ロマンス詐欺被害者の証言|5つの実例から学ぶ

「まさか自分が騙されるなんて」—すべての被害者が口にする言葉です。ロマンス詐欺の体験談には、巧妙な手口と人間心理の弱さが克明に記録されています。実際の被害者5名の証言を通じて、詐欺の実態と教訓をお伝えします。これらの勇気ある告白が、一人でも多くの方を詐欺から守ることを願っています。

実際の被害者が語る真実

被害者の方々が実名を伏せて語ってくれた、生々しい証言をご紹介します。これらは決して他人事ではありません。

なぜ被害者は語るのか

証言することの意味
被害者が体験を語るには、大変な勇気が必要です。それでも語る理由:
・同じ被害を防ぎたい
・詐欺の実態を知ってほしい
・被害者への偏見をなくしたい
・自分自身の心の整理
・社会への警鐘

これらの証言は、被害者の痛みと引き換えに得られた貴重な教訓です。
被害者の共通点
証言者に共通していたのは「普通の人」であることです:
・高学歴、社会的地位のある人も多数
・IT知識がある人も被害に
・恋愛経験豊富な人も騙される
・警戒心が強い人さえ被害に
・「自分は大丈夫」と思っていた全員

詐欺師の心理操作は、誰もが陥る可能性があるほど巧妙です。

事例1:40代女性・LINE投資詐欺

プロフィール|A子さん(42歳・会社員)

被害者の背景
・職業:大手企業の経理部勤務
・家族:離婚して3年、子供2人(中学生)
・被害額:850万円
・被害期間:2023年10月〜2024年3月(5ヶ月)
・出会い:Facebook→LINE移行

出会いから信頼まで

A子さんの証言:運命的な出会いだと思った
「Facebookで突然メッセージが来ました。プロフィール写真は40代後半の優しそうなアジア系の男性。シンガポール在住の投資コンサルタントと名乗っていました。

最初は警戒していましたが、彼は決して急がず、1ヶ月以上は普通の会話だけ。朝の『おはよう』から始まり、仕事の愚痴を聞いてくれ、子育ての相談にも真剣に乗ってくれました。

離婚後、誰にも甘えられなかった私にとって、彼の存在は心の支えでした。『君は頑張りすぎている』『もっと自分を大切にして』—そんな優しい言葉に、涙が出ることもありました。」

投資話への誘導

巧妙な投資への誘い
「2ヶ月目に入った頃、彼が『君の将来が心配だ』と言い始めました。シングルマザーで子供の教育費を心配する私を見て、『投資で資産を増やそう』と提案してきたんです。

最初は断りました。でも彼は『強要はしない。ただ、君の幸せを願っているだけ』と。そして自分の投資実績を見せてきました。1000万円が3ヶ月で1500万円に。スクリーンショットには、有名な証券会社のロゴもありました。」

被害の拡大

時期 投資額 詐欺師の言葉 A子さんの心理
1回目 10万円 「まず少額から」 試してみよう
2回目 30万円 「調子がいい」 利益が出てる!
3回目 100万円 「今がチャンス」 子供のために
4回目 200万円 「もう少しで目標達成」 ここまで来たら
5回目 510万円 「税金の支払いが必要」 引き出すために

詐欺の発覚と崩壊

A子さんの証言:すべてが嘘だった
「850万円を投資した後、利益を引き出そうとしたら『税金として200万円必要』と言われました。さすがにおかしいと思い、金融庁に問い合わせたら、そんな証券会社は存在しないと。

血の気が引きました。貯金、退職金の前借り、親から借りたお金...すべて失いました。彼に問い詰めると、既読無視。翌日にはブロックされていました。

警察に行きましたが、海外への送金は取り戻せないと。子供たちに申し訳なくて、死にたいと思った時期もあります。」

現在と教訓

A子さんからのメッセージ
「今は債務整理をして、少しずつ生活を立て直しています。子供たちも理解してくれて、アルバイトを始めてくれました。

伝えたいのは、**相手がどんなに優しくても、会ったことのない人を信用してはいけない**ということ。そして**投資話が出た時点で詐欺を疑う**こと。恋愛感情を利用した投資詐欺は、本当に巧妙です。

