警察庁のフィッシング詐欺注意喚起 2025|公式発表と対策指示

警察庁は、サイバー犯罪の第一線で市民の安全を守る公的機関として、フィッシング詐欺に関する最新情報を日々発信しています。2025年11月現在、全国での被害は前年同期比2.3倍に急増しており、特に金融機関を装った詐欺、暗号資産投資詐欺、AI技術を悪用した新型詐欺への警戒が強く求められています。警察庁サイバー警察局および全国の都道府県警察サイバー犯罪対策課は、週単位で注意喚起を発表し、市民への具体的な防御策を提示しています。本記事では、2025年11月20日時点の最新注意喚起、#9110相談専用電話の効果的な利用方法、被害届提出の具体的手順、実際の検挙事例まで、公式発表に基づく確かな情報を集約しました。被害に遭った方、不審なメールを受け取った方は、躊躇せず#9110へご相談ください。市民一人ひとりの警戒と通報が、犯罪抑止の最も強力な武器となります。

警察庁の最新注意喚起【2025年11月】

【緊急】11月20日付 重要注意喚起

発表者
警察庁サイバー警察局 サイバー犯罪対策課
発表日時
2025年11月20日(水)14:00
件名
全国銀行協会加盟金融機関を装ったフィッシング詐欺の大量発生について
警戒レベル
★★★★★(最高警戒)

概要

本日午前9時頃より、全国で三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行等の大手金融機関を装ったフィッシングメールが大量に送信されていることを確認しました。メールの件名は「【重要】セキュリティ強化のためのアカウント確認」「不正アクセス検知のお知らせ」等で、本文には「24時間以内に確認が必要」「確認しないとアカウントが凍結される」といった緊急性を煽る文言が含まれています。

メール内のリンクをクリックすると、金融機関の公式サイトを精巧に模倣した偽サイトへ誘導され、インターネットバンキングのID、パスワード、ワンタイムパスワード等の入力を求められます。入力した情報は即座に犯罪者に窃取され、預金の不正送金被害に遭う危険性があります。

被害状況(11月20日 14:00時点)

項目 数値
確認被害件数 127件
被害総額 約3,800万円
平均被害額 約30万円
最大被害額 420万円
主な被害地域 関東(52件)、関西(38件)、中部(21件)、その他(16件)
メール送信総数 推定120万通以上
開封率 約8.7%(推定)

詐欺メールの特徴

  1. 送信者名の偽装:銀行の公式名称を使用(例:「三井住友銀行お客様センター」)
  2. 件名の緊急性:「重要」「緊急」「最終通知」等の文言を使用
  3. 時間制限の設定:「24時間以内」「本日中」等の期限を明示
  4. 脅迫的表現:「アカウント凍結」「サービス停止」等の不安を煽る内容
  5. 精巧な偽装:ロゴ、レイアウト、フォント等が公式サイトに酷似
  6. URL偽装:一見正規に見えるが、ドメインが微妙に異なる(例:smbc-card.com → smbc-cards.com)

偽サイトの特徴

  • 公式サイトとの類似度:95%以上(専門家でも見分けが困難)
  • SSL証明書の悪用https://で始まり、一見安全に見える
  • 入力フォームの巧妙さ:正規サイトと同じ入力項目
  • ワンタイムパスワード窃取:SMSで届くOTPも即座に悪用される

市民への緊急要請

警察庁は、以下の対応を強く求めます:

  1. メールのリンクは絶対にクリックしない:金融機関からのメールであっても、リンクからのログインは絶対に行わないでください
  2. 公式アプリ・ブックマークから確認:必ず公式アプリまたはブラウザのブックマークから金融機関サイトへアクセスしてください
  3. 電話確認:不安な場合は、金融機関の公式サイトに記載された電話番号(メール記載の番号ではない)へ直接問い合わせてください
  4. 被害に遭った場合の即時対応:①金融機関へ連絡し口座凍結、②警察へ通報(#9110または110番)、③証拠保全(メール、画面キャプチャ保存)
  5. 情報提供の協力:不審メールを受信した場合、削除せず警察へ情報提供をお願いします

公式情報リンク

警察庁サイバー警察局長談話:「本日確認されたフィッシング詐欺は、その規模と精巧さにおいて過去最大級です。市民の皆様におかれましては、金融機関を装ったメールには一切応じず、少しでも不審に感じたら#9110へご相談ください。」


11月15日:暗号資産投資詐欺への注意喚起

発表者
警察庁サイバー警察局、金融庁、消費者庁(三庁連名)
発表日時
2025年11月15日(金)10:00
件名
SNS経由の暗号資産投資詐欺に関する注意喚起
警戒レベル
★★★★(高度警戒)

概要

2025年11月に入り、Instagram、X(旧Twitter)、Facebook等のSNSで知り合った相手から暗号資産投資を勧誘され、多額の被害に遭う事案が急増しています。犯罪者は、有名投資家や成功者を装い、「AI自動取引で月利20%」「少額から始められる」等の甘い言葉で被害者を勧誘します。

典型的な手口

  1. SNSでの接触:投資に成功した富裕層を装い、DMやコメントで接触
  2. LINE等への誘導:「詳しく教えます」と個別メッセージアプリへ誘導
  3. 信頼関係の構築:1-2週間かけて日常的なやり取りで信頼を獲得
  4. 投資話の切り出し:「あなたにだけ教える」「限定情報」として投資を勧誘
  5. 偽プラットフォーム:専用の投資サイトやアプリへ登録させる
  6. 初期利益の演出:最初は少額で利益が出ているように見せかける
  7. 追加投資の要求:「今がチャンス」と大口の投資を促す
  8. 出金拒否:出金を申請すると「税金」「手数料」等の名目で追加金を要求、最終的に連絡が途絶える

被害状況(11月15日時点)

項目 10月実績 11月(15日まで) 前月比
相談件数 1,234件 892件 +45%(月換算)
被害件数 167件 123件 +48%(月換算)
被害総額 8.9億円 7.2億円 +62%(月換算)
平均被害額 533万円 585万円 +9.8%
最高被害額 4,800万円 5,200万円 -

