基本的な質問(1-20)
Q1. トロイの木馬とは何ですか?
A: 正規のソフトウェアやファイルを装って侵入する悪意のあるプログラムです。ウイルスと異なり自己増殖せず、ユーザー自身がインストールしてしまうのが特徴です。便利なツールや面白いゲームのように見せかけて、実際には情報を盗んだり、システムを破壊したりする機能を隠し持っています。
Q2. なぜトロイの木馬という名前なのですか?
A: ギリシャ神話のトロイア戦争で使われた木馬の計略に由来します。表面上は贈り物(便利なソフト)に見えて、実は内部に脅威(悪意のあるコード)を隠しているためです。古代ギリシャ軍が巨大な木馬の中に兵士を隠してトロイアを陥落させた故事から、この名前が付けられました。
Q3. ウイルスとトロイの木馬の違いは?
A: ウイルスは自己複製して拡散しますが、トロイの木馬は自己複製しません。トロイの木馬は単独で存在でき、静かに潜伏して情報を盗むことに特化しています。ウイルスは感染を広げることが目的ですが、トロイの木馬は特定の悪意ある行動を実行することが目的です。
Q4. トロイの木馬に感染する原因は?
A: 主な原因は①偽装されたメール添付ファイルを開く②違法ダウンロードサイトの利用③偽のソフトウェアアップデート④USBなど外部メディアの不用意な使用です。特に「請求書」「履歴書」などビジネス文書を装ったメールや、有名ソフトの偽アップデート通知には要注意です。
Q5. 感染したらどうなりますか?
A: 個人情報の流出、銀行口座からの不正送金、パソコンの遠隔操作、ランサムウェアへの発展など、深刻な被害が発生する可能性があります。平均被害額は個人で38万円、企業では2.1億円に達しています。
Q6. 感染の兆候は?
A: パソコンの動作が異常に遅い、見覚えのないプログラムの起動、ブラウザのホームページ変更、頻繁なポップアップ、セキュリティソフトの無効化などが典型的な症状です。また、ネットワークトラフィックの増加や、ファイルの勝手な変更も警告サインです。
Q7. 自然に治ることはありますか?
A: いいえ、自然に治ることはありません。むしろ時間経過とともに被害が拡大します。発見次第、速やかに駆除作業が必要です。放置すると、より多くの情報が盗まれたり、他のマルウェアを呼び込んだりする危険があります。
Q8. 無料で駆除できますか?
A: Microsoft Safety Scanner、Malwarebytes Free版など無料ツールで駆除可能な場合もありますが、高度な脅威には有料ツールや専門家の支援が必要なこともあります。重要なのは早期発見・早期対処です。
Q9. Macも感染しますか?
A: はい、Macも感染します。「Macは安全」という過信は危険です。2025年現在、Mac向けトロイの木馬は年間5000種類以上発見されています。特にAppleシリコン搭載の新型Macも標的になっています。
Q10. スマホも感染しますか?
A: はい、AndroidもiPhoneも感染リスクがあります。特にAndroidは、アプリストア外からのインストールやroot化により危険性が高まります。iPhoneも脱獄(Jailbreak)すると感染リスクが急増します。
Q11. 感染確率はどれくらい?
A: 日本企業の68%、個人ユーザーの約15%が年間で何らかのマルウェア被害を経験しています。セキュリティ対策をしていない場合、感染確率は5倍以上に跳ね上がります。
Q12. 企業と個人どちらが狙われやすい?
A: 企業の方が狙われやすく、特に中小企業は大企業への踏み台として狙われます。ただし、個人でも暗号資産保有者や高所得者層は積極的に狙われています。
Q13. ランサムウェアとの関係は?
A: ランサムウェア攻撃の80%以上がトロイの木馬による初期感染から始まります。トロイの木馬が偵察役となり、数週間後にランサムウェアが投下されるパターンが一般的です。
Q14. セキュリティソフトで防げる?
A: 最新のセキュリティソフトで多くは防げますが、100%ではありません。新種や亜種、ゼロデイ攻撃には対応が遅れることがあります。多層防御が重要です。
Q15. Windows Defenderだけで十分?
A: 基本的な防御には有効ですが、高度な脅威には不十分な場合があります。企業や重要データを扱う個人は、EDR(Endpoint Detection and Response)など高度なソリューションの検討を推奨します。
Q16. 感染したら警察に通報すべき?
