男性被害者のためのロマンス詐欺対策と相談先

「男がロマンス詐欺に?」という偏見が男性被害を深刻化させています。実際には男性被害者が急増し、被害額は女性を上回ることも。本記事では国際結婚詐欺を含む男性特有の被害パターンを分析し、恥を乗り越えて相談するための対策と支援先をご紹介します。

男性被害者の実態と偏見

男性のロマンス詐欺被害は、社会的偏見により見えにくくなっていますが、その実態は深刻です。

増加する男性被害

統計が示す衝撃的な実態
2024年の警察庁データによると、ロマンス詐欺被害者の42%が男性です。しかも、その数は急増しています:
・2022年:男性被害者 1,234件(前年比+45%)
・2023年:2,156件(前年比+75%)
・2024年:3,892件(前年比+80%)
特に30-50代の男性被害が顕著で、平均被害額は620万円と女性の480万円を大きく上回ります。最高被害額は2.3億円に達し、その深刻さが浮き彫りになっています。
隠れた被害の存在
男性被害者の特徴として、被害を申告しない傾向が強いことが挙げられます:
・被害を認めたくない(推定65%が未申告)
・「情けない」という自己嫌悪
・周囲の目を恐れる
・仕事への影響を懸念
・家族に知られたくない
実際の被害は、表面化している数の3倍以上と推測されています。

男性被害者の年代別特徴

年代 被害件数 平均被害額 主な手口 心理的特徴
20代 412件 180万円 暗号資産投資 経験不足
30代 892件 420万円 国際結婚 結婚願望
40代 1,456件 680万円 ビジネス投資 中年の危機
50代 876件 920万円 援助要請 保護欲求
60代以上 256件 1,250万円 介護結婚 孤独感

社会的偏見との戦い

根深い性別役割意識
日本社会には「男性は騙されない」「男性は強くあるべき」という固定観念が根強く存在します。この偏見が男性被害者を苦しめています:
・「男のくせに騙されるなんて」という周囲の反応
・「女性に騙される男は情けない」というレッテル
・「性欲に負けただけ」という誤解
・「自業自得」という冷たい視線
これらの偏見が、男性被害者を孤立させ、相談を妨げています。
メディアによる偏向報道
ロマンス詐欺の報道では、女性被害者ばかりが取り上げられる傾向があります。男性被害は「笑い話」として扱われることも多く、深刻さが伝わりません。この報道姿勢が、男性被害者の声を封じ込め、被害の実態を見えなくしています。

相談しにくい環境

男性向け相談窓口の不足
DV相談、性被害相談など、多くの相談窓口が女性向けに設計されています。男性が相談しても:
・「男性なのに」という反応をされる
・女性相談員しかいない
・待合室で女性と一緒になる気まずさ
・男性の心理を理解してもらえない
・「もっとしっかりしろ」と説教される
これらの経験が、二次被害となることもあります。
職場や家庭での立場
・管理職の立場:部下に知られたくない
・一家の大黒柱:家族の信頼を失いたくない
・社会的地位:評判への影響を恐れる
・取引先との関係:ビジネスへの波及を懸念
男性特有の社会的責任が、相談を困難にしています。

男性が狙われる詐欺パターン

詐欺師は男性心理を熟知し、巧妙な手口で接近してきます。

若い女性を装う手口

20代女性を演じる詐欺師の特徴
詐欺師が作り上げる「理想の若い女性」像:
・年齢:22-28歳(ターゲットより15-20歳若い)
・容姿:モデル級の美貌(盗用写真使用)
・性格:素直、従順、甘えん坊
・背景:複雑な家庭環境、苦労人
・態度:年上男性への憧れと尊敬
「こんな若い美女が自分に」という優越感を刺激します。
段階的な親密化戦略
第1週:「お父さんみたいで安心する」
第2週:「年上の男性が好き」と告白
第3週:「あなただけが頼り」と依存
第4週:「結婚したい」と将来を語る
第5週:「困っている」と援助要請
男性の保護欲と優越感を巧みに操作します。

国際結婚詐欺

出身地設定 典型的なストーリー 要求パターン
フィリピン 貧しい家族を支える健気な女性 家族の医療費
タイ 日本文化に憧れる純粋な女性 来日費用
中国 高学歴だが就職難の女性 ビジネス資金
ベトナム 田舎出身の素朴な女性 結婚準備金
ロシア・ウクライナ 戦争や経済危機から逃れたい女性 避難費用

