2025年最新|ロマンス詐欺の現状レポート

2025年、ロマンス詐欺は新たな段階に突入しました。1-10月の被害額は218億円を超え、AI技術の悪用により手口は驚異的に進化しています。本レポートでは、最新統計データ、プラットフォーム別の動向、新たな脅威を包括的に分析し、今後の展望と対策を提示します。技術の進化に対応した、新時代の詐欺対策が急務となっています。

最新統計データ

2025年1月から10月までの統計データが、ロマンス詐欺被害の深刻な実態を明らかにしています。警察庁、国民生活センター、金融庁の合同調査により、被害の全容が初めて体系的に把握されました。

2025年の被害概況

被害総額と件数(2025年1-10月)
・被害総額:218億4,000万円(前年同期比42%増)
・認知件数:4,126件(前年同期比58%増)
・平均被害額:529万円(中央値:180万円)
・最高被害額:2億3,000万円(暗号資産投資型)
・検挙件数:127件(検挙率3.1%)
被害者属性の変化
・年齢層:20-30代が31%(前年比12%増)、40-50代が45%、60代以上が24%
・性別:女性58%、男性42%(男性被害の割合が上昇)
・職業:会社員42%、自営業・経営者21%、主婦15%、学生8%(新規)
・地域分布:首都圏38%、関西圏22%、その他都市部25%、地方15%

国際比較データ

国・地域 年間被害額(2024年) 人口比被害率 主な手口
アメリカ 約1,700億円 0.15% 投資詐欺型
日本 約280億円(推計) 0.22% 暗号資産型
イギリス 約450億円 0.19% 結婚詐欺型
オーストラリア 約200億円 0.31% 混合型
韓国 約150億円 0.18% 投資詐欺型
台湾 約120億円 0.24% 暗号資産型

月別被害推移(2025年)

季節変動パターン
1月:312件(年末年始の孤独感)
2月:358件(バレンタイン前後)
3月:295件(年度末で減少)
4月:401件(新生活・出会い増加)
5月:425件(GW後の虚無感)
6月:382件(梅雨の憂鬱)
7月:445件(夏休み前の期待)
8月:468件(お盆の帰省話題)
9月:412件(秋の寂しさ)
10月:428件(年末への焦り)

被害額・件数の推移

5年間の推移分析

年度 被害件数 被害総額 平均被害額 特徴的な変化
2021年 987件 52億円 527万円 コロナ禍で急増開始
2022年 1,575件 92億円 584万円 SNS型が主流に
2023年 2,322件 177億円 762万円 暗号資産型が急増
2024年 3,445件 235億円 682万円 AI活用型が登場
2025年(推計) 5,000件 290億円 580万円 被害の大衆化

被害額の分布変化

少額被害の増加(10万円未満)
2025年は全体の18%を占め、前年の8%から大幅増加。詐欺師が「薄利多売」戦略に転換し、より多くのターゲットから少額を詐取する手法が増えています。これにより、被害に気づきにくく、通報されないケースも増加しています。
中額被害の主流化(100-500万円)
全体の45%を占める最大カテゴリー。退職金の一部、貯金、投資資金などを狙った「現実的な」金額設定。被害者が「これくらいなら」と考えてしまう心理的な境界線を狙っています。
超高額被害の巧妙化(1億円以上)
全体の2%だが、被害総額の35%を占める。富裕層をターゲットにした長期潜伏型で、1年以上かけて信頼関係を構築。プライベートバンキング詐欺、不動産投資詐欺などと組み合わせた複合型が特徴です。

回収率と被害回復

被害回復方法 申請件数 回収成功率 平均回収額 平均期間
振り込め詐欺救済法 892件 12% 42万円 4ヶ月
クレジットカード 234件 31% 28万円 2ヶ月
民事訴訟 67件 8% 180万円 18ヶ月
暗号資産追跡 156件 3% 15万円 6ヶ月