A: 金銭被害がある場合は警察のサイバー犯罪相談窓口に通報すべきです。また、IPAの安心相談窓口(03-5978-7509)も活用できます。企業の場合は、所轄警察署のサイバー犯罪対策課に相談してください。
Q17. 保険は効きますか?
A: サイバー保険に加入していれば補償対象となります。一般的な火災保険や企業総合保険では対象外の場合が多いです。2025年現在、サイバー保険の加入率は大企業で70%、中小企業で15%程度です。
Q18. データは取り戻せますか?
A: バックアップがあれば復元可能です。暗号化された場合、復号ツールが公開されているケースもありますが、最新のランサムウェアでは困難です。定期的なバックアップが最善の対策です。
Q19. 再感染することはある?
A: はい、あります。根本原因を解決しないと同じ経路で再感染します。また、一度感染した企業は「狙いやすい」としてリストに載り、繰り返し狙われる傾向があります。
Q20. 予防に最も効果的な方法は?
A: 従業員教育が最も費用対効果が高い対策です。技術的対策と人的対策を組み合わせ、①怪しいメールを開かない②OSを最新に保つ③定期バックアップ、この3つを徹底することが基本です。
技術的な質問(21-40)
Q21. ファイルレス攻撃とは?
A: ハードディスクにファイルを残さず、メモリ上でのみ動作する攻撃です。PowerShellなど正規ツールを悪用し、従来のアンチウイルスでは検出困難です。全攻撃の40%がファイルレス化しています。
Q22. C&Cサーバーとは?
A: Command and Controlサーバーの略で、感染した端末を遠隔操作するための指令サーバーです。トロイの木馬はこのサーバーと通信して新たな命令を受け取ります。通信は暗号化され、HTTPSトラフィックに偽装されることが多いです。
Q23. サンドボックスとは?
A: 疑わしいプログラムを隔離環境で実行し、動作を観察する技術です。実際のシステムに影響を与えることなく、マルウェアかどうかを判定できます。ただし、サンドボックス検出機能を持つマルウェアも増えています。
Q24. ポリモーフィック型とは?
A: 実行のたびに自身のコードを変化させるマルウェアです。同じマルウェアでも毎回異なるハッシュ値となるため、シグネチャベースの検出を回避できます。1日に数千の亜種を生成するものもあります。
Q25. ルートキット機能とは?
A: OSの深層部に潜伏し、自身の存在を隠蔽する機能です。プロセス、ファイル、レジストリ、ネットワーク接続などを不可視化し、通常の方法では検出・削除が困難になります。
Q26. キーロガーとの違いは?
A: キーロガーはキーボード入力を記録する単機能ツールですが、トロイの木馬は多機能で、キーロガー機能を含む場合もあります。トロイの木馬の方が包括的な脅威です。
Q27. バックドアとは?
A: システムに不正アクセスするための「裏口」です。トロイの木馬がバックドアを設置すると、攻撃者はいつでもシステムに侵入できるようになります。正規の認証を迂回してアクセス可能です。
Q28. ゼロデイ攻撃との関係は?
A: ゼロデイ脆弱性(未公開の脆弱性)を利用してトロイの木馬を送り込む攻撃が増加しています。パッチが存在しないため防御が困難で、高度な攻撃者の手法です。
Q29. 暗号化通信を使う理由は?
A: C&Cサーバーとの通信を暗号化することで、ネットワーク監視を回避します。HTTPS、DNS over HTTPS、Torなどを使用し、正規の通信に紛れ込ませます。
Q30. プロセスインジェクションとは?
A: 正規のプロセス(explorer.exe、svchost.exe等)に悪意のあるコードを注入する技術です。正規プロセスとして動作するため、検出が困難になります。
Q31. 永続化メカニズムとは?
A: システム再起動後も感染を維持する仕組みです。レジストリのRunキー、スケジュールタスク、サービス登録、スタートアップフォルダなど、複数の方法を組み合わせて使用します。
Q32. UAC迂回とは?
A: Windows のUser Account Control(ユーザーアカウント制御)を回避して、管理者権限を不正に取得する技術です。正規のWindowsコンポーネントの脆弱性を悪用します。
Q33. DLLサイドローディングとは?
A: 正規アプリケーションが読み込むDLLファイルを悪意のあるものに置き換える攻撃です。デジタル署名された正規プロセスの信頼性を悪用します。
Q34. LOLBinsとは?