投資型への誘導

「一緒に豊かになろう」という誘惑
男性のプライドとビジネス欲を刺激する手口:
・「あなたのビジネスセンスを尊敬」
・「二人の将来のために投資しよう」
・「私の叔父が投資のプロ」
・「特別な情報がある」
・「あなたなら成功できる」
恋愛感情とビジネス欲求を同時に満たす巧妙な手口です。
暗号資産投資詐欺との複合
最近の傾向として、ロマンス詐欺と暗号資産詐欺が組み合わされます:
・偽の取引所サイトへの誘導
・「私も100万円が500万円になった」
・利益が出ているように見せる偽画面
・出金時に高額な税金要求
・最終的に全額詐取
平均被害額は850万円に上ります。

性的な要素の悪用

性的関係をほのめかす手口
詐欺師は男性の性的欲求を巧みに利用します:
・露出度の高い写真を徐々に送る
・「会ったらしたいこと」を具体的に語る
・ビデオ通話で挑発的な行動
・「あなただけ特別」と性的独占を演出
・しかし実際に会うことは絶対にない
性的期待を高めながら、金銭要求へと誘導します。
性的脅迫への発展リスク
親密な写真や動画を送らせた後、脅迫に転じるケースも:
・「家族にばらす」と脅迫
・「会社に送る」と恐喝
・「SNSで公開する」
これらの脅迫により、さらなる金銭を要求されます。

男性特有の心理的脆弱性

男性が詐欺に遭いやすい心理的要因を理解することが、予防の第一歩です。

プライドと孤独

「強い男」の呪縛
社会から求められる「男らしさ」が、逆に脆弱性となります:
・弱みを見せられない→相談できない
・頼られる立場→頼ることができない
・感情を抑圧→孤独感の蓄積
・失敗を認められない→被害の否認
・面子を保つ→無理な出費
このプライドが、詐欺師につけ込まれる隙となります。
中年男性の孤独
特に40-50代男性の孤独は深刻です:
・仕事中心で友人が少ない(親しい友人2人以下:58%)
・家族とのコミュニケーション不足
・趣味や社会活動の欠如
・感情的なつながりへの渇望
・誰にも理解されない感覚
この孤独感が、詐欺師からの「理解」を特別に感じさせます。

承認欲求の構造

承認の種類 男性の欲求 詐欺師の利用方法
能力承認 仕事や知識を認められたい 「すごい」「尊敬する」
男性性承認 男として認められたい 「頼もしい」「守ってほしい」
経済力承認 稼ぐ力を評価されたい 「成功者」「憧れる」
性的承認 異性として魅力的でありたい 「かっこいい」「好き」
人格承認 人として尊重されたい 「優しい」「理解者」

保護欲の悪用

騎士道精神の利用
男性の「女性を守りたい」という本能的欲求を悪用:
・「あなただけが頼り」→責任感を刺激
・「困っているの」→救済欲求を刺激
・「怖い」→保護本能を刺激
・「あなたがいないと」→必要とされる喜び
・「助けて」→ヒーロー願望を刺激
これらの言葉が、理性的判断を狂わせます。
経済的優位性の演出
「男性が経済的に支えるべき」という価値観を利用:
・少額から始める(1万円の立て替え)
・徐々に金額を上げる(5万、10万、50万)
・「返すから」という約束(守られない)
・「愛があれば助けるはず」という圧力
・「ケチな男は嫌い」という脅し
男性のプライドを利用した巧妙な手口です。

性的欲求の利用

性的関心を金銭へ転換
詐欺師は性的欲求を段階的に高め、判断力を奪います:
第1段階:魅力的な写真で関心を引く
第2段階:性的な会話で親密度を上げる
第3段階:「会いたい」と期待を高める
第4段階:会う条件として金銭要求
第5段階:支払い後も会わずに追加要求
性的期待が高まるほど、冷静な判断が困難になります。

典型的な詐欺のシナリオ

実際の被害事例から、典型的なパターンを解説します。

アジア女性詐欺

フィリピン女性を装うケース
最も多い手口の実例:
【設定】25歳、看護師、マニラ在住
【初期】「日本人男性は優しい」と接近
【展開】家族の病気、弟の学費、台風被害
【要求】治療費30万円→学費50万円→家の修理100万円
【結末】来日直前に音信不通
【被害総額】280万円
実際には複数の詐欺師が組織的に活動しています。
中国人女性を装うケース
【設定】28歳、大学院卒、富裕層の娘
【初期】「日本のビジネスに興味」
【展開】投資話、共同事業の提案
【要求】初期投資100万円→追加投資→税金
【特徴】偽の投資サイト、利益の演出
【被害総額】1,500万円
高学歴設定で、知的な男性をターゲットにします。

東欧美女詐欺

国設定 年齢 職業設定 ストーリー 平均被害額
ロシア 26歳 モデル 戦争から逃れたい 450万円
ウクライナ 24歳 学生 家族が戦争被害 380万円
ポーランド 27歳 医師 日本で働きたい 520万円
チェコ 23歳 芸術家 個展を開きたい 280万円
ルーマニア 25歳 IT技術者 起業したい 680万円

