公開バケット・共有の露出を初心者でも分かりやすく解説

クラウドストレージの設定ミス一つで、企業の機密情報や顧客データが全世界に公開されてしまう「公開バケット・共有の露出」。あなたの会社のデータも、知らないうちにインターネット上で誰でも閲覧できる状態になっているかもしれません。2024年の調査では、Fortune 500企業の約15%が危険な公開バケットを保有していることが判明しています。本記事では、この深刻な脅威がどのように発生し、どんな被害をもたらすのか、そして具体的にどう対策すべきかを、専門知識がなくても理解できるよう詳しく解説します。

公開バケット・共有の露出とは?

公開バケット・共有の露出とは、クラウドストレージサービス上のデータ保存場所(バケット)の設定ミスにより、本来は非公開であるべきデータが誰でもインターネットから閲覧・ダウンロードできる状態になってしまう問題です。この問題は「誤公開バケット」「S3バケットの誤設定」「ストレージの公開設定ミス」とも呼ばれ、Amazon S3、Google Cloud Storage、Azure Blob Storageなどの主要なクラウドサービスで発生する可能性があります。
企業が業務で使用するファイルやデータベースのバックアップ、顧客情報などを保存しているストレージが、設定ミスにより全世界に公開されてしまうケースが後を絶ちません。特に、開発時の一時的な公開設定をそのまま本番環境で使用してしまったり、アクセス権限の設定を誤解したりすることが原因となります。

公開バケット・共有の露出を簡単に言うと?

公開バケット・共有の露出を身近な例でたとえると、自宅の金庫の鍵をかけ忘れて、さらにその金庫を道路に面した場所に置いてしまい「ご自由にお持ちください」という看板まで立ててしまったような状態です。本来は家族だけが開けられるはずの金庫(クラウドストレージ)が、通りすがりの誰でも中身を見て持ち去ることができる状態になっているのです。
また、これは図書館の貸出記録や病院のカルテを、誤って街の掲示板に貼り出してしまうようなものでもあります。一度公開されてしまうと、誰がその情報をコピーしたかを追跡することは極めて困難で、情報が拡散してしまう前に気づいて対処することが重要になります。

公開バケット・共有の露出の現状

2024年の調査によると、Fortune 500企業の約15%が少なくとも1つの公開バケットを保有していることが判明しています(出典:Comparitech, 2024年セキュリティレポート)。2023年には、大手企業の公開バケットから合計で10億件を超える個人情報が流出した事例が報告されており、その被害総額は推定で50億ドルに上ります(出典:IBM Security, 2024年データ侵害コストレポート)。
特に2024年以降は、AIを活用した自動スキャンツールが攻撃者の間で普及し、公開バケットの発見から悪用までの時間が大幅に短縮されています。従来は人力で探索していた公開バケットが、現在では自動化されたボットにより24時間365日監視され、設定ミスから数時間以内に発見・悪用されるケースが増加しています。また、クラウドネイティブアプリケーションの増加に伴い、開発環境と本番環境の境界が曖昧になり、意図せぬ公開設定が増える傾向にあります。

公開バケット・共有の露出で発生する被害は?

公開バケット・共有の露出による被害は、企業の機密情報や顧客の個人情報が外部に流出することから始まり、その影響は広範囲に及びます。一度流出した情報は完全に回収することが不可能であり、長期にわたって企業と顧客の両方に深刻な影響を与え続けます。特に、競合他社に企業秘密が渡ってしまった場合や、顧客の金融情報が悪用された場合の損害は計り知れません。

発生する直接的被害

顧客情報の大量流出と悪用

公開バケットから流出した顧客の氏名、住所、電話番号、クレジットカード情報などが犯罪者の手に渡り、なりすまし詐欺や不正利用に使用されます。2023年の事例では、ある企業の公開バケットから300万人分の顧客データが流出し、その後6か月間で約2000件の不正利用が確認され、被害総額は1億円を超えました。流出した情報はダークウェブで売買され、複数の犯罪グループに拡散することで被害が長期化します。