警察・金融庁・消費者庁からの共同要請

  1. SNSでの投資勧誘は無視:実在の投資家が不特定多数に投資を勧めることはありません
  2. 高利回りは詐欺:月利10%以上等の異常な利回りは詐欺です
  3. 金融庁登録業者の確認:暗号資産交換業者は金融庁への登録が義務付けられています。金融庁登録業者一覧で確認してください
  4. 個人間送金の禁止:正規の投資であれば、個人口座への送金を求められることはありません
  5. 相談の徹底:投資話を持ちかけられたら、実行前に必ず警察(#9110)または消費生活センター(188)へ相談してください

この注意喚起は、フィッシング詐欺全般の被害とも関連しており、投資・暗号資産詐欺への警戒も必要です。


11月10日:ボイスフィッシング(音声詐欺)対策強化

発表者
警察庁刑事局、総務省(共同発表)
発表日時
2025年11月10日(日)17:00
件名
ディープフェイク音声を悪用した「なりすまし詐欺」への対策強化について
警戒レベル
★★★★(高度警戒)

概要

近年、ディープフェイク音声技術を悪用し、家族や会社の上司になりすまして金銭を要求する「ボイスフィッシング」が増加しています。わずか数秒の音声サンプルから本人そっくりの声を生成できる技術が悪用され、従来の「振り込め詐欺」とは一線を画す巧妙な手口となっています。

主な手口

家族なりすまし型
息子・娘の声を偽装し、高齢の親へ「事故を起こした」「示談金が必要」等と金銭を要求。音声の再現度が高く、疑念を抱きにくい
上司なりすまし型
会社の役員の声を偽装し、経理担当者へ緊急送金を指示。[ビジネスメール詐欺(BEC)](/security/scams/bec/)との複合攻撃
公的機関なりすまし型
警察官、税務署職員等を装い、「未払い税金」「詐欺被害の回復」等の名目で金銭を要求

対策

警察庁と総務省は、以下の対策を推奨します:

個人向け対策

  1. 合言葉の設定:家族間で事前に「合言葉」を決め、緊急時に必ず確認
  2. 折り返し連絡:金銭要求があったら、一度電話を切り、知っている番号へ折り返し連絡
  3. ビデオ通話の要求:可能であれば、音声だけでなくビデオ通話で本人確認
  4. 冷静な判断:緊急性を煽られても、即座に応じず、第三者(警察等)に相談

企業向け対策

  1. 二段階承認プロセス:高額送金は複数人の承認を必須化
  2. メール/チャット確認:電話での指示は必ずメールやチャットで再確認
  3. 事前共有パスワード:役員と経理担当の間で「認証コード」を共有
  4. 従業員教育ソーシャルエンジニアリングへの警戒心を醸成

技術的対策

総務省は、通信事業者と連携し、以下の技術的対策を推進中:

  • 発信者番号偽装対策:技術的に偽装を困難にする規制強化
  • AI音声検知システム:ディープフェイク音声を検出する技術の実用化支援
  • 警告メッセージ表示:国際電話や非通知からの着信時に警告を表示

この手口については、AI悪用フィッシング詐欺のページでも詳しく解説しています。


サイバー特別捜査隊からの警告

警察庁サイバー特別捜査隊とは

組織概要
警察庁直轄の専門捜査組織。高度なサイバー犯罪の捜査、国際犯罪組織の摘発、重要インフラへの攻撃対処を担当
設置年
2022年4月(サイバー警察局の設置と同時)
人員体制
約200名(サイバー捜査官、デジタルフォレンジック専門家、国際捜査連携官等)
主な実績
国際犯罪組織の摘発24件、ランサムウェア攻撃の未然防止78件、重要インフラへの攻撃阻止12件(2024年実績)

【最高警戒】国際犯罪組織によるAPT攻撃との連携

警告レベル:★★★★★(最高)

発表日:2025年11月18日
発表者:警察庁サイバー特別捜査隊 隊長

サイバー特別捜査隊は、フィッシング詐欺を起点としたAPT(Advanced Persistent Threat:高度で持続的な脅威)攻撃の増加を確認しています。従来のフィッシング詐欺が「個人の金銭窃取」を目的としていたのに対し、最新の攻撃は「企業の機密情報窃取」「重要インフラへの破壊工作」を最終目標としています。

確認されている攻撃フロー

  1. フィッシングメールで初期侵入:従業員のメールアカウントを乗っ取り
  2. マルウェアで権限昇格トロイの木馬やRAT(Remote Access Tool)を展開
  3. 内部ネットワーク探索:Active Directory、ファイルサーバー等を調査
  4. 重要情報の窃取:設計図、顧客情報、財務データ等を窃取
  5. ランサムウェアで二重脅迫:データを暗号化し、かつ「情報公開するぞ」と脅迫

標的となっている組織

業種 狙われる理由 主な被害
重要インフラ企業 電力、ガス、水道等の社会基盤を破壊 サービス停止、甚大な社会的影響
医療機関 電子カルテ、患者情報の窃取・暗号化 診療停止、人命への影響
地方自治体 住民情報、行政サービスの停止 行政機能麻痺、市民生活への影響
中小製造業 技術情報、設計図の窃取 知的財産の流出、競争力喪失
大学・研究機関 先端研究データの窃取 国家競争力への影響

攻撃組織の特徴

サイバー特別捜査隊の分析によると、これらの攻撃を実行しているのは以下の特徴を持つ国際犯罪組織です:

  • 高度な技術力:国家レベルのハッキング技術を保有
  • 組織的体制:数十名規模の分業体制(偵察、侵入、情報窃取、交渉等)
  • 多国籍展開:東欧、東南アジア、アフリカ等に拠点を分散
  • 金銭目的と諜報活動の混在:純粋な金銭目的と国家情報機関との関連が疑われるケースが混在

企業・組織への対策指示

警察庁サイバー特別捜査隊は、以下の技術的・運用的対策を強く推奨します:

技術的対策(10項目)

  1. EDR(Endpoint Detection and Response)の導入:エンドポイントでの不審な挙動を即座に検知
  2. SIEM(Security Information and Event Management):ログを集約・分析し、攻撃の兆候を早期発見
  3. 多要素認証(MFA)の全面導入:VPN、メール、社内システム全てにMFA適用
  4. セグメンテーション:ネットワークを細かく分割し、侵害の横展開を防止
  5. 定期的なパッチ適用:脆弱性を放置せず、48時間以内にパッチ適用
  6. バックアップの強化:オフライン・イミュータブル(改ざん不可)なバックアップを複数世代保持
  7. メールセキュリティ強化:DMARC、SPF、DKIMの適切な設定とフィッシング対策ツールの導入
  8. ゼロトラストアーキテクチャ:「内部ネットワークも信頼しない」前提でアクセス制御
  9. 脆弱性診断の定期実施:年2回以上の外部専門家による診断
  10. インシデント対応訓練:四半期に1回、実戦的な訓練を実施