新たな手口の登場

2025年に確認された新しい詐欺手口は、技術の進化と社会変化を巧みに利用しています。詐欺・なりすまし(人の心理を狙う)カテゴリーの中でも、特に高度化が進んでいます。

AI技術を悪用した新手口

完全AI生成型ロマンス詐欺
ChatGPT-5やClaude-4などの最新AIを使用し、人間と見分けがつかない会話を実現。24時間365日、感情豊かな応答が可能で、数千人と同時にやり取りできます。文体や口調も被害者の好みに自動調整され、理想の相手を完璧に演じます。検出方法として、突発的な質問や、過去の会話の詳細を確認することが有効です。
ディープフェイク・リアルタイム型
2025年に登場した最新技術により、ビデオ通話でもリアルタイムで別人になりすますことが可能に。音声クローンと組み合わせ、実在の人物(芸能人、経営者など)を装うケースも。ただし、髪の毛の動きや、急な動作での遅延、照明の不自然さなどで見破ることは可能です。
感情分析AI活用型
被害者のメッセージをAIが分析し、感情状態を把握。孤独感が高まっているタイミング、経済的不安を感じている時期などを特定し、最適なアプローチを自動選択。SNSの投稿履歴も分析し、趣味嗜好から家族構成まで把握した上で接触してきます。

メタバース・VR空間での新型詐欺

手口 プラットフォーム 被害額レンジ 特徴
VR恋愛詐欺 VRChat、Horizon 50-500万円 アバターで親密関係
メタバース投資詐欺 Decentraland 100-1000万円 仮想不動産投資
NFTロマンス詐欺 OpenSea連携 30-300万円 NFTアート購入強要
仮想結婚式詐欺 各種VR空間 20-200万円 結婚式費用を詐取

ソーシャルエンジニアリング2.0

マルチレイヤー攻撃
一人の被害者に対し、複数の詐欺師が異なる役割で接触。恋人役、その友人役、投資アドバイザー役などが連携し、信憑性を高めます。時には「詐欺を心配する友人」役まで登場し、被害者の警戒心を解きます。**ビジネスメール詐欺(BEC)**の手法を応用した組織的犯罪です。
リバースエンジニアリング型
被害者のデジタルフットプリント(SNS、ブログ、コメント履歴)を徹底分析。過去10年分の投稿から性格、価値観、トラウマまで把握し、最も脆弱な心理的ポイントを攻撃します。**標的型攻撃(APT)**の個人版とも言える手法です。

決済手段の多様化

新型暗号資産の悪用
ビットコインやイーサリアムだけでなく、追跡が困難なプライバシーコイン(Monero、Zcash)の使用が増加。また、DeFi(分散型金融)プロトコルを悪用し、資金洗浄を自動化。2025年は「ステーブルコイン詐欺」も登場し、法定通貨と同等の安定性を謳って詐取します。
電子ギフトカード・ポイント悪用
Amazonギフト券、Apple Gift Card、Google Playカードなどを要求。少額から始められ、購入も簡単なため、被害が拡大。最近では、各種ポイント(楽天ポイント、PayPayポイント)の譲渡を求めるケースも。これらは換金ルートが確立されており、追跡が困難です。

プラットフォーム別動向

各プラットフォームでの詐欺活動には明確な特徴があり、対策も異なります。

主要SNSプラットフォームの状況

プラットフォーム 月間被害報告数 主な年齢層 詐欺師の手口 対策状況
Instagram 892件 20-35歳 写真での魅力アピール AI検出導入
Facebook 756件 35-55歳 グループ経由の接触 本人確認強化
Twitter(X) 234件 25-40歳 DM爆撃戦術 通報機能改善
LINE 1,205件 全年齢 日本人なりすまし 年齢認証必須化
TikTok 445件 18-30歳 ライブ配信で誘導 未成年保護強化

