「治る」は薬機法違反?NG表現の理由と正しい言い換え7選
貴社の健康食品やサプリメントの広告・LP・SNSに、「飲み続けたら膝の痛みが治る」「アトピーが治ったというお声をいただいています」といった表現はありませんか?
この『治る』という言葉は、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の規制を受ける可能性が高い、業界で最も頻出するNGワードのひとつです。
この記事を読むと、以下のことが分かります。
・『治る』がなぜ薬機法上の問題になる可能性があるのか、条文レベルで理解できる
・一見セーフに見えるグレーゾーン表現のパターンが分かる
・マーケティング効果を落とさずに使えるOK言い換え表現が7例以上得られる
・行政指導に至ったNG事例から学べる
・今すぐ自社コンテンツを点検できるチェックリストが手に入る
| 【この記事のポイント】 『治る』は薬機法第66条(誇大広告等の禁止)および第2条第1項②(医薬品の定義)に抵触する可能性がある医薬品的効能効果の標ぼう表現です。 健康食品・サプリメントの広告で使用した場合、行政処分や罰則のリスクが生じる可能性があります。 |
そもそも薬機法とは?基礎から分かりやすく解説
薬機法とは、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器などの「品質・有効性・安全性の確保」を目的とした法律です。
一言で言えば、「誤解させる情報を発信して消費者を騙してはいけない」ための規制です。
なぜここまで厳しいのか? 消費者が「これを飲めば病気が治る」と信じて、本来必要な医療を受けなかった場合、深刻な健康被害が生じる可能性があります。
薬機法はそうした事態を防ぐために、医薬品でない商品(健康食品・サプリ等)が医薬品のような効能をうたうことを規制しています。
重要なのは、この規制が「何人も」(薬機法第66条冒頭)に適用されるという点です。
法人・個人事業主はもちろん、インフルエンサー・アフィリエイターも規制の対象となる可能性があります。「知らなかった」は免責になりません。
| 📌 ここがポイント Instagram・X(旧Twitter)・TikTok・YouTube・ブログ・LPなど、あらゆるデジタル媒体が規制対象となる可能性があります。「SNSの投稿だから大丈夫」は誤解です。 |
■薬機法違反が認定された場合に想定されるペナルティ一覧
| 違反の種類 | 関連条文 | 想定されるペナルティ |
| 誇大広告等 | 薬機法第66条・第85条 | 2年以下の懲役または200万円以下の罰金(併科の場合あり) |
| 課徴金 | 薬機法第75条の5の2 | 対象製品売上の4.5%(違反期間最大3年分) |
| 法人への罰則 | 薬機法第90条 | 法人に対し最大1億円の罰金 |
| 承認前広告 | 薬機法第68条 | 2年以下の懲役または200万円以下の罰金 |
💬 専門家コメント(久保日向太 / YMAA個人認証保持)
現場でよく聞く誤解のひとつが「罰則は大企業だけに適用される」というものです。
実際には個人でサプリを販売しているECセラーやサロン経営者の方にも同様に適用される可能性があります。規模に関わらず、表現の内容が問われます。
「治る」はなぜNGなのか?法令根拠と判断基準
『治る』という表現がなぜ問題になる可能性があるのか、3つのステップで整理します。
Step1:消費者はどう受け取るか
「このサプリを飲めば膝の痛みが治る」という表現を見た消費者は、そのサプリに医薬品と同様の治療効果があると受け取る可能性があります。
「疾病を治療する商品」として誤認させることが、問題の核心です。
Step2:薬機法上どう判断される可能性があるか
薬機法第2条第1項②は、「人または動物の疾病の診断、治療または予防に使用されることが目的とされている物」を医薬品と定義しています。健康食品・サプリは医薬品ではありません。しかし広告で「治る」と表現することは、「この商品は医薬品的な治療効果がある」と示すこととなり、薬機法第66条第1項(誇大広告等の禁止)に抵触する可能性があります。
Step3:行政処分のリスクはどの程度か
消費者庁・都道府県の薬務担当部署が広告の監視を行っています。問題のある表現が発覚した場合、行政指導・行政処分のルートに乗る可能性があります。
| 判断の基準 | 内容 | 「治る」への当てはめ |
| 効能効果の標ぼう | 疾病の治療・予防・身体機能への影響を示す表現 | 「治る」は疾病の治癒を直接示す可能性がある最典型的な標ぼう表現 |
| 「何人も」規制 | 法人・個人・インフルエンサーすべてが対象 | ECサイト・SNS・ブログ等あらゆる媒体が対象となる可能性がある |