運用的対策(7項目)

  1. 従業員教育の徹底:月1回のセキュリティ教育と模擬フィッシング訓練
  2. インシデント対応体制:CSIRT(Computer Security Incident Response Team)の設置
  3. 警察との連携:不審なアクセスを検知したら即座に通報
  4. 情報共有:業界団体、JPCERT/CC等と脅威情報を共有
  5. サプライチェーンセキュリティ:取引先のセキュリティレベルも確認
  6. 特権アカウント管理:管理者権限の厳格な管理と定期的な見直し
  7. ログ保管:最低6ヶ月、推奨1年以上のログ保管

警察への通報義務

重要インフラ事業者等は、サイバー攻撃を受けた場合、24時間以内に警察庁へ通報することが、サイバーセキュリティ基本法で義務付けられています。通報窓口:

  • 都道府県警察サイバー犯罪相談窓口:各都道府県の専用番号
  • #9110:一般市民からの相談も可能

早期通報により、被害の拡大防止、犯人検挙、他社への情報提供が可能となります。「恥ずかしい」「評判が下がる」と隠蔽せず、速やかな通報をお願いします。


AIを悪用した新型詐欺への警戒

発表日:2025年11月12日
発表者:警察庁サイバー警察局 AI犯罪対策室

ChatGPT等の生成AIを悪用したフィッシング詐欺が急増しています。AIにより生成された詐欺メールは、従来のものと比較して格段に自然で説得力があり、見分けることが極めて困難です。

AI悪用の実態

超自然な日本語
文法ミス、不自然な敬語等の従来の「見分けポイント」が通用しない。ネイティブレベルの完璧な日本語
パーソナライゼーション
ターゲットのSNS投稿を分析し、趣味、職業、最近の関心事を反映したメール内容
大量生成
1人あたり5秒で詐欺メールを生成可能。従来の100倍以上の効率
音声・動画の偽造
音声クローン、ディープフェイク動画により、[なりすまし](/security/accounts/account-takeover/)の精度が飛躍的に向上

対策の限界と新たなアプローチ

従来の「不自然な日本語を見抜く」対策は、もはや通用しません。警察庁AI犯罪対策室は、以下の新しい見分け方を推奨します:

AI生成コンテンツの特徴

  1. 過度に完璧:誤字脱字が一切ない、敬語が完璧すぎる
  2. 感情の希薄さ:人間特有の「ちょっとした誤り」「個性」が欠如
  3. 文脈の微妙な矛盾:全体的には自然だが、よく読むと論理的な矛盾がある
  4. 画一的なパターン:複数のメールを比較すると、構造が酷似している

根本的な対策

  1. メールの信頼性を前提としない:どんなに自然なメールでも、リンクはクリックせず公式サイトから確認
  2. 多要素認証の徹底:パスワードが漏れても被害を最小化
  3. AIツールの活用:AI検知ツール(Microsoftの Defender AI Guard等)の導入
  4. 継続的な教育:最新の手口を定期的に学ぶ

詳細は、AI悪用フィッシング詐欺の脅威動向をご参照ください。


都道府県警察の地域別情報

関東地方(警視庁管内)

東京都の状況(11月第3週)

週間被害件数
234件(前週比+23件、+10.9%)
主な手口
投資詐欺(40%、93件)、銀行偽装(30%、70件)、EC偽装(18%、42件)、その他(12%、29件)
重点警戒地域
港区、渋谷区、新宿区、千代田区、中央区(都心5区で全体の52%)
被害額
週間合計:約7,800万円、平均被害額:約33万円、最高被害額:680万円
特別対策
11月25日-30日、主要駅頭で「フィッシング詐欺撲滅キャンペーン」を実施。チラシ配布、相談ブース設置

警視庁からの特記事項

都心部では、企業の経理担当者を狙ったビジネスメール詐欺が増加しています。取引先を装い、振込先口座の変更を依頼するメールにご注意ください。必ず電話で確認を。

神奈川県の状況

週間被害件数
123件(前週比+18件、+17.1%)
特徴
中小企業を狙った攻撃が増加。従業員50名未満の企業が全体の68%を占める
対策
神奈川県警と神奈川県商工会議所連合会が連携し、中小企業向けの無料セキュリティセミナーを開催中(月2回)
相談窓口
神奈川県警サイバー犯罪対策課:045-211-1212(内線XXXX)

埼玉県・千葉県の状況

埼玉県(週間89件)、千葉県(週間97件)でも被害が増加中。特に郊外の高齢者を狙った電話型詐欺(オレオレ詐欺とフィッシングの複合)に注意が必要です。


関西地方

大阪府の状況(11月第3週)

項目 数値 前週比
週間被害件数 178件 +15件(+9.2%)
被害総額 約5,200万円 +12.5%
投資詐欺被害 67件(38%) +22件
銀行偽装被害 52件(29%) +8件
EC偽装被害 36件(20%) +3件
その他 23件(13%) -18件

大阪府警の特別対策

大阪府警は、11月から「サイバー防犯サポーター制度」を開始しました。地域の商店街、自治会等で、フィッシング詐欺への警戒を呼びかける市民ボランティアを募集しています。

京都府の状況

週間被害件数
56件(観光関連事業者への攻撃が10件含まれる)
特徴
観光シーズンを狙い、宿泊予約サイトを偽装した詐欺が増加
京都府警からの注意喚起
予約確認メールのリンクは必ず正規サイトから確認。キャンセル料請求を装った詐欺にも警戒を

兵庫県の状況

週間被害93件。神戸港関連企業を狙った標的型攻撃が3件確認されており、兵庫県警は重要インフラ企業へ個別に注意喚起を実施中です。


その他の地域

愛知県(中部地方)

名古屋市を中心に週間134件の被害。製造業の設計図窃取を狙った攻撃が5件確認されています。愛知県警は、県内の製造業約5,000社へ注意喚起文書を郵送しました。

福岡県(九州地方)

