QRコード詐欺(クイッシング)の手口と対策完全ガイド

駐車場の料金支払い、レストランのメニュー表示、イベント会場でのアンケート──日常的に使うQRコードが詐欺の入口になっています。本記事では2025年に急増する**QRコード詐欺(クイッシング)**の手口、**偽QRコードの見分け方**、**PayPay等の決済アプリ利用時の注意点**、**企業が取るべき対策**まで、実例を基に詳しく解説します。

警察庁によると、QRコード詐欺の報告件数は2024年に前年比約3.6倍に急増し、2025年も増加傾向が続いています。特にコインパーキング、飲食店のテーブル、イベント会場での被害が目立ち、一度の犯行で数十万円から数百万円の被害が発生するケースも珍しくありません。

本記事では、サイバーセキュリティの専門的視点から、すぐに実践できる防御策と被害に遭った際の対応方法を網羅的に紹介します。

QRコード詐欺(クイッシング)とは【基礎知識】

QRコード詐欺(クイッシング)とは、QR code(キューアールコード)とPhishing(フィッシング)を組み合わせた造語で、正規のQRコードの上に偽のQRコードを貼付、またはQRコード自体を偽装することで、利用者を詐欺サイトに誘導するフィッシング詐欺の一種です。2023年頃から欧米で被害が報告され始め、2024年から日本国内でも急増しています。

クイッシングの定義と特徴

クイッシングの語源と定義
QR code(キューアールコード)とPhishing(フィッシング)を組み合わせた造語。正規のQRコードの上に偽のQRコードを貼付、またはQRコード自体を偽装することで、利用者を詐欺サイトに誘導する手口。2023年頃から欧米で被害が報告され、2024年から日本国内でも急増。警察庁のサイバー犯罪相談窓口には、2024年1月から11月までに約1,800件の相談が寄せられ、前年の約500件から約3.6倍に増加しています。
従来のフィッシング詐欺との3つの違い
1. **物理的接触**: 実際にQRコードシールを貼る物理的作業が必要であり、犯行現場への出入りが伴う
2. **信頼性の高さ**: 「公式が設置したQRコード」と誤認されやすく、利用者の警戒心が低い
3. **URL確認の困難性**: QRコード読み取り時にURLが見えにくい仕様が多く、詐欺サイトへの誘導に気づきにくい
なぜQRコードが狙われるのか
**スマートフォンでの利用が前提**: パソコンと比べてセキュリティ意識が低く、小さい画面でURL確認が困難
**URL確認せずにタップする習慣**: 多くの利用者が読み取り後すぐにリンクをタップし、遷移先を確認しない
**決済アプリとの連携が一般化**: PayPay、d払い、楽天ペイ等のQRコード決済が普及し、金銭被害に直結
**偽造・設置のコストが極めて低い**: QRコード生成は無料、印刷とシール化で1枚10円以下のコストで実行可能

被害統計と深刻化する状況

QRコード詐欺は2024年から2025年にかけて急速に増加しており、その被害規模は無視できないレベルに達しています。

項目 2023年 2024年 2025年予測
国内報告件数 約500件 約1,800件 約5,000件
平均被害額 15万円 22万円 推定30万円
最高被害額 80万円 340万円 推定500万円超
検挙率 8% 5% 低下傾向

※警察庁サイバー犯罪対策課の統計および各都道府県警の発表データを基に推計

検挙率が低い理由として、以下の要因が挙げられます:

  • 犯行の痕跡が残りにくい: シールを貼って剥がすだけで、防犯カメラに映っても通常の利用者と区別困難
  • 組織的・広域的犯行: 複数の都道府県で同時多発的に発生し、捜査リソースが分散
  • 海外サーバーの利用: 詐欺サイトのサーバーが海外に設置され、捜査協力が得にくい
  • 仮想通貨での送金: 追跡が困難な仮想通貨での送金を要求されるケースが増加

この手口はソーシャルエンジニアリングの要素も含んでおり、人間の心理的な隙を突く点で極めて巧妙です。


QRコード詐欺の基本手口とメカニズム

QRコード詐欺を理解するには、まずQRコードの仕組みと、それがどのように悪用されるのかを知る必要があります。

QRコードの技術的特性

QRコード(Quick Response Code)は、1994年にデンソーウェーブ社が開発した二次元バーコードで、以下の特性を持ちます:

  • データ容量: 最大約4,000文字のテキスト、約7,000桁の数字を格納可能
  • 誤り訂正機能: 最大30%の損傷があっても読み取り可能(レベルH)
  • 高速読み取り: スマートフォンカメラで0.5秒以内に読み取り
  • 無料生成: オンラインツールで誰でも簡単に生成可能

この「誰でも簡単に生成できる」という特性が、詐欺に悪用される最大の要因となっています。

3つの主要攻撃パターン

QRコード詐欺には大きく分けて3つのパターンが存在します。

パターン1: 上書き貼付型(最も多い手口)

手口の詳細:

正規のQRコードの上に、同じデザイン・同じサイズの偽QRコードシールを貼付します。一見して判別が困難で、利用者の多くが気づかずに読み取ってしまいます。

実施場所:

  • コインパーキングの料金支払いQRコード
  • 駐輪場の精算機
  • 飲食店のテーブルメニューQRコード
  • 自動販売機の決済QR
  • 宅配ロッカーの操作パネル

被害の流れ:

  1. 利用者が偽QRをスマートフォンで読み取り
  2. 詐欺サイト(正規サイトのそっくりさん)に自動的に誘導
  3. 「システムメンテナンス中のため情報再登録が必要」等の表示
  4. クレジットカード情報や決済アプリのID・パスワードを入力
  5. 情報窃取または即座に不正送金が実行される
  6. 「エラーが発生しました」と表示され、利用者は異常に気づかないまま被害

見分けるポイント:

  • QRコードシールの端が浮いている(指で触って確認)
  • 印刷品質が周囲の案内と微妙に異なる(色味、解像度)
  • シールが二重になっている痕跡(光の角度を変えて確認)
  • QRコード周辺の説明文のフォントが本体の印刷と異なる
  • タンパープルーフステッカー(改ざん防止シール)が破れている

パターン2: 新規設置型

手口の詳細:

公共の場所や店舗内に、独自の偽QRコードを新規に設置します。「期間限定キャンペーン」「無料Wi-Fi」「お得なクーポン」等の魅力的な文言で利用者を誘導します。

実施場所:

  • イベント会場の壁面や柱
  • 駅構内の掲示板
  • 商業施設のトイレ個室内
  • 店舗のレジ横や入口付近
  • 公園のベンチや観光スポット

誘導文句の例:

  • 「スマホでQRコードを読み取って、今すぐ1,000円クーポンをGET!」
  • 「無料Wi-Fiに接続するにはこちらのQRコードから」
  • 「アンケートに答えて豪華賞品が当たる! 抽選で10万円分のギフトカード」
  • 「本日限定! PayPay決済で30%還元キャンペーン実施中」
  • 「来場者特典: QRコードから限定グッズをゲット」

これらの誘導文は緊急性お得感を演出し、利用者の冷静な判断を妨げるフィッシング詐欺の典型的な心理操作手法です。

パターン3: デジタル偽装型

手口の詳細:

メール、SMS、SNS、Webサイトで偽QRコードを表示・送付します。「正規のQRコードです」「公式からのお知らせ」と主張し、物理的な設置作業を伴わないため大量配信が可能です。

配信経路:

  • フィッシングメールに添付(請求書、配送通知を装う)
  • SNSのDMで送付(知人になりすまし)
  • 偽装した公式サイト風ページ(ドメイン名が1文字違い)
  • 偽アプリ内での表示(マルウェア経由)
  • SMSで不在通知等を装って送付

特徴:

  • 物理的な設置作業が不要で、低リスク・高効率
  • ターゲティングが容易(特定企業の従業員、特定地域の住民等)
  • スピアフィッシングとの組み合わせで精度向上
  • 一度に数千人、数万人への配信が可能

QRコードの技術的脆弱性

URL短縮サービスとの組み合わせ
QRコード内のURLが短縮URL(bit.ly、tinyurl.com、ow.ly等)の場合、最終的な遷移先が完全に不明です。正規のサービスでも短縮URLを使用することがあるため、利用者は判別できません。攻撃者は短縮URLを経由させることで、フィッシングサイトへの直接リンクを隠蔽します。
リダイレクト機能の悪用
一度正規サイトやニュースサイトを経由してから詐欺サイトへリダイレクトする高度な手口も出現しています。初期URLは正規に見えるため、セキュリティソフトやブラウザの警告をすり抜けます。JavaScriptによる自動リダイレクトやメタタグによるリフレッシュが使われます。
QRコード読み取りアプリの設計上の問題
多くのQRコード読み取りアプリが「読み取り後すぐにブラウザ起動」する仕様になっています。ユーザーがURLを確認する時間が実質的にゼロで、気づいた時にはすでに詐欺サイトを開いている状態です。iOS標準カメラアプリも、読み取り後の通知をタップするとすぐにSafariが起動する設計です。
誤り訂正機能の悪用
QRコードの誤り訂正機能(最大30%の損傷でも読み取り可能)を逆手に取り、QRコードの一部に正規企業のロゴを埋め込むことで「公式QRコード」のように見せかける手口があります。実際には誤り訂正機能が働き、ロゴ部分を無視して詐欺URLが読み取られます。