| 暗示的な表現も対象 | 直接書かなくても「暗示」でも規制対象になりうる | 文脈によっては問題となる可能性がある |
| 体験談も事業者の表示 | 掲載した事業者の責任が問われる可能性がある | 「飲んだら治った(お客様の声)」も規制対象となる可能性がある |
| 📌 ここがポイント 令和3年6月28日の最高裁判決は、薬機法第66条の立法趣旨について「消費者等の認識を誤らせ、保健衛生上の危害が生ずることを防止しようとする趣旨」と示しています。 消費者が誤解するかどうかが判断の視点です。 |
要注意!「治る」に似た「グレーゾーン表現」一覧
「治る」を避けたつもりでも、実は同様のリスクを持つ表現が数多く存在します。以下の一覧で確認してください。
| 表現 | 判定 | 理由 |
| 治る | NG | 疾病治癒を直接標ぼうする可能性がある |
| 直す | NG | 「治る」の動詞形。同様に疾病治癒の標ぼうとなる可能性がある |
| 完治した | NG | 完全な治癒を示す最も強い表現。問題となる可能性が非常に高い |
| 根本から治す | NG | 「根本」を加えることで治癒効果をより強調したNG表現 |
| 症状が消えた | NG | 疾患の症状消失を示す表現。治癒効果の標ぼうとなる可能性がある |
| 改善した | 要注意 | 疾患名と組み合わせると(例:「腰痛が改善」)問題となる可能性がある |
| スッキリした | 要注意 | 単体ではグレー。「〇〇の症状がスッキリ」はNG方向に傾く可能性がある |
| 毎日の習慣に | 比較的安全 | 食品としての継続利用を訴求する表現であり、効能効果の断定ではない |
■健康食品・サプリでよくやりがちなNGパターン3つ
①体験談の「治った」:
お客様の声であっても、事業者が選択・掲載した時点で事業者の表示として問われる可能性があります。
「3ヶ月飲んで膝が治りました(Aさん・60代)」のような形式は特に注意が必要です。
②成分名との組み合わせ:
「グルコサミン配合で軟骨が再生・治る」のように、
成分名と治癒表現を掛け合わせることで、消費者の誤認リスクが高まる可能性があります。
③画像・デザインによる暗示:
テキストでは「治る」と書かずとも、
Before/Afterの医療的な画像と症状名の組み合わせが「暗示的な治癒の標ぼう」とみなされる可能性があります。
■SNS特有のNGパターン
インスタグラムのリール動画で「#腰痛が治った #サプリ #飲んでみた」というハッシュタグを使うことも、広告と判断される場合には規制対象となる可能性があります。
ハッシュタグも「表示」の一部とみなされることがあります。
| 📌 ここがポイント 一見セーフでも、前後の文脈・デザイン・画像の組み合わせ次第で問題となる可能性があります。単語単体ではなく「読者がどう受け取るか」という全体評価が判断の視点です。 |
これならOK!法的リスクを大幅に下げられる言い換え表現集
以下の言い換え表現は、効能・効果・身体機能への影響を一切示さないよう設計しています。
ただし、表現の文脈・組み合わせによっては問題となる可能性もゼロではないため、最終的な判断は専門家への確認を推奨します。
| ×NGフレーズ例 | ✓安全な言い換え例 | 安全な理由 |
| 膝の痛みが治る | 毎日の歩行を大切にしたい方へ | 身体機能や症状への作用を一切示さない。ライフスタイル訴求 |
| アレルギーが治った | 花粉の季節も元気な毎日を送りたい方の習慣に | 疾病や症状への効果を示さず、生活スタイルの提案にとどめている |
| 腸の病気が治る | 毎朝の習慣づくりに取り入れてみませんか | 臓器・疾病への作用を示さず、習慣の提案にとどめている |
| 根本から治す | 日々の生活リズムを大切にしたい方へ | 身体への直接的な作用を示さない、ライフスタイル訴求 |
| 完治した(お客様の声) | 「毎日続けやすくなりました」(ご使用感・個人の感想) | 疾病治癒ではなく商品の継続しやすさという使用感の表現 |
| 症状が消える | 気になることなく過ごせる日が増えた(個人の感想) | 症状消失ではなく個人の生活体験の描写。「個人の感想」明記が必須 |
| 体質が変わった | 自分らしい毎日のリズムを取り戻したい方に | 体質という身体の根本的状態への作用を示さない表現 |
■業種別の使い方例
健康食品EC:「毎日の習慣に」「朝の時間を大切にしたい方へ」「食後の時間を大切にしたい方に」
サプリEC:「毎日のコンディションを意識したい方の習慣に」「日々の生活をサポートしたい方へ」
定期購入LP:「〇〇が気になり始めた40代・50代の方へ」「毎日の習慣にプラスするだけ」
■言い換えてもマーケティング効果を落とさないために
「治る」を削ると訴求力が下がると感じる方は多いですが、