A: Living Off The Land Binariesの略で、Windows標準のツール(PowerShell、certutil、bitsadmin等)を悪用する手法です。新たなマルウェアをインストールせずに攻撃できます。
Q35. EDRとEPPの違いは?
A: EPP(Endpoint Protection Platform)は従来型の防御、EDR(Endpoint Detection and Response)は検出と対応に特化。EDRは既に侵入された前提で、異常な振る舞いを検出し、詳細な調査と対処を可能にします。
Q36. ヒューリスティック検出とは?
A: プログラムの動作パターンを分析して、未知のマルウェアを検出する技術です。シグネチャがない新種のトロイの木馬も検出可能ですが、誤検知のリスクもあります。
Q37. IOCとは何ですか?
A: Indicators of Compromise(侵害の痕跡)の略で、感染を示す証拠です。不審なファイルハッシュ、IPアドレス、ドメイン名、レジストリキーなどが含まれます。
Q38. TTPsとは?
A: Tactics, Techniques, and Procedures(戦術、技術、手順)の略で、攻撃者の行動パターンを表します。IOCより永続的で、攻撃者の特定に有効です。
Q39. MITRE ATT&CKフレームワークとは?
A: 攻撃者の戦術と技術を体系化したフレームワークです。世界標準として、攻撃の分析、防御策の立案、セキュリティ製品の評価などに使用されています。
Q40. デジタルフォレンジックとは?
A: サイバー犯罪の証拠を収集・分析・保全する技術です。トロイの木馬感染時の侵入経路特定、被害範囲の確認、法的証拠の確保などに使用されます。
対策に関する質問(41-60)
Q41. 最低限必要な対策は?
A: ①OSとソフトの定期更新②セキュリティソフト導入③定期バックアップ④不審なメール・リンクを開かない⑤管理者権限の制限、この5つが最低限必要です。これだけで被害の70%は防げます。
Q42. 企業での対策優先順位は?
A: ①EDR導入(年間500万円程度)②従業員教育(年間100万円程度)③バックアップ体制(初期300万円)④ゼロトラスト移行(3年計画で5000万円)⑤インシデント対応計画、の順で投資することを推奨します。
Q43. 無料と有料セキュリティソフトの違いは?
A: 無料版は基本的な検出機能のみ、有料版はリアルタイム保護、ファイアウォール、フィッシング対策、ランサムウェア保護、技術サポートなどが含まれます。企業や重要データを扱う場合は有料版必須です。
Q44. VPNは効果的?
A: 通信の暗号化には効果的ですが、トロイの木馬の感染防止には直接的な効果はありません。むしろ、感染端末がVPN経由で社内ネットワークに接続すると、被害が拡大する危険があります。
Q45. ファイアウォールだけで防げる?
A: 防げません。ファイアウォールは不正な通信をブロックしますが、正規の通信に偽装したトロイの木馬や、メール添付で侵入するものは防げません。多層防御が必要です。
Q46. メール対策で重要なことは?
A: ①SPF/DKIM/DMARC設定②添付ファイルのサンドボックス検査③マクロの無効化④HTMLメールの制限⑤標的型メール訓練の実施。特に従業員の意識向上が最重要です。
Q47. パスワード管理のベストプラクティスは?
A: ①最低12文字以上②大小英数字記号混在③サービスごとに異なるパスワード④パスワードマネージャー使用⑤定期変更(3ヶ月ごと)⑥二要素認証併用。これで99.9%の攻撃を防げます。
Q48. 二要素認証の効果は?
A: アカウント乗っ取りの99.9%を防げます。SMS認証より認証アプリ(Google Authenticator等)やハードウェアキー(YubiKey等)の方が安全です。
Q49. バックアップの頻度は?
A: 重要データは毎日、通常データは週1回、システム全体は月1回が推奨です。また、3-2-1ルール(3つのコピー、2種類のメディア、1つはオフサイト)を守ることが重要です。
Q50. 3-2-1ルールとは?
A: データを3つ保存(本番+バックアップ2つ)、2種類の異なるメディア使用、1つは別の場所に保管するルールです。ランサムウェア対策として、オフライン保管も追加した3-2-1-1-0ルールも推奨されています。
Q51. ゼロトラストとは?
A: 「決して信頼せず、常に検証する」セキュリティモデルです。社内ネットワークでも信頼せず、すべてのアクセスを検証します。境界防御の限界を超える新しいアプローチです。
Q52. EDRの導入コストは?