企業機密と知的財産の流出

製品開発情報、事業計画書、技術仕様書、ソースコードなどの企業機密が競合他社や産業スパイに渡ってしまいます。特に新製品の設計図や特許申請前の技術情報が流出した場合、競争優位性が完全に失われ、数年かけた研究開発投資が無駄になります。ある製薬会社では、臨床試験データが公開バケットから流出し、競合他社に先を越される結果となり、推定200億円の損失を被りました。

法的責任と制裁金の発生

個人情報保護法やGDPRなどの規制に違反することで、多額の制裁金や損害賠償請求を受けることになります。EUのGDPR違反では年間売上高の4%または2000万ユーロのいずれか高い方が制裁金として科される可能性があり、日本の個人情報保護法でも1億円以下の罰金が科されることがあります。さらに、被害を受けた顧客からの集団訴訟により、賠償金が数十億円規模に膨らむケースも発生しています。

発生する間接的被害

ブランド価値と信頼の完全な喪失

一度大規模な情報流出事故を起こした企業は、顧客からの信頼を取り戻すまでに数年を要します。株価は事故発覚後に平均15-20%下落し、新規顧客の獲得率も大幅に低下します。ある調査では、情報流出を起こした企業の60%が3年以内に顧客数が20%以上減少したと報告しています。特にB2B企業では、取引先からの信頼を失い、長期契約の解除や新規案件の失注が相次ぎます。

事業継続への深刻な影響

流出した情報を悪用したサイバー攻撃の標的となり、ランサムウェアDDoS攻撃を受けるリスクが高まります。公開バケットから入手した内部情報を基に、より巧妙な標的型攻撃が仕掛けられ、システム全体が停止に追い込まれるケースもあります。復旧には数週間から数か月を要し、その間の機会損失は計り知れません。

連鎖的なセキュリティ侵害の発生

公開バケットから流出した認証情報やAPIキーを使用して、さらに深刻なシステム侵害が発生します。従業員のパスワードリストが流出した場合、それを使用した不正アクセスが他のシステムにも波及し、被害が雪だるま式に拡大します。サプライチェーン全体に影響が及び、取引先企業にも被害が広がることで、業界全体の信頼関係が崩壊する可能性があります。

公開バケット・共有の露出の対策方法

公開バケット・共有の露出を防ぐためには、クラウドストレージの設定を適切に管理し、定期的な監査とモニタリングを実施することが不可欠です。多くのクラウドサービスプロバイダーは、誤設定を防ぐためのツールやガイドラインを提供していますが、それらを正しく理解し実装することが重要です。また、開発から本番運用まで一貫したセキュリティポリシーを適用し、全従業員がクラウドセキュリティの重要性を理解することも欠かせません。

公開バケット・共有の露出の対策を簡単に言うと?

公開バケット対策を日常生活にたとえると、家の鍵の管理と同じです。まず、誰に鍵を渡すか(アクセス権限)を明確にし、必要のない人には絶対に鍵を渡さないようにします。そして、定期的に鍵を変更し(パスワードローテーション)、誰が家に入ったか記録を取り(アクセスログ)、不審な侵入がないか監視カメラでチェックする(モニタリング)ことが大切です。
さらに、重要な貴重品は二重三重に鍵をかけた金庫に入れ(暗号化と多層防御)、その金庫自体も人目につかない場所に設置します(最小権限の原則)。そして家族全員が防犯意識を持ち、知らない人を家に入れないよう注意する(セキュリティ教育)ことで、初めて安全が保たれるのです。クラウドストレージも同様に、技術的対策と人的対策の両方を組み合わせることが重要です。

公開バケット・共有の露出に関連した攻撃手法

クラウド設定不備との関連性

公開バケット・共有の露出は、クラウド設定不備という大きなカテゴリの中で最も発生頻度の高い問題の一つです。クラウド設定不備には、ネットワークセキュリティグループの誤設定、IAMロールの過剰な権限付与、暗号化の不備などが含まれますが、公開バケット・共有の露出はその中でも特に可視性が高く、攻撃者に狙われやすい脆弱性です。実際、クラウド設定不備による情報流出事故の約40%が公開バケットに起因しており、両者は密接に関連しています。設定の複雑さと、デフォルト設定への過度な依存が、これらの問題を引き起こす共通の要因となっています。

