パソコンのトロイの木馬感染を疑うべき10の症状
トロイの木馬に感染したパソコンは、一見すると正常に動作しているように見えることがあります。トロイの木馬は「正しいプログラムを装い、感染者に気づかれないよう秘密裏に活動する」という特徴があり、単体でなるべく長期間、気づかれず居座り続けることが目的です。しかし、注意深く観察すれば、いくつかの異常な症状を発見できることがあります。
動作の異常(パフォーマンス低下の具体例)
パソコンの動作に関する異常は、トロイの木馬感染の最も分かりやすいサインの一つです。以下のような症状が複数見られる場合は、感染の可能性を疑う必要があります。
- CPU使用率の異常上昇の確認方法(タスクマネージャーの見方)
トロイの木馬によってバックグラウンドで悪意ある処理が行われていると、気付かないうちにCPUの占有率やメモリの消費量が増加します。この症状を確認する最も簡単な方法は、Windowsのタスクマネージャーを使用することです。
タスクマネージャーでの確認手順:
1. キーボードの「Ctrl + Shift + Esc」を同時に押してタスクマネージャーを起動
2. 「プロセス」タブをクリック
3. CPU使用率の列をクリックして降順に並び替え
4. 特に何も作業していない状態で、CPU使用率が50%以上を示すプロセスがないか確認
正常な状態では、アイドル時のCPU使用率は通常5%未満です。もし見覚えのないプロセスが高いCPU使用率を示している場合、そのプロセス名をメモし、インターネットで検索して正規のプログラムかどうか確認しましょう。特に、ランダムな文字列や数字の組み合わせのようなプロセス名は要注意です。- メモリ使用量の急増パターン
メモリ(RAM)の使用量も重要な指標となります。タスクマネージャーの「パフォーマンス」タブから「メモリ」を選択すると、現在のメモリ使用状況を確認できます。
異常なメモリ使用パターン:
- 起動直後から80%以上のメモリを使用している
- 時間の経過とともにメモリ使用量が徐々に増加し続ける(メモリリーク)
- 特定のプログラムを閉じてもメモリが解放されない
トロイの木馬の多くは、感染しても表向きにすぐわかるような挙動は示しませんが、潜伏してバックグラウンドで活発に活動するため、パソコンのリソースを消費します。
- 起動時間が通常の2倍以上になる理由
パソコンの起動時間が著しく遅くなった場合も、トロイの木馬感染の可能性があります。Windows 11/10では、タスクマネージャーの「スタートアップ」タブから、起動時に自動実行されるプログラムとその影響度を確認できます。
起動時間遅延の確認方法:
1. タスクマネージャーの「スタートアップ」タブを開く
2. 「スタートアップへの影響」列を確認
3. 「高」と表示されている不審なプログラムがないか確認
4. 「前回のBIOS時間」で実際の起動時間を確認(通常は10-30秒程度)
トロイの木馬は起動時に自動的に実行されるよう設定されることが多く、これが起動時間の遅延につながります。
ネットワークの異常(通信量の急増)
ネットワーク関連の異常も、トロイの木馬感染の重要な兆候です。感染した端末は外部サーバーと不正な通信を行っている場合があるため、その通信を遮断し、情報漏えいやそれ以降の不正な動きを抑止する必要があります。
- データ通信量の確認方法(Windows設定画面)
Windows 11/10では、設定画面から詳細なデータ通信量を確認できます。
データ使用状況の確認手順:
1. 「設定」→「ネットワークとインターネット」→「データ使用状況」を開く
2. 過去30日間のデータ使用量を確認
3. アプリごとのデータ使用量を確認
4. 異常に多くのデータを使用しているアプリがないか確認
通常のWebブラウジングやメール程度であれば、月間数GB程度のデータ使用量が一般的です。もし数十GB以上のデータが使用されている場合、トロイの木馬が大量のデータを外部に送信している可能性があります。- 不審な外部通信先の特定方法
コマンドプロンプトを使用して、現在の通信状況を詳しく確認することができます。
netstatコマンドでの確認手順:
1. 管理者権限でコマンドプロンプトを起動(Windowsキー + X → Windows ターミナル(管理者))
2. 以下のコマンドを入力:
```
netstat -ano
```
3. ESTABLISHED(確立された接続)の状態を確認
4. 見覚えのない外部IPアドレスとの通信がないか確認
特に、中国、ロシア、東欧などの地域のIPアドレスとの通信が確認された場合は要注意です。IPアドレスの地域は、オンラインのIP検索サービスで確認できます。- C&Cサーバーとの通信パターン