A: 端末1台あたり年間5,000〜15,000円が相場です。100台規模の企業なら年間50〜150万円。MDR(Managed Detection and Response)サービスなら月額200〜500万円で24時間監視も可能です。
Q53. SOCは必要?
A: 従業員500名以上の企業では推奨されます。自社構築は初期1.5億円、年間8000万円かかるため、中小企業はMDRサービスのアウトソースが現実的です。
Q54. 従業員教育の頻度は?
A: 標的型メール訓練は月1回、集合研修は半年に1回、セキュリティニュース配信は月2回が理想です。継続的な教育により、クリック率を20%から5%以下に減らせます。
Q55. 標的型メール訓練の効果は?
A: 初回クリック率30%が、継続訓練により5%以下に減少します。また、不審メールの報告率が10%から80%に向上。投資対効果が最も高いセキュリティ対策の一つです。
Q56. ペネトレーションテストとは?
A: 実際の攻撃手法を用いてシステムの脆弱性を検査するテストです。年1回実施が推奨され、費用は規模により300〜2000万円。潜在的な侵入経路の85%を発見できます。
Q57. 脆弱性診断の頻度は?
A: Webアプリケーションは四半期ごと、ネットワークは半年ごと、プラットフォームは年1回が推奨されます。重要システムは月次での自動スキャンも検討すべきです。
Q58. パッチ管理のコツは?
A: ①緊急度による優先順位付け②テスト環境での事前検証③段階的な適用④ロールバック計画の準備⑤適用状況の可視化。WSUSやSCCMなどの管理ツール活用が効果的です。
Q59. BYOD対策は?
A: ①MDM(Mobile Device Management)導入②業務データと個人データの分離③VPN必須化④セキュリティポリシー教育⑤紛失時のリモートワイプ機能。コンテナ化技術の活用も有効です。
Q60. リモートワークでの注意点は?
A: ①VPN利用必須②私物PCの業務利用禁止③クラウドサービスのアクセス制御④Web会議のセキュリティ設定⑤家庭内Wi-Fiのセキュリティ強化。特にシャドーITの防止が重要です。
被害・対応に関する質問(61-80)
Q61. 感染したらまず何をする?
A: ①即座にネットワークから切断(LANケーブル抜く、Wi-Fi切る)②証拠保全(スクリーンショット、ログ保存)③セキュリティ部門やIT部門に連絡④金融機関に連絡(必要に応じて)⑤専門家に相談、この順番で対応します。最初の1時間が勝負です。
Q62. 身代金は払うべき?
A: 原則として支払うべきではありません。支払っても復号される保証はなく(35%が失敗)、再攻撃のリスクも高まります(80%が1年以内に再被害)。また、犯罪組織への資金提供となり、法的リスクもあります。
Q63. データ復旧の可能性は?
A: バックアップがあれば95%復旧可能、なければ暗号化の種類により0〜50%。一部のランサムウェアには無料復号ツール(No More Ransom Project)があります。専門業者なら部分復旧の可能性もあります。
Q64. 警察への届出は必要?
A: 金銭被害や業務妨害があれば届出推奨です。サイバー犯罪相談窓口、都道府県警察本部のサイバー犯罪対策課が窓口。被害届提出により、捜査協力や被害回復の可能性があります。
Q65. 保険請求の手順は?
A: ①保険会社への第一報(48時間以内)②証拠保全と記録③フォレンジック調査実施④損害額の算定⑤必要書類の提出。平均して請求から支払いまで2〜3ヶ月かかります。
Q66. 顧客への通知義務は?
A: 個人情報保護法により、個人情報漏洩の可能性がある場合は速やかな通知が必要です。また、個人情報保護委員会への報告も必要(速報は3〜5日以内、確報は30日以内)。
Q67. 損害賠償のリスクは?
A: 顧客一人あたり1〜10万円の慰謝料請求リスクがあります。情報漏洩1万人なら1000万〜1億円。さらに、取引先からの損害賠償、信用失墜による売上減少も加わります。
Q68. 復旧にかかる時間は?
A: 単純な感染なら1〜3日、ランサムウェアなら平均21日、大規模侵害なら1〜3ヶ月。バックアップの有無、被害範囲、専門家の支援有無により大きく変動します。
Q69. 復旧コストの相場は?
