被害に遭った可能性がある時の対応手順

「騙されたかもしれない」—その不安を感じた時が、ロマンス詐欺被害への対応の最も重要なタイミングです。迅速な緊急対応により被害を最小限に抑え、詐欺相談から被害届提出まで、適切な手順を踏むことで回復への道が開けます。今すぐ実行すべき具体的な対応手順を時系列で解説します。

緊急度判定フローチャート

まず、あなたの状況の緊急度を判定し、優先すべき対応を明確にしましょう。

被害レベルの確認

レベル5:緊急事態(即座に110番)
□ 脅迫を受けている
□ 身の危険を感じる
□ ストーカー行為を受けている
□ 自宅や職場に来ると言われた
□ 家族への危害をほのめかされた
→ **今すぐ110番通報してください**
レベル4:金銭被害発生(24時間以内に対応)
□ すでに送金してしまった
□ クレジットカード情報を教えた
□ 暗号資産を送った
□ 個人情報を大量に渡した
→ **本記事の手順に従い即座に対応開始**
レベル3:被害直前(48時間以内に対応)
□ 送金を要求されている
□ 投資を勧められている
□ 個人情報を求められている
→ **連絡を断ち、証拠保全を開始**
レベル2:疑いあり(1週間以内に対応)
□ プロフィールに矛盾がある
□ 会うことを避けられる
□ 金銭の話題が出始めた
→ **検証を行い、相談機関に連絡**
レベル1:要観察(継続的に注意)
□ 違和感がある
□ 話が良すぎる
□ 進展が早すぎる
→ **慎重に観察、検証ツールを活用**

優先すべき対応

緊急度 最優先事項 次の行動 期限
レベル5 身の安全確保 警察通報 即座
レベル4 被害拡大防止 金融機関連絡 24時間
レベル3 関係遮断 証拠保全 48時間
レベル2 情報収集 専門機関相談 1週間
レベル1 状況観察 検証継続 随時

即座に行うべき5つの行動

レベル3以上の場合、以下の5つの行動を順番に実行してください。

1. 相手との連絡遮断

完全遮断の手順
ステップ1:証拠保全のため、遮断前にすべて記録
ステップ2:すべてのプラットフォームでブロック
・LINE:トーク画面→メニュー→ブロック
・WhatsApp:連絡先→ブロック
・Facebook:プロフィール→・・・→ブロック
・Instagram:プロフィール→・・・→ブロック
・メール:迷惑メール設定
・電話:着信拒否設定

ステップ3:共通の知人がいる場合は事情説明
ステップ4:新しいアカウントからの接触も警戒
なぜ説明なしに遮断すべきか
・説明すると説得や脅迫のきっかけを与える
・感情的な訴えで判断が鈍る
・証拠隠滅される可能性がある
・心理的な負担が増大する
・二次被害のリスクが高まる

2. パスワード変更

変更の優先順位
1. メールアカウント(最重要)
2. ネットバンキング
3. SNSアカウント
4. ショッピングサイト
5. その他のサービス

パスワード要件:
・12文字以上
・大小英数字記号を混在
・使い回しをしない
・2段階認証を必ず設定

3. 証拠の保全

保全対象 方法 保存先 重要度
メッセージ スクリーンショット クラウド+USB 最重要
プロフィール 画面録画 複数箇所 重要
写真・動画 ダウンロード 外部メディア 重要
通話記録 録音・履歴 バックアップ 重要
送金記録 明細書 原本保管 最重要

4. 金融機関への連絡

銀行への連絡内容
伝えるべき情報:
・詐欺被害の可能性があること
・送金日時と金額
・送金先の口座情報
・振込の経緯

依頼事項:
・組戻し手続きの開始
・送金先口座の凍結依頼
・今後の送金制限設定
・被害証明書の発行

5. 身近な人への相談

誰に相談すべきか
・信頼できる家族
・親しい友人
・職場の上司(仕事に影響する場合)
・専門カウンセラー

相談のメリット:
・客観的な視点を得られる
・精神的な支えになる
・実務的なサポートを受けられる
・孤立を防げる

証拠保全の具体的方法

警察への被害届や法的手続きには、証拠が不可欠です。

スクリーンショット

スマートフォンでの撮影方法
iPhone:
・電源ボタン+音量上ボタン同時押し
・AssistiveTouchを使用

Android:
・電源ボタン+音量下ボタン同時押し
・クイック設定パネルから

保存のコツ:
・日付と時刻が見えるように撮影
・会話の流れが分かるよう連続撮影
・相手のプロフィールも必ず撮影
・URLが見える状態で撮影

通話録音

デバイス 録音方法 注意点
iPhone 画面収録機能 通話録音は制限あり
Android 録音アプリ使用 機種により制限
固定電話 ICレコーダー スピーカーモードで
PC 録音ソフト Skype等は録音可能