寂しさや不安につけ込まれました。でも、寂しいのは恥ずかしいことじゃない。ただ、その寂しさを埋める相手は、画面の向こうの見知らぬ人ではないということを、忘れないでください。」

事例2:50代男性・国際結婚詐欺

プロフィール|B男さん(56歳・公務員)

被害者の背景
・職業:地方公務員(管理職)
・家族:独身(婚歴なし)
・被害額:580万円
・被害期間:2023年6月〜2024年1月(7ヶ月)
・出会い:国際交流サイト→WhatsApp

理想の女性との出会い

B男さんの証言:人生最後のチャンスだと思った
「定年まであと数年、このまま独身で終わるのかと焦っていました。国際交流サイトで出会った彼女は、フィリピン人の看護師で32歳。20歳以上年下の美しい女性が、なぜ自分に興味を持つのか不思議でしたが、『年上の日本人男性が好き』『誠実さに惹かれた』と言われ、舞い上がってしまいました。

毎日のビデオ通話(音声のみ、顔は見せない)、愛情表現の連続。『あなたと結婚したい』『日本で一緒に暮らしたい』—56年間の人生で、こんなに必要とされたことはありませんでした。」

次々と起こる「不幸」

時期 要求理由 金額 B男さんの対応
2ヶ月目 母親の入院費 30万円 すぐに送金
3ヶ月目 弟の学費 50万円 貯金から
4ヶ月目 台風で家が損壊 100万円 親族から借金
5ヶ月目 来日の準備費用 150万円 退職金前借り
6ヶ月目 ビザ手続き費用 80万円 カードローン
7ヶ月目 空港でのトラブル 170万円 送金後音信不通

詐欺発覚の瞬間

B男さんの証言:空港で待ち続けた3日間
「ついに来日の日。成田空港で花束を持って待ちました。しかし彼女は現れない。『入国審査でトラブル』『追加費用が必要』とメッセージ。170万円を送金した途端、連絡が途絶えました。

3日間、空港近くのホテルに泊まって待ちました。職場には仮病を使って。4日目、フィリピン大使館に問い合わせたら、そんな人物のパスポート記録はないと。すべてが嘘だったんです。」

立ち直りへの道

B男さんからのメッセージ
「職場では降格処分を受け、経済的にも精神的にもどん底でした。でも、被害者の会で同じ境遇の人と出会い、少しずつ立ち直れています。

**年齢差がある国際恋愛には要注意**です。また、**次々と不幸が起こるのは詐欺の典型**。普通の人の人生に、そんなに不幸は重なりません。

寂しさと焦りが判断を狂わせました。でも50代でも60代でも、人生はやり直せます。本当の出会いは、画面の中ではなく、現実の世界にあります。」

事例3:30代女性・仮想通貨詐欺

プロフィール|C子さん(35歳・IT企業勤務)

被害者の背景
・職業:IT企業のエンジニア
・家族:既婚、子供なし
・被害額:2,100万円
・被害期間:2023年8月〜2024年2月(6ヶ月)
・出会い:Instagram→Telegram

IT知識があっても騙された

C子さんの証言:技術者のプライドが邪魔をした
「私はITエンジニアとして10年以上のキャリアがあり、セキュリティの知識もありました。だからこそ『自分は騙されない』という過信がありました。

Instagramでフォローしてきた彼は、ドバイ在住の仮想通貨トレーダー。技術的な話も詳しく、ブロックチェーンの知識も本物でした。最新の技術トレンドにも精通していて、エンジニアとしても尊敬できる相手でした。

『君ほど優秀な女性は見たことがない』『一緒にプロジェクトを立ち上げよう』—仕事面でも認められ、恋愛感情も芽生えました。」

巧妙な仮想通貨詐欺

段階的な信頼構築
「最初は仮想通貨の勉強から始まりました。彼が教えてくれた取引所に10万円を入金。実際に利益が出て、20万円を引き出せました。これで完全に信用してしまったんです。

次は50万円、100万円と投資額を増やし、画面上では資産が3倍に。『今なら特別なICOに参加できる』と言われ、夫婦の貯金1,500万円を投入。さらに『あと少しで億り人』と煽られ、両親から借りた500万円も...」
投資段階 金額 表示利益 実際
テスト 10万円 20万円 引き出し成功(餌)
第1段階 50万円 150万円 画面上のみ
第2段階 100万円 400万円 画面上のみ
第3段階 500万円 2,000万円 画面上のみ
最終段階 1,500万円 6,000万円 すべて詐欺