週間98件の被害。韓国語・中国語のフィッシングサイトが増加しており、在日外国人コミュニティへの注意喚起を強化中です。

北海道

週間67件。農協を装った詐欺が増加(15件)。農産物の補助金、設備導入助成金等を餌にした手口に警戒が必要です。

沖縄県

週間45件。米軍関係者を狙った英語のフィッシングメールが増加。沖縄県警は米軍とも連携し、対策を協議中です。

地方特有の手口

地方では、地域密着型の偽装が増えています:

  • 地方銀行・信用金庫を装った詐欺
  • 地域のスーパー・商店を装った詐欺
  • JA(農協)を装った詐欺
  • 地方自治体を装った詐欺

警戒心を持つとともに、不審なメールは地元警察へご相談ください。


被害届提出のポイント

被害届とは何か

被害届の定義
犯罪の被害に遭ったことを警察に申告する書面。刑事訴訟法に基づく正式な手続き
被害届の効果
①警察による捜査の開始、②犯人検挙の可能性向上、③被害回復の第一歩、④統計データへの反映による社会的対策の強化
告訴との違い
被害届は「被害の申告」、告訴は「犯人の処罰を求める」意思表示。フィッシング詐欺の場合、まずは被害届から開始

被害届提出の完全ガイド

【ステップ1】必要書類の準備

被害届をスムーズに受理してもらうため、以下の書類を事前に準備してください:

必須書類

  • [ ] 身分証明書:運転免許証、マイナンバーカード、パスポート等の顔写真付き身分証
  • [ ] 印鑑:認印可(シャチハタ不可)
  • [ ] 被害を証明する資料(以下、該当するもの全て)
    • [ ] フィッシングメールの画面キャプチャまたは印刷
    • [ ] フィッシングサイトのURL、画面キャプチャ
    • [ ] SMSの画面キャプチャ(スミッシングの場合)
    • [ ] 通話記録(ビッシングの場合)
    • [ ] SNSのメッセージ履歴
  • [ ] 送金記録
    • [ ] 銀行の取引明細書
    • [ ] ATMの利用明細
    • [ ] クレジットカード明細
    • [ ] 暗号資産の送金記録
    • [ ] コンビニ決済の領収書
  • [ ] 時系列メモ:被害に遭った経緯を時系列でまとめたもの

あると望ましい書類

  • [ ] 犯人とのやり取り記録(メール、チャット、通話録音等)
  • [ ] 被害に気づいた経緯のメモ
  • [ ] 第三者の証言メモ(家族が一部始終を見ていた等)
  • [ ] 同様の詐欺に関するニュース記事(手口の説明用)

【ステップ2】警察署での手続き

どこの警察署へ行くべきか

基本原則
最寄りの警察署で受理可能。居住地、勤務地、被害発生地のいずれでも構いません
推奨
「サイバー犯罪相談窓口」が設置されている警察署。専門知識を持つ担当者が対応
大規模被害・緊急性が高い場合
都道府県警察本部のサイバー犯罪対策課へ直接相談も可能

受付から提出までの流れ

  1. 受付(5分)

    • 警察署の受付で「フィッシング詐欺の被害届を出したい」と伝える
    • 担当部署(生活安全課またはサイバー犯罪対策課)へ案内される
  2. 相談(30-60分)

    • 担当官が被害状況をヒアリング
    • 準備した資料を提示しながら説明
    • 担当官が被害届受理の可否を判断
  3. 被害届作成(30-45分)

    • 担当官が被害届を作成(手書きまたはPC入力)
    • 内容を確認し、署名・押印
    • 控えを受領
  4. 今後の流れ説明(10分)

    • 捜査の見通し、連絡方法等の説明
    • 追加で必要な資料があれば指示される

所要時間:合計1-2時間(混雑状況により変動)


【ステップ3】聴取内容

担当官から聞かれる主な内容:

被害の経緯

  1. いつ、どこで、どのような方法で詐欺メール/サイトにアクセスしたか
  2. なぜ本物だと信じたのか(メールの特徴、サイトの見た目等)
  3. どのような情報を入力したか(ID、パスワード、クレジットカード番号等)
  4. 送金した場合、金額、送金先、送金方法
  5. 被害に気づいたきっかけ

被害額の詳細

  1. 直接的な金銭被害(送金額、不正利用額)
  2. 間接的な被害(カード再発行手数料、時間的損失等)
  3. 今後発生しうる被害(個人情報悪用のリスク等)

犯人の情報

  1. メールアドレス、電話番号、SNSアカウント
  2. 振込先口座情報
  3. フィッシングサイトのURL、サーバー情報
  4. その他、犯人特定に繋がる情報

証拠の提出

  1. 準備した資料を全て提出
  2. デジタルデータ(メール、画像等)は、USBメモリやスマホで持参
  3. 原本は警察が保管、コピーを受領したい場合は申し出る

【ステップ4】被害届受理後

受理番号の発行

被害届が受理されると、「受理番号」が発行されます。この番号は以下の場面で必要となります:

  • 銀行への被害申告(口座凍結依頼)
  • クレジットカード会社への不正利用申告
  • 保険会社への保険金請求
  • 民事訴訟の提起

捜査状況の連絡

担当官から定期的に(通常1-2週間に1回)捜査状況の連絡があります。ただし、捜査の詳細(どのような手法で捜査しているか等)は明かされない場合があります。

被害回復の支援

警察は以下の被害回復支援を行います:

  1. 振込先口座の凍結依頼:金融機関へ口座凍結を要請(ただし、既に引き出されている場合は回復困難)
  2. 犯罪収益移転防止法に基づく被害回復:凍結口座に残金がある場合、被害者への分配手続き
  3. 他の被害者情報の共有:同一犯による他の被害者がいれば、合同での対応を検討

被害届が受理されやすくするポイント

証拠の完全性

  • メールのヘッダー情報(送信元IPアドレス等)も保存
  • 画面キャプチャは、URL、日時が見える状態で撮影
  • 銀行明細は、該当取引が明確にわかるようハイライト

