CHECK
01
グループ・サプライチェーン全体を統括するセキュリティガバナンスの確立
今回のインシデントは、親会社の重要情報(顧客の個人情報)が、セキュリティ対策レベルが異なる可能性のあるグループ会社から漏えいした点が最大の問題です。攻撃者は、防御の堅い大企業本体ではなく、セキュリティ投資が相対的に手薄になりがちな関連会社や取引先を狙う傾向が顕著です。
対策の方向性:
グループ全体で遵守すべき統一的なセキュリティ基準(ベースライン)を策定し、その遵守状況を親会社が主導して定期的に監査・評価する体制を構築すべきです。具体的には、委託する情報の重要度に応じて、グループ会社や外部委託先に求めるセキュリティ要件(例:多要素認証の導入義務、EDRによる監視、脆弱性管理の徹底など)を契約に明記し、その履行状況をアンケートやヒアリング、第三者機関による診断などを通じて継続的に確認します。これにより、サプライチェーン全体のセキュリティレベルの底上げと平準化を図ります。
CHECK
02
「渡した情報」のライフサイクル管理と監視強化
「委託したから終わり」ではなく、委託先に渡した情報がどのように利用・保管・廃棄されているのか、そのライフサイクル全体を管理・監視する視点が不可欠です。委託業務に必要な情報へのアクセスが適切に制御されていなければ、ひとたび侵入を許した際に被害が直接的に情報漏えいにつながります。
対策の方向性:
ゼロトラストの原則に基づき、「必要最小限の原則」を徹底すべきです。委託先には業務遂行に本当に必要なデータへのアクセス権限のみを付与し、アクセス可能な期間も限定します。可能であれば、データを直接渡すのではなく、親会社の管理下にある仮想デスクトップ(VDI)環境などを通じて業務を行わせることで、データの拡散を防ぎます。また、委託先から重要情報へアクセスする際のログを監視し、通常とは異なる振る舞い(深夜や休日の大量アクセスなど)を自動検知する仕組みを導入することで、侵害の兆候を早期に捉えることが可能になります。
CHECK
03
グループ横断でのインシデント対応体制の構築と実戦的訓練
今回は九州電力本体のシステムに影響がなかったものの、インシデントの発見が遅れたり、対応が不十分だったりすれば、攻撃が親会社のネットワークにまで波及する可能性も否定できません。グループ会社で発生したインシデントを迅速に検知し、連携して封じ込める体制が重要です。
対策の方向性:
グループ会社でインシデントが発生した際に、親会社のセキュリティ専門チーム(CSIRTなど)へ即座に報告・連携するためのエスカレーションプロセスを明確に定義し、形骸化させないことが重要です。さらに、親会社とグループ会社が合同で、サプライチェーン攻撃を想定した実践的なインシデント対応訓練(サイバー演習)を定期的に実施すべきです。これにより、有事の際の情報共有、役割分担、意思決定、対外的なコミュニケーションといった一連の流れをスムーズに行えるようになり、グループ全体としてのインシデント対応能力(サイバーレジリエンス)を向上させることができます。