シャドーIT・無許可SaaSを初心者でも分かりやすく解説

あなたの会社の重要データが、今この瞬間も誰かの個人アカウントに保存されているかもしれません。シャドーIT・無許可SaaSは、従業員が善意で使う便利なツールが、企業のデータ・プライバシーを脅かす深刻な問題です。個人のGoogleドライブ、Dropbox、ChatGPTなど、管理されていないサービスに企業データが散在することで、情報漏洩やコンプライアンス違反のリスクが急増しています。本記事では、なぜ従業員が無許可ツールを使うのか、どんな被害が発生するのか、そして組織全体でデータを守るための実践的な対策について、専門知識がなくても理解できるように解説します。見えないリスクを可視化し、管理する方法を学びましょう。

シャドーIT・無許可SaaSとは?

シャドーIT・無許可SaaSとは、IT部門の許可や管理を受けずに、従業員が勝手に業務で使用するツールやクラウドサービスのことです。データ・プライバシーを守る上で重大な脅威となっており、便利な無料ツール、個人用クラウドストレージ、未承認のコミュニケーションアプリなどが該当します。従業員は業務効率化のために善意で使いますが、企業の機密情報や顧客データが管理されていない外部サービスに保存され、情報漏洩やコンプライアンス違反のリスクを生み出します。

シャドーIT・無許可SaaSを簡単に言うと?

会社の書類整理に例えると、会社指定の金庫や書庫があるのに、従業員が「自宅の方が便利だから」と勝手に重要書類を持ち帰って、自分の机の引き出しや、個人で契約している貸倉庫に保管するようなものです。本人は仕事のためを思ってやっていますが、会社は「どの書類が」「どこに」「誰が持っているか」全く把握できません。その貸倉庫が火事になったり、泥棒に入られたりしても、会社は対応できません。デジタルの世界でも、個人のGoogleドライブやDropboxに顧客リストをアップロードしたり、ChatGPTに機密情報を入力したりすることが、まさにこの「勝手な持ち出し」にあたるのです。

シャドーIT・無許可SaaSで発生する被害は?

シャドーIT・無許可SaaSにより、企業データの流出、コンプライアンス違反、セキュリティ統制の崩壊などが発生します。データ・プライバシーを守ることができず、従業員が退職時に企業データを持ち出したり、個人アカウントのハッキングで企業情報が漏洩したりする事例が後を絶ちません。特に、無料サービスは利用規約でデータの所有権が不明確な場合があり、意図せず企業秘密を第三者に提供してしまう危険があります。

シャドーIT・無許可SaaSで発生する直接的被害

機密情報の外部流出

従業員が個人のクラウドストレージに顧客データベースを保存し、そのアカウントがハッキングされて数万件の個人情報が流出する

知的財産の喪失

開発中の新製品の設計図や企画書を無許可のコラボレーションツールで共有し、サービス提供者の規約により知的財産権を失う

取引先情報の漏洩

個人のメールアカウントで取引先とやり取りし、フィッシング攻撃により取引先の機密情報まで流出させてしまう

シャドーIT・無許可SaaSで発生する間接的被害

監査での不適合とペナルティ

データがどこに保存されているか把握できず、GDPRやISO認証の監査で重大な不適合と判定され、認証取消や巨額の制裁金を科される

インシデント対応の困難化

情報漏洩が発生しても、どのサービスから漏れたか特定できず、被害範囲の把握や対策が遅れて被害が拡大する

従業員退職時のデータ喪失

重要な業務データが個人アカウントに保存されており、従業員の退職とともにアクセス不能になり、業務継続に支障をきたす

シャドーIT・無許可SaaSの対策方法

シャドーIT・無許可SaaSへの対策は、利用ツールの可視化、承認プロセスの確立、代替ツールの提供が基本となります。データ・プライバシーを守るために、CASBツール(Cloud Access Security Broker)による検知、利用ポリシーの明文化、定期的な利用状況調査が重要です。また、従業員のニーズを理解し、セキュアで便利な公式ツールを提供することで、シャドーITの発生を根本から防ぐことができます。

シャドーIT・無許可SaaSの対策を簡単に言うと?

社用車の管理に例えると、まず誰がどんな車(ツール)を使っているか全て把握し(可視化)、私用車での業務は禁止して、必要なら会社が車を用意します(代替ツール提供)。新しい車が必要な時は申請してもらい(承認プロセス)、承認された車だけを使うルールを作ります。また、「なぜ私用車を使いたいのか」を聞いて、それに応える社用車を用意することで、ルール違反を防ぎます。定期的に駐車場を見回って(モニタリング)、登録外の車がないかチェックします。罰則だけでなく、従業員が進んでルールを守りたくなる環境作りが、シャドーIT対策の鍵となります。

シャドーIT・無許可SaaSに関連した攻撃手法

データ・プライバシーを守る観点から、シャドーIT・無許可SaaSと密接に関連する3つのリスクを解説します。

個人情報(PII)漏洩

シャドーIT・無許可SaaSの最大のリスクの一つです。管理外のサービスに保存された顧客情報や従業員情報が、セキュリティの甘い個人アカウント経由で漏洩し、個人情報保護法違反につながります。企業が把握していないサービスでPII漏洩が発生すると、対応が遅れ被害が拡大します。

データ漏洩

無許可SaaSは企業のセキュリティポリシーが適用されないため、データ漏洩の温床となります。シャドーITで使用されるサービスは、適切な暗号化やアクセス制御がされておらず、データ漏洩事故が発生しやすい環境です。

過剰共有・権限付与

シャドーIT環境では適切な権限管理ができず、必要以上に情報が共有されがちです。無許可SaaSでは「全員に公開」などの設定ミスが起こりやすく、意図しない相手に機密情報が露出する危険があります。管理者が存在しないため、過剰な権限付与も見過ごされます。

シャドーIT・無許可SaaSのよくある質問

業務データを扱わない個人的なタスク管理程度なら許容できますが、顧客情報や機密情報を扱う場合は必ず承認されたツールを使用すべきです。線引きを明確にすることが重要です。

公式ツールが使いにくい、申請手続きが面倒、必要な機能がない、導入が遅いなどが主な理由です。従業員のニーズを理解し、使いやすい公式ツールを迅速に提供することが対策の第一歩です。

無料サービス自体が危険なのではなく、企業の管理下にないことが問題です。無料でも適切に評価・管理されていれば利用可能な場合もあります。重要なのは可視化と管理です。

企業規模に応じた様々な価格帯のサービスがあります。まずは無料の簡易調査(従業員アンケートやブラウザ履歴確認)から始め、段階的に管理を強化することも可能です。

はい、急激に増加しています。自宅での作業で個人ツールとの境界が曖昧になり、便利な個人向けサービスを業務に使うケースが増えています。リモートワーク環境では特に注意が必要です。

更新履歴

初稿公開

京都開発研究所

システム開発/サーバ構築・保守/技術研究

CMSの独自開発および各業務管理システム開発を行っており、 10年以上にわたり自社開発CMSにて作成してきた70,000以上のサイトを 自社で管理するサーバに保守管理する。