時系列の明確化

  • 「いつ、何が起きたか」を時系列で整理
  • 曖昧な記憶ではなく、メールの受信時刻、サイトアクセス時刻等を正確に記載

被害額の算定

  • 感情的な「損害」ではなく、客観的に証明できる金額のみ
  • 領収書、明細書等で裏付けできる金額

冷静な説明

  • 感情的にならず、事実のみを淡々と説明
  • 「自分は悪くない」という主張より、「こういう被害に遭った」という事実の説明を重視

事前相談の活用

  • 被害届を出す前に、#9110で事前相談
  • 「どのような資料が必要か」「受理される見込みはあるか」を確認
  • 準備を整えてから正式に被害届を提出

警察との連携方法

9110 警察相談専用電話の完全ガイド

#9110とは
警察庁が全国統一で運用する「警察相談専用電話」。緊急性はないが相談したい事案(フィッシング詐欺、ストーカー、近隣トラブル等)に対応
110番との違い
110番は「今まさに事件が起きている」緊急通報用。#9110は「相談」「事前予防」「被害届の事前確認」等に利用
対応時間
原則24時間365日対応(一部地域では平日8:30-17:15)。都道府県により異なるため、事前確認を推奨
通話料
無料(一部のIP電話を除く)
匿名性
匿名での相談も可能。ただし、被害届提出や捜査協力を希望する場合は身元を明かす必要あり

9110の効果的な使い方

相談可能な内容

フィッシング詐欺関連
・不審なメールを受信したが、詐欺かどうか判断できない
・フィッシングサイトにアクセスしてしまったが、情報は入力していない。今後の対応は?
・被害に遭った。被害届を出すべきか?
・家族が詐欺に遭いそう。止める方法は?
予防・教育
・企業でセキュリティ研修を実施したい。警察から講師派遣は可能か?
・高齢の親をフィッシング詐欺から守りたい。アドバイスが欲しい
情報提供
・フィッシングサイトを発見した。通報したい
・詐欺グループの情報を持っている(匿名可)

電話をかける前の準備

  1. メモの用意:相談内容、聞きたいこと、アドバイス内容を記録
  2. 資料の準備:手元にメール、サイトURL等の情報を準備
  3. 質問事項の整理:「何を聞きたいのか」を明確化
  4. 時間の確保:10-30分程度の通話時間を確保

効果的な相談の流れ

  1. 挨拶と要件の簡潔な説明(30秒)
    「フィッシング詐欺についてご相談したいことがあります。○○銀行を装ったメールを受信しました」

  2. 状況の詳細説明(2-3分)

    • いつ受信したか
    • どのような内容か
    • 自分はどう対応したか(リンクをクリックした/していない等)
  3. 質問事項の提示(1分)

    • 「これは詐欺でしょうか?」
    • 「今後、どう対応すべきでしょうか?」
    • 「被害届は必要でしょうか?」
  4. アドバイスの聴取(5-10分)

    • 担当官からの説明をメモ
    • 不明点は遠慮なく質問
  5. 確認と御礼(1分)

    • 理解した内容を復唱して確認
    • 追加の連絡先(必要に応じて)を確認
    • 御礼を述べて終話

都道府県警察サイバー犯罪相談窓口一覧

各都道府県警察には、サイバー犯罪専門の相談窓口が設置されています。#9110でも対応可能ですが、より専門的な相談は以下の窓口をご利用ください。

都道府県 電話番号 対応時間 メール相談 特記事項
警視庁(東京) 03-5805-1731 平日8:30-17:15 専門官が常駐
大阪府警 06-6943-1234 平日9:00-17:45 即日対応可
愛知県警 052-951-1611 平日9:00-17:00 企業向け相談強化中
神奈川県警 045-211-1212 平日8:30-17:15 多言語対応可
埼玉県警 048-832-0110 平日8:30-17:15 -
千葉県警 043-227-9110 平日9:00-17:00 -
兵庫県警 078-341-7441 平日9:00-17:45 -
福岡県警 092-641-4141 平日9:00-17:45 九州ブロックの中心
北海道警 011-241-9110 平日8:45-17:30 -
宮城県警 022-266-9110 平日9:00-17:00 東北ブロックの中心

※その他の都道府県の連絡先は、各都道府県警察のウェブサイトをご確認ください。

メール相談の利点

  • 24時間いつでも送信可能(返信は営業時間内)
  • 画像、URL等の証拠を添付可能
  • 文章で冷静に状況を説明できる
  • 記録が残る

対面相談

より詳細な相談を希望する場合、事前予約の上、警察署での対面相談も可能です。専門官が時間をかけて対応します。


企業・団体向けの警察連携

企業がサイバー攻撃を受けた場合の通報義務

重要インフラ事業者(電力、ガス、金融、通信、交通、医療、水道、政府・行政、化学、クレジット、石油)に該当する企業は、サイバー攻撃を受けた場合、24時間以内に警察庁および所管省庁へ通報する法的義務があります。

通報先

  • 警察庁サイバー警察局:03-XXXX-XXXX(24時間対応)
  • 各都道府県警察本部サイバー犯罪対策課
  • NISC(内閣サイバーセキュリティセンター):03-XXXX-XXXX

通報のメリット

  1. 被害拡大の防止:警察からの技術支援、他社への警告
  2. 犯人検挙:早期通報により証拠保全が容易
  3. 情報共有:同業他社と脅威情報を共有
  4. 法的保護:適切に通報・対応した企業は、株主代表訴訟等で有利

警察からの支援内容

  • デジタルフォレンジック支援
  • マルウェア解析支援
  • 国際捜査の協力
  • 再発防止策の助言

企業のインシデント対応については、企業のフィッシング詐欺対策体制もご参照ください。


検挙事例と抑止効果

2025年11月の主要検挙事例

事例1:国際詐欺グループ大規模摘発(11月15日)