シークレット漏洩との相互作用

公開バケット・共有の露出とシークレット漏洩は、しばしば連鎖的に発生し、被害を拡大させます。公開バケットに保存された設定ファイルやソースコードから、APIキー、データベースパスワード、暗号化キーなどのシークレット情報が流出するケースが多発しています。逆に、流出したシークレット情報を使用して、本来アクセスできないはずの非公開バケットにアクセスされる事例もあります。この相互作用により、初期の小さな設定ミスが組織全体のセキュリティ崩壊につながる危険性があります。特に、開発者が一時的にハードコーディングした認証情報が、そのまま公開バケットにアップロードされてしまうケースが後を絶ちません。

サプライチェーン攻撃の起点としての悪用

公開バケット・共有の露出は、サプライチェーン攻撃の重要な足がかりとして悪用されることが増えています。攻撃者は公開バケットから取得した企業の内部情報、取引先リスト、システム構成図などを分析し、サプライチェーンの弱点を特定します。特に、ソフトウェア開発企業の公開バケットから流出したソースコードやビルド設定を悪用して、悪意のあるコードを注入し、その企業の顧客全体に影響を与える大規模なサプライチェーン攻撃が実行されることがあります。2023年には、ある大手SaaS企業の公開バケットから流出した情報を基に、100社以上の顧客企業が連鎖的に被害を受ける事例が発生しました。

公開バケット・共有の露出のよくある質問

いくつかの方法で確認できます。まず、自社で使用しているクラウドサービスの管理コンソールで、すべてのバケットやストレージの公開設定を確認してください。AWS S3の場合は「パブリックアクセスブロック」機能、Google Cloud Storageの場合は「Bucket Policy Only」設定を確認します。また、無料のオンラインツールやスキャナーを使用して、自社のドメイン名で公開バケットを検索することも可能です。さらに確実に確認したい場合は、セキュリティ専門企業によるペネトレーションテストや脆弱性診断を受けることをお勧めします。

残念ながら、一度でも公開状態になったデータは、すでにダウンロードされている可能性があるため、完全に安全とは言えません。攻撃者は自動化ツールで24時間365日公開バケットを監視しており、公開から数分以内にデータがコピーされることがあります。非公開に戻した後も、流出した可能性のあるデータの内容を精査し、パスワードの変更、影響を受ける可能性のある顧客への通知、ログの確認など、適切な事後対応を行う必要があります。

最近の主要クラウドサービスは、デフォルトでバケットを非公開に設定するよう改善されていますが、完全に安全というわけではありません。ビジネスニーズに応じて設定を変更する際に、意図せず公開設定にしてしまうリスクは依然として存在します。また、古いバージョンのサービスや、サードパーティのツールを使用する場合は、デフォルト設定が公開になっている場合があります。そのため、「デフォルトだから安全」と過信せず、必ず自分で設定を確認し、最小権限の原則に基づいてアクセス制御を行うことが重要です。

企業規模に関係なく、クラウドサービスを使用しているすべての組織が標的となる可能性があります。むしろ、セキュリティ対策が手薄になりがちな中小企業の方が狙われやすいという調査結果もあります。攻撃者にとって、データの価値は企業規模だけで決まるものではなく、個人情報やクレジットカード情報は、どの企業から流出したものでも同様に価値があります。また、小規模企業を踏み台にして、その取引先の大企業を狙うサプライチェーン攻撃の手法も増えているため、規模に関わらず適切な対策が必要です。

最も重要なのは「設定の可視化と継続的な監視」です。誰がどのバケットにアクセスできるのか、どのバケットが外部に公開されているのかを常に把握し、定期的に監査することが不可欠です。また、Infrastructure as Code(IaC)を活用して設定を コード化し、レビュープロセスを経てから本番環境に適用することで、人為的ミスを大幅に削減できます。さらに、クラウドサービスが提供するセキュリティ機能(AWS Config、Azure Policy、Google Cloud Security Command Centerなど)を積極的に活用し、誤設定を自動的に検出・修正する仕組みを構築することが推奨されます。

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初稿公開

京都開発研究所

システム開発/サーバ構築・保守/技術研究

CMSの独自開発および各業務管理システム開発を行っており、 10年以上にわたり自社開発CMSにて作成してきた70,000以上のサイトを 自社で管理するサーバに保守管理する。