トロイの木馬は標的型攻撃やドライブバイダウンロード攻撃など、高度化する攻撃手法に組み込まれるケースが多く、C2ビーコン隠ぺいなどの技術を使用します。C&C(Command and Control)サーバーとは、感染したパソコンを遠隔操作するための司令塔となるサーバーです。
C&Cサーバー通信の特徴:
- 定期的に同じIPアドレスへの通信が発生する(ビーコン通信)
- 深夜や早朝など、ユーザーが使用していない時間帯に通信量が増加
- HTTPSポート(443)を使用した暗号化通信で検知を回避
- DNSクエリが異常に多い(ドメイン生成アルゴリズムを使用)
パソコンでトロイの木馬を今すぐ確認する方法
感染の疑いがある場合、まずはWindows標準機能を使用して確認を行い、その後、必要に応じて専門的なツールを使用することをお勧めします。ここでは、技術的な知識がなくても実行できる確認方法を段階的に説明します。
Windows標準機能での確認(5分でできる)
Windowsには、トロイの木馬の痕跡を発見できる複数の標準ツールが搭載されています。これらのツールを組み合わせて使用することで、感染の有無をある程度判断できます。
- イベントビューアーでの異常ログ確認
イベントビューアーは、Windowsシステムで発生したすべてのイベントを記録するツールです。トロイの木馬の活動も、多くの場合ここに痕跡を残します。
イベントビューアーでの確認手順:
1. Windowsキー + Rを押して「ファイル名を指定して実行」を開く
2. 「eventvwr.msc」と入力してEnterキーを押す
3. 左側のペインで「Windowsログ」→「セキュリティ」を選択
4. 右側のペインで「現在のログをフィルター」をクリック
5. イベントIDに「4624,4625,4688」を入力(ログオンイベントとプロセス作成)
注目すべき異常なイベント:
- 大量のログオン失敗(イベントID 4625)
- 深夜や早朝の不審なログオン成功(イベントID 4624)
- 見覚えのないプロセスの実行(イベントID 4688)
- 特権の昇格に関するイベント(イベントID 4672)
特に、「ログオンタイプ 3(ネットワーク)」や「ログオンタイプ 10(リモートデスクトップ)」での不審なアクセスは、トロイの木馬による遠隔操作の可能性があります。- netstatコマンドでの通信確認
netstatコマンドは、ネットワーク接続の状態を詳しく確認できる強力なツールです。より詳細な情報を取得するために、オプションを組み合わせて使用します。
詳細な通信確認コマンド:
```
netstat -anob | findstr ESTABLISHED
```
このコマンドは、現在確立されている接続のみを表示し、プロセス名も含めて表示します。
確認すべきポイント:
- ポート番号が4444、5555、8080などの不審なポート
- 大量の外部IPアドレスへの同時接続
- システムプロセス(svchost.exe、lsass.exe)からの不審な外部接続- タスクスケジューラーの不審なタスク
トロイの木馬は、定期的な実行や特定のイベント時の実行を確実にするため、タスクスケジューラーに自身を登録することがあります。
タスクスケジューラーの確認手順:
1. Windowsキー + Rを押して「taskschd.msc」と入力
2. 左側のペインで「タスクスケジューラーライブラリ」を選択
3. 中央のペインでタスクの一覧を確認
4. 「作成日時」でソートして最近追加されたタスクを確認
不審なタスクの特徴:
- ランダムな文字列の名前
- 「作成者」が「不明」または空白
- トリガーが「ログオン時」「起動時」「アイドル時」に設定
- アクションがPowerShellやcmd.exeを実行
無料ツールでの詳細チェック
Windows標準機能だけでは発見できないトロイの木馬もあるため、専門的な無料ツールを使用した詳細なチェックも重要です。
- Microsoft Safety Scannerの使い方
Microsoft Safety ScannerはMicrosoft社が提供しているため、信頼度が高く、ファイルをダウンロードしたらすぐにスキャンができます。このツールは、最新のマルウェア定義を使用して、システム全体をスキャンします。
Microsoft Safety Scannerの使用手順:
1. Microsoft公式サイトから「Microsoft Safety Scanner」をダウンロード
2. ダウンロードしたファイル(MSERT.exe)を管理者権限で実行