援助要請パターン

段階的にエスカレートする要求
実際の被害者の証言から見る要求の変遷:
1ヶ月目:「携帯代が払えない」(3万円)
2ヶ月目:「家賃を滞納」(15万円)
3ヶ月目:「母が入院」(50万円)
4ヶ月目:「借金取りが」(100万円)
5ヶ月目:「命が危ない」(200万円)
6ヶ月目:音信不通
断れない状況を段階的に作り出します。

男性向けの予防策

男性特有の心理を理解した上での、実践的な予防策をご紹介します。

感情のコントロール

恋愛感情と性的欲求の分離
冷静な判断のためのルール:
・性的な話題が出たら一度離れる
・写真や動画は保存しない
・「会ってから」を徹底する
・オンラインの関係に深入りしない
・定期的に第三者視点で振り返る
感情に流されない自己管理が重要です。
承認欲求の自覚
自分の欲求を理解することで、操作されにくくなります:
・褒め言葉に舞い上がらない
・「特別扱い」に疑問を持つ
・過度な称賛は警戒する
・依存されることの危険性を認識
・ヒーロー願望を自制する

客観的な視点維持

チェック項目 確認方法 危険度判定
本人確認 ビデオ通話、身分証 拒否なら極高
生活実態 SNS、日常写真 なければ高
金銭要求 頻度と金額 あれば極高
会う約束 実現性 延期なら高
矛盾点 発言の一貫性 多ければ高

金銭要求への対応

断り方のテクニック
プライドを保ちながら断る方法:
・「今は手元にない」(一時的な理由)
・「会ってから考える」(条件提示)
・「他の方法を探そう」(代替案)
・「専門家に相談する」(第三者の介入)
・「ルールで送金できない」(外的要因)
直接的な拒否より、間接的な方法が効果的です。

相談のハードルを越える

男性が相談することは勇気のいる行動ですが、早期相談が被害を防ぎます。

恥の克服

認識を変える第一歩
相談することは弱さではなく、賢明さの証です:
・誰でも騙される可能性がある
・専門家に相談するのは当然の権利
・早期相談が被害を最小限にする
・経験を共有することで他者を救える
・恥は一時的、被害は永続的
プライドを守るためにこそ、早期相談が重要です。
相談することの価値
ビジネスでコンサルタントを雇うように、人生の問題でも専門家の助言を求めることは合理的です。成功者ほど、適切なタイミングで助けを求める判断力を持っています。

適切な相談先選び

男性が相談しやすい窓口
男性相談員がいる、または男性に理解のある相談先:
・男性専用ダイヤル(後述)
・オンライン相談(匿名可)
・男性カウンセラー
・警察のサイバー犯罪対策課
・弁護士(男性弁護士指名可)
自分に合った相談先を選ぶことが重要です。

匿名相談の活用

相談方法 メリット 利用方法
電話相談 声だけで相談可 非通知設定可
メール相談 時間を選ばない 匿名アドレス使用
チャット相談 リアルタイム対応 ニックネーム可
掲示板相談 他の事例も見れる 完全匿名
AI相談 24時間対応 記録が残らない

男性専門の支援体制

男性被害者のための専門的な支援体制をご紹介します。

男性相談窓口

男性のための電話相談
各都道府県で開設されている男性専用窓口:
【東京】東京ウィメンズプラザ 男性のための悩み相談
電話:03-3400-5313
時間:月・水 17:00-20:00、土 14:00-17:00

【大阪】大阪府男性の悩み相談
電話:06-6910-6596
時間:第1・第4土曜 13:00-17:00

【全国】男性被害者ホットライン
電話:0570-033-388
時間:平日 10:00-17:00
男性相談員が対応し、男性の立場を理解した相談が可能です。

オンライン相談

24時間利用可能なオンライン相談
・法務省インターネット人権相談
URL:https://www.jinken.go.jp/

・日本司法支援センター(法テラス)
URL:https://www.houterasu.or.jp/
メール相談可能

・消費者庁 消費者ホットライン
電話:188(いやや)

・警察庁 サイバー犯罪相談
URL:https://www.npa.go.jp/cyber/

匿名での相談が可能で、男性も利用しやすい環境です。

自助グループ

男性被害者の会
同じ経験をした男性同士で支え合う場:
・詐欺被害者の会(男性部会)
・オンライン自助グループ
・SNSでの情報交換グループ
・定期的なミーティング(都市部)
「自分だけじゃない」という安心感が、回復への第一歩となります。