この技術的脆弱性はフィッシングサイトをブロックする方法での対策が重要です。


駐車場・駐輪場でのQRコード詐欺被害事例【急増中】

駐車場・駐輪場でのQRコード詐欺は、2025年に入って特に急増している被害類型です。無人施設、深夜利用、急いでいる心理など、複数の要因が被害を拡大させています。

駐車場被害が最も多い3つの理由

理由 詳細 犯人にとっての利点
無人運営 管理人が常駐せず、防犯カメラのみでの監視 偽QRコード貼付が発見されにくい
深夜利用 24時間営業で深夜帯の利用者も多い 夜間に貼付・回収が容易
急ぐ心理 出庫時に後続車が待っている等で焦る 確認作業を省略しやすい
高額決済 1回の駐車料金が数千円になることも 被害額が大きい
利用頻度 同じ駐車場を繰り返し利用する 「いつものQRコード」と油断

実例1: 都内コインパーキングでの大規模被害

発生時期: 2025年9月中旬
場所: 東京都渋谷区・新宿区・港区のコインパーキング約15箇所(某大手運営会社)
被害内容:
利用者約80名が被害に遭い、総額約340万円の不正利用が発生。出庫時の精算機に貼られたQRコードで支払いを試みたところ、クレジットカード情報を入力させる画面に誘導されました。

手口の詳細:

  • 正規のQRコード(タイムズ等)の上に同サイズ・同デザインの偽QRシールを貼付
  • 誘導先は本物そっくりの偽決済ページ(ドメイン名が「times-park.jp」→「times-park1.jp」のように1文字違い)
  • 「システムメンテナンス中のため、クレジットカード情報の再登録が必要です」との虚偽表示
  • 深夜0時〜早朝5時に集中的に貼付され、同日中に剥がされて証拠隠滅
  • 金曜日・土曜日の夜間に実行(週末の利用者増加を狙った計画的犯行)

気づいたポイント(被害を免れた利用者の証言):

  • QRコードの印刷が周囲の案内板よりも明らかに粗く、ドットが滲んでいた
  • URLが「https://」から始まっていない(http://のみ)
  • ドメイン名が正規サービスと微妙に違う(times0.jp ※Oとゼロの違い)
  • 「クレジットカード番号」「セキュリティコード」の両方を要求(通常は登録済み)
  • ページのSSL証明書が「無効」とブラウザに警告された

実例2: 大学構内駐輪場での学生狙い

発生時期: 2025年10月上旬
場所: 首都圏某私立大学の駐輪場(3箇所)
被害内容:
学生を中心に約50名が偽QRコードから詐欺サイトにアクセス。うち12名がPayPayやd払いのID・パスワードを入力し、総額約85万円の不正送金被害が発生しました。

特徴的な手口:

  • 学生限定キャンペーンを装う: 「新入生歓迎!駐輪場利用料1ヶ月無料キャンペーン」の偽告知
  • 大学ブランドの悪用: 大学の公式ロゴ、学生課の連絡先(偽造)を掲示に含める
  • 決済アプリのログイン画面を精巧に模倣: PayPay、d払いの本物のログイン画面をコピーし、URLのみ変更
  • 入力後に正規画面に遷移: ID・パスワード入力後、「エラーが発生しました」と表示し、すぐに正規のPayPay画面にリダイレクトすることで、被害者に気づかせない工夫
  • SNSでの拡散を利用: 「お得情報」として学生間で共有され、被害が急速に拡大

被害拡大の要因:

  • 学生は金銭的余裕が少なく、「無料」「割引」の文言に反応しやすい
  • スマートフォンのネイティブ世代で、QRコード利用への心理的抵抗が低い
  • 友人間での情報共有が活発(「このQRコードでタダになるよ」と拡散)
  • セキュリティ教育の不足(大学の正規課程にサイバーセキュリティ教育が含まれていない)

この事例はソーシャルエンジニアリングと組み合わされた典型例です。

実例3: 月極駐車場での組織的犯行

発生時期: 2025年11月
場所: 関西圏(大阪府・兵庫県・京都府)の月極駐車場約30箇所
被害内容:
管理会社を装った偽QRコードを一斉に貼付。契約者約200名のうち、48名が被害に遭い、総額約340万円の損害が発生。クレジットカード情報が流出し、二次被害も継続中です。

組織的犯行の証拠:

  • 広域・同時多発: 同一デザインのQRコードが3府県、30箇所以上に同時期(48時間以内)に出現
  • 完璧な模倣: 管理会社の連絡先、ロゴ、契約書類のフォーマット、担当者名まで完璧に模倣
  • 信憑性の演出: 「駐車料金改定のお知らせ」として実際の市場動向に即した値上げ幅を提示
  • 時間帯の分散: 防犯カメラ回避のため、深夜・早朝・昼間と時間帯を分散して貼付
  • 役割分担: 「貼付役」「見張り役」「技術役(サイト管理)」「回収役」の分業体制が推測される

捜査の状況:
大阪府警サイバー犯罪対策課が捜査中ですが、偽サイトのサーバーが海外(東南アジア)に設置されており、犯人グループの特定には至っていません。被害金の一部は仮想通貨に交換されており、追跡が困難な状況です。

被害防止チェックリスト(利用者向け)

駐車場・駐輪場を利用する際は、以下のチェックリストを活用してください。

【読み取り前の確認(30秒)】
□ QRコードシールが浮いていないか指で触って確認
□ シールの端が剥がれかけていないか目視確認
□ 印刷品質が周囲の案内表示と同等か確認
□ 二重貼りの痕跡がないか、光の角度を変えて確認
□ タンパープルーフステッカー(改ざん防止シール)の有無を確認
□ 周囲に「QRコード改ざん注意」の掲示があるか確認
□ 管理会社の連絡先が記載されているか確認

【読み取り後の確認(10秒)】
□ 遷移先URLを必ず目視確認(3秒間見る)
□ 「https://」で始まっているか確認(httpは危険)
□ ドメイン名が正規事業者のものか確認(1文字違いに注意)
□ 短縮URL(bit.ly等)の場合は特に警戒
□ ブラウザのアドレスバーに鍵マーク(SSL証明書)があるか確認

【決済前の確認(20秒)】
□ クレジットカード番号の入力を求められたら即座に中断
□ 決済アプリのパスワード再入力を求められたら疑う
□ 金額が実際の駐車時間・料金と合致しているか確認
□ 「システムエラー」「メンテナンス中」等の表示を信じない
□ 不審な場合は管理会社に直接電話確認(番号を検索サイトで調べる)
□ 可能であれば現金払いを選択

【決済後の確認(24時間以内)】
□ 領収書・利用明細を必ず受け取る・保存
□ 決済アプリの利用履歴を即座に確認
□ クレジットカードの利用明細を後日確認(不正利用の早期発見)
□ 身に覚えのない決済があれば即座にカード会社に連絡

施設管理者向けの対策

駐車場・駐輪場を運営する事業者は、企業のフィッシング詐欺対策体制に準じた対策が必要です。詳細は後述の「企業のQRコード管理と従業員教育」セクションを参照してください。


飲食店・小売店でのQRコード詐欺【メニュー・決済の罠】

飲食店や小売店でのQRコード利用は、コロナ禍を機に急速に普及しました。しかし、この利便性が詐欺の温床となっています。

レストラン・居酒屋でのメニューQR偽装

近年、飲食店ではメニューの紙削減やコスト削減のため、テーブル上のQRコードからスマートフォンでメニューを表示する方式が一般化しました。この仕組みが詐欺に悪用されています。

よくある設置場所:

  • テーブル上のメニューQRコード: アクリル板やラミネート加工された紙に印刷
  • 注文用タブレット代わりのQR: テーブル固定式のQRコードスタンド
  • 会計用QRコード: テーブル決済システム(PayPayやd払いでの支払い)
  • 店舗アンケートQR: 「ご意見をお聞かせください」として設置
  • 会員登録・ポイントカードQR: 「初回登録で500円OFF」等の特典付き

偽装の手口:

犯人は客として来店し、テーブルに座った際にわずか数秒で偽QRシールを貼付します。

  1. 正規のメニューQRの上に偽QRを重ねる: 同サイズ・同デザインで作成し、違和感を与えない
  2. テーブル下など目立たない場所に新規設置: 「裏メニューはこちら」「期間限定メニュー」等の文言で誘導
  3. 「本日のおすすめメニューはこちら」等の独自QRを設置: 店舗が関知していない偽の特別メニュー

誘導先:

  • 個人情報入力フォーム: 「会員登録でドリンク1杯無料」として氏名、電話番号、メールアドレスを窃取
  • クレジットカード決済画面: 「事前決済で10%OFF」として決済情報を窃取
  • アプリダウンロード: マルウェアが仕込まれた偽アプリをインストールさせる
  • ポイントカード登録: PayPay、LINE Pay等の決済アプリIDとパスワードを窃取
  • アンケートを装った情報収集: 「アンケート回答で500円クーポン」として詳細な個人情報を収集

実例: チェーン居酒屋での同時多発被害

発生時期: 2025年10月中旬(金曜日の夜)
場所: 首都圏の某居酒屋チェーン約20店舗
被害内容:
テーブルに設置されたメニュー表示用QRコードの上に偽QRが貼られ、約130名の顧客がアクセス。うち28名がクレジットカード情報を入力し、総額約95万円の不正利用が発生しました。

犯行の特徴:

  • 曜日・時間帯の選定: 金曜日の19時〜22時(最も混雑する時間帯)に実行
  • 組織的犯行: 複数の共犯者が別々の店舗で同時刻(19:30前後)に貼付
  • 迅速な作業: 店員の目を盗んで着席後1分以内に作業完了、即座に退店
  • 証拠隠滅: 翌日の営業開始前(おそらく深夜)に別の人物が剥がして回収
  • 精巧な偽サイト: 実際のチェーンの公式メニューページを完全コピーし、決済画面のみ差し替え

被害者の証言(30代女性会社員):
「いつも利用している店のQRコードだったので全く疑いませんでした。『期間限定!忘年会コース事前予約で20%OFF』と表示されて、会計を先に済ませる形式だと説明されたので、クレジットカード情報を入力してしまいました。後で店員さんに聞いたら、そんなキャンペーンは存在しないと言われて初めて被害に気づきました」

小売店レジでのQRコード決済詐欺

コンビニエンスストアやスーパーマーケットのレジ横に設置されたQRコード決済用のQRコードも標的となっています。

手口1: レジ横のQRコード偽装
コンビニやスーパーのレジ横に設置された「PayPay」「d払い」「楽天ペイ」「au PAY」「LINE Pay」等のQRコードを偽物とすり替えます。客がQRコードを読み取って決済しようとすると、偽の決済画面に誘導されます。店舗側は気づかず、支払いが完了していないのに商品を渡してしまう二重被害も発生しています。実際の決済は完了しておらず、後日店舗側が売上不足に気づいて発覚するケースが多いです。
手口2: 「新しい決済方法導入」を装う
「本日より新決済システム導入」「〇〇Payが新しくなりました」等の偽掲示を行い、新しいQRコードでの決済を促します。実際には店舗が全く関知していない詐欺用QRコードです。高齢者や外国人観光客は言語の壁や知識不足で特に狙われやすく、「店員さんが勧めているから安全」と誤認してしまいます。店舗スタッフも新しいシステム導入を知らされていないことが多く、気づくのが遅れます。
手口3: キャンペーン詐欺
「QRコード決済で10%還元」「〇〇Pay利用で抽選で全額キャッシュバック」等の偽キャンペーンを店頭で告知します。決済後、「還元を受け取るにはアプリ登録が必要」「キャンペーン適用にはSMS認証が必要」として個人情報や認証コードを窃取します。実際にはキャンペーンは存在せず、店舗も全く関与していません。後日、顧客が店舗に問い合わせて初めて詐欺が発覚します。

店舗オーナーができる対策

飲食店や小売店のオーナーは、顧客を守ると同時に自店舗のブランドを守るため、以下の対策が必要です。

日次チェック(営業開始時・終了時、各5分):

□ 全QRコードの目視確認(シール重ね貼りがないか)
□ QRコード周辺の説明文・掲示物の確認
□ タンパープルーフステッカーの状態確認
□ テーブル上QRコードの固定状況確認
□ 防犯カメラ映像のチェック(不審な挙動の客がいないか)
□ スタッフへの朝礼・終礼での注意喚起
□ テスト読み取り(実際にスマホで読み取って遷移先確認)

週次対策(毎週1回、10分):

  • QRコード設置位置の見直し(従業員の目が届く場所か)
  • 顧客からの問い合わせ・クレームの分析
  • 競合店舗での被害事例の情報収集
  • スタッフミーティングでの事例共有

月次対策(毎月1回、30分):

  • QRコードの定期交換(改ざん防止のため全数交換を検討)
  • ホログラムシール等の特殊加工導入の検討
  • スタッフ研修(偽QRコードの見分け方、発見時の対応)
  • 顧客への注意喚起ポスター掲示(「QRコード改ざんに注意」)
  • 保険加入の検討(サイバー保険、賠償責任保険)

設備投資の検討(予算: 5万円〜50万円):

対策 コスト 効果 優先度
タンパープルーフステッカー 50円/枚 × 枚数 ★★★★☆
QRコード透明カバー 3,000円/個 ★★★★★
卓上POSタブレット 3万円/台 ★★★★★
防犯カメラ増設・高画質化 10万円〜 ★★★☆☆
QRコード定期巡回サービス 月5,000円〜 ★★☆☆☆

中小企業のフィッシング詐欺対策も併せて参照してください。


イベント・観光地でのQRコード詐欺

イベント会場や観光地は、一時的な設置物が多く、管理体制が甘くなりがちなため、QRコード詐欺の格好のターゲットとなっています。

イベント会場特有のリスク

イベント会場には以下のような特性があり、詐欺師にとって好都合な環境です:

  • 一時的設置: イベント期間中のみの設置物が多く、日常的な管理が行き届かない
  • 人の流動性が高い: 大勢の来場者がおり、不審者が紛れやすい
  • 警戒心の低下: 楽しい雰囲気で警戒心が緩みやすい
  • 公式QRコードが多数: 正規のQRコードも多数設置されているため、偽物が混ざっても気づかれにくい
  • Wi-Fi環境の不安定: 公共Wi-Fi利用により、セキュリティが低下

イベント会場での詐欺パターン

パターン1: アンケート詐欺

「本日のイベントアンケートにご協力ください」
「QRコードからアンケートに答えて、抽選で豪華賞品が当たる!」

→ 誘導先で個人情報(氏名、住所、電話番号、メールアドレス、生年月日、職業等)を詳細に入力させる
→ 最後に「当選しました!賞品発送のためクレジットカード情報が必要です(送料負担のため)」
→ または「当選を確定するにはアプリのダウンロードが必要」としてマルウェアをインストールさせる

パターン2: チケット・グッズ購入詐欺

「会場限定グッズはこちらのQRコードから購入可能」
「当日券はQRコード決済のみ対応(完売間近!)」
「公式グッズ通販サイト(会場特別価格)」

→ 偽のECサイトに誘導
→ 決済後、商品は一切届かず、連絡も取れない
→ クレジットカード情報が窃取され、二次被害へ

パターン3: 公式アプリ偽装

「イベント公式アプリをダウンロード」
「会場マップ・タイムテーブルはアプリから確認」
「アプリDLで限定コンテンツをゲット」

→ 偽アプリ(マルウェア)をインストールさせる
→ スマートフォン内の連絡先、写真、位置情報等を窃取
→ 決済アプリの情報も盗まれ、不正送金の被害

観光地での外国人狙い

観光地では、言語の壁を利用した外国人観光客狙いのQRコード詐欺が増加しています。

手口の特徴:

  • 言語の壁を利用: 日本語が読めないことを利用し、英語・中国語・韓国語で偽の案内を作成
  • 「Tourist Information」等の英語表記: 公式観光案内所を装う
  • 無料Wi-Fi接続QR: 「Free Wi-Fi」と表示し、接続時に個人情報を窃取
  • 観光スポットの説明・音声ガイド: 「Scan for Audio Guide」として偽アプリをインストールさせる
  • 両替・決済サービス: 「Easy Payment for Tourists」として決済アプリのアカウント情報を窃取

被害事例(2025年8月、京都市):

京都市の清水寺周辺で、「多言語観光ガイドアプリ」を装った偽QRコードが設置され、外国人観光客約40名が被害に遭いました。アプリをダウンロードすると、位置情報追跡型のマルウェアがインストールされ、ホテルの部屋番号や滞在スケジュールが特定される事態となりました。その後、ホテルへの不審な電話が複数報告されています。

実例: 大型音楽フェスでの被害

発生時期: 2025年8月
場所: 某大型音楽フェスティバル会場(3日間開催、来場者数延べ15万人)
被害内容:
「公式グッズ販売サイト」を装った偽QRコードが会場内約50箇所に貼られ、来場者約200名が偽サイトにアクセス。うち45名がクレジットカード情報を入力し、総額約180万円の被害が発生しました。

犯行の手口:

  • 公式ロゴの無断使用: フェスティバルの公式ロゴ、出演アーティストの画像を無断使用
  • 緊急性の演出: 「完売間近!」「残りわずか」「今日限りの特価」等の文言で焦らせる
  • 会場の地図を利用: 「会場MAP」として正規の地図を掲載し、信頼性を高める
  • SNSでの拡散: 来場者が「お得情報」としてSNSでシェアし、被害が拡大
  • 複数の場所に設置: トイレ、飲食エリア、物販エリア、ステージ周辺と広範囲に設置