「誰のための商品か」「どんな生活シーンを提案するか」を具体的に書くことで、ターゲットへの刺さり方が強くなる場合があります。
「腰痛が治る」より「毎朝の犬の散歩を楽しみたい60代の方へ」のほうが、ペルソナに響き、かつ法的リスクを大幅に下げられる可能性があります。
💬 専門家コメント(久保日向太 / YMAA個人認証保持)
言い換えの基本原則は「効果(outcome)ではなく、生活シーン(scene)を書く」ことです。「治る」は効果の断定です。
「元気な毎日を過ごしたい方の習慣に」は生活シーンの描写です。消費者は生活シーンへの共感から購入を検討します。
法的リスクを下げながら、訴求力を維持できる可能性があります。
行政指導に至ったNG事例から学ぶ
実際に問題とされた表現のパターンを2例紹介します。
特定の企業ではなく、業界で見られるNG事例のパターンとしてご参照ください。
NG事例①:「腰痛が治った」
体験談の掲載 健康食品のECサイトに掲載されたお客様の声の中に「長年の腰痛がすっかり治りました」という表現があり、薬機法上の問題表現として行政指導の対象となったNG事例があります。
お客様が書いた内容であっても、事業者が選択・掲載した時点で「事業者の表示」として問われる可能性があります。
NG事例②:「血糖値が正常になる」という成分訴求
サプリメントのLPで「〇〇成分が血糖値を正常化します」という表現が使われ、問題とされたNG事例があります。
機能性表示食品として届け出をしていない商品での血糖値訴求は、医薬品的効能効果の標ぼうとみなされる可能性が高い表現です。
課徴金の具体的な計算例(参考)
薬機法の課徴金制度(令和3年8月施行)では、違反期間中の対象製品売上の4.5%が課徴金として算定される可能性があります。
以下はあくまで計算の参考例です。
| 売り上げ | 違反期間 | 課徴金額(概算) |
| 月商50万円 | 3年(36カ月) | 50万円×36×4.5%=約81万円 |
| 月商100万円 | 3年(36カ月) | 100万円×36×4.5%=約162万円 |
| 月商300万円 | 3年(36カ月) | 300万円×36×4.5%=約486万円 |
※刑事罰(2年以下の懲役・200万円以下の罰金)とは別途、課徴金が科される可能性があります。
| 📌 ここがポイント 「知らなかった」「意図していなかった」は免責事由になりません。消費者が誤解する可能性があるかどうかが判断の視点です。気づいた時点で速やかに修正することが重要です。 |
今すぐできる!自社コンテンツ点検チェックリスト
貴社のLP・SNS・商品ページを今すぐ点検してください。
□LP・ランディングページに「治る」「治す」「完治」「症状が消える」という表現がないか
→ 確認できたら即座に削除し、「毎日の習慣に」等の表現に置換する
□Instagram・X・TikTok・Facebookの投稿(過去分も含む)に「治った」「治りました」がないか
→ 該当する投稿は非表示または削除を検討する
□お客様の声・体験談コーナーに「〇〇が治った」という表現がないか
→ 治癒表現そのものを削除する。「個人の感想です」の但し書きだけでは不十分な場合がある
□商品パッケージ・説明文に疾病の治療を示す表現がないか
→ パッケージ修正が必要な場合は速やかに対応する
□メールマガジン・LINE配信文に「治る」系の表現がないか
→ 配信済みのものも確認し、同一内容の再配信は行わない
□ハッシュタグに「#〇〇が治った」「#完治」「#症状消えた」がないか
→ 該当投稿のハッシュタグを修正または投稿を削除する
□Googleビジネスプロフィール・口コミ返信に治癒表現がないか
→ 事業者の返信も「表示」となる可能性があるため注意する
□アフィリエイター・インフルエンサーへの依頼内容に「治る」系の訴求を含めていないか
→ 依頼者にも責任が及ぶ可能性がある。依頼書・ガイドラインを整備する
□Before/After画像・動画が医療的治癒を暗示するものでないか
→ 症状名と組み合わせた構成は特に要注意
□社内スタッフ・外注ライターへの表現ガイドラインが整備されているか
→ 未整備の場合はNGワードリストと言い換え集を共有し、表現チェックの仕組みを設ける
□競合他社の表現を参考にしていないか
→ 他社がNGワードを使っていることは、自社が使う根拠にはならない
□直近3ヶ月の広告配信(リスティング・Meta広告等)の広告文を確認したか
→ 広告審査の通過は薬機法違反の免責にならない
| 📌 ここがポイント SNS・LP・メルマガ・パッケージ・口コミ返信、すべてが薬機法の「広告」となる可能性があります。媒体を問わず横断的に点検することが重要です。 |
実際にいただいたよくある質問
Q1:「治る」を使った過去の広告はどうすればいいですか?
