ロマンス詐欺被害に遭った直後24時間以内にすべき7つのこと

ロマンス詐欺の被害に気づいた今、あなたの行動が被害の拡大を防ぎます。初動対応の「ゴールデンタイム」である24時間以内に適切な行動を取ることで、金銭の回収可能性が高まり、二次被害も防げます。証拠保全から警察への通報、金融機関への連絡まで、時系列に沿った具体的な対応方法を解説。パニックにならず、このガイドに従って確実に行動してください。被害からの回復は必ず可能です。

ゴールデンタイム:最初の24時間が勝負

被害に気づいた瞬間、多くの方はショックと混乱で何をすべきか分からなくなります。しかし、詐欺・なりすまし(人の心理を狙う)攻撃の被害において、初動対応の速さが明暗を分けます。以下の行動を時系列順に、確実に実行してください。

被害発覚後の時系列アクションマップ

経過時間 優先度 実施事項 所要時間
0-1時間 🔴最優先 証拠保全・連絡遮断 30分
1-6時間 🔴最優先 金融機関への連絡 1-2時間
6-12時間 🟠優先 警察への通報 2-3時間
12-24時間 🟡重要 二次被害防止策 2-3時間

1時間以内:証拠保全と連絡遮断

ステップ1:証拠の完全保全(最初の15分)

**スクリーンショットの取得**
相手のプロフィール画面、メッセージのやり取り全て、送金指示の画面、投資サイトの画面など、関連する全ての画面を撮影します。スマートフォンの場合、機種により異なりますが、電源ボタン+音量ボタンでスクリーンショットが取れます。重要なのは、URLが表示されている状態で撮影することです。
**データのバックアップ**
LINEやWhatsAppのトーク履歴をバックアップします。LINEの場合:設定→トーク→トークのバックアップ→今すぐバックアップ。メールの場合は、該当メールを別フォルダに保存し、PDFとして出力しておきます。音声通話の録音がある場合は、それも必ず保存してください。
**送金記録の確保**
銀行振込の明細、暗号資産の送金履歴、クレジットカード利用明細、電子マネーの利用履歴など、金銭に関する全ての記録を収集します。オンラインバンキングの取引履歴は、CSVファイルでダウンロードし、印刷もしておきましょう。

ステップ2:完全な連絡遮断(15-30分)

遮断項目 具体的な操作 確認事項
メッセージアプリ ブロック→通報→削除はしない トーク履歴は保持
SNS ブロック→アカウント通報 フォロワーリストを確認
電話 着信拒否設定 履歴は削除しない
メール 迷惑メール設定 メールは保存
出会い系サイト 運営に通報→退会保留 証拠保全後に退会
**ブロックの手順(LINE)**
1. トークルームを開く
2. 右上メニュー(三本線)をタップ
3. 「ブロック」を選択
4. 「通報」も同時に実施(詐欺行為として)
※削除はしないこと。証拠として必要です。
**共犯者の可能性も考慮**
詐欺師は複数アカウントを使用することがあります。同時期に知り合った他の相手や、紹介された投資グループのメンバーも全てブロックしてください。グループチャットがある場合は、メンバーリストをスクリーンショットで記録してから退出します。

ステップ3:パスワードの緊急変更(30-45分)

ソーシャルエンジニアリングの手口により、あなたの個人情報が詐欺師に渡っている可能性があります。以下のパスワードを即座に変更してください:

  1. 最優先で変更すべきもの

    • オンラインバンキング
    • 暗号資産取引所
    • メールアカウント(特にパスワードリセット用)
    • Apple ID / Google アカウント
  2. 24時間以内に変更すべきもの

    • SNSアカウント全て
    • ECサイト(Amazon、楽天など)
    • クレジットカード会社のマイページ
    • 電子マネー・決済アプリ

6時間以内:金融機関への連絡

銀行への連絡と口座凍結依頼

**振込先口座の凍結要請(最優先)**
詐欺師の口座を凍結することで、被害金の流出を防げる可能性があります。振込先の金融機関に電話し、「詐欺被害に遭い、御行の口座に振り込んでしまった」と伝えてください。
必要情報:振込日時、金額、振込先口座番号、振込人名義
**自分の口座の保護**
インターネットバンキングのログインIDとパスワードを変更し、振込限度額を最小限に設定します。可能であれば、一時的にインターネットバンキング機能を停止することも検討してください。不審な引き落としがないか、過去3ヶ月分の取引履歴を確認します。