マッチングアプリの被害状況

Tinder(被害報告:月間312件)
国際的な出会いを装う外国人詐欺師が多数。プロフィール写真の盗用が横行し、AIによる自動メッセージ送信も確認。2025年から導入された動画認証により、なりすましは減少傾向だが、認証後にアカウントを売買する新たな手口も登場。
Pairs(被害報告:月間189件)
真剣な出会いを求めるユーザーが多いため、結婚を前提とした長期的な詐欺が多い。本人確認書類の偽造技術が向上し、運営側の審査をすり抜けるケースが増加。2025年10月からAI画像認識による偽造検出システムを導入。
Omiai(被害報告:月間156件)
30代以上の婚活層がターゲット。経済力のある層を狙い、投資話と組み合わせた詐欺が特徴。イエローカード機能により危険人物の可視化が進むも、新規アカウントでの再登録が課題。
with(被害報告:月間98件)
心理テストを悪用し、性格診断結果から脆弱性を分析する手口が登場。相性の良さを過度に強調し、運命的な出会いを演出。2025年9月から心理カウンセラー監修の詐欺対策コンテンツを提供開始。

新興プラットフォームでの動向

Discord(ゲーマー・投資コミュニティ)
ゲームや暗号資産のコミュニティで知り合い、徐々に個人的な関係に発展させる手口。ボイスチャットでの音声変換技術を使い、性別を偽装するケースも。サーバー管理者による監視が困難で、被害が拡大しています。
Clubhouse(音声SNS)
2025年に再び人気が復活。音声のみのコミュニケーションという特性を悪用し、声の魅力で惹きつける。顔が見えない分、理想化が進みやすく、短期間で感情的な結びつきが生まれやすい。
BeReal(リアルタイム写真共有)
「今」を共有するコンセプトを悪用し、生活感のある写真で信頼を獲得。時差を利用して海外在住を装い、リアルタイムで撮影したように見せかける技術も使用されています。

今後の予測

2026年への展望

量子コンピューティングの影響
2026年には量子コンピュータの実用化が進み、現在の暗号化技術が脅かされる可能性があります。これにより、詐欺師がより高度な暗号解読やなりすましを行うリスクが高まります。一方で、量子暗号通信により、詐欺の検出精度も向上すると期待されています。
規制強化の動き
日本政府は2026年4月から「デジタル詐欺対策基本法」の施行を予定。プラットフォーマーへの責任明確化、本人確認の厳格化、被害者救済基金の創設などが含まれます。また、国際連携も強化され、G7での共同対策が本格化する見込みです。
技術的対策の進化
ブロックチェーン技術を活用したデジタルIDの普及により、なりすましが困難になると予測。また、行動分析AIにより、詐欺師の行動パターンを事前に検出し、被害を未然に防ぐシステムの実用化が期待されています。

業界別リスク予測

業界 リスクレベル 予測される被害 必要な対策
金融 極めて高い 不正送金、口座開設 生体認証必須化
EC・小売 高い カード不正利用 3Dセキュア強化
SNS事業者 高い 信頼性低下 AI監視強化
暗号資産 極めて高い 投資詐欺 KYC徹底
通信事業者 中程度 SIMスワップ 本人確認強化

新たな脅威の予測

脳波インターフェース詐欺
2026年以降、BMI(Brain-Machine Interface)デバイスの普及に伴い、脳波データを悪用した新型詐欺の登場が懸念されます。感情状態をリアルタイムで把握し、最も脆弱なタイミングでアプローチする可能性があります。
合成生物学的なりすまし
DNA情報や生体データを偽装する技術の悪用。バイオメトリクス認証を突破し、究極のなりすましを実現する恐れ。ただし、技術的ハードルは高く、2027年以降のリスクと考えられています。

