで招待
```
2. 保護者による制御
- Web閲覧の制限
- アプリの使用制限
- 画面時間の管理
- 購入の承認制
3. 高齢者向け設定
- 不適切なサイトのブロック
- ダウンロードの制限
- 活動レポートの確認
- リモートでの設定変更
Microsoft 365 Family の活用:
- 最大6人まで保護
- 高度なセキュリティ機能
- OneDrive でのバックアップ
- 家族全体のデバイス管理- リモートデスクトップの無効化
不要なリモート機能は無効化して、セキュリティリスクを減らしましょう。
Windows 11/10での無効化:
1. リモートデスクトップの無効化
```
設定 → システム → リモートデスクトップ
→ 「リモートデスクトップを有効にする」をオフ
```
2. リモートアシスタンスの無効化
```
コントロールパネル → システムとセキュリティ
→ システム → リモートの設定
→ 「このコンピューターへのリモートアシスタンス接続を許可する」
→ チェックを外す
```
3. 関連サービスの停止
- Remote Desktop Services
- Remote Registry
- Windows Remote Management
安全なリモートサポートの代替案:
- 家族がいる時だけ有効化
- TeamViewerの一時的使用
- クイックアシストの活用(Windows標準)
- 必ず信頼できる相手のみ- サプライチェーン攻撃への警戒
サプライチェーン攻撃は企業だけでなく、個人にも影響を与える可能性があります。
個人でできる対策:
1. ソフトウェアの管理
- 公式サイトからのみダウンロード
- 自動更新の有効化
- 不要なソフトの削除
- 定期的な棚卸し
2. アップデートの確認
- Windows Update の定期実行
- ブラウザの自動更新
- セキュリティソフトの更新
- 緊急パッチの即座適用
3. サプライチェーン攻撃の兆候
- 正規ソフトの異常な動作
- 予期しないアップデート
- デジタル署名の確認
- ハッシュ値の照合
家族への教育:
1. 基本的なセキュリティ意識
- 「無料」「緊急」に騙されない
- 電話番号が表示されたら詐欺を疑う
- 個人情報を安易に入力しない
- 困ったら家族に相談
2. 定期的な確認
- 月1回のセキュリティチェック
- 不審な請求がないか確認
- パスワードの定期変更
- バックアップの実施
3. 緊急時の連絡先
- 家族の連絡先を見やすい場所に
- 警察(110)、消費者ホットライン(188)
- カード会社の緊急連絡先
- 正規のサポート窓口
よくある質問
偽警告画面が通常の方法で消えない場合でも、慌てる必要はありません。以下の方法を順番に試してください。
段階的な対処法:
1. 第1段階:キーボード操作
- ESCキーを3秒以上長押し
- Alt+F4 を数回押す
- Ctrl+W を連打
2. 第2段階:タスクマネージャー
- Ctrl+Shift+Esc で起動
- ブラウザプロセスを終了
- プロセスツリーごと終了
3. 第3段階:強制再起動
- Ctrl+Alt+Delete → 電源ボタン
- 物理的な電源ボタン長押し(最終手段)
4. 第4段階:セーフモードで起動
- 起動時にF8またはShift+再起動
- セーフモードでブラウザデータ削除
- マルウェアスキャン実行
2024年の新手口(画面ロック)の場合:
- 通常の方法では解除不可能
- IPAの安心相談窓口に連絡(03-5978-7509)
- 専門的な対処が必要
予防措置:
- ポップアップブロッカーを最大限に
- JavaScriptの選択的無効化
- 定期的なブラウザリセット
電話をかけてしまっても、支払い前であれば被害を防げます。
即座に行うべきこと:
1. 連絡の完全遮断
- 着信拒否設定
- メールブロック
- SMSの拒否設定
- 折り返し電話をしない
2. 脅しに屈しない
- 「訴える」→法的根拠なし
- 「ウイルスが拡散」→嘘
- 「個人情報を公開」→犯罪行為
- 「警察に通報した」→むしろ歓迎
3. 情報漏洩の確認
- 伝えた情報をリスト化
- パスワード変更の実施
- クレジットカード番号を伝えた場合はカード会社に連絡
4. 相談窓口の利用
- 消費者ホットライン188
- 警察相談専用電話 #9110
- 法テラス(法的相談)
リモートアクセスを許可した場合:
- 即座にPCをネットワークから切断
- システムの復元を実施
- パスワードをすべて変更
- セキュリティソフトでフルスキャン
高齢者への対策は、技術的な対策と心理的なサポートの両面が必要です。
技術的な対策:
1. アクセス制限の設定
- ファミリーセーフティで管理
- ホワイトリスト方式の導入
- 広告ブロッカーの導入
- セキュリティソフトの強化
2. シンプルな環境構築
- 必要最小限のアプリのみ
- デスクトップの整理
- ブックマークの活用
- 大きなアイコンと文字
3. 定期的なメンテナンス
- 月1回の訪問チェック
- リモートサポートツール導入
- 自動更新の設定
- バックアップの自動化
心理的なサポート:
1. 教育とコミュニケーション
- 詐欺の手口を具体的に説明
- 「恥ずかしいことではない」と伝える
- 相談しやすい環境作り
- 成功体験を褒める
2. ルール作り
- 「電話番号が出たら家族に相談」
- 「お金の話が出たら一旦停止」
- 「急がせる相手は詐欺」
- メモを見やすい場所に貼る
3. 見守りサービスの活用
- 見守りアプリの導入
- 活動ログの確認
- 異常検知の通知設定
- 定期的な安否確認
認知機能低下への対応:
- 成年後見制度の検討
- 金銭管理の家族移行
- デビットカードへの切り替え
- 利用限度額の設定
まとめ
「Windowsサポート:トロイの木馬が検出されました」という警告は、99.9%の確率で詐欺です。2024年に前年比2.6倍という驚異的な増加を見せたサポート詐欺は、もはや誰もが遭遇する可能性がある身近な脅威となっています。年間900万件以上のアクセス、100万円を超える高額被害、そして実際にPCを操作不能にする新手口の登場など、その手口は年々巧妙化しています。
しかし、偽警告には明確な特徴があります。ブラウザ内での表示、電話番号の記載、不自然な日本語、「今すぐ」という煽り文句、これらが一つでも当てはまれば偽物です。本物のWindows警告は画面右下の通知領域に小さく表示され、決して電話番号を表示することはありません。
偽警告が表示されたら、慌てずにAlt+F4でブラウザを閉じ、それでも消えない場合はタスクマネージャーから強制終了してください。絶対に電話をかけたり、クリックしたり、個人情報を入力してはいけません。
万が一被害に遭った場合は、クレジットカード会社への連絡、警察への通報、消費者センターへの相談を速やかに行いましょう。リモートアクセスを許可した場合は、すべてのパスワードを変更し、システムの復元を実施してください。
予防策としては、SmartScreenフィルターの有効化、ポップアップブロッカーの強化、そして何より家族での情報共有が重要です。特に高齢者は狙われやすいため、ファミリーセーフティの活用や定期的な見守りが欠かせません。
サポート詐欺は、私たちの不安や焦りにつけ込む卑劣な犯罪です。しかし、正しい知識と冷静な対処法を身につけることで、確実に防ぐことができます。「電話番号が表示されたら詐欺」この簡単なルールを家族全員で共有し、サイバー攻撃から大切な人と財産を守りましょう。
困ったときは、IPA安心相談窓口(03-5978-7509)、消費者ホットライン(188)、警察相談専用電話(#9110)など、信頼できる相談窓口を活用してください。一人で悩まず、周りに相談することが、最も効果的なセキュリティ対策なのです。
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