主要銀行の緊急連絡先

金融機関 緊急連絡先 受付時間 凍結申請方法
三菱UFJ銀行 0120-544-565 24時間365日 電話→警察届出
三井住友銀行 0120-956-999 24時間365日 電話→所定用紙
みずほ銀行 0120-415-415 24時間365日 電話→警察連携
ゆうちょ銀行 0120-992-504 平日9-19時 窓口優先
楽天銀行 0120-691-095 9-20時 Web申請可

クレジットカード会社への連絡

**不正利用の申告**
カード会社の緊急連絡先に電話し、「ロマンス詐欺の被害に遭い、カード情報を教えてしまった」と説明します。即座にカードを停止し、再発行を依頼してください。多くのカード会社には不正利用補償がありますが、申請期限があるため迅速な対応が必要です。
**チャージバックの申請検討**
商品が届かない、サービスが提供されないなどの理由で、クレジットカード決済の取り消しを求めることができます。ただし、投資や暗号資産購入の場合は適用が難しいケースもあります。カード会社の担当者と相談してください。

暗号資産(仮想通貨)の場合の対応

対応事項 具体的行動 成功可能性
取引所への連絡 送金先アドレスの凍結依頼 低(既に移動済みが多い)
ブロックチェーン追跡 取引履歴の記録・保存 証拠として重要
警察への情報提供 ウォレットアドレス等 捜査に必要

12時間以内:警察への通報

警察相談専用電話(#9110)への連絡

**初回相談の準備**
以下の情報を整理してから電話してください:
・被害金額の合計
・詐欺師の情報(名前、連絡先、プロフィール)
・やり取りの期間と経緯
・送金方法と送金先情報
これらをメモにまとめておくと、スムーズに説明できます。
**被害届提出の流れ**
電話相談後、最寄りの警察署に出向いて被害届を提出します。必要書類:身分証明書、印鑑、被害の証拠(印刷したもの)、送金記録。担当刑事が割り当てられ、詳細な聴取が行われます。恥ずかしさから躊躇する方も多いですが、同様の被害は多発しており、警察も真摯に対応してくれます。

サイバー犯罪相談窓口の活用

各都道府県警察にはサイバー犯罪相談窓口が設置されています。フィッシング詐欺マルウェア感染などのデジタル犯罪に精通した専門官が対応してくれます。

都道府県 専用ダイヤル 受付時間 オンライン相談
警視庁 03-5805-1731 平日8:30-17:15 可能
大阪府警 06-6943-1234 平日9:00-17:45 可能
愛知県警 052-951-1611 平日9:00-17:00 可能
その他 #9110 24時間 都道府県による

24時間以内:二次被害防止策

個人情報漏洩対策

**信用情報機関への申告**
CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センターに「本人申告」を行います。これにより、あなたの名義で勝手にローンやクレジットカードが作られることを防げます。オンラインまたは郵送で手続き可能で、手数料は1,000円程度です。
**本人確認書類の再発行検討**
運転免許証やパスポートの番号を教えてしまった場合、再発行を検討してください。特に運転免許証は、番号が変わることで、なりすましのリスクを減らせます。警察署で被害届の受理番号を伝えれば、手数料が減免される場合があります。

SNS・アカウントのセキュリティ強化

  1. 二要素認証の設定(全アカウント必須)

    • Google Authenticatorのインストール
    • 各サービスで二要素認証を有効化
    • バックアップコードの安全な保管
  2. プライバシー設定の見直し

    • 投稿の公開範囲を「友達のみ」に変更
    • 友達リストの非公開化
    • 位置情報の共有を停止
    • タグ付けの承認制を有効化
  3. 不審なアクセスの確認

    • 各サービスのログイン履歴を確認
    • 見覚えのないデバイスからのアクセスを遮断
    • セッションの強制終了

家族・友人への注意喚起

**情報共有の重要性**
恥ずかしさから家族に隠したくなる気持ちは理解できますが、詐欺師はあなたの人間関係も調査している可能性があります。家族や親しい友人には事情を説明し、不審な連絡があったら知らせてもらうようお願いしてください。
**なりすまし対策**
詐欺師があなたになりすまして、家族や友人に接触する可能性があります。「お金に困っている」「助けてほしい」などのメッセージが来ても、必ず本人に電話確認するよう伝えてください。