送金記録

保存すべき書類
・ATM利用明細書(原本)
・振込受付書
・ネットバンキング画面のスクリーンショット
・通帳記帳(該当ページ)
・クレジットカード利用明細
・暗号資産の送金履歴
・決済アプリの履歴

※すべて原本を保管し、コピーも作成

メッセージ履歴

プラットフォーム別保存方法
LINE:
・トーク履歴をテキストで送信
・Keep機能で保存
・PCでバックアップ

WhatsApp:
・チャットをエクスポート
・メディア付きで保存

メール:
・ヘッダー情報も含めて保存
・PDFで印刷保存
・転送ではなく原本保存

相談先リストと連絡方法

専門機関への相談は、被害回復の重要な一歩です。

警察(#9110)

警察相談専用電話の活用
電話番号:#9110
受付時間:平日8:30〜17:15(都道府県により異なる)

相談内容:
・被害の概要説明
・証拠の提出方法
・被害届提出の手順
・管轄警察署の確認

メリット:
・専門の相談員が対応
・適切な部署への橋渡し
・匿名相談も可能
・緊急性の判断をしてくれる

消費生活センター(188)

項目 詳細
電話番号 188(いやや)
受付時間 平日9:00〜17:00、土日祝10:00〜16:00
相談内容 詐欺被害全般、返金交渉支援
メリット 無料相談、地域密着、専門知識
持参物 契約書類、領収書、メッセージ

弁護士会

法テラスの活用
電話:0570-078374
受付:平日9:00〜21:00、土曜9:00〜17:00

サービス内容:
・無料法律相談(条件あり)
・弁護士紹介
・費用の立替制度
・民事法律扶助

相談費用の目安:
・初回相談:30分5,000円程度
・着手金:10〜30万円
・成功報酬:回収額の15〜20%

金融機関

振り込め詐欺救済法の活用
対象:振込による被害
期限:速やかに(遅くとも1週間以内)

必要な連絡先:
1. 自分の取引銀行
2. 振込先の銀行
3. 全国銀行協会(03-3216-3761)
4. 預金保険機構

救済の可能性:
・口座に残高があれば分配の可能性
・迅速な対応で凍結率向上
・平均回収率:約23%

被害届提出の流れ

被害届の提出は、捜査開始の重要なステップです。

必要書類

書類名 入手方法 必須/推奨
身分証明書 運転免許証等 必須
印鑑 認印可 必須
被害状況説明書 自作 推奨
証拠資料一式 事前準備 必須
送金証明書 銀行で発行 必須
相手の情報 まとめておく 推奨

管轄警察署

どこに行くべきか
優先順位:
1. 居住地の警察署(生活安全課)
2. 被害発生地の警察署
3. 都道府県警察本部(サイバー犯罪対策課)

事前準備:
・電話で予約を取る
・担当者の名前を確認
・必要書類を確認
・所要時間の目安(2〜3時間)

受理のポイント

スムーズに受理してもらうコツ
・証拠を整理して持参
・時系列で説明できるよう準備
・感情的にならず事実を淡々と
・被害金額を明確に
・相手の情報をまとめる
・他の被害者の存在を調査

受理を渋られた場合:
・都道府県警察本部に相談
・#9110で相談
・弁護士同伴で再訪問

金融被害への対応

金銭的被害を最小限に抑えるための具体的対応です。

振込先口座凍結

凍結依頼の手順
1. 警察への被害届提出
2. 被害届受理番号の取得
3. 振込先銀行への連絡
4. 凍結依頼書の提出
5. 凍結完了の確認

必要情報:
・振込先口座番号
・口座名義人
・振込日時と金額
・被害届受理番号

クレジットカード停止

対応事項 連絡先 対応内容
カード停止 カード裏面の番号 即時停止
不正利用確認 カード会社 利用履歴確認
再発行手続き カード会社 1〜2週間
チャージバック カード会社 返金申請