男性被害者のよくある質問

Q: 50代管理職です。若い外国人女性に騙されているかもしれませんが、部下もいる立場で相談できません。
A: お気持ちはよく分かります。社会的立場がある方ほど、相談しづらいものです。まず、匿名での相談から始めることをお勧めします。消費生活センター(188)は匿名相談が可能で、秘密は厳守されます。また、男性専用相談窓口なら、同じような立場の方の相談経験も豊富です。オンライン相談なら、場所を選ばず、仕事の合間でも可能です。管理職としての判断力を、自分自身のためにも使ってください。早期の相談は、むしろあなたの賢明さを示すものです。
Q: 国際結婚を前提に交際していた女性に、総額800万円援助しました。詐欺だと認めたくありません。
A: 800万円もの大金を援助されたとのこと、その優しさと真剣さが伝わります。詐欺だと認めることは、自分の判断や感情を否定することになり、非常に辛いことです。しかし、一度客観的に状況を整理してみましょう。例えば、実際に会ったことはありますか?ビデオ通話はできていますか?援助の具体的な使途は確認できていますか?これらを第三者(弁護士など)と一緒に確認することで、真実が見えてくるかもしれません。もし詐欺でなければそれで良し、詐欺なら早期の対応で少しでも回収できる可能性があります。
Q: 性的な写真を送ってしまい、脅迫されています。恥ずかしくて誰にも相談できません。
A: これは性的脅迫(セクストーション)という犯罪で、あなたは被害者です。恥ずかしいと感じるのは当然ですが、脅迫に応じても要求はエスカレートするだけです。今すぐ警察のサイバー犯罪相談窓口(都道府県警察本部)に連絡してください。専門の捜査員が対応し、プライバシーは守られます。また、脅迫者との連絡は全て記録・保存し、絶対に要求には応じないでください。多くの同様の被害者がいて、警察も経験豊富です。勇気を出して相談することが、解決への第一歩です。
Q: 妻に内緒で500万円を送金してしまいました。家庭崩壊が怖くて言い出せません。
A: 家庭を守りたいお気持ち、痛いほど分かります。しかし、隠し続けることで状況はさらに悪化する可能性があります。まず、これ以上の被害を防ぐことが最優先です。その上で、妻への説明方法を専門家と相談しましょう。家族問題に詳しいカウンセラーや、夫婦関係の修復を支援する専門家もいます。正直に話すタイミングと方法を計画的に準備し、誠実に謝罪することで、多くのケースで家族の理解を得られています。一人で抱え込まず、専門家の力を借りてください。
Q: 男がロマンス詐欺に遭うなんて、笑われそうで怖いです。
A: その不安は多くの男性被害者が感じています。しかし、実際のデータでは男性被害者は全体の42%を占め、決して珍しいことではありません。詐欺師は心理操作のプロであり、どんなに賢明な人でも騙される可能性があります。医師、弁護士、大学教授、企業経営者など、社会的に成功している男性の被害も多数報告されています。笑うような人は、詐欺の深刻さを理解していないだけです。あなたの勇気ある相談が、他の男性被害者を救うことにもつながります。
Q: オンラインで知り合った女性が投資を勧めてきます。詐欺でしょうか?
A: 高確率で詐欺の可能性があります。特に以下の点を確認してください:1)実際に会ったことがあるか、2)投資先の実在性(金融庁登録の確認)、3)なぜあなたに特別に勧めるのか、4)利益保証をしていないか。本物の投資話なら、急がせることはありません。また、恋愛感情と投資を混ぜることは、プロの投資家なら絶対にしません。一度、金融庁の金融サービス利用者相談室(0570-016811)に相談することをお勧めします。

まとめ:男性も堂々と相談できる社会へ

男性のロマンス詐欺被害は、決して恥ずかしいことではありません。男性被害者の皆さんは、詐欺師の巧妙な心理操作の被害者であり、その苦しみは女性被害者と何ら変わりません。

国際結婚詐欺をはじめとする様々な手口は、男性の優しさ、責任感、保護欲といった美徳を悪用するものです。これらの特質は、本来称賛されるべきものであり、それを持つことは誇りです。

重要なのは、早期の相談と適切な男性向け対策です。プライドを捨てる必要はありません。むしろ、問題に正面から向き合い、専門家の助けを求めることこそ、真の強さと言えるでしょう。

男性も女性も等しく被害者になりうる時代、性別に関係なく、誰もが安心して相談できる社会を作っていくことが必要です。あなたの勇気ある一歩が、同じ苦しみを持つ多くの男性を救うことにつながります。

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初稿公開

京都開発研究所

システム開発/サーバ構築・保守/技術研究

CMSの独自開発および各業務管理システム開発を行っており、 10年以上にわたり自社開発CMSにて作成してきた70,000以上のサイトを 自社で管理するサーバに保守管理する。