夫への告白と離婚危機

C子さんの証言:すべてを失いかけた
「引き出そうとしたら『税金と手数料で500万円必要』と。夫に内緒にできる金額を超えていたので、泣きながら告白しました。夫は激怒し、離婚寸前に。でも最終的には『一緒に乗り越えよう』と言ってくれました。

取引所は偽物、利益画面も偽物、彼の写真も偽物。ITのプロである私が、偽サイトに騙されたんです。技術的な知識があっても、恋愛感情が入ると判断力がゼロになることを痛感しました。」

夫婦で再出発

C子さんからのメッセージ
「現在は夫婦でカウンセリングを受けながら、借金返済に励んでいます。夫の理解がなければ、命を絶っていたかもしれません。

**ITに詳しくても騙されます**。むしろ、知識があるという過信が危険です。また、**最初に少額を引き出せるのは詐欺の手口**。信用させるための投資です。

そして何より、**配偶者に隠し事をしないこと**。一人で抱え込むと、被害が拡大します。恥ずかしくても、大切な人には相談してください。」

事例4:60代男性・軍人なりすまし

プロフィール|D男さん(65歳・定年退職者)

被害者の背景
・職業:元大手企業役員(定年退職)
・家族:妻と死別、子供3人(独立)
・被害額:3,200万円
・被害期間:2023年4月〜2023年12月(8ヶ月)
・出会い:Facebook→メール

未亡人を癒やす「米軍女性将校」

D男さんの証言:妻を亡くした寂しさを埋めてくれた
「妻を癌で亡くして1年、毎日が虚しく、生きる意味を見失っていました。Facebookで連絡してきたのは、アフガニスタン駐留の米軍女性将校。45歳で未亡人、一人息子がいるという境遇に共感しました。

彼女も配偶者を亡くし、同じ痛みを抱えていました。『あなたに出会えて生きる希望が湧いた』『定年後は一緒に暮らしたい』—お互いの傷を癒やし合う関係だと信じていました。」

巧妙な軍人設定の悪用

次々と起こる「軍事的トラブル」
D男さんは元企業役員として、問題解決に慣れていました。その心理を詐欺師は巧みに利用:

・「軍の通信費が自腹で払えない」→100万円送金
・「息子が現地で病気に」→200万円送金
・「除隊手続きに費用が」→500万円送金
・「荷物の輸送に保険が」→800万円送金
・「帰国便の手配に」→1,600万円送金

すべて「軍の機密」を理由に、詳細は教えられないと。

子供たちの介入

D男さんの証言:息子に救われた
「退職金と貯金をすべて使い、家を売ろうとした時、息子が気づきました。通帳を見て顔面蒼白に。『父さん、これは詐欺だ』と。

息子が調べてくれました。写真は別人の軍人、軍のメールアドレスは偽物、そもそも女性将校がSNSで恋人を探すことはあり得ないと。目が覚めました。」

家族の支えと再生

D男さんからのメッセージ
「3,200万円という老後資金をすべて失いました。でも子供たちが『お父さんを一人にした私たちも悪かった』と言ってくれて。今は長男家族と同居しています。

**軍人を名乗る詐欺は非常に多い**です。愛国心や同情心を利用されます。また、**妻や夫を亡くした高齢者は特に狙われやすい**。寂しさは人を弱くします。

でも、家族がいなくても、必ず助けてくれる人がいます。地域包括支援センター、消費生活センター、どこでもいいから相談してください。一人で抱え込まないで。」

事例5:20代女性・マッチングアプリ詐欺

プロフィール|E子さん(28歳・看護師)

被害者の背景
・職業:総合病院の看護師
・家族:一人暮らし
・被害額:320万円
・被害期間:2024年1月〜2024年5月(4ヶ月)
・出会い:マッチングアプリ→LINE

理想の彼氏の正体

E子さんの証言:普通の恋愛だと思っていた
「マッチングアプリで出会った彼は、31歳の外資系コンサルタント。高身長でイケメン、高収入。なぜ私なんかにと思いましたが、『君の優しさに惹かれた』『看護師という仕事を尊敬している』と言われ、本気で好きになりました。