主催者側の対応の問題点:
主催者は「公式QRコードは会場パンフレットとスタッフの腕章のみ」と発表していましたが、以下の点で周知が不十分でした:

  • パンフレット配布が有料(500円)だったため、多くの来場者が受け取っていない
  • 場内アナウンスでの注意喚起が1日1回のみ
  • 公式サイトやSNSでの事前告知がなかった
  • スタッフへの教育が不十分で、偽QRコード発見時の対応が遅れた

主催者・施設管理者の対策

イベント主催者や観光施設の管理者は、以下の対策を実施すべきです。

事前準備(イベント開催1ヶ月前〜):

□ 公式QRコードのデザイン統一・公式サイトでの事前公表
□ 「公式QRコードはこれだけです」と明示(画像付き)
□ 偽QRコード発見時の通報窓口設置(電話・メール・SNS DM)
□ スタッフへの教育徹底(見分け方、発見時の対応フロー)
□ 警備会社との連携(定期巡回ルートにQRコード確認を含める)
□ 保険加入の検討(イベント保険にサイバー被害を追加)

会場内対策(イベント期間中):

□ 定期巡回(30分ごと、全QRコード設置箇所を確認)
□ 不審なQRコード発見時の即座撤去・証拠保全(写真撮影)
□ 来場者への注意喚起アナウンス(1時間ごと)
□ 公式サイト・SNSでのリアルタイム注意喚起
□ 入場時の配布物に注意事項を明記
□ スタッフの腕章・ビブスに「公式QRコードの確認はスタッフへ」と記載

事後対応(被害発覚時):

□ 被害報告の受付窓口設置
□ 警察への通報(被害届の提出)
□ 公式サイトでの謝罪・経緯説明
□ 被害者への個別対応(補償の検討)
□ 再発防止策の策定・公表
□ 次回開催時の改善計画

イベント・施設のセキュリティ体制全般については、企業のフィッシング詐欺対策体制を参照してください。


QRコード決済アプリの脆弱性と対策

PayPay、d払い、楽天ペイ、au PAY、LINE Pay等のQRコード決済アプリは、利便性の高さから急速に普及しましたが、その仕組みゆえの脆弱性も存在します。

QRコード決済の基本的な仕組み

QRコード決済には大きく分けて2つの方式があります:

  1. ストアスキャン方式(店舗側がQRコードを読み取る):

    • 客がアプリでバーコード・QRコードを表示
    • 店舗側がスキャナーで読み取り
    • 比較的安全(店舗側が金額を入力)
  2. ユーザースキャン方式(客側がQRコードを読み取る):

    • 店舗が提示したQRコードを客がスマホで読み取り
    • 客が金額を入力(または金額が自動入力)
    • 詐欺に悪用されやすい(偽QRコードとすり替え可能)

QRコード詐欺で狙われるのは、主に後者の「ユーザースキャン方式」です。

主要QRコード決済アプリの比較

サービス名 二段階認証 不正利用補償 QRコード
有効期限
生体認証 リスク
レベル
PayPay 対応(推奨) 原則全額補償 5分 対応 ★★☆☆☆
d払い 対応 原則全額補償 設定可(無制限も可) 対応 ★★★☆☆
楽天ペイ 対応 条件付き補償 5分 対応 ★★☆☆☆
au PAY 対応 原則全額補償 5分 対応 ★★☆☆☆
LINE Pay 対応必須 原則全額補償 5分 対応 ★☆☆☆☆
メルペイ 対応 条件付き補償 無制限 対応 ★★★☆☆

※リスクレベルは★が少ないほど安全性が高い(2025年11月現在の評価)
※評価基準: 二段階認証の推奨度、補償の手厚さ、QRコード有効期限の短さ、過去の不正利用事例の頻度

各アプリ固有の脆弱性と対策

PayPay
脆弱性:
- 電話番号とパスワードのみでログイン可能(二段階認証未設定時)
- QRコード払いとバーコード払いの混同によるオペレーションミス
- チャージ直後が狙われやすい(残高が多い時を狙った不正利用)
- 「わりかん」機能を悪用した詐欺(知人を装って送金依頼) 対策:
- 必ず二段階認証を有効化(設定 → セキュリティ → 2段階認証)
- 「支払い時のパスコード入力」を有効化(毎回の決済で本人確認)
- 不正利用検知通知をオンに(即座に気づける)
- 定期的に利用明細を確認(週1回、曜日を決めて習慣化)
- チャージは必要な時に必要な金額のみ(常時高額残高を避ける)
d払い
脆弱性:
- QRコードに有効期限がない設定が可能(長時間表示したままにできる)
- dアカウントとの連携でセキュリティホールが生まれる可能性
- 電話料金合算払い設定時の高額被害リスク(月の上限額が高い)
- ドコモ回線でなくても利用可能になり、管理が複雑化 対策:
- dアカウントの二段階認証必須化(ドコモ以外のキャリアでも設定可能)
- QRコード表示後は5分以内に使用を徹底(使わない場合はアプリを閉じる)
- 利用限度額を低めに設定(月3万円等、自分の利用実態に合わせる)
- 電話料金合算払いは避ける(クレジットカード払い推奨、チャージバック可能)
- dポイントの不正利用も警戒(ポイント履歴を毎週確認)
楽天ペイ
脆弱性:
- 楽天IDとの一元管理で、[アカウント乗っ取り](/security/accounts/account-takeover/)のリスク
- ポイント不正利用の被害が多い傾向(楽天ポイントが狙われる)
- 補償条件が厳しい(重過失認定されやすく、全額補償されないケースあり)
- 楽天市場等の他サービスと連携しており、被害範囲が拡大しやすい 対策:
- 楽天IDのパスワードを他サービスと完全に別にする(使い回し厳禁)
- 楽天ポイント口座の分離(通常ポイントと期間限定ポイントを分ける)
- 高額決済時は必ずアプリ内確認を挟む(ワンタイム認証を設定)
- 補償規約の熟読(重過失の定義を確認、二段階認証未設定は重過失扱い)
- 楽天カードとの連携を見直す(カード情報流出時の被害拡大を防ぐ)
LINE Pay
脆弱性:
- LINEアカウントとの紐付けで、[LINE乗っ取り](/security/accounts/account-takeover/)被害と連動
- 友達への送金機能悪用(なりすましによる送金依頼)
- パスワード設定が必須でないケースがある(初期設定のまま利用)
- LINEのトーク履歴が漏れると、決済パターンも推測されやすい 対策:
- LINEアカウントの二段階認証必須(設定 → アカウント → ログイン許可をオフ)
- LINE Payパスワードを別途設定(LINEパスワードと別のものを使用)
- 送金機能の利用制限設定(知らない人への送金をブロック)
- 「Letter Sealing」機能を有効化(トーク内容の暗号化)
- 友達からの送金依頼は必ず別の連絡手段で本人確認(電話等)

これらの脆弱性は、フィッシング詐欺に強い認証方式で解説する多要素認証(MFA)で大幅に軽減できます。

二要素認証の設定方法(PayPayの例)

二要素認証(2段階認証)は、QRコード決済アプリを守る最も重要なセキュリティ対策です。以下、PayPayでの設定手順を詳しく説明します。

設定手順:

  1. PayPayアプリを開く

    • ホーム画面の右下「アカウント」アイコンをタップ
  2. セキュリティ設定を開く

    • 「セキュリティとプライバシー」をタップ
    • 「2段階認証」をタップ
  3. 認証方法を選択

    • SMS認証: 携帯電話番号にSMSで認証コードが送信される(簡単だが、SIMスワップのリスクあり)
    • 認証アプリ: Google Authenticator、Microsoft Authenticator等を使用(より安全、推奨)
  4. 認証アプリの場合の追加手順

    • 「認証アプリを使用」を選択
    • 表示されたQRコードを認証アプリでスキャン
    • 認証アプリに表示された6桁のコードをPayPayアプリに入力
    • 「設定完了」の表示を確認
  5. バックアップコードの保存

    • 設定完了後、バックアップコード(8桁 × 10個)が表示される
    • これをスクリーンショットまたは紙にメモして安全な場所に保管
    • スマホを紛失した際の復旧に必要

設定完了後の動作:

  • ログイン時に「パスワード + 認証コード」の入力が必要になる
  • 新しい端末からのアクセス時は必ず認証が求められる
  • 高額決済時(5万円以上等)に追加認証が発生する
  • 送金・出金時にも認証コードの入力が必要

注意点:

  • SMS認証の場合: 携帯電話番号を変更したら即座に更新する
  • 認証アプリの場合: スマホの機種変更時は事前にバックアップコードで解除→新端末で再設定
  • バックアップコードは絶対に他人に教えない: これがあれば二要素認証を突破できる

不正利用時の補償制度詳細

各決済アプリは不正利用時の補償制度を設けていますが、条件や手続きが異なります。

PayPay:

  • 補償範囲: 原則全額(上限なし)
  • 申請期限: 不正利用から60日以内
  • 必要書類:
    • 不正利用の日時・金額が分かる利用明細
    • 警察への被害届(受理番号)
    • 本人確認書類(運転免許証等)
  • 審査期間: 約2週間
  • 免責: 以下の場合は補償対象外
    • 重過失が認められた場合(パスワードを他人に教えた、二段階認証未設定等)
    • 本人による利用(第三者への貸与含む)
    • 不正利用から60日を超えた申請

d払い:

  • 補償範囲: 原則全額(上限なし)
  • 申請期限: 不正利用から30日以内(PayPayより短い)
  • 必要書類:
    • 不正利用の詳細(日時、金額、店舗名等)
    • 本人確認書類
    • 警察への相談記録(#9110または110番)
  • 審査期間: 約10日
  • 免責:
    • 本人による利用
    • 第三者への貸与(家族含む)
    • 申請期限超過

楽天ペイ:

  • 補償範囲: 条件により異なる(最大100万円)
  • 申請期限: 不正利用から20日以内(最も短い)
  • 必要書類:
    • 詳細な経緯説明書(A4用紙1枚程度、手書き可)
    • 証拠資料(スクリーンショット、メール等)
    • 警察への被害届
  • 審査期間: 約3週間(他社より長い)
  • 免責:
    • 重過失(特に厳しく判定される)
    • 管理不備(二段階認証未設定、パスワード使い回し)
    • 第三者への開示
    • 申請期限超過

補償を受けられないケース(全社共通):

❌ パスワードを第三者に教えた(家族・友人含む)
❌ 推測されやすいパスワード(生年月日、電話番号、"123456"等)を使用
❌ 二段階認証未設定での被害(重過失と判定)
❌ パスワードの使い回し(他サービスと同じパスワード)
❌ フィッシングメールのリンクを自らクリックして情報を入力
❌ 申請期限を過ぎた
❌ 虚偽の申告
❌ 本人の故意・過失による情報漏洩

補償を確実に受けるためのポイント:

✅ 二段階認証を必ず設定する(最重要)
✅ 不正利用に気づいたら即座にアプリをロック・カスタマーサポートに連絡
✅ 警察に必ず通報する(#9110または110番、被害届を提出)
✅ 証拠を保全する(スクリーンショット、写真、メール等)
✅ 申請期限を厳守する(気づいてから1週間以内に申請を開始)
✅ 経緯を詳細に説明する(いつ、どこで、どのように被害に遭ったか)

不正利用被害に遭った際の詳しい対応は、フィッシング被害直後30分の緊急対応を参照してください。

安全な利用のための10のルール

QRコード決済アプリを安全に利用するための、すぐに実践できる10のルールです。

  1. 二段階認証は必ず有効化(最重要)

    • 全ての決済アプリで設定
    • SMS認証よりも認証アプリを推奨
    • 設定後、バックアップコードを安全に保管
  2. パスワードは各サービス固有のものを使用

    • 使い回しは絶対に禁止
    • 12文字以上、英数字記号を組み合わせる
    • パスワード管理アプリの利用を推奨
  3. 決済前に金額を必ず確認(画面を3秒見る習慣)

    • 表示された金額が正しいか確認
    • 店員に口頭でも金額を確認
    • 高額決済(5,000円以上)は特に慎重に
  4. 公共Wi-Fi接続時は決済アプリを使用しない

    • カフェ、空港、駅等のフリーWi-Fiは危険
    • VPN接続していても避ける
    • モバイルデータ通信(4G/5G)を使用
  5. アプリを最新版に保持(自動更新推奨)

    • 脆弱性が発見され次第、修正版がリリースされる
    • 自動更新設定をオンにする
    • 月1回は手動でも更新確認
  6. 利用明細を毎週確認

    • 曜日を決めて習慣化(例: 毎週日曜日の夜)
    • 身に覚えのない決済がないか確認
    • 少額決済も見逃さない(テスト決済の可能性)
  7. 不審な通知が来たらアプリから直接確認

    • 「不正利用検知」「アカウント停止」等のメールは疑う
    • メール・SMSのリンクは絶対にクリックしない
    • 公式アプリを開いて直接確認
  8. QRコードの読み取り後、URL確認を習慣化

    • 読み取り後、すぐにタップしない
    • URLが正規ドメインか3秒間確認
    • HTTPSで始まっているか確認
  9. 高額決済は店員に画面を見せて確認してもらう

    • 金額が正しいか第三者の目でも確認
    • 詐欺の可能性を店員に伝える
    • 不審な場合は現金払いに切り替える
  10. スマホにロック設定(指紋・顔認証)

    • スマホ紛失時の不正利用を防ぐ
    • 決済アプリ個別にもロック設定
    • 他人に見られない場所で解除

これらのルールを守ることで、QRコード詐欺のリスクを大幅に減らすことができます。詳しくは個人のフィッシング詐欺対策完全ガイドも参照してください。


安全なQRコード利用法【利用者向け完全ガイド】

QRコードを安全に利用するためには、読み取り前・読み取り時・読み取り後のそれぞれの段階で適切な確認を行うことが重要です。

読み取り前の確認3ステップ

QRコードを読み取る前に、以下の3ステップで安全性を確認しましょう。所要時間: 合計20秒

ステップ1: QRコードの物理的確認(10秒)

□ シールの端が浮いていないか指で触って確認
  → 二重貼りの場合、わずかな段差や浮きがある
  → 爪で端を軽く引っ掻いてみる

□ 印刷品質が周囲と同レベルか目視確認
  → 解像度、色味、紙質を比較
  → 周囲の案内板と明らかに違う場合は要注意

□ 二重貼りの痕跡がないか光の角度を変えて確認
  → スマホのライトを当てて斜めから見る
  → シールの厚みや影に注目

□ QRコード周辺の説明文のフォントが統一されているか
  → フォントの種類、サイズ、行間を確認
  → 「明朝体とゴシック体が混在」等は不自然

□ ホログラムや特殊加工があるか確認
  → タンパープルーフステッカーの有無
  → 角度を変えると虹色に光る等の特殊加工

ステップ2: 設置状況の確認(5秒)

□ 公式が設置したと明示されているか
  → 「〇〇社公式QRコード」の表記
  → 企業ロゴ、連絡先の記載

□ 「QRコード改ざん注意」の掲示があるか
  → セキュリティ意識の高い事業者は掲示している
  → 掲示がない場合は管理が甘い可能性

□ 管理会社・問い合わせ先が記載されているか
  → 電話番号、メールアドレスの記載
  → 記載がない場合は公式サイトで確認

□ 設置日時が記載されているか
  → 「2025年11月設置」等の記載
  → 古すぎる場合は交換時期を過ぎている可能性

□ 他の利用者も使っている様子があるか
  → 周囲の人の動きを観察
  → 誰も使っていない場合は慎重に

ステップ3: 代替手段の検討(5秒)

□ 公式アプリから直接アクセスできないか
  → PayPay、タイムズ等の公式アプリを使用
  → アプリ内検索で店舗・施設を探す

□ 公式サイトのURL直接入力は可能か
  → ブラウザで公式サイトを開く
  → ブックマークしておくと便利

□ 現金払い等の代替決済手段はないか
  → 現金、クレジットカード直接払い
  → 安全性を優先する

□ スタッフに確認できる状況か
  → 不明点は遠慮なく質問
  → 「このQRコードは公式ですか?」

□ 急いでいる時は利用を避けられるか
  → 焦っている時ほど騙されやすい
  → 時間に余裕がある時に利用

読み取り後のURL確認方法

QRコードを読み取った後、すぐにリンクをタップせず、以下の手順でURLを確認してください。

必須確認項目

  1. HTTPS接続であること

  2. ドメイン名が正規であること

    ✅ 正規: https://times-parking.jp
    ❌ 偽装: https://times-parklng.jp(Iとlの違い)
       
    ✅ 正規: https://paypal.com
    ❌ 偽装: https://paypai.com(lとiの違い)
       
    ✅ 正規: https://www.rakuten.co.jp
    ❌ 偽装: https://www.rakutem.co.jp(nとmの違い)
    
  3. 短縮URL(bit.ly等)でないこと

    • 短縮URLは最終的な遷移先が不明
    • 正規事業者も使用することがあるが、警戒すべき
    • 短縮URL展開サービスで確認: https://urlex.org/
  4. タップする前に3秒間URLを凝視する習慣