3. スキャンの種類を選択(推奨:フルスキャン)
4. スキャンの完了を待つ(1-2時間程度かかる場合があります)
スキャン結果の解釈:
- 「脅威が検出されました」:トロイの木馬やその他のマルウェアが発見された
- 「脅威は検出されませんでした」:現時点では感染の証拠なし
- 検出されたマルウェアの名前をメモし、詳細情報を検索- Process Explorerでの詳細分析
Process Explorerは、Microsoft(Sysinternals)が提供する高機能なプロセス管理ツールです。通常のタスクマネージャーよりもはるかに詳細な情報を確認できます。
Process Explorerの活用方法:
1. Microsoft TechNetからProcess Explorerをダウンロード
2. 管理者権限で実行
3. 「Options」→「VirusTotal.com」→「Check VirusTotal.com」を有効化
4. プロセス一覧で「VirusTotal」列を確認
異常なプロセスの見分け方:
- VirusTotalで複数のアンチウイルスエンジンが検出(赤色表示)
- デジタル署名がない、または無効な署名
- 親プロセスが不自然(例:explorer.exeの親がcmd.exe)
- プロセスのパスが一時フォルダやユーザーフォルダ内- Autrunsでの自動起動プログラム確認
Autorunsは、Windowsで自動的に起動されるすべてのプログラムを一覧表示する強力なツールです。トロイの木馬の多くは、システム起動時に自動実行されるよう設定されています。
Autorunsでの確認ポイント:
1. Microsoft TechNetからAutorunsをダウンロード
2. 管理者権限で実行
3. 「Options」→「Hide Microsoft Entries」をチェック(Microsoft製品を非表示)
4. 各タブを確認:
- 「Logon」:ログオン時に実行されるプログラム
- 「Scheduled Tasks」:スケジュールされたタスク
- 「Services」:Windowsサービス
- 「Drivers」:ドライバー
削除すべきエントリの判断基準:
- Publisher(発行元)が「(Not verified)」の項目
- Description(説明)が空白または不明瞭
- Image Path(パス)が%TEMP%や%APPDATA%内を指している
- VirusTotalで検出されている(赤色表示)
パソコン特有のトロイの木馬リスク
パソコン、特にWindows環境では、スマートフォンとは異なる特有のリスクが存在します。企業環境やリモートワーク環境では、これらのリスクがさらに拡大する可能性があります。
リモートワーク環境での脅威
最近はリモートワークやテレワークで社用のモバイル端末を利用する機会も増加しているため、新たなセキュリティリスクが生まれています。在宅勤務やハイブリッドワークが普及した現在、トロイの木馬による脅威も変化しています。
- VPN接続時の感染リスク
VPN(Virtual Private Network)は、安全な通信を確保するために使用されますが、トロイの木馬に感染したパソコンがVPN経由で企業ネットワークに接続すると、深刻な被害をもたらす可能性があります。
VPN環境での具体的なリスク:
- 感染したパソコンから企業ネットワーク全体への感染拡大
- VPN認証情報の窃取による不正アクセス
- 企業の機密データへの不正アクセス
- 内部ネットワークの偵察活動
VPN利用時のセキュリティ対策:
1. VPN接続前に必ずウイルススキャンを実行
2. 多要素認証(MFA)の使用を徹底
3. VPNクライアントソフトウェアを常に最新版に更新
4. スプリットトンネリングを無効化(すべての通信をVPN経由に)- 個人PCと業務PCの混在問題
多くの企業では、BYOD(Bring Your Own Device)や在宅勤務により、個人用PCで業務を行うケースが増えています。これにより、新たなセキュリティリスクが生じています。
混在環境でのリスク:
- 個人利用での感染が業務データに影響
- セキュリティ対策レベルの不統一
- シャドーIT(未承認のクラウドサービス利用)の増加
- パッチ適用やアップデートの遅れ
推奨される対策:
- 仮想デスクトップ(VDI)の活用
- 業務用の仮想マシン(VM)の使用
- エンドポイント保護プラットフォーム(EPP)の導入
- 定期的なセキュリティ監査の実施
- サプライチェーン攻撃による企業ネットワークへの侵入