3回デートしました。高級レストラン、夜景の見えるバー、おしゃれなカフェ。すべて彼が支払い、プレゼントもくれました。『結婚を考えている』とまで言われ、完全に信じていました。」

実際に会っていても詐欺

デート 内容 費用 E子さんの印象
1回目 高級フレンチ 彼が支払い 紳士的
2回目 夜景デート 彼が支払い ロマンチック
3回目 美術館 彼が支払い 知的で素敵
4回目 約束するも急用でキャンセル - 仕方ない
以降 会えない理由が続く - 心配

緊急事態の演出

E子さんの証言:助けたい一心だった
「デート4回目の直前、『親が事故で入院した』と連絡が。その後、会社でトラブル、自分も体調不良と、次々と問題が。

『治療費が足りない』『一時的に貸してほしい』『来月のボーナスで必ず返す』—看護師として病気の人を見過ごせない性格を、完全に利用されました。50万、100万、170万...気づいたら320万円。」

詐欺グループの一員だった

E子さんの証言:デートも演技だった
「お金を貸した後、音信不通に。必死で調べたら、彼は詐欺グループの一員でした。デートの時の優しい笑顔も、甘い言葉も、すべて演技。他にも被害者がいて、同じレストラン、同じデートコースでした。

実際に会っていたから信じた。でもそれも詐欺の手口だったんです。」

若い世代へのメッセージ

E子さんからのメッセージ
「20代でも騙されます。むしろ、恋愛に夢を見る年代だから危険かもしれません。

**実際に会っても詐欺師の可能性がある**ということを知ってほしい。特に**急に会えなくなり、お金の話が出たら100%詐欺**です。

また、**高スペック過ぎる相手には要注意**。普通、そんな人はマッチングアプリを使いません。現在は親に借金を返済中ですが、この経験を多くの人に伝えることが、せめてもの償いだと思っています。」

被害者からのメッセージ

共通する後悔と教訓

5人の被害者が伝えたいこと
すべての被害者が口を揃えて言うのは:

1. **「まさか自分が」という油断が最大の敵**
2. **寂しさ、焦り、欲が判断力を奪う**
3. **お金の話が出た時点で関係を断つべき**
4. **誰かに相談していれば防げた**
5. **恥ずかしくても助けを求める勇気を**

立ち直りのプロセス

段階 期間 被害者の状態 必要なサポート
ショック期 1-2週間 現実を受け入れられない 傾聴、寄り添い
混乱期 1-2ヶ月 怒り、自責、絶望 カウンセリング
受容期 3-6ヶ月 現実を受け入れ始める 実務的支援
回復期 6ヶ月-1年 前を向き始める 自助グループ
成長期 1年以降 経験を活かす 啓発活動

社会へのメッセージ

被害者を責めないで
「『なぜ騙された』『常識で分かる』という言葉に、どれだけ傷つくか。被害者も好きで騙された訳ではありません。

詐欺師が悪いのであって、被害者は犯罪の被害者です。偏見や批判ではなく、理解と支援が必要です。」—被害者の会代表
一人で悩まないで
「今まさに悩んでいる方、疑いを持っている方、すでに被害に遭った方。どうか一人で抱え込まないでください。

消費生活センター(188)、警察相談(#9110)、どこでもいいから相談してください。恥ずかしいことではありません。勇気ある一歩が、あなたを救います。」—全被害者より

まとめ:体験談が教える真実

ロマンス詐欺の体験談は、詐欺が決して他人事ではないことを教えてくれます。高学歴、IT知識、社会的地位、年齢、性別に関係なく、誰もが被害者になりうるのです。

5人の勇気ある証言から学ぶべきは、詐欺師の手口の巧妙さと、人間の心理の弱さです。しかし同時に、適切な知識と警戒心があれば防げること、そして被害に遭っても必ず立ち直れることも示しています。

これらの証言を「気の毒な他人の話」として読むのではなく、「明日の自分を守る教科書」として受け止めてください。被害者の痛みと引き換えに得られたこの教訓を、決して無駄にしないでください。

更新履歴

初稿公開

京都開発研究所

システム開発/サーバ構築・保守/技術研究

CMSの独自開発および各業務管理システム開発を行っており、 10年以上にわたり自社開発CMSにて作成してきた70,000以上のサイトを 自社で管理するサーバに保守管理する。