    • 焦らず、ゆっくり確認
    • ドメイン部分を特に注意深く
    • 1文字の違いを見逃さない
  5. 少しでも違和感があれば中断

    • 直感を信じる
    • 「おかしいな」と思ったら利用しない
    • 後で公式サイトから確認

URL確認ツールの活用

不審なURLを安全に確認するためのツールです。

ツール名 URL 用途
Googleセーフブラウジング https://transparencyreport.google.com/safe-browsing/search フィッシングサイト・マルウェアサイトの判定
VirusTotal https://www.virustotal.com/ 複数のセキュリティエンジンで一括チェック
短縮URL展開 https://urlex.org/ 短縮URLの最終的な遷移先を確認
aguse.jp https://www.aguse.jp/ サイトの運営者情報、サーバー所在地を確認

iPhoneでのURL確認方法

  1. 標準カメラアプリでQRコードを読み取る
  2. 画面上部にURLプレビューが表示される
    • 通知バナー形式で表示
  3. すぐにタップせず、URLを完全に表示させる
    • 長いURLは途中で「...」と省略される
    • 省略された部分をタップして全文表示
  4. ドメイン部分を特に注意して確認
  5. 問題なければタップ
    • Safariが起動し、サイトが開く

Androidでの確認方法

  1. 標準カメラアプリで読み取り
  2. 通知バナーが表示される
    • 「〇〇を開く」等の表示
  3. 通知を長押ししてURL全体を表示
    • 長押しでポップアップが開く
    • URL全文が表示される
  4. ドメイン確認後、タップ
    • Chromeまたは既定のブラウザが起動

安全なQRコード読み取りアプリの選び方

スマホのカメラアプリだけでなく、専用のQRコード読み取りアプリを使うことで、より安全性を高められます。

推奨アプリの条件

□ URL確認画面が必ず表示される
  → 自動でブラウザを開かない

□ 自動でブラウザを開かない設定が可能
  → ユーザーが確認してからタップ

□ フィッシングサイトデータベースと連携
  → 既知の詐欺サイトを警告

□ 読み取り履歴が保存される
  → 後から確認・削除が可能

□ 開発元が信頼できる
  → 大手企業、オープンソース等
  → レビュー件数が多く、評価が高い

推奨アプリ例(2025年11月時点)

QRコードリーダー by Scan(iOS/Android)
特徴:
- URL確認画面が必ず表示される
- フィッシング検知機能搭載
- 無料、広告なし
- 読み取り履歴の管理機能
- 日本語対応 セキュリティ機能:
- 既知のフィッシングサイトをブロック
- 短縮URLを自動展開
- SSL証明書の検証
Google レンズ(Android標準、iOSもあり)
特徴:
- Google公式アプリ
- 自動的にセーフブラウジングでチェック
- テキスト翻訳機能も搭載
- 画像検索との連携 セキュリティ機能:
- Googleの巨大なデータベースと照合
- リアルタイムで脅威を検知
- 不審なサイトには警告表示
Kaspersky QRスキャナー(iOS/Android)
特徴:
- セキュリティ企業Kaspersky製
- リアルタイムでマルウェアチェック
- 無料版で十分な機能
- プライバシー保護に配慮 セキュリティ機能:
- URL、テキスト、vCard等を安全にスキャン
- フィッシング、マルウェア、トロイの木馬を検知
- 危険なサイトへのアクセスをブロック

避けるべきアプリの特徴

❌ 無名開発者のアプリ
  → 開発元が不明、企業情報がない

❌ レビューが極端に少ない(100件未満)
  → 十分にテストされていない可能性

❌ 異常に多くの権限を要求
  → 連絡先、写真、位置情報等、QRコード読み取りに不要な権限

❌ 頻繁に広告が表示される
  → 広告収益目的で開発された可能性

❌ 有料版への誘導が強い
  → 基本機能も制限されている

❌ レビューが不自然に高評価ばかり
  → やらせレビューの可能性

公式アプリ利用の推奨

QRコードを読み取る最も安全な方法は、そもそもQRコードを使わないことです。公式アプリを利用すれば、偽QRコードのリスクをゼロにできます。

公式アプリを使うべき3つの理由

  1. QRコードを読み取る必要がない

    • アプリ内で全て完結
    • 偽QRコードのリスクが完全にゼロ
    • URLを確認する手間も不要
  2. セキュリティ対策が充実

    • 二段階認証の実装
    • 生体認証(指紋・顔)対応
    • 不正検知システムの導入
    • 定期的なセキュリティアップデート
  3. 補償が手厚い

    • 不正利用時の全額補償が基本
    • 問い合わせ窓口が明確
    • 迅速な対応が期待できる

主要サービスの公式アプリ例

サービス種別 公式アプリ名 主な機能
駐車場 タイムズ、三井のリパーク 駐車場検索、予約、決済
決済 PayPay、d払い、楽天ペイ、LINE Pay QRコード決済、送金、ポイント管理
飲食 マクドナルド、スタバ、すき家等 モバイルオーダー、クーポン、決済
EC Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング 商品検索、購入、配送追跡
宅配 ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便 再配達依頼、配送状況確認

被害に遭った時の初動対応(30分以内)

万が一QRコード詐欺の被害に遭ってしまった場合、最初の30分の対応が極めて重要です。

【0-5分】緊急停止措置

□ 決済アプリの利用停止
  - アプリ内設定から「一時停止」「利用制限」を選択
  - カスタマーサポートに電話(24時間対応の番号をメモしておく)
  - PayPay: 0120-990-634
  - d払い: 0120-613-360
  - 楽天ペイ: 0570-000-348

□ クレジットカード会社に電話
  - カード番号、有効期限、セキュリティコードを伝える
  - 不正利用の疑いを報告
  - カード停止を依頼(即座に停止される)
  - 再発行の手続き開始

□ 銀行口座の停止(口座情報を入力した場合)
  - ネットバンキングからロック
  - または銀行に電話して口座凍結を依頼

【5-15分】証拠保全

□ スクリーンショット(複数枚)
  - 詐欺サイトの画面(可能であれば)
  - エラー画面
  - 決済完了画面
  - 利用明細画面
  - 偽QRコードの写真(現場にまだいる場合)

□ 時系列メモの作成
  - 何時何分に何をしたか詳細に記録
  - どこのQRコードを読み取ったか(場所、状況)
  - どんなサイトに誘導されたか
  - 何を入力したか(カード番号、パスワード等)

□ メール・SMSの保存
  - 詐欺関連のメール・SMSを削除しない
  - スクリーンショットまたは転送で保存

【15-30分】関係機関への連絡

□ 警察への相談・通報
  - #9110(警察相談専用電話、平日8:30-17:15)
  - または110番(緊急の場合)
  - または最寄りの警察署に直接電話
  - 被害届の提出を検討(後日でも可)

□ 消費生活センターへの相談
  - 188(消費者ホットライン)
  - 対応方法のアドバイスを受ける

□ 施設管理者への連絡
  - 偽QRコードが貼られていた場所の管理者に連絡
  - 他の被害者防止のための協力要請
  - 施設側の責任を問う前に、まずは情報提供

□ パスワード変更
  - 決済アプリのパスワード変更
  - 紐付いているメールアドレスのパスワード変更
  - 他のサービスでパスワードを使い回していた場合、全て変更

詳細な対応手順は、フィッシング被害直後30分の緊急対応で解説しています。


企業のQRコード管理と従業員教育

企業がQRコードを安全に運用するためには、発行・管理・点検・教育の各段階で適切な対策が必要です。

企業のQRコード管理ガイドライン

QRコードを発行・管理する企業は、以下のガイドラインに従ってセキュリティを確保してください。

発行時のルール

1. QRコード生成の一元管理
実施内容:
- 担当部署を明確化(IT部門、総務部、マーケティング部等)
- 生成ツールの統一(特定のサービス・ソフトウェアに限定)
- 発行記録の保管(いつ、誰が、何のために、どこに設置したか)
- 承認フローの確立(発行前に上長の承認を必須化) 具体的な手順:
① 発行申請書の提出(目的、設置場所、期間、URL等を記載)
② IT部門による技術的レビュー(URLの安全性、HTTPS使用等)
③ セキュリティ部門による承認
④ QRコード生成・発行番号の付与
⑤ 発行台帳への記録(Excel・データベース等で管理)
2. デザインの統一
統一要素:
- 企業ロゴの配置位置(QRコードの右上、左下等に統一)
- 色彩・サイズの規格化(縦〇cm × 横〇cm、モノクロまたは特定の色)
- QRコード周辺の説明文テンプレート作成(フォント、サイズ、文言)
- シールのデザイン統一(形状、材質、特殊加工) 効果:
- 利用者が「公式QRコード」と認識しやすい
- 偽QRコードとの区別が容易
- ブランドイメージの統一
3. セキュリティ対策
技術的対策:
- **短縮URLは使用しない**: フルURLで表示し、遷移先を明確化
- **HTTPSのみ許可**: HTTP(暗号化なし)は禁止
- **QRコード内にバージョン情報埋め込み**: 「v1.2.3」等のバージョン番号をURL末尾に付加
- **有効期限の設定**: 可能な場合、QRコードに有効期限を設け、定期的に更新
- **動的QRコードの活用**: URLを後から変更できる動的QRコードを使用 物理的対策:
- タンパープルーフステッカーの使用
- ホログラム加工
- UV印刷(紫外線で真贋判定)
- 透明カバー・アクリル板での保護
4. 文書化
作成すべき文書:
- **QRコード管理マニュアル**: 発行手順、点検方法、インシデント対応等を記載
- **セキュリティポリシー**: QRコード利用時のセキュリティ基準
- **インシデント対応マニュアル**: 偽QRコード発見時・被害発生時の対応フロー
- **FAQ**: よくある質問と回答(従業員向け、顧客向け) 周知方法:
- 全従業員への配布(電子データ・紙媒体)
- 新入社員研修での説明
- 社内イントラネットでの公開
- 定期的な見直し(年1回、セキュリティ動向を反映)