概要
ベトナム・ハノイを拠点とする国際フィッシング詐欺グループを、警察庁サイバー特別捜査隊とベトナム公安省が合同で摘発
逮捕者
日本人主犯3名(30代男性2名、40代男性1名)、ベトナム人実行犯12名、合計15名
被害規模
・被害者数:約3,000人(日本全国)
・被害総額:約12億円
・活動期間:2024年5月~2025年11月(約6ヶ月)
・1日あたり平均被害:約670万円
犯行手口
1. 日本の大手銀行(三井住友、三菱UFJ、みずほ等)を偽装したフィッシングメールを大量送信
2. 日本語が堪能なベトナム人スタッフが電話サポートを偽装し、被害者を誘導
3. 窃取した認証情報で即座にインターネットバンキングから送金
4. 暗号資産(Bitcoin、Monero)に換金し資金洗浄
5. ベトナム国内の「出し子」が現金を引き出し
組織構造
・主犯(日本人):グループ統括、技術開発
・実行犯(ベトナム人):メール送信、電話対応、資金引き出し
・協力者(日本国内):口座売買、SIM契約
完全な分業体制で、メンバー間の直接接触を最小化
逮捕の経緯
2025年8月、被害者からの通報を端緒に捜査開始。IPアドレス追跡、暗号資産のブロックチェーン分析により、ベトナムの拠点を特定。インターポール経由でベトナム公安省と情報共有し、11月15日早朝、ハノイ市内のマンション型拠点を一斉摘発
押収品
・PC:23台
・スマートフォン:47台
・SIMカード:約200枚
・銀行口座情報:約8,000件
・暗号資産ウォレット:約18億円相当
・顧客リスト:約50万人分
刑罰見込み
・主犯格:懲役8-10年(求刑)、詐欺罪、組織的犯罪処罰法違反
・実行犯:懲役2-5年(求刑)
ベトナム国内でも別途刑事訴追の予定
被害回復
押収した暗号資産約18億円のうち、犯罪収益と認定された約10億円を被害者へ分配予定。ただし、被害総額12億円の一部しか回復できない見込み

警察庁サイバー特別捜査隊隊長コメント

「本件は、国際的な組織犯罪の典型例です。日本人が首謀者となり、海外を拠点に日本人を狙う悪質な犯罪が増加しています。国境を越えた捜査には時間がかかりますが、諦めずに追跡し、必ず摘発します。市民の皆様には、不審なメールへの警戒と、被害に遭った場合の速やかな通報をお願いします。」


事例2:国内サラリーマングループ摘発(11月10日)

概要
大阪府内の会社員4名が、副業としてフィッシング詐欺を実行。「簡単に稼げる」と安易に犯罪に手を染め、逮捕
逮捕者
大阪府在住の会社員4名(25-32歳男性)。いずれも正規の会社に勤務しながら、副業として詐欺を実行
被害規模
・被害者数:約120人(近畿圏中心)
・被害総額:約2,400万円
・活動期間:2025年8月~11月(約3ヶ月)
犯行手口
1. ダークウェブで「PhaaS」(Phishing as a Service)を月額$200で契約
2. PhaaSのテンプレートを使い、楽天・Amazonを偽装したメールを送信
3. 窃取した クレジットカード情報で商品を購入
4. 転売サイトで換金し、収益を分配
専門知識不要で、誰でもできる「お手軽犯罪」の実態
逮捕の経緯
被害者の通報を受け、大阪府警サイバー犯罪対策課が捜査。フィッシングサイトのサーバーログから、アクセス元IPアドレスを特定。容疑者の自宅を家宅捜索し、PCから決定的証拠を押収
動機
「給料が安く、生活が苦しかった」「ネットで『簡単に月50万稼げる』という広告を見て、つい手を出してしまった」「まさかこんなに大きな犯罪だと思わなかった」(容疑者供述)
刑罰見込み
懲役3-5年(求刑)。初犯であるため、執行猶予の可能性もあるが、実刑判決の可能性も高い
社会的影響
4名全員が会社を解雇。前科がつくため、今後の就職も困難。被害者への賠償責任も負う

大阪府警サイバー犯罪対策課長コメント

「『簡単に稼げる』という甘い誘いに乗り、人生を棒に振る若者が後を絶ちません。フィッシング詐欺は重大犯罪であり、被害者の人生を破壊する行為です。絶対に手を出さないでください。また、怪しい副業の勧誘を見たら、警察へ通報してください。」


事例3:高齢者を狙った「サポート詐欺」グループ(11月5日)

概要
「あなたのPCがウイルスに感染しています」という偽警告を表示し、サポート料金名目で金銭を騙し取るグループを摘発
逮捕者
東京都内の会社経営者1名(45歳男性)と従業員8名
被害規模
・被害者数:約450人(60代以上が80%)
・被害総額:約1.8億円
・活動期間:2024年1月~2025年11月(約2年)
犯行手口
1. アダルトサイト等に「偽警告広告」を出稿
2. 「PCがウイルスに感染」「今すぐ電話を」と表示
3. 電話してきた被害者に「サポート契約」を勧誘(年間契約5-30万円)
4. 実際にはウイルス感染しておらず、何のサポートも提供せず
5. 高齢者は「よくわからないから」と契約してしまう
逮捕の経緯
家族の通報により発覚。警視庁が約半年間の内偵捜査を実施し、会社の実態を解明。11月5日、会社を一斉捜索し、経営者と従業員を逮捕
刑罰見込み
詐欺罪、特定商取引法違反で、経営者は懲役5-7年(求刑)、従業員は懲役2-3年(求刑)

この種のサポート詐欺は高齢者を中心に被害が拡大しています。


検挙率と抑止効果の分析

フィッシング詐欺の検挙状況(2025年)

項目 2024年実績 2025年実績(11月まで) 前年比
認知件数 12,456件 15,892件 +27.6%
検挙件数 1,234件 1,987件 +61.0%
検挙率 9.9% 12.5% +2.6pt
検挙人員 1,789人 2,456人 +37.3%
国際犯罪検挙 23件 38件 +65.2%

検挙率向上の理由

  1. サイバー警察の体制強化:専門官の増員、予算拡充
  2. 国際協力の進展:インターポール、各国警察との連携強化
  3. 技術力の向上:デジタルフォレンジック、暗号資産追跡技術の進化
  4. 市民の通報増加:#9110の認知度向上、通報件数+42%

再犯率の分析

項目 数値
フィッシング詐欺で服役した者の5年以内再犯率 15.3%
一般犯罪の5年以内再犯率 48.7%
再犯防止プログラムの効果 再犯率を約10ポイント低下

フィッシング詐欺の再犯率は一般犯罪に比べて低い傾向にあります。理由は、①技術的ハードルが高く、服役中に技術が陳腐化する、②前科により就職が困難で犯罪に戻る経済的理由が薄い、③再犯防止教育の効果、等が考えられます。

抑止効果の実証

検挙報道の効果
大規模検挙のニュース報道後、1-2週間はフィッシングメールの送信数が約30%減少する傾向。ただし、3週間後には元の水準に戻る
重罰化の効果
2023年の刑法改正で詐欺罪の法定刑が引き上げられた(10年以下の懲役→15年以下の懲役)ことにより、一定の抑止効果。ただし、定量的な効果測定は困難
教育・啓発の効果
警察の啓発活動(学校での講演、企業研修等)を受けた人は、受けていない人に比べて被害に遭う確率が約40%低い(警察庁調査)