A: 中小企業で500〜3000万円、大企業で5000万〜10億円。内訳は、フォレンジック調査(300〜2000万円)、システム復旧(500〜5000万円)、機会損失、信用回復費用など。
Q70. 証拠保全の方法は?
A: ①電源を切らない(メモリの証拠消失防止)②ネットワークログの保存③感染端末のイメージ取得④スクリーンショット撮影⑤関連文書の保管。できれば専門家に依頼することが望ましいです。
Q71. フォレンジック調査の必要性は?
A: 侵入経路の特定、被害範囲の確認、再発防止策の立案、法的証拠の確保に必須です。費用は300〜2000万円ですが、原因不明のままでは再発リスクが高くなります。
Q72. 再発防止策は?
A: ①根本原因の除去②脆弱性の修正③セキュリティ対策の強化④従業員教育の徹底⑤インシデント対応計画の見直し。PDCAサイクルを回し、継続的に改善することが重要です。
Q73. 広報対応はどうする?
A: ①事実確認と情報整理②ステークホルダーの特定③メッセージの作成④適切なタイミングでの公表⑤継続的な情報更新。透明性を保ちつつ、パニックを避ける配慮が必要です。
Q74. 株価への影響は?
A: 上場企業の場合、公表後3ヶ月で平均15%下落します。ただし、迅速で適切な対応により、6ヶ月後には回復する傾向があります。隠蔽した場合の下落は30%以上になることも。
Q75. 取引先への影響は?
A: サプライチェーン攻撃の場合、取引先にも感染が拡大する可能性があります。平均して5〜10社が二次被害を受けます。取引停止や損害賠償請求のリスクもあります。
Q76. 従業員のケアは?
A: ①正確な情報共有②不安の解消③過重労働の防止④メンタルヘルスケア⑤再発防止への参画。インシデント対応は長期戦になるため、従業員のモチベーション維持が重要です。
Q77. 訴訟リスクは?
A: 個人情報漏洩では集団訴訟リスク、取引先からは損害賠償請求、株主からは株主代表訴訟の可能性があります。適切な初動対応と誠実な対応により、多くは和解で解決可能です。
Q78. 規制当局への報告は?
A: 業種により異なります。金融業は金融庁、個人情報は個人情報保護委員会、上場企業は証券取引所への適時開示が必要。報告遅延は制裁金のリスクがあります。
Q79. インシデント後の監査は?
A: 第三者機関による監査を受けることで、対策の適切性を証明できます。ISO27001認証取得や、定期的なセキュリティ監査により、信頼回復を図ることができます。
Q80. 信頼回復の方法は?
A: ①透明性のある情報開示②再発防止策の実施と公表③第三者認証の取得④継続的なコミュニケーション⑤補償やサービス改善。平均して1〜2年で信頼回復可能です。
最新トレンドの質問(81-100)
Q81. AI型トロイの木馬とは?
A: 機械学習を使って標的の行動を学習し、検出を回避しながら最適な攻撃を自動実行する新世代のトロイの木馬です。2025年以降の主要な脅威となっています。環境に応じて動作を変更し、セキュリティソフトの検出パターンを学習して回避します。
Q82. サプライチェーン攻撃とは?
A: 信頼できるソフトウェアベンダーや取引先を経由して侵入する攻撃です。正規のアップデートに偽装されるため、検出が極めて困難です。2021年のKaseya事件では、1社の侵害から1500社に被害が拡大しました。
Q83. ランサムウェアとの連携は増えている?
A: はい、急増しています。2025年現在、ランサムウェア攻撃の85%がトロイの木馬による初期感染から始まっています。平均潜伏期間は18日で、その間に内部調査とバックアップ破壊を行います。
Q84. クラウド環境での脅威は?
A: クラウドネイティブなトロイの木馬が増加しています。DockerイメージやKubernetesクラスタを標的とし、サーバーレス環境でも動作します。クラウドの設定ミスを狙った攻撃も多発しています。
Q85. IoT機器への感染は?
A: 急増しています。スマート家電、監視カメラ、産業用IoTなどが標的となり、DDoS攻撃の踏み台や、物理的な被害をもたらす可能性があります。2025年には10億台のIoT機器が感染リスクにさらされています。
Q86. 5Gで攻撃は変わる?
A: 高速・低遅延により、リアルタイム攻撃が可能になります。大量のIoT機器の同時制御、高精細動画でのディープフェイク配信、瞬間的な大容量データ窃取などが脅威となります。
Q87. 量子コンピュータの影響は?