改ざん防止技術の導入

物理的な改ざんを防ぐための技術的対策です。

タンパープルーフステッカー(改ざん防止シール)
仕組み:
一度剥がすと「VOID」「OPENED」「開封済」等の文字が浮き出る特殊シール。再貼付が不可能なため、偽QRコードの上貼りを防ぎます。シールを剥がそうとすると、粘着層が分離して文字が現れる構造です。 導入コスト:
- 1枚あたり: 50〜200円(発注数による、1,000枚以上で単価低下)
- 初期費用: 版代3万円〜(ロゴ・デザイン入りの場合)
- ランニングコスト: 交換時のシール代のみ 推奨メーカー:
- 日本写真印刷(NISSHA): 高品質、実績多数
- リンテック: コストパフォーマンス良好
- セキュリティシール専門店各社: カスタマイズ対応 導入効果:
- 剥がした痕跡が明確に残るため、偽QRコード貼付の抑止力
- 利用者が改ざんの有無を一目で判断可能
- 法的証拠としても有効(改ざんされたことの証明)
ホログラムQRコード
特徴:
- 角度によって色が変わる虹色の光沢
- 偽造が極めて困難(特殊な印刷技術が必要)
- 高級感があり、ブランド価値向上にも寄与
- クレジットカードや紙幣と同じ技術 コスト:
- 1枚あたり: 200〜500円
- 大量発注(10,000枚以上)で単価100円程度まで低下
- 初期費用: 版代・設備費で50万円〜 適用場面:
- 高額決済が発生する場所(駐車場、ホテル等)
- ブランドイメージを重視する企業
- VIP向けサービス
UV印刷QRコード
特徴:
- 通常の光では見えない文字や図形を印刷
- 紫外線(UVライト)を当てると「正規品」「公式」等の文字が浮き出る
- 視覚的に真贋判定が容易
- 偽造者がUVライトで確認しないと気づかない コスト:
- UV印刷機導入: 50万円〜300万円(小型~業務用)
- ランニングコスト: 1枚あたり10円程度(UV インク代)
- または外注: 1枚100円〜 運用方法:
- 設置場所にUVライト(小型、1,000円程度)を配置
- 利用者向けに「UVライトで確認可能」と告知
- 従業員の点検時にも使用
透明カバー・アクリル板
仕組み:
QRコードの上に透明なアクリル板(厚さ2〜5mm)をネジ止めまたは接着剤で固定。物理的に偽QRコードを貼れなくします。 コスト:
- 1箇所あたり: 3,000〜10,000円(カバーのサイズによる)
- 既製品: 3,000円〜
- オーダーメイド: 10,000円〜 注意点:
- スマホを近づけられる設計にする(カバーとQRコードの間隔は1cm以内)
- 反射で読み取りづらくならないよう、マット加工(非光沢)のアクリル板を使用
- 定期的な清掃(指紋・汚れで読み取り不能になる)
- 破損時の交換が容易な設計

定期点検の実施方法

QRコードの安全性を維持するため、定期的な点検が不可欠です。

日次チェック(営業開始時・終了時、各5分)

チェック項目(1箇所30秒 × 設置箇所数):

□ 目視確認
  - シールの剥がれ、浮き、破れ
  - 二重貼りの痕跡(光を当てて確認)
  - 周辺の掲示物の改ざん
  - タンパープルーフステッカーの「VOID」表示の有無

□ 触覚確認
  - 指で触ってシールの段差確認
  - 角の浮きがないか
  - 粘着力が低下していないか

□ テスト読み取り
  - 実際にスマホで読み取り
  - 遷移先URLが正規か確認
  - 決済画面の表示内容確認(金額、企業名等)
  - ブラウザの警告が出ないか確認

□ 記録
  - チェック時刻(例: 2025/11/21 09:00)
  - 担当者名
  - 異常の有無
  - 写真撮影(週1回、変化の記録用)

記録フォーマット例:

日時 場所 担当者 状態 対応 備考
2025/11/21 09:00 駐車場A入口 田中 正常 なし -
2025/11/21 18:00 駐車場A入口 佐藤 異常 警察通報、シール交換 シール二重貼り発見
2025/11/21 09:00 店舗レジ横 鈴木 正常 なし -

週次チェック(毎週1回、10分)

□ QRコード周辺の清掃
  - 汚れ、指紋の除去
  - 透明カバーがある場合は特に入念に

□ 防犯カメラ映像の確認
  - 不審な人物の出入りがないか
  - QRコード周辺での不自然な行動

□ 顧客からのクレーム・問い合わせ分析
  - 「決済できなかった」「変なサイトに飛んだ」等の報告
  - パターンの分析(同じ場所で複数報告等)

□ 社内での情報共有
  - 発見事項のメール配信
  - 朝礼・終礼での報告

月次チェック(毎月1回、30分)

□ QRコードの全数交換検討
  - 設置から3ヶ月経過したものは交換
  - タンパープルーフステッカーの劣化確認

□ デザイン・セキュリティ機能の見直し
  - より偽造困難なデザインへの変更
  - 新技術(ホログラム等)の導入検討

□ 競合他社の被害事例調査
  - ニュース、警察発表のチェック
  - 同業他社の対策事例の収集

□ 従業員研修の実施
  - 最新の手口の共有
  - 見分け方の再教育
  - ロールプレイング

従業員研修プログラム

従業員のセキュリティ意識向上が、最も効果的な対策です。

新入社員研修(必須・30分)

カリキュラム:

  1. QRコード詐欺の概要説明(10分)

    • 実例動画の視聴(被害事例の再現)
    • 被害統計の共有(件数、金額、トレンド)
    • 会社のリスク説明:
    • 顧客の信頼失墜
    • 賠償責任(数百万円〜)
    • ブランドイメージの毀損
    • 売上への影響
  2. 点検方法の実習(15分)

    • 実際のQRコードで点検実習(正規品)
    • 偽QRコードのサンプル確認(過去の実例)
    • チェックリストの使い方(記録方法含む)
    • タンパープルーフステッカーの確認方法
    • スマホでのテスト読み取り実習
  3. 異常発見時の対応訓練(5分)

    • 報告フローの確認(誰に、どのように報告するか)
    • 緊急連絡先の確認(上司、警察、本社等)
    • ロールプレイング:
    • 「偽QRコードを発見した」想定
    • 「顧客から『変なサイトに飛んだ』と報告された」想定

全従業員向け定期研修(四半期ごと・15分)

内容:

  • 最新の詐欺手口の共有(この3ヶ月の動向)
  • 自社での被害・ヒヤリハット事例
  • 対策のアップデート情報(新技術導入等)
  • 質疑応答(現場の疑問に答える)
  • 確認テスト(理解度チェック、5問程度)

管理職向け研修(年1回・60分)

カリキュラム:

  1. 企業のリスク管理責任(20分)

    • 法的責任(民事・刑事)
    • 過去の賠償事例(金額、経緯)
    • 取締役の責任(善管注意義務)
  2. 被害発生時の法的対応(15分)

    • 警察への通報義務
    • 顧客への説明責任
    • 個人情報保護法との関係
  3. 広報対応(15分)

    • プレスリリースの作成
    • SNS対応
    • 記者会見のシミュレーション
  4. BCP(事業継続計画)(10分)

    • QRコード決済停止時の代替手段
    • 復旧までの時間短縮
    • 顧客への影響最小化

インシデント発生時の対応フロー

偽QRコードが発見された場合、または被害が発生した場合の対応手順です。

【第1報】発見から5分以内

発見者 → 現場責任者 → 総務部/IT部門

□ 現場保全
  - 偽QRコードに「使用禁止」の張り紙を貼る
  - 他の顧客が使用しないよう口頭でも誘導
  - 写真撮影(証拠保全):
	- QRコード全体
	- 周囲の状況
	- タイムスタンプ付き
  - 可能であれば偽QRコードを剥がして保管(証拠品)

□ 社内報告(電話・メール)
  - 発見時刻、場所、状況
  - 被害者の有無(顧客から報告があったか)
  - 偽QRコードの特徴(デザイン、サイズ等)
  - 他の場所での確認状況

【第2報】30分以内

総務部/IT部門 → 経営層

□ 警察への通報
  - #9110(警察相談専用電話)または110番
  - 管轄の警察署サイバー犯罪対策課
  - 被害届の提出準備

□ 被害範囲の確認
  - 防犯カメラ映像の確認(貼付時刻の推定)
  - 設置時刻の推定(前回点検時刻から逆算)
  - 他の場所での確認(全拠点に連絡)
  - 同一犯の可能性の検討