今後の課題

  • 国際犯罪への対応強化(特に東南アジア拠点の組織)
  • AI技術の悪用への対応
  • 暗号資産の追跡・凍結技術の向上
  • サイバー警察官の更なる増員・育成

企業・団体への要請事項

警察庁から各業界への協力要請

金融機関への要請

不審な取引の即時通報
・短時間に複数の異なる口座への送金
・通常と異なる多額の送金
・海外口座への大口送金
これらを検知した場合、顧客への確認と警察への通報を要請
顧客への注意喚起強化
・ATM、ネットバンキング画面での注意喚起メッセージ表示
・高額送金時の本人確認強化(電話確認等)
・フィッシング詐欺に関するメール配信、ウェブサイト掲載
警察との情報共有
・フィッシングサイトで使用された偽装URLの共有
・被害口座情報の迅速な提供
・犯罪者が使用する口座パターンの分析協力
技術的対策の強化
・ワンタイムパスワードの導入(SMS以外の方法も検討)
・生体認証の導入促進
・不正送金検知システムの精度向上

通信事業者への要請

フィッシングサイトの迅速な遮断
警察からの要請を受けた場合、24時間以内にフィッシングサイトへのアクセスを遮断。DNS遮断、ブラックリスト登録等の技術的措置
不審SMSのフィルタリング強化
・送信元が偽装されたSMSの検知・ブロック
・大量送信パターンの検知
・既知のフィッシングURLを含むSMSの自動ブロック
発信者番号偽装対策
国際電話で日本の番号を偽装する「なりすまし」を技術的に防止。総務省と連携し、対策を推進中
警察との情報共有
・不審なトラフィックパターンの情報提供
・フィッシングサイトのホスティング情報
・SMSの送信元情報

一般企業への要請

従業員教育の実施
最低でも年2回、フィッシング詐欺に関する社内研修を実施。警察への講師派遣依頼も可能
模擬フィッシング訓練
疑似フィッシングメールを従業員に送信し、開封率、クリック率を測定。脆弱な従業員には追加教育を実施
インシデント時の通報
フィッシング攻撃を受けた場合、被害の有無に関わらず警察へ通報。情報共有により他社の被害を防止
セキュリティ対策の強化
・多要素認証の全社導入
・メールセキュリティソフトの導入
・定期的な脆弱性診断
・[企業のフィッシング対策体制](/security/scams/phishing/column/defense/enterprise-security/)の構築
サプライチェーンセキュリティ
取引先企業のセキュリティレベルも確認。サプライチェーン攻撃により、自社が被害を受けるリスクを低減

教育機関への要請

学生・生徒への情報リテラシー教育
小学校から大学まで、発達段階に応じたサイバーセキュリティ教育を実施。警察官による「サイバー安全教室」の活用を推奨
保護者への啓発
保護者会、PTA等で、子どものネット利用に関する注意喚起。フィルタリング設定、利用時間制限等を推奨
教職員研修
教職員自身がフィッシング詐欺の標的となるケースも多い。定期的な研修で警戒心を醸成

医療機関への要請

電子カルテ・患者情報の保護強化
[医療機関を狙うサイバー攻撃](/security/scams/phishing/column/industry/healthcare/)が増加。ランサムウェア攻撃により診療停止に陥るリスクに対し、多層防御を構築
インシデント時の即時通報
患者の生命に関わるため、攻撃を受けた場合は即座に警察・厚生労働省へ通報。隠蔽は厳禁

国際協力と摘発状況

国際刑事警察機構(INTERPOL)との連携

インターポールとは
195の国と地域が加盟する国際刑事警察機構。本部はフランス・リヨン。国境を越えた犯罪の捜査協力、情報共有を担当
日本の参加
警察庁がインターポール日本事務局(NCB Tokyo)を運営。24時間体制で国際犯罪情報を管理
フィッシング詐欺への対応
・「Operation Falcon」:フィッシング詐欺の国際一斉取締り作戦(年2回実施)
・「I-24/7」:加盟国間のリアルタイム情報共有システム
・赤色手配:国際指名手配による犯人の拘束

2025年の主要な国際連携成果

作戦名 実施時期 参加国 検挙人数 被害回復額
Operation Falcon VI 2025年3月 42カ国 234名 約38億円
Operation Killer Bee 2025年7月 28カ国 167名 約22億円
Operation Storm 2025年10月 35カ国 198名 約31億円

主要協力国との二国間連携

米国(FBI)との共同捜査

連携体制
警察庁とFBIの間にホットラインを設置。重大事案は24時間以内に情報共有
主な成果
2025年6月、日米を標的とする国際詐欺グループをカリフォルニア州で摘発。日本人主犯2名を含む12名を逮捕
技術協力
暗号資産の追跡技術、ダークウェブの監視技術等で協力。FBI CyberDivisionと警察庁サイバー警察局が定期的に技術交流

中国(公安部)との連携

連携の課題
政治的な緊張関係により、一時期連携が停滞。ただし、サイバー犯罪に関しては実務レベルでの協力を継続
主な成果
2025年9月、上海を拠点とする日本人標的の詐欺グループを中国公安部が摘発。警察庁からの情報提供が端緒
今後の展望
両国の利益が一致するサイバー犯罪分野では、政治とは切り離した協力が期待される

東南アジア諸国(ASEANPOL)との連携

ASEANPOLとは
ASEAN加盟国の警察機関による協力枠組み。サイバー犯罪対策が重点分野の一つ
課題
東南アジアは、日本を標的とするサイバー犯罪の拠点となるケースが多い。一方、各国の法制度、捜査能力にばらつきがあり、連携が困難な場合も
日本の支援
警察庁は、JICA(国際協力機構)と連携し、東南アジア各国へサイバー犯罪捜査の技術支援、人材育成を実施。長期的な関係構築により、連携を強化
主な成果
・ベトナム:2025年に3件の合同摘発
・フィリピン:コールセンター型詐欺拠点を2件摘発
・タイ:マネーロンダリング組織を摘発

犯人引渡し(身柄の確保)

