SNS型投資・ロマンス詐欺とは?
SNS型投資・ロマンス詐欺とは、FacebookやInstagram、LINEなどのSNSを起点として、恋愛感情と投資話を巧妙に組み合わせて金銭を騙し取るサイバー攻撃です。ロマンス投資詐欺、国際ロマンス詐欺の進化形とも呼ばれ、2024年に日本で最も深刻な被害をもたらした詐欺手法の一つです。警察庁の発表によると、2024年のSNS型投資詐欺とSNS型ロマンス詐欺を合わせた被害総額は1,271.9億円に達し、前年比179.4%という驚異的な増加を記録しました。この詐欺の特徴は、単純な恋愛詐欺や投資詐欺とは異なり、両方の要素を戦略的に組み合わせることで、被害者の理性と感情の両方を同時に攻撃する点にあります。
SNS型投資・ロマンス詐欺を簡単に言うと?
SNS型投資・ロマンス詐欺を身近な例えで説明すると、恋人のふりをした営業マンが、あなたの心と財布の両方を狙う手口です。街で出会った魅力的な人が優しく接近してきて、デートを重ねるうちに「二人の将来のために一緒にお金を増やそう」と持ちかけてくるようなものです。ただし、この営業マンは実在せず、スマートフォンの画面の向こうで複数の詐欺師が演じている架空の人物なのです。釣りに例えると、美味しそうな餌(恋愛)で魚を引き寄せ、針(投資話)にかかったところで、財産をすべて巻き上げる巧妙な仕掛けです。
SNS型投資・ロマンス詐欺で発生する被害は?
SNS型投資・ロマンス詐欺の被害は、通常のロマンス詐欺を上回る規模と深刻さを持ちます。2024年のデータでは、SNS型投資詐欺が871.1億円(6,413件)、SNS型ロマンス詐欺が400.9億円(3,824件)の被害を記録し、平均被害額は1件あたり1,000万円を超えています。この詐欺の恐ろしさは、被害者が投資による利益を期待しながら、同時に愛する人との未来も夢見ているため、二重の心理的罠にはまってしまう点にあります。
発生する直接的被害
- 巨額の金銭的損失と追加投資の連鎖
SNS型投資・ロマンス詐欺では、最初の投資額5万円から10万円程度が、最終的に数千万円の被害に膨らむケースが典型的です。詐欺師は偽の投資プラットフォームを用意し、初期投資では実際に利益が出ているように見せかけます。画面上では資産が2倍、3倍と増えていき、被害者は成功体験に酔いしれます。しかし出金しようとすると「税金の支払いが必要」「手数料が必要」「最低出金額に達していない」など様々な理由をつけて追加送金を要求し、最終的にすべての資金を奪い取ります。
- 暗号資産による回収不能な被害
2024年から2025年にかけて、暗号資産を使った被害が急増し、全体の24.7%を占めるまでになりました。詐欺師は「暗号資産なら高い利益が得られる」「規制が少ないから有利」と誘導し、ビットコインやイーサリアムでの送金を促します。一度送金された暗号資産は、ブロックチェーンの特性上、取り戻すことがほぼ不可能です。詐欺師は複数のウォレットを経由して資金を洗浄し、追跡を困難にします。
- 投資用借金による多重債務
SNS型投資・ロマンス詐欺の被害者の多くは、「確実に儲かる」という言葉を信じて借金をしてまで投資します。消費者金融、銀行のカードローン、クレジットカードのキャッシング枠をすべて使い切り、不動産を担保に借り入れをする被害者もいます。詐欺が発覚した後も、これらの借金は残り続け、月々の返済に苦しむことになります。自己破産を選択せざるを得ない被害者も少なくありません。
発生する間接的被害
- 投資仲間を巻き込んだ被害の拡大
SNS型投資・ロマンス詐欺では、被害者が家族や友人を投資に誘い込んでしまうケースが多発しています。「こんなに儲かっている」という成功体験(実際は偽の画面)を見せて、善意から周囲の人々を巻き込んでしまうのです。その結果、詐欺が発覚した際には、自分だけでなく大切な人々にも被害を与えてしまい、人間関係が完全に崩壊することがあります。被害者は加害者としての責任も背負うことになり、精神的な苦痛は計り知れません。
- 偽の成功体験による投資依存症
詐欺の初期段階で見せられる「利益」の画面は、被害者に強烈な成功体験を植え付けます。この偽の成功体験は、ギャンブル依存症に似た心理状態を生み出し、詐欺が発覚した後も「もう一度あの成功を」という欲求から抜け出せなくなります。別の投資詐欺に引っかかったり、ハイリスクな投資に手を出したりして、さらなる損失を重ねる被害者が後を絶ちません。
- SNSアカウントの悪用と信用失墜
詐欺師は被害者のSNSアカウントにアクセスし、友人リストを利用して新たな被害者を探します。被害者のアカウントから「素晴らしい投資機会がある」というメッセージが友人に送られ、信頼関係を利用した詐欺の連鎖が発生します。また、被害者自身が詐欺に加担したと誤解され、社会的な信用を失うケースもあります。
SNS型投資・ロマンス詐欺の対策方法
SNS型投資・ロマンス詐欺から身を守るには、SNS上の投資広告や恋愛関係と投資話の組み合わせを警戒することが重要です。FacebookやInstagramに表示される「月収100万円確実」「AIが自動で稼ぐ」といった広告は、ほぼすべてが詐欺です。有名人の名前や写真を無断使用していることが多く、クリックした時点で詐欺師のターゲットリストに載ってしまいます。また、マッチングアプリやSNSで知り合った相手が投資の話を持ち出した瞬間に、それは詐欺だと判断すべきです。本物の投資専門家は、SNSで見知らぬ人に投資を勧めることはありません。
対策を簡単に言うと?