被害回復のための中長期的対応

1週間以内に行うべきこと

タスク 担当窓口 必要書類 期待効果
消費生活センター相談 188 被害状況メモ アドバイス取得
弁護士相談 法テラス 被害届控え 法的対応検討
振り込め詐欺救済法申請 振込先銀行 被害届、振込明細 被害金回収可能性
カウンセリング 精神保健センター 特になし 心理的ケア

振り込め詐欺救済法による被害回復

**申請要件と手続き**
振込先口座に残高がある場合、被害金の一部または全額が返還される可能性があります。申請期限は被害から一般的に6ヶ月以内。必要書類:被害届の受理番号、振込明細、本人確認書類、印鑑。金融機関の窓口で「振り込め詐欺救済法に基づく被害回復分配金の支払申請」を行います。
**分配金の計算方法**
口座残高を被害者全員で按分することになります。例:口座残高500万円、被害者3名(A:300万円、B:150万円、C:50万円)の場合、それぞれの被害額の比率で分配されます。早期の申請が重要です。

精神的ケアとサポート

**専門機関の活用**
ロマンス詐欺は金銭的被害だけでなく、深刻な精神的ダメージを与えます。以下の機関で無料相談が可能です:
・精神保健福祉センター(各都道府県)
・女性センター(DV・詐欺被害相談)
・被害者支援センター
恥ずかしさや自責の念から相談を躊躇する方が多いですが、専門家は被害者の心情を理解し、適切なサポートを提供してくれます。

詐欺師の追加攻撃から身を守る

二次被害の典型的パターン

詐欺師は一度成功すると、さらなる詐取を試みます。ビジネスメール詐欺(BEC)標的型攻撃(APT)の手法を使い、組織的に被害者を狙い続けることがあります。

攻撃パターン 手口 対策
回収詐欺 「被害金を取り戻す」と持ちかける 一切応じない
脅迫 「秘密をばらす」と脅す 警察に即通報
別人装い 新たな人物として接近 新規の出会いも警戒
投資回収 「損失を取り戻せる」と勧誘 完全無視

個人情報の悪用防止

**ダークウェブでの情報売買対策**
あなたの個人情報が闇市場で売買される可能性があります。定期的に自分の名前やメールアドレスでエゴサーチを行い、不審なサイトに情報が掲載されていないか確認してください。また、Have I Been Pwnedなどのサービスで、メールアドレスの漏洩をチェックすることも重要です。
**なりすまし被害の早期発見**
信用情報を定期的に確認し、身に覚えのない契約や借入がないかチェックしてください。年に1回は無料で信用情報を取得できます。また、重要なメールアドレスにはGoogleアラートを設定し、自分の名前が不正に使用されていないか監視しましょう。

