CHECK
01
「セキュアバイデザイン」思想に基づくWebアプリケーション開発・運用体制の構築
インシデントの侵入口が「Webシステム」であったことから、アプリケーションそのものに脆弱性が存在したか、あるいはその稼働環境に設定ミスがあった可能性が極めて高いと考えられます。完成したシステムの外側からセキュリティ対策を施すだけでは、巧妙な攻撃を防ぐことは困難です。
対策の方向性:
システムの企画・設計段階からセキュリティを組み込む「セキュアバイデザイン」または「シフトレフト」と呼ばれる考え方を徹底すべきです。具体的には、開発の上流工程で脅威となりうる箇所を洗い出す脅威モデリングを実施し、開発者に対してセキュアコーディングの教育を徹底します。さらに、開発プロセスの中に、ソースコードの脆弱性を自動で検査するツール(SAST)や、稼働中のアプリケーションを擬似的に攻撃して検査するツール(DAST)の組み込みを必須とします。これにより、脆弱性が作り込まれることを防ぎ、リリース前に問題を修正する文化とプロセスを確立します。
CHECK
02
ゼロトラスト原則に基づくデータアクセス制御と最小化
一つのWebシステムへの不正アクセスが、905万件という膨大な個人情報へのアクセスを許してしまった事実は、そのシステムに過大なデータアクセス権限が付与されていたことを示唆しています。万が一システムが侵害されても、被害を最小限に食い止める「データ中心」の防御策が不可欠です。
対策の方向性:
「何も信頼しない」を前提とするゼロトラストの原則に基づき、システムや利用者からのデータアクセスを厳格に制御すべきです。Webシステムには、そのトランザクションで必要となる最小限のデータへのアクセス権限しか与えない**「最小権限の原則」を徹底します。また、データベースに保管されている個人情報、特に口座情報のような機微なデータは、アプリケーションレベルで暗号化したり、意味のない別の文字列に置き換えるトークナイゼーション**を施したりすることで、万が一データが窃取されても、その内容を解読・悪用されるリスクを大幅に低減できます。
CHECK
03
侵害の早期検知と迅速な対応(EDR/NDR)体制の強化
攻撃者が4月17日から21日までのおよそ5日間にわたりシステム内部で活動していた可能性があり、この「潜伏期間(Dwell Time)」が被害を拡大させる一因となりました。攻撃の痕跡をいかに早く見つけ出し、封じ込めるかが、情報漏えいの被害を最小化する上で決定的に重要です。
対策の方向性:
従来の境界型防御に加えて、内部に侵入した脅威を早期に検知し、対応する能力を強化する必要があります。具体的には、Webサーバーやデータベースサーバーなどの挙動を常時監視し、不審なプロセス実行や通信を検知・ブロックする**EDR(Endpoint Detection and Response)を導入します。さらに、ネットワーク全体の通信を監視・分析し、不正なデータ持ち出しの兆候などを検知するNDR(Network Detection and Response)を組み合わせることで、攻撃者の内部活動を多角的に捉えることが可能になります。これらのツールからの警告を24時間体制で分析・対応するSOC(Security Operation Center)**を構築することで、インシデントの検知から封じ込めまでの時間を劇的に短縮できます。