サプライチェーン攻撃は、OSなどの脆弱性を狙った攻撃とともにますます増加しています。取引先や協力会社を経由した攻撃は、検知が困難で被害が大規模になる傾向があります。
サプライチェーン攻撃の手口:
1. 取引先のシステムにトロイの木馬を感染させる
2. 正規の業務メールに見せかけてマルウェアを送付
3. 信頼関係を悪用してセキュリティチェックを回避
4. 標的企業のネットワークに侵入
対策方法:
- 取引先からのファイルも必ずスキャン
- メール添付ファイルの自動実行を無効化
- サンドボックス環境での事前チェック
- ゼロトラストセキュリティモデルの採用
Windows環境での拡散経路
Windows環境特有の機能や仕組みを悪用した感染拡大は、企業環境で特に深刻な問題となります。
- 共有フォルダ経由での感染拡大
Windowsの共有フォルダ機能は便利ですが、トロイの木馬の感染経路としても利用されることがあります。
共有フォルダ経由の感染パターン:
- SMB(Server Message Block)プロトコルの脆弱性を利用
- 共有フォルダ内の実行ファイルの改ざん
- 自動実行ファイル(autorun.inf)の悪用
- マクロ付きOfficeファイルの配置
共有フォルダのセキュリティ強化:
1. 不要な共有フォルダの削除
2. アクセス権限の最小化(最小権限の原則)
3. SMBv1の無効化(古いプロトコルの停止)
4. 定期的なアクセスログの監視- Active Directory環境での横展開
企業のWindows環境では、Active Directory(AD)を使用したドメイン管理が一般的ですが、これが攻撃者に悪用されることがあります。
AD環境での攻撃手法:
- Pass-the-Hash攻撃(認証情報の再利用)
- Golden Ticket攻撃(Kerberosチケットの偽造)
- DCSync攻撃(ドメインコントローラーのなりすまし)
- グループポリシーの悪用
AD環境の保護策:
- 管理者権限アカウントの厳格な管理
- 特権アクセス管理(PAM)の導入
- 定期的なパスワード変更の実施
- 監査ログの継続的な監視- ランサムウェアへの発展リスク
トロイの木馬の一種で、有名なマルウェアにランサムウェアがあります。ランサムウェアは侵入先のコンピューターのデータを勝手に暗号化し、解除と引き換えにユーザーに金銭を要求する不正プログラムです。
トロイの木馬からランサムウェアへの進化:
1. 初期侵入:トロイの木馬による足場確保
2. 権限昇格:管理者権限の取得
3. 横展開:ネットワーク内での感染拡大
4. データ暗号化:ランサムウェアのペイロード実行
5. 身代金要求:復号鍵と引き換えに金銭を要求
ランサムウェア対策:
- 定期的なバックアップの実施(3-2-1ルール)
- バックアップの隔離保存(オフライン/エアギャップ)
- EDR(Endpoint Detection and Response)の導入
- インシデント対応計画の策定と訓練
感染が疑われる場合の緊急対処
トロイの木馬への感染が疑われる場合、迅速かつ適切な対処が被害の拡大を防ぎます。ここでは、具体的な対処手順を優先順位付けして説明します。
即座に行うべき3つのアクション
感染の疑いがある場合、パニックにならず、以下の3つのアクションを順番に実行することが重要です。
- ネットワーク遮断の正しい手順
ほかの端末への感染拡大を防ぐため、速やかに感染した端末をインターネットから遮断する必要があります。ただし、単純に電源を切ることは推奨されません。
ネットワーク遮断の優先順位:
1. 物理的な遮断(最優先)
- 有線LAN:LANケーブルを物理的に抜く
- 無線LAN:Wi-Fiスイッチをオフにする(ノートPCの場合)
- 機内モードを有効化(Windows 11/10)
2. ソフトウェア的な遮断
- ネットワークアダプターの無効化
- ファイアウォールで全通信をブロック
- VPN接続の切断
3. 遮断後の確認
- コマンドプロンプトで「ping 8.8.8.8」を実行
- 「要求がタイムアウトしました」と表示されれば遮断成功
- ネットワークアイコンが「未接続」になっていることを確認
注意事項:
- 電源を切る前に証拠保全を行う
- 強制終了は避ける(データ破損の可能性)
- 可能であればセーフモードで起動- 証拠保全のための画面記録
インシデント対応や後の分析のため、現在の状態を記録することは非常に重要です。
証拠保全の手順:
1. スクリーンショットの取得
- 異常な画面やエラーメッセージをすべて記録
- Windows + Shift + Sで範囲指定スクリーンショット
- 日時がわかるようにタスクバーも含める