SNS型投資・ロマンス詐欺の対策を簡単に言うと、「恋人から投資の話が出たら、それは恋人ではなく詐欺師」と覚えておくことです。本物の恋愛では、相手はあなたの心を求めますが、詐欺師はあなたのお金を求めます。これは、道で「宝くじの当選番号を教えるから手数料をください」と言われるのと同じくらい怪しい話です。SNSの画面に表示される「儲かった」という画像は、写真加工アプリで作った偽物と同じ。本物の愛も、本物の投資利益も、SNSの中だけでは証明できません。信じる前に、必ず現実世界で確認することが大切です。
SNS型投資・ロマンス詐欺に関連した攻撃手法
- サプライチェーン攻撃との高い類似性
SNS型投資・ロマンス詐欺の組織的な犯罪構造に現れています。東南アジアの詐欺工場では、サプライチェーン攻撃と同様の分業体制が確立されており、プロフィール作成部門、心理操作部門、技術サポート部門、資金洗浄部門などが連携して一つの詐欺を実行します。Huione Guaranteeのような闇のプラットフォームでは、偽の身分証明書、ディープフェイク技術、マネーロンダリングサービスなど、詐欺に必要なあらゆる「部品」が取引されています。この犯罪のサプライチェーンは、正規のビジネスのサプライチェーンと同じように効率化・最適化されており、被害者一人あたりから最大限の利益を搾取する仕組みが構築されています。
- ディープフェイク詐欺の活用
AI・ディープフェイク技術によりSNS型投資・ロマンス詐欺はより説得力を持つようになりました。詐欺師はディープフェイク技術を使って、実在する投資専門家や成功した起業家になりすまし、偽のウェビナーや投資セミナーを開催します。被害者は画面越しに本物の専門家と話していると信じ込み、疑いを持たずに大金を投資してしまいます。2024年には、有名投資家の顔と声を完全に複製したディープフェイク動画が、SNS型投資詐欺で広く使用されました。また、恋愛関係においても、ディープフェイクによるビデオ通話で「本物の恋人」を演出し、被害者の信頼を完全に獲得します。
- フィッシング詐欺の手法
フィッシング詐欺の手法は、SNS型投資・ロマンス詐欺の重要な要素です。詐欺師は偽の投資プラットフォームを構築し、正規の証券会社や暗号資産取引所のサイトを精巧に模倣します。被害者がログイン情報を入力すると、その情報は詐欺師に送信され、実際の取引所のアカウントがあれば乗っ取られます。さらに、投資に関する「重要なお知らせ」「税金の支払い通知」といった偽メールを送信し、フィッシングサイトへ誘導します。恋愛関係で築いた信頼を利用して「このサイトは安全だから」と誘導することで、通常なら警戒するはずのフィッシング詐欺にも簡単に引っかかってしまうのです。
SNS型投資・ロマンス詐欺のよくある質問
FacebookやInstagramに表示される投資広告の99%以上は詐欺です。有名人の名前や写真が使われていても、それは無断使用であり、本人は一切関与していません。詐欺師はAIで生成した偽のインタビュー記事や、画像編集で作った偽の推薦文を使用しています。これらの広告は、プラットフォームの審査をすり抜けるために巧妙に作られており、削除されてもすぐに新しいものが現れます。Meta社(Facebook/Instagram)も対策を強化していますが、詐欺師の手口の進化に追いついていないのが現状です。
絶対に参加してはいけません。これらのグループの「参加者」のほとんどはサクラ(詐欺師の仲間)です。「今日も50万円の利益」「先生のおかげで資産が10倍に」といった投稿は、すべて演出です。グループ内で共有される取引画面や利益のスクリーンショットは、簡単に偽造できます。本物の投資グループなら、金融商品取引法に基づく登録が必要ですが、これらのグループは違法な無登録業者です。参加して個人情報を提供すると、執拗な勧誘が始まり、最終的には大金を失うことになります。
これは典型的なSNS型投資・ロマンス詐欺の手口です。本当にあなたを愛している人は、会ったこともない段階で投資話を持ち出すことはありません。詐欺師は恋愛感情を利用して判断力を鈍らせ、「愛する人と一緒なら」という心理につけ込みます。特に「今がチャンス」「期間限定」といった urgency(緊急性)を演出して、冷静に考える時間を与えません。本物の恋愛なら、まず実際に会って信頼関係を築き、その後でお金の話をするのが自然な流れです。投資と恋愛を同時に進める人は、100%詐欺師だと断言できます。
これは詐欺師の最も巧妙な罠です。最初に少額の利益を出金させるのは、信頼を得るための「撒き餌」です。被害者に成功体験を与えることで、より大きな投資を促します。しかし、大金を投資した後は、様々な理由(税金、手数料、最低出金額)をつけて出金を拒否します。この手法は「ピッグブッチャリング(豚の屠殺)」と呼ばれ、豚を太らせてから屠殺するように、被害者に投資させるだけさせてから、すべてを奪い取ります。初期の成功は演出であり、最終的な目的は全財産を奪うことです。
暗号資産を使った投資話の大半は詐欺です。詐欺師は「規制が少ない」「税金が安い」「値上がり確実」といった嘘を並べますが、実際の暗号資産投資は極めてハイリスクです。特にSNS経由で勧められる暗号資産投資は、偽の取引所に送金させる詐欺がほとんどです。一度送金した暗号資産は追跡が困難で、回収はほぼ不可能です。2024年には暗号資産詐欺の被害が55億ドルから99億ドルに急増しました。正規の暗号資産取引を行う場合でも、金融庁に登録された取引所を使用し、SNSの勧誘は一切信用しないことが鉄則です。
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