よくある質問と回答

Q: 恥ずかしくて誰にも相談できません。一人で解決できますか?
A: お気持ちは十分理解できますが、一人での解決は困難で、さらなる被害につながる可能性があります。警察や消費生活センターの相談員は、日々多くの同様の相談を受けており、被害者を責めることはありません。むしろ、勇気を出して相談に来たことを評価してくれます。匿名での相談も可能な窓口もあります(消費者ホットライン188など)。恥ずかしさよりも、これ以上の被害を防ぐことを優先してください。専門家のサポートを受けることで、精神的な負担も軽減され、適切な対処が可能になります。
Q: 送金してから1週間経っていますが、今からでも対策は有効ですか?
A: はい、今からでも多くの対策が有効です。確かに、口座凍結や送金キャンセルは困難かもしれませんが、二次被害の防止、証拠保全、被害届の提出などは時間が経っていても重要です。振り込め詐欺救済法の申請は一般的に6ヶ月以内であれば可能ですし、警察への被害届も受理されます。また、信用情報機関への本人申告や、パスワード変更などのセキュリティ対策は、いつ行っても遅すぎることはありません。諦めずに、できることから順番に対処していってください。
Q: 相手が本物の恋人だった可能性はありませんか?
A: 金銭を要求された時点で、それは恋愛関係ではありません。真の恋愛関係では、特に知り合って間もない相手に金銭的な援助を求めることはありません。詐欺師は巧妙に感情を操作し、被害者に「もしかしたら本当かも」と思わせることが得意です。しかし、会ったこともない相手にお金を送る正当な理由は存在しません。たとえ相手が実在の人物だったとしても、金銭を騙し取る行為は詐欺罪に該当します。今は辛いかもしれませんが、あなたは犯罪の被害者であり、相手は犯罪者です。この現実を受け入れることが、回復への第一歩となります。
Q: 暗号資産で送金してしまいましたが、取り戻せる可能性はありますか?
A: 暗号資産の特性上、一度送金すると取り戻すのは非常に困難ですが、完全に不可能ではありません。まず、送金先のウォレットアドレスと取引ID(トランザクションID)を記録し、利用した取引所に連絡してください。大手取引所であれば、詐欺被害の報告を受けて、該当アカウントの凍結や調査を行う場合があります。また、ブロックチェーン分析企業と連携している警察署もあり、資金の流れを追跡できる可能性があります。Chainalysisなどの専門企業が捜査協力することもあります。成功率は低いですが、諦めずに警察と取引所の両方に被害を報告してください。
Q: 家族にバレずに解決したいのですが可能ですか?
A: 完全に秘密にしたまま解決することは難しいですが、プライバシーに配慮した対応は可能です。警察への被害届は本人のみで提出でき、消費生活センターへの相談も匿名で行えます。ただし、金融機関での手続きや、今後の被害防止を考えると、信頼できる家族には事情を説明することをお勧めします。詐欺師は被害者の孤立を狙っており、家族のサポートがあることで二次被害を防げます。もし直接話しにくい場合は、この記事を見せるか、一緒に専門機関に相談に行くことから始めてみてはいかがでしょうか。家族はあなたを責めるのではなく、助けたいと思っているはずです。

チェックリスト:24時間以内の行動確認表

必須対応項目(チェックボックス式)

【0-1時間】緊急対応

  • [ ] 相手のプロフィール画面をスクリーンショット
  • [ ] 全てのメッセージ履歴を保存
  • [ ] 送金記録・明細を収集
  • [ ] 相手を全てのSNS・アプリでブロック
  • [ ] 重要なパスワードを変更

【1-6時間】金融対応

  • [ ] 振込先銀行に連絡・口座凍結依頼
  • [ ] 自分の銀行に被害を報告
  • [ ] クレジットカード会社に連絡
  • [ ] 暗号資産取引所に連絡(該当する場合)
  • [ ] インターネットバンキングの設定変更

【6-12時間】公的機関対応

  • [ ] 警察相談専用電話(#9110)に連絡
  • [ ] 最寄りの警察署で被害届提出
  • [ ] 被害届受理番号を記録
  • [ ] サイバー犯罪相談窓口に連絡

【12-24時間】二次被害防止

  • [ ] 信用情報機関に本人申告
  • [ ] 全SNSで二要素認証を設定
  • [ ] 家族・友人に注意喚起
  • [ ] 消費生活センター(188)に相談
  • [ ] 精神的ケアの相談予約

まとめ:被害からの確実な回復へ

ロマンス詐欺の被害対応において最も重要なのは、迅速な初動対応です。最初の24時間以内に適切な行動を取ることで、被害の拡大を防ぎ、回復の可能性を高めることができます。

この詐欺はソーシャルエンジニアリングの典型例であり、人間の感情を悪用する卑劣な犯罪です。被害に遭ったことは、あなたの落ち度ではありません。詐欺師はフィッシング詐欺ビジネスメール詐欺(BEC)などで培った心理操作のプロを使い、計画的に被害者を陥れます。

今は辛い時期かもしれませんが、適切な対応を取ることで、必ず立ち直ることができます。一人で抱え込まず、専門機関のサポートを受けながら、一歩ずつ前に進んでいってください。


【重要なお知らせ】

  • 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況に対する助言ではありません
  • 実際に被害に遭われた場合は、警察(#9110)や消費生活センター(188)などの公的機関にご相談ください
  • 法的な対応が必要な場合は、弁護士などの専門家にご相談ください
  • 記載内容は作成時点の情報であり、手口は日々進化している可能性があります

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京都開発研究所

システム開発/サーバ構築・保守/技術研究

CMSの独自開発および各業務管理システム開発を行っており、 10年以上にわたり自社開発CMSにて作成してきた70,000以上のサイトを 自社で管理するサーバに保守管理する。