2. システム情報の記録
```
systeminfo > C:\incident_systeminfo.txt
ipconfig /all > C:\incident_network.txt
netstat -anob > C:\incident_connections.txt
tasklist /v > C:\incident_processes.txt
```
3. イベントログの保存
- イベントビューアーで重要なログをエクスポート
- セキュリティログ、システムログ、アプリケーションログを保存
4. メモの作成
- 発生日時、最初に気づいた症状
- 直前に行った操作(メール開封、ダウンロード等)
- 影響を受けた可能性のあるデータやシステム- IT部門への報告テンプレート
組織内での迅速な情報共有は、被害の最小化に不可欠です。以下のテンプレートを使用して、IT部門やセキュリティチームに報告します。
インシデント報告テンプレート:
```
【緊急】トロイの木馬感染の疑い - 初期報告
■ 報告者情報
氏名:[あなたの名前]
所属:[部署名]
連絡先:[電話番号/メールアドレス]
報告日時:[YYYY/MM/DD HH:MM]
■ 感染端末情報
コンピュータ名:[PC名]
IPアドレス:[xxx.xxx.xxx.xxx]
OS:[Windows 11/10 バージョン]
最終更新日:[Windows Update実施日]
■ 発生状況
初回確認日時:[YYYY/MM/DD HH:MM]
発見の経緯:
- [具体的な症状や異常な動作]
- [感染の疑いを持った理由]
■ 現在の症状(該当するものすべて)
□ CPU使用率の異常上昇(通常○%→現在○%)
□ 不審なプロセスの実行(プロセス名: )
□ 異常なネットワーク通信(接続先IP: )
□ ファイルの改ざん・削除
□ 不審な警告メッセージ
□ その他( )
■ 実施済み対処
□ ネットワーク遮断(実施時刻: )
□ 証拠保全(スクリーンショット等)
□ ウイルススキャン実施(結果: )
□ その他( )
■ 影響範囲(推定)
- アクセス可能な共有フォルダ:[フォルダ名]
- 使用していた業務システム:[システム名]
- 取り扱っていたデータ:[データの種類・重要度]
■ 追加情報
[その他、気になる点や不審な出来事があれば記載]
```
報告後の対応:
- IT部門からの指示を待つ
- 勝手な対処は行わない
- 関係者への二次連絡は指示を待つ
- 追加情報があれば速やかに報告
駆除と復旧の手順
ネットワーク遮断と初期対応が完了したら、次は駆除と復旧のフェーズに移ります。ただし、組織の場合はIT部門の指示に従うことが最優先です。
- セキュリティソフトでの完全スキャン
より安全な環境を目指すのであれば、有料セキュリティーソフトがおすすめです。以下の手順で徹底的なスキャンを実施します。
完全スキャンの実施手順:
1. セーフモードでの起動
- Shiftキーを押しながら再起動
- 「トラブルシューティング」→「詳細オプション」→「スタートアップ設定」
- 「セーフモードとネットワーク」を選択
2. 複数のセキュリティツールでのスキャン
- Windows Defenderのフルスキャン
- Microsoft Safety Scannerの実行
- 信頼できるサードパーティ製アンチウイルスでのスキャン
3. 駆除後の確認
- 検出されたマルウェアの完全削除を確認
- 隔離フォルダの確認と処理
- システムファイルチェッカーの実行:
```
sfc /scannow
```
- システムの復元ポイントの活用
感染前の状態に戻すため、システムの復元機能を使用することも有効です。
システム復元の手順:
1. コントロールパネル→「システムとセキュリティ」→「システム」
2. 「システムの保護」をクリック
3. 「システムの復元」ボタンをクリック
4. 感染前の復元ポイントを選択
5. 影響を受けるプログラムの確認
6. 復元の実行
注意点:
- 復元ポイント自体が感染している可能性もある
- 重要なデータは事前にバックアップ
- 復元後も必ずウイルススキャンを実施- 最悪の場合のクリーンインストール
どれほど優れたウイルス対策ソフトを使用しても、トロイの木馬が検知できなかったり、削除できなかったりすることはあります。そのようなときの最後の手段として、OSの再インストールをするのも一つの方法です。
クリーンインストールの準備:
1. 重要データのバックアップ(外部メディアに保存)
2. プロダクトキーやライセンス情報の確認
3. ドライバーやアプリケーションのインストーラー準備
4. Windows 11/10のインストールメディア作成