A: 2030年頃に実用化されると、現在の暗号が無効化される可能性があります。量子耐性暗号への移行が必要ですが、量子コンピュータを使った新たな攻撃手法も懸念されています。
Q88. ディープフェイクとの組み合わせは?
A: 音声や動画のディープフェイクを使い、CEOになりすまして送金指示を出す事例が増えています。2024年には香港で約35億円の被害が発生。ビデオ会議でも本物と区別がつきません。
Q89. 暗号資産が狙われる理由は?
A: ①追跡困難な送金②高い価値③セキュリティの甘い個人が多い④規制が未整備⑤国際的な換金が容易。2025年の暗号資産関連の被害は全世界で2兆円を超えています。
Q90. NFT関連の脅威は?
A: NFTマーケットプレイスのハッキング、偽NFTプロジェクト、ウォレットの秘密鍵窃取などが主な脅威です。Discord経由での感染も多く、コミュニティ全体が被害を受けるケースが増えています。
Q91. メタバースでの危険性は?
A: 仮想空間内でのソーシャルエンジニアリング、アバターなりすまし、仮想資産の窃取、VRデバイスへのマルウェア感染などが新たな脅威となっています。
Q92. 電気自動車への攻撃は?
A: 充電ステーション経由での感染、車載システムの乗っ取り、走行データの窃取、遠隔操作による事故誘発の可能性があります。2025年には実際の攻撃事例が報告されています。
Q93. スマートホームのリスクは?
A: スマートロックの不正解錠、監視カメラの乗っ取り、家電の誤動作、プライバシー侵害などが主なリスクです。一つの機器から家庭内ネットワーク全体に感染が広がる危険があります。
Q94. 医療機器への脅威は?
A: ペースメーカー、インスリンポンプ、MRI、CTスキャナーなどが標的となっています。人命に直接関わるため、身代金支払い率が高く(65%)、攻撃者にとって魅力的な標的です。
Q95. 2026年の予測は?
A: AI同士の攻防激化、量子コンピュータ前夜の混乱、6G実験による新たな攻撃、生体認証の大規模突破、完全自律型マルウェアの登場などが予測されています。
Q96. 日本特有の脅威は?
A: 日本語の巧妙化、インボイス制度を悪用した攻撃、マイナンバー関連の詐欺、地震・災害に便乗した攻撃、2025年大阪万博関連の攻撃などが日本特有の脅威です。
Q97. 東京オリンピック後の傾向は?
A: 大規模イベントのインフラを狙った攻撃ノウハウが蓄積され、他の国際イベントでも活用されています。レガシーシステムの脆弱性も継続的に狙われています。
Q98. 生成AIの悪用は?
A: ChatGPTやClaudeを使った巧妙なフィッシングメール作成、マルウェアコードの自動生成、ソーシャルエンジニアリングの自動化などが急増しています。
Q99. 次世代の防御技術は?
A: 量子暗号通信、ブロックチェーンベースの認証、AIによる予測的防御、ゼロ知識証明、ホモモルフィック暗号などが実用化に向けて開発されています。
Q100. 完全に防ぐことは可能?
A: 100%防ぐことは不可能です。しかし、適切な対策により99%以上のリスクは低減できます。重要なのは、防御だけでなく、早期発見、迅速な対応、速やかな復旧を含めた総合的なレジリエンス構築です。
まとめ:必ず覚えておくべき10項目
- トロイの木馬は自己増殖しない - ウイルスとは異なり、ユーザーの行動により感染
- 人間の行動で感染する - 技術的対策だけでなく、人的対策が重要
- 早期発見・早期対処が鍵 - 発見が遅れるほど被害は拡大
- 多層防御が基本戦略 - 単一の対策では不十分
- バックアップは最後の砦 - 3-2-1ルールを徹底
- 従業員教育は最重要投資 - 最も費用対効果が高い対策
- ゼロトラストへの移行は必然 - 境界防御の限界を認識
- サプライチェーンリスクの認識 - 取引先も含めた対策が必要
- インシデント対応計画の準備 - 感染前提での準備が重要
- 継続的な警戒が必要 - セキュリティに終わりはない
トロイの木馬対策は、技術・人・プロセスの総合的なアプローチが必要です。このFAQを参考に、自組織に適した対策を実装し、継続的に改善していくことが、サイバーセキュリティ確保の鍵となります。
更新履歴
- 初稿公開