対策と提言

個人レベルでの対策強化

  1. デジタルリテラシーの向上

    • 定期的な詐欺手口の学習
    • セキュリティ設定の見直し(月1回)
    • 多要素認証の完全導入
  2. 心理的防御の構築

    • 恋愛依存度チェック(定期的に)
    • 第三者相談の習慣化
    • 冷却期間ルールの徹底
  3. 経済的防御策

    • 送金限度額の設定
    • 別口座での資産分散
    • 投資は必ず公式ルートで

社会全体での取り組み

教育機関での対策
中学・高校でのデジタルシチズンシップ教育にロマンス詐欺対策を組み込み。大学では新入生オリエンテーションで必須講習化。2025年度から文部科学省が標準カリキュラムを策定し、全国展開を開始。
企業の責任
プラットフォーマーは、AIを活用した詐欺検出システムの導入を加速。金融機関は、不審な送金パターンの検出精度を向上。2025年10月から、業界横断的な情報共有プラットフォーム「詐欺対策コンソーシアム」が稼働開始。
国際協力の強化
2025年11月のG20サミットで、国際的な詐欺対策枠組みに合意。詐欺師の引き渡し条約、資金凍結の国際協力、被害者支援の標準化などが含まれます。特にアジア太平洋地域での連携強化が重要課題として認識されています。

よくある質問

Q: 2025年になって急激に被害が増えた理由は何ですか?
A: 複数の要因が重なっています。第一に、生成AIの大幅な進化により、詐欺師が人間と見分けがつかない会話や画像を簡単に作れるようになったこと。第二に、コロナ禍後の社会で、オンラインでの出会いが完全に定着し、警戒心が薄れたこと。第三に、暗号資産バブルの再来により、投資話への関心が高まったこと。さらに、詐欺組織の産業化が進み、マニュアル化・分業化により効率的な詐欺が可能になったことも大きな要因です。これらが複合的に作用し、被害の急増につながっています。
Q: AIが進化すると、人間の詐欺師と見分けがつかなくなりますか?
A: 技術的には、かなり見分けが困難になっています。しかし、完全に見分けがつかなくなることはありません。AIには苦手な分野があり、例えば、個人的なエピソードの一貫性、突発的な質問への自然な対応、長期的な記憶の維持などで綻びが出ます。また、最終的に金銭を要求するという詐欺の本質は変わりません。重要なのは、技術の進化に惑わされず、「会ったことのない相手にお金を送らない」という基本原則を守ることです。
Q: 暗号資産で被害に遭った場合、追跡は本当に不可能なのですか?
A: 完全に不可能ではありませんが、非常に困難です。ビットコインなどの主要な暗号資産は、ブロックチェーン上で取引履歴が公開されているため、理論的には追跡可能です。2025年には、Chainalysisなどの専門企業と警察の連携が強化され、実際に資金の流れを追跡して犯人逮捕に至ったケースも出ています。ただし、ミキシングサービスやプライバシーコインを使われると、追跡はほぼ不可能になります。また、海外の取引所を経由された場合、国際協力が必要となり、回収は極めて困難です。

まとめ:進化する脅威への継続的な対応を

ロマンス詐欺 2025の状況は、技術の進化とともに複雑化・巧妙化しています。被害額は過去最悪を更新し続け、新たな手口が次々と登場しています。

しかし、悲観的になる必要はありません。対策技術も同時に進化しており、知識と警戒心があれば、必ず被害を防ぐことができます。フィッシング詐欺ソーシャルエンジニアリング標的型攻撃(APT)など、他のサイバー犯罪対策の知見も活用できます。

重要なのは、最新の情報を常にアップデートし、冷静な判断力を保つことです。愛情は素晴らしいものですが、それを悪用する犯罪者の存在を忘れてはいけません。

社会全体で協力し、技術と制度の両面から対策を強化することで、ロマンス詐欺のない安全な社会を実現できるはずです。


【重要なお知らせ】

  • 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況に対する助言ではありません
  • 実際に被害に遭われた場合は、警察(#9110)や消費生活センター(188)などの公的機関にご相談ください
  • 法的な対応が必要な場合は、弁護士などの専門家にご相談ください
  • 記載内容は作成時点の情報であり、手口は日々進化している可能性があります

更新履歴

初稿公開

京都開発研究所

システム開発/サーバ構築・保守/技術研究

CMSの独自開発および各業務管理システム開発を行っており、 10年以上にわたり自社開発CMSにて作成してきた70,000以上のサイトを 自社で管理するサーバに保守管理する。