決済取消申請

決済方法別の対応
PayPal:
・買い手保護制度を利用
・180日以内に申請
・問題解決センターから

暗号資産:
・取引所に連絡(凍結は困難)
・取引記録の保全
・警察への情報提供

電子マネー:
・利用停止手続き
・残高確認
・不正利用の調査依頼

精神的ケアと今後の対策

被害からの回復には、心のケアも重要です。

カウンセリング

専門的な心理支援
利用できるサービス:
・犯罪被害者支援センター(無料)
・精神保健福祉センター
・心療内科・精神科
・民間カウンセリング

期待できる効果:
・トラウマの軽減
・自責感情の解消
・信頼感の回復
・PTSDの予防・治療

再発防止策

対策 具体的方法 効果
知識向上 詐欺手口の学習 予防力向上
ルール設定 金銭不可の原則 リスク回避
相談体制 家族との共有 客観性確保
検証習慣 定期的なチェック 早期発見

支援グループ

被害者の会への参加
・同じ経験者との交流
・体験の共有
・回復への励まし
・最新情報の入手
・孤立感の解消

オンライングループ:
・匿名参加可能
・24時間アクセス
・全国から参加

緊急対応のよくある質問

Q: 送金して3日経ちました。今からでも取り戻せますか?
A: 3日であればまだ可能性があります。今すぐ以下の行動を取ってください。①警察(#9110)に電話、②振込先銀行に連絡して口座凍結依頼、③自分の銀行に組戻し依頼、④消費生活センター(188)に相談。統計では、24時間以内の対応で回収率40%、3日以内で23%、1週間で10%程度です。諦めずに迅速に行動することが重要です。
Q: 相手から「訴える」「自殺する」と脅されています。どうすればいいですか?
A: これは典型的な脅迫行為です。①すべてのメッセージをスクリーンショットで保存、②即座に110番通報(緊急性が高いため#9110ではなく110番)、③相手との連絡を完全遮断、④家族や信頼できる人に状況を共有。「訴える」という脅しは、詐欺師の常套手段で実際に訴訟になることはほぼありません。「自殺」をほのめかすのも感情的な脅迫です。あなたに責任はありません。
Q: 家族に知られたくないのですが、一人で対応できますか?
A: お気持ちは理解できますが、一人での対応は困難で危険です。最低限、①警察や消費生活センターなどの公的機関には相談、②金融機関への連絡は必須、③可能なら信頼できる友人1人には共有を。家族に話す場合は、段階的に(まず配偶者や親しい兄弟から)伝えることも可能です。専門機関への相談は秘密が守られますので、まずはそこから始めてください。
Q: 個人情報(住所、勤務先、家族構成)をすべて教えてしまいました。
A: 二次被害を防ぐため、①信用情報機関に本人申告(なりすまし防止)、②家族全員に注意喚起、③勤務先の上司や総務に報告、④自宅の防犯対策強化、⑤郵便物の管理徹底、⑥各種パスワードの変更を行ってください。また、ストーカー行為の兆候があれば即座に警察へ。情報は悪用される可能性がありますが、適切な対策により被害は防げます。
Q: 暗号資産(ビットコイン)で送金してしまいました。取り戻せませんか?
A: 暗号資産の回収は極めて困難ですが、①取引所に連絡して送金先アドレスの凍結依頼、②トランザクションIDを保存、③警察に被害届提出、④blockchain解析会社への相談(有料)を試みてください。成功率は低い(5%以下)ですが、送金先が国内取引所の場合や、詐欺グループが摘発された場合は回収の可能性があります。今後の被害拡大を防ぐことを最優先にしてください。

まとめ:迅速な行動が被害を最小限に

ロマンス詐欺被害への対応は、時間との勝負です。適切な緊急対応により、金銭的被害を最小限に抑え、精神的ダメージからの回復も早まります。詐欺相談から被害届提出まで、一つ一つ確実に手順を踏むことが重要です。

一人で抱え込まず、専門機関や信頼できる人の支援を受けながら、着実に対応を進めてください。詐欺被害は決してあなたの責任ではありません。勇気を持って行動することで、必ず道は開けます。

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初稿公開

京都開発研究所

システム開発/サーバ構築・保守/技術研究

CMSの独自開発および各業務管理システム開発を行っており、 10年以上にわたり自社開発CMSにて作成してきた70,000以上のサイトを 自社で管理するサーバに保守管理する。