今すぐ修正・削除することを最優先に検討してください。薬機法は現在進行形の表示だけでなく、過去に配信・掲載されたものも対象となる場合があります。気づいた時点で速やかに自主的に修正することが、最も重要なリスク管理です。
Q2:お客様が勝手に「治った」と書いたSNSコメント・口コミはどう対処すればいいですか?
第三者が自発的に書いたものであっても、事業者が「いいね」「リポスト」「引用」した時点で事業者の表示とみなされる可能性があります。治癒表現を含む口コミへは返信しない、または「個人の感想です。効果・効能を示すものではありません」と明示する対応が現実的です。
Q3:インフルエンサーに依頼した投稿が「治る」という表現を使っていた場合は?
依頼者(事業者)にも責任が及ぶ可能性があります。依頼時に表現ガイドライン(NGワードリスト・OK言い換え集)を必ず提供し、投稿前に確認する体制を整えることを推奨します。
Q4:グレーゾーンかどうか分からない表現はどこで確認できますか?
まず薬機法第66条・第2条を参照し、「消費者がこの表現を見て医薬品的な効果があると思う可能性があるかどうか」を考えてみてください。判断に迷う場合は、都道府県の薬務主管課への事前照会、または法令専門家・SCSC Legalのような法令チェックサービスの活用を推奨します。「多分大丈夫だろう」は最もリスクの高い判断です。
Q5:行政から指摘を受けたらまず何をすべきですか?
①問題の表現を即座に削除・修正する、②行政からの照会・調査には誠実に応じる、③必要に応じて法令の専門家(弁護士・薬機法コンサルタント)に相談する、の3ステップが基本です。
対応を引き延ばしたりすると、行政処分のリスクが高まる可能性があります。
💬 専門家コメント(久保日向太 / YMAA個人認証保持)
現場で最も多い質問は「うちはまだ小さいから大丈夫ですよね?」です。
規模に関わらず表現の内容が問われる可能性があります。
むしろ小規模事業者ほど一度の行政処分がビジネスに与えるダメージが大きいため、早いうちから表現の仕組みを整えることが事業継続のリスクヘッジになります。
この記事で学んだこと
①『治る』は薬機法第66条・第2条第1項②に抵触する可能性がある医薬品的効能効果の標ぼう表現であり、健康食品・サプリの広告での使用には十分な注意が必要
②「何人も」規制の対象であり、個人事業主・インフルエンサーも例外ではない。SNS・LP・メルマガ・ハッシュタグすべてが規制対象となる可能性がある
③行政処分が認定された場合、刑事罰に加え、売上の4.5%(最大3年分)の課徴金が科される可能性がある
④「治る」は「毎日の習慣に」「毎日の生活をサポートしたい方へ」「元気な毎日を過ごしたい方の習慣に」などに置き換えることで、マーケティング効果を維持しつつ法的リスクを大幅に下げられる可能性がある
⑤過去の広告・SNS投稿も点検対象。気づいた時点で速やかに修正することが最大のリスク管理
| ✍️ 本記事の著者・監修者 久保 日向太(Kubo Hinata) 株式会社ガーディアン薬機法・景表法・特商法に関する複数の法令資格を保持 | 法令マーケティングのコンサルティング業務を通じて、企業の薬機法・景表法・特商法の「攻めと守りの両立」を支援。 |
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