不正アクセスとは?
不正アクセスとは、本来アクセスする権限を持たない第三者が、他人のアカウントやシステムに許可なく侵入する行為です。パスワードを盗んだり、システムの弱点を突いたりして、お金・アカウントを守るべきセキュリティ対策を突破します。サイバー攻撃の中でも最も基本的で、かつ被害が深刻になりやすい脅威の一つです。
不正アクセス禁止法により、日本国内では法律で禁止されている犯罪行為であり、他人のID・パスワードを無断で使用してログインする行為などが該当します。
不正アクセスを簡単に言うと?
あなたの家の鍵を誰かが勝手にコピーして、留守中に侵入するようなものです。侵入者は合鍵を使って正面玄関から堂々と入ってくるため、一見すると正規の住人のように見えます。家の中の貴重品を盗んだり、プライベートな情報を覗き見たり、さらには他の人になりすまして悪事を働いたりします。デジタルの世界では、この「合鍵」がパスワードやセキュリティの穴に相当します。
不正アクセスで発生する被害は?
不正アクセスによる被害は、金銭的損失から個人情報の流出、さらには社会的信用の失墜まで多岐にわたります。
攻撃者がアカウントやシステムに侵入すると、正規のユーザーと同じ権限を持つため、あらゆる操作が可能になります。サイバー攻撃の入口として機能することも多く、一度侵入を許すと被害が連鎖的に拡大する危険性があります。
不正アクセスで発生する直接的被害
- 金銭の窃取・不正送金
銀行口座やクレジットカード情報にアクセスされ、預金が引き出されたり、身に覚えのない高額決済が実行されたりします。オンラインショッピングサイトに保存された決済情報を使って、勝手に商品を購入されるケースも頻発しています。
- 個人情報・機密データの流出
氏名、住所、電話番号、メールアドレスなどの個人を特定できる情報が盗まれます。企業の場合は顧客データベースや営業機密、開発中の製品情報などが外部に漏洩し、競合他社に利用されたり、ダークウェブで売買されたりします。
- アカウントの完全乗っ取り
SNSアカウント、メールアカウント、オンラインサービスのアカウントが攻撃者に支配され、パスワードを変更されてログインできなくなります。そのアカウントを使って友人や取引先に詐欺メッセージを送信され、被害が周囲に広がることもあります。
不正アクセスで発生する間接的被害
- サービスの停止・業務の中断
企業のシステムに不正アクセスされた場合、セキュリティ対策としてシステム全体を一時停止せざるを得なくなり、営業活動や生産活動がストップします。顧客へのサービス提供ができなくなることで、売上機会を失います。
- 法的責任と賠償コスト
顧客情報が流出した企業は、個人情報保護法違反として行政処分を受ける可能性があります。加えて被害を受けた顧客への損害賠償、対応窓口の設置、信用回復のための広告費用など、多額のコストが発生します。
- 信用・評判の低下
不正アクセスされたという事実は、そのサービスやお金・アカウントを守るセキュリティ対策が不十分だったという証明になります。顧客や取引先からの信頼を失い、株価の下落や取引停止につながるケースもあります。個人の場合も、乗っ取られたアカウントから送られた詐欺メッセージにより、人間関係に亀裂が生じることがあります。
不正アクセスの対策方法
不正アクセスを防ぐためには、入口となるパスワードの強化と、侵入されにくい仕組みを複数組み合わせることが重要です。一つの対策だけでは不十分で、多層的なセキュリティ対策を講じることで、サイバー攻撃のリスクを大幅に下げられます。
基本対策としては、推測されにくい複雑なパスワードの設定、サービスごとに異なるパスワードの使用、定期的なパスワード変更が挙げられます。さらに多要素認証(MFA)を有効にすることで、たとえパスワードが漏れても不正ログインを防げます。
また、不審なメールやメッセージのリンクをクリックしない、公共Wi-Fiでの重要な操作を避ける、セキュリティソフトウェアを最新状態に保つといった日常的な注意も欠かせません。企業の場合は、アクセス権限の適切な管理、ログの監視、従業員へのセキュリティ教育も効果的です。
不正アクセスの対策を簡単に言うと?
家の防犯対策を何重にも施すイメージです。まず玄関の鍵を複雑で丈夫なものに交換し(強力なパスワード)、さらに指紋認証や顔認証を追加します(多要素認証)。窓や勝手口にも鍵をかけ(各サービスで異なるパスワード)、防犯カメラで常に監視します(ログ監視)。そして家族全員が「知らない人を家に入れない」というルールを徹底します(セキュリティ教育)。一つの対策が破られても、次の対策が攻撃者を阻止する仕組みです。
不正アクセスに関連した攻撃手法
不正アクセスは、多くのサイバー攻撃の起点となる基本的な攻撃形態です。攻撃者は不正アクセスを成功させるために、さまざまな技術的手法を駆使します。
総当たり(ブルートフォース) は、不正アクセスを実現する最も原始的な方法です。攻撃者は考えられるすべてのパスワードの組み合わせを自動的に試行し、正しいパスワードを見つけ出そうとします。不正アクセスの成功率を高めるため、総当たりでは短時間に何千、何万ものログイン試行を繰り返します。
パスワードリスト攻撃(クレデンシャルスタッフィング) は、過去の情報漏洩で流出したID・パスワードのリストを使って、不正アクセスを試みる手法です。多くの人が複数のサービスで同じパスワードを使い回しているため、一つのサービスから漏れたパスワードで、他のサービスへの不正アクセスが成功してしまいます。
アカウント乗っ取り(ATO) は、不正アクセスの最終目標とも言える状態です。攻撃者が不正アクセスに成功した後、パスワードやメールアドレスを変更してアカウントを完全に支配します。元の持ち主はログインできなくなり、不正アクセスされたアカウントは詐欺やマルウェア配布などの犯罪に悪用されます。
不正アクセスのよくある質問
複雑なパスワードは重要な対策ですが、それだけでは不十分です。フィッシング詐欺でパスワードを入力させられたり、サービス側からパスワードが漏洩したりする可能性があるためです。多要素認証の併用や、パスワード管理ツールの利用など、複数の対策を組み合わせることで、お金・アカウントを守るセキュリティ対策を強化できます。
ログイン履歴や利用明細を定期的にチェックすることで、身に覚えのないアクセスや取引を発見できます。多くのサービスでは「ログイン通知」機能があり、新しいデバイスからのログイン時にメールで知らせてくれます。また、見覚えのないメールやメッセージが送信されていないか、設定が勝手に変更されていないかも確認してください。
本当です。暗号化されていない公共Wi-Fiでは、通信内容が第三者に傍受される可能性があり、パスワードやクレジットカード情報が盗まれるリスクがあります。公共Wi-Fiを使う場合は、VPNサービスを利用する、重要なログインや決済操作は避ける、HTTPSで暗号化されたサイトのみを利用するなどの注意が必要です。
まず被害の範囲を特定し、不正アクセスされたアカウントやシステムを隔離します。その後、全パスワードの変更、セキュリティパッチの適用、ログの詳細分析を実施します。個人情報が漏洩した可能性がある場合は、該当する顧客への通知、監督官庁への報告、警察への被害届提出などの法的対応も必要になります。
不正アクセス禁止法に違反した場合、3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。さらに他人のID・パスワードを不正に取得・保管する行為や、フィッシング目的でIDやパスワードを入力させる行為も処罰対象です。軽い気持ちで行った場合でも刑事罰の対象となり、前科がつく重大な犯罪として扱われます。
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