実施時の注意事項:
- バックアップデータも必ずスキャン
- 感染ファイルを誤ってバックアップしない
- インストール後は即座にWindows Updateを実施
- セキュリティソフトを最初にインストール
よくある質問
パソコンでインターネットを利用中に、大音量の警告音が鳴り響き、「トロイの木馬に感染しました」などの警告メッセージが表示される場合がありますが、これは数年前から猛威を振るっている偽警告サイトの可能性が非常に高いです。
偽警告の見分け方:
- ブラウザ上にポップアップで表示される
- 日本語が不自然
- 電話番号やサポート連絡先が表示される
- カウントダウンタイマーがある
- 音声や警告音が鳴る
対処方法:
1. 絶対に表示された電話番号に連絡しない
2. ブラウザを強制終了(Alt + F4またはタスクマネージャーから)
3. ブラウザのキャッシュとCookieを削除
4. 念のため正規のセキュリティソフトでスキャン
本物のセキュリティソフトからの警告は、システムトレイやデスクトップ通知として表示され、ブラウザ内には表示されません。
トロイの木馬の種類によっては、キーロガー機能を持つものがあり、入力した情報を記録して外部に送信する可能性があります。特に「バンキング型トロイの木馬」は、金融情報の窃取を目的としています。
クレジットカード情報を守るための対策:
- オンラインショッピングは信頼できるサイトのみ利用
- HTTPSで保護されていることを確認(鍵マークの表示)
- 仮想カードやプリペイドカードの活用
- 二段階認証が可能な決済サービスの利用
- 定期的な利用明細の確認
感染が疑われる場合は、速やかにカード会社に連絡し、必要に応じてカードの停止や再発行を依頼してください。
Windows Defenderは、Microsoftが提供する標準的なセキュリティソフトで、基本的な保護機能を提供しています。EPP(Endpoint Protection Platform)およびEDR(Endpoint Detection and Response)を併用することで、マルウェア対策を強化することができます。
Windows Defenderの強化方法:
1. リアルタイム保護を常に有効化
2. クラウドベースの保護を有効化
3. 自動サンプル送信を有効化
4. 改ざん防止機能を有効化
5. 定期的な定義ファイルの更新
追加の対策:
- 定期的なフルスキャンのスケジュール設定
- Windows Defender Application Controlの活用
- Microsoft Defender for Endpointの検討(企業向け)
- サードパーティ製セキュリティソフトとの併用検討
個人使用であればWindows Defenderでも十分な保護が可能ですが、企業環境や高度な脅威に対しては、追加のセキュリティソリューションの導入を推奨します。
まとめ
トロイの木馬は、1975年から存在する歴史あるマルウェアですが、現在でも進化を続け、新たな脅威となっています。パソコンの動作が遅くなる、CPU使用率が異常に高い、不審なネットワーク通信が発生するなどの症状が見られたら、感染の可能性を疑う必要があります。
本記事で紹介した確認方法を実践することで、早期発見が可能になります。特に重要なのは、Windows標準機能(タスクマネージャー、イベントビューアー、netstatコマンド)を使った日常的なチェックと、Microsoft Safety ScannerやProcess Explorerなどの専門ツールを使った定期的な詳細スキャンです。
リモートワーク環境では、VPN接続時のリスクや個人PCと業務PCの混在問題など、新たな脅威にも注意が必要です。感染が疑われる場合は、まずネットワークを遮断し、証拠を保全してからIT部門に報告することが、被害の最小化につながります。
最後に、日ごろからパソコンの安全な操作方法を習慣付け、リテラシー向上のための情報収集に積極的に取り組むことも、トロイの木馬対策になります。定期的なWindows Update、信頼できるセキュリティソフトの導入、不審なメールやWebサイトへの警戒など、基本的なセキュリティ対策を継続することが、最も効果的な防御となります。
サイバー攻撃は日々巧妙化していますが、適切な知識と対策により、多くの脅威から身を守ることができます。本記事を参考に、安全なパソコン環境を維持し、トロイの木馬をはじめとする端末の脅威から大切なデータと情報を守っていきましょう。
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