日本の犯罪人引渡条約

日本は現在、米国、韓国の2カ国とのみ犯罪人引渡条約を締結しています。その他の国との引渡しは、相互主義(reciprocity)に基づき、個別に交渉が必要です。

2025年の引渡実績

引渡元国 引渡人数 主な罪状
米国 3名 詐欺、マネーロンダリング
韓国 2名 詐欺
フィリピン 4名 詐欺(条約なし、個別交渉)
タイ 2名 詐欺(条約なし、個別交渉)
ベトナム 3名 詐欺(条約なし、個別交渉)
合計 14名 -

課題と今後の展望

条約未締結国からの引渡しは、外交交渉に長期間(6ヶ月~2年)を要します。警察庁は、主要国との犯罪人引渡条約の締結を推進していますが、相手国の法制度、人権保障等の問題もあり、交渉は難航しています。


よくある質問(FAQ)

Q: 警察に相談すべきケースとは具体的にどのような場合ですか?
A: 以下のいずれかに該当する場合は、躊躇せず#9110へご相談ください。①実際にフィッシング詐欺の被害に遭った(金銭を送金、個人情報を入力した)場合、②フィッシングメールを受信し、リンクをクリックしてしまったが情報は入力していない場合、③家族や同僚がフィッシング詐欺に遭いそうで止めたい場合、④不審なメールやサイトを発見し、他の人の被害を防ぎたい場合。相談は無料で、匿名でも可能です。「こんなことで相談してもいいのか」と迷う必要はありません。早期相談が被害防止の鍵です。
Q: 被害届は必ず受理されますか?受理されないケースはありますか?
A: 被害の事実が確認でき、最低限の証拠(フィッシングメール、送金記録等)がある場合は、原則として受理されます。ただし、①被害の事実が不明確(「多分詐欺だと思う」程度)、②証拠が全くない、③既に時効が成立している(詐欺罪の時効は7年)、等の場合は、受理されないか、追加資料を求められる可能性があります。まずは#9110で事前相談し、「どのような資料が必要か」「受理される見込みはあるか」を確認することをお勧めします。警察は市民の味方ですので、親身に対応します。
Q: 被害届を出したら、犯人は必ず捕まりますか?
A: 残念ながら、全ての事件で犯人を検挙できるわけではありません。2025年のフィッシング詐欺検挙率は約12.5%です。特に国際犯罪の場合、犯人が海外にいるため捜査が困難です。ただし、国内犯の場合は比較的高い確率(約30-40%)で検挙されています。また、検挙に至らなくても、被害届の提出には以下の意義があります:①統計データに反映され、警察の対策強化に繋がる、②同一犯による他の被害者がいれば、情報が集約され検挙の可能性が高まる、③被害回復制度の利用可能性、④民事訴訟の証拠となる。諦めずに被害届を提出してください。
Q: 通報者の個人情報は守られますか?犯人にバレることはありませんか?
A: 通報者・相談者の個人情報は、警察内部で厳重に管理され、捜査上必要な場合を除いて第三者に開示されることは一切ありません。犯人に通報者の情報が漏れることもありません。また、匿名での情報提供も可能です(ただし、被害届を正式に提出し、捜査協力を希望する場合は、身元を明かす必要があります)。警察は通報者の安全を最優先に考えていますので、安心してご相談ください。万が一、報復等の懸念がある場合は、その旨を警察に伝えれば、適切な保護措置を検討します。
Q: #9110と110番はどう使い分ければいいですか?
A: 【110番を使う場合】:今まさに事件が起きている、緊急性が高い場合。例:「今、詐欺の電話がかかってきている」「目の前で犯罪が起きている」等。【#9110を使う場合】:緊急性はないが相談したい場合。例:「昨日フィッシング詐欺に遭った」「不審なメールを受信したが、どうすればいいか」「被害届を出したいが、まず相談したい」等。判断に迷った場合は、110番でも対応しますが、可能な限り#9110のご利用をお願いします。110番は緊急通報専用であり、相談が集中すると本当の緊急通報への対応が遅れる可能性があります。
Q: 企業がフィッシング攻撃を受けた場合、必ず警察に通報しなければなりませんか?
A: 重要インフラ事業者(電力、ガス、金融、通信、交通、医療、水道、政府・行政、化学、クレジット、石油)に該当する企業は、サイバー攻撃を受けた場合、サイバーセキュリティ基本法により**24時間以内の通報が義務**です。その他の企業は法的義務はありませんが、①被害の拡大防止、②犯人検挙への貢献、③他社への情報共有、④適切な対応を取ったことの証明(株主代表訴訟対策)、等の理由から、通報を強く推奨します。「恥ずかしい」「評判が下がる」という懸念から隠蔽すると、後に発覚した場合、より大きな信用失墜に繋がります。警察は企業の機密情報を厳守しますので、安心してご相談ください。
Q: 警察はフィッシング詐欺の予防のため、どのような活動をしていますか?
A: 警察は、検挙活動だけでなく、予防活動にも力を入れています。主な活動は以下の通りです:①**学校での「サイバー安全教室」**:警察官が学校を訪問し、児童・生徒にネット犯罪の危険性を教育(年間約15,000校で実施)、②**企業向けセキュリティセミナー**:企業から依頼があれば、警察官を講師として派遣(無料)、③**街頭キャンペーン**:駅頭等でチラシ配布、啓発グッズ配布、④**ウェブサイト・SNSでの情報発信**:警察庁、各都道府県警察のウェブサイト、X(旧Twitter)等で最新情報を発信、⑤**高齢者見守り活動**:高齢者宅を訪問し、個別に注意喚起。これらの活動を通じ、市民の皆様の警戒心を高め、被害を未然に防ぐことを目指しています。

内部リンク(関連情報)


公式情報リンク

警察庁

関係機関


【重要なお知らせ】

  • 本記事は警察庁および各都道府県警察の公式発表に基づく情報をまとめたものです
  • 実際に被害に遭われた場合は、速やかに#9110(警察相談専用電話)または110番へご連絡ください
  • 緊急性が高い場合(今まさに詐欺の電話がかかってきている等)は110番、相談の場合は#9110をご利用ください
  • 本記事の情報は作成時点(2025年11月20日)のものであり、手口は日々進化しています。最新情報は警察庁ウェブサイトをご確認ください
  • 最終更新日:2025年11月20日

更新履歴

初稿公開

京都開発研究所

システム開発/サーバ構築・保守/技術研究

CMSの独自開発および各業務管理システム開発を行っており、 10年以上にわたり自社開発CMSにて作成してきた70,000以上のサイトを 自社で管理するサーバに保守管理する。