□ 顧客への注意喚起準備
  - 公式サイトでの告知文作成
  - SNS投稿文作成
  - 店頭掲示物の作成
  - プレスリリース草案作成

【第3報】24時間以内

経営層 → ステークホルダー(必要に応じて)

□ 公式サイトでの注意喚起
  - トップページに目立つ形で掲載
  - 「【重要】偽QRコード発見のお知らせ」等の見出し
  - 発見場所、時刻、特徴を明記
  - 利用者への呼びかけ(被害に遭った場合の連絡先)

□ SNSでの情報発信
  - Twitter/X、Facebook、Instagram等で拡散
  - ハッシュタグ活用(#詐欺注意 #フィッシング等)
  - フォロワーへのリツイート・シェア依頼

□ 報道機関への情報提供(必要な場合)
  - 記者クラブへのプレスリリース配信
  - 被害拡大防止のための積極的な情報開示
  - 記者会見の開催検討

□ 取引先への連絡
  - パートナー企業への状況共有
  - 同様の被害がないか確認依頼

□ 被害者への個別対応
  - 専用相談窓口の設置
  - 補償の検討(法的義務はなくとも、誠意として)
  - 弁護士との相談

【事後対応】1週間以内

□ 再発防止策の策定
  - 今回の事案の詳細分析
  - 脆弱性の特定
  - 対策の立案(技術的・運用的)
  - 予算の確保

□ 全QRコードの総点検
  - 全拠点、全設置場所を確認
  - 必要に応じて全数交換

□ セキュリティ強化施策の実施
  - タンパープルーフステッカー導入
  - 透明カバー設置
  - 防犯カメラ増設
  - 点検頻度の増加

□ 従業員への再教育
  - 臨時の全体研修
  - 事案の共有と反省
  - 対策の周知徹底

□ 事案の文書化・アーカイブ
  - 詳細な報告書作成
  - 証拠資料の保管
  - 次回への教訓として社内で共有
  - 同業他社への情報提供(業界全体のセキュリティ向上)

企業全体のセキュリティ体制構築については、企業のフィッシング詐欺対策体制およびフィッシング詐欺対策の従業員教育を参照してください。


よくある質問(FAQ)

QRコード詐欺に関してよく寄せられる質問と、その回答をまとめました。

Q: QRコードを読み取っただけで被害に遭うことはありますか?
A: **読み取るだけでは基本的に被害に遭いません。**QRコード自体にウイルスやマルウェアを仕込むことはできず、読み取り行為そのものは安全です。 しかし、読み取り後に表示されるリンクをタップし、偽サイトで個人情報やクレジットカード情報、決済アプリのID・パスワードを入力することで被害が発生します。 **重要なのは読み取り後の行動です:** - 読み取り後、URLを必ず3秒間確認する - 少しでも怪しいと感じたらタップしない - 一部のQRコード読み取りアプリは自動的にブラウザを開く設定になっているため、手動確認できるアプリの使用を推奨します また、悪意のあるアプリのダウンロードリンクに誘導されることもあります。公式のApp StoreやGoogle Play以外からのアプリインストールは絶対に避けてください。
Q: QRコードにウイルスやマルウェアを仕込むことはできますか?
A: **QRコード自体にウイルスを仕込むことはできません。**QRコードは単なるテキスト情報(主にURL)をエンコードしたものであり、実行可能なプログラムコードを含むことはできません。 しかし、**QRコードから誘導された先のWebサイトやアプリにマルウェアが仕込まれている可能性**は十分にあります: 1. **偽アプリのダウンロード誘導**: 「公式アプリをダウンロード」と表示し、マルウェアが仕込まれたアプリ(APKファイル等)をインストールさせる 2. **ドライブバイダウンロード**: Webサイトを開いただけで自動的にマルウェアがダウンロードされる攻撃(主にAndroid端末、古いOSが標的) 3. **偽アップデート通知**: 「システムアップデートが必要です」と表示し、マルウェアをインストールさせる **対策:** - 公式のApp StoreやGoogle Play以外からアプリをインストールしない - Androidの場合、「提供元不明のアプリ」のインストールを許可しない設定にする - OSとアプリを常に最新版に保つ - iOSよりもAndroidの方がアプリの審査が緩いため、Android利用者は特に注意が必要です [マルウェア感染](/security/devices/malware-infection/)のリスクについても理解しておきましょう。
Q: 偽QRコードと本物のQRコードを確実に見分ける方法はありますか?
A: **見た目だけで100%判別するのは困難です。**しかし、以下の5つのポイントを組み合わせることで、高確率で偽QRコードを見分けることができます。 **見分ける5つのポイント:** 1. **シールの端を触って浮きがないか確認**(二重貼り防止) - 指で触って段差や浮きを確認 - 爪で端を軽く引っ掻いてみる - 二重貼りの場合、わずかな厚みの違いがある 2. **印刷品質が周囲の案内と同等か確認** - 解像度、色味、紙質を比較 - 周囲の説明文とフォントが一致しているか - 明らかに粗い印刷は要注意 3. **読み取り後のURLが正規ドメインか確認**(最重要) - 「https://」で始まっているか - ドメイン名が正規事業者のものか(1文字違いに注意) - 短縮URL(bit.ly等)の場合は特に警戒 4. **タンパープルーフシールやホログラムの有無を確認** - 「VOID」「OPENED」表示の改ざん防止シール - 角度を変えると虹色に光るホログラム - UV印刷(紫外線で確認可能な文字) 5. **周囲の掲示物を確認** - 「QRコード改ざん注意」の掲示があるか - 管理会社の連絡先が記載されているか - 公式サイトでQRコードのデザインが公開されているか確認 **最も確実な方法:** QRコードを使わず、**公式アプリから直接アクセス**することです。PayPay、タイムズ、各種チェーン店の公式アプリを利用すれば、偽QRコードのリスクは完全にゼロになります。 詳細は[フィッシング詐欺かどうか確かめる方法](/security/scams/phishing/column/defense/verification-method/)を参照してください。
Q: 駐車場でQRコード決済をしたら詐欺でした。お金は戻ってきますか?
A: **決済方法によって異なります。**また、対応の早さと証拠の有無が補償の可否を大きく左右します。 **決済方法別の補償:** **1. クレジットカード決済の場合:** - **補償の可能性**: 高い(ほぼ全額返金される) - **仕組み**: チャージバック制度により、不正利用を申請すれば調査の上で返金 - **申請期限**: 多くのカード会社は60日以内(早いほど良い) - **成功率**: 証拠がしっかりしていれば90%以上 - **手続き**: カード会社に電話→不正利用の報告→調査→返金(2週間〜1ヶ月) **2. QRコード決済アプリ(PayPay、d払い等)の場合:** - **補償の可能性**: 条件付きで高い - **重要条件**: 二段階認証を設定していること(未設定は「重過失」と判定される可能性) - **補償範囲**: 原則全額(PayPay、d払い、LINE Pay等は全額補償を明言) - **ただし**: 楽天ペイは条件が厳しく、最大100万円まで - **申請期限**: - PayPay: 60日以内 - d払い: 30日以内 - 楽天ペイ: 20日以内(最も短い) - **手続き**: アプリ内またはカスタマーサポートから申請→警察への被害届→審査→補償 **3. 銀行振込の場合:** - **補償の可能性**: 低い(時間との勝負) - **仕組み**: 組戻し(振込の取り消し)が可能な場合がある - **条件**: 相手口座から出金される前に銀行に連絡(数時間以内) - **成功率**: 10〜30%程度(相手がすでに出金していると不可能) - **手続き**: 即座に銀行に電話→組戻し依頼→相手銀行との交渉→成功すれば返金(手数料800円程度差し引き) **補償を受けるための重要ポイント:** 1. **即座に行動**: 気づいた時点で即座にカード会社・アプリ会社に連絡 2. **証拠保全**: スクリーンショット、写真、時系列メモを作成 3. **警察への通報**: 被害届を提出し、受理番号を取得 4. **二段階認証の設定**: 未設定の場合、今後のために必ず設定 詳細は[フィッシング詐欺の金銭被害回復](/security/scams/phishing/column/incident-response/financial-recovery/)を参照してください。
Q: 飲食店でテーブルに置いてあったQRコードは信用していいですか?
A: **完全に信用することはできません。**2025年に入り、チェーン飲食店でも偽QRコードが貼られる事例が多発しています。特に金曜日の夜や週末の混雑時は、犯人が偽QRコードを貼りやすいタイミングです。 **推奨する5つの対策:** 1. **店員に直接確認する** - 「このQRコードは公式のものですか?」と質問 - 店員が把握していない場合、店長に確認を依頼 - 遠慮する必要はありません(自分の財産を守る行為) 2. **読み取り後のURLが店舗の公式ドメインか確認** - 読み取ってすぐにタップせず、URLを3秒間確認 - 公式サイトのドメインと一致しているか - 短縮URLや見慣れないドメインは要注意 3. **店舗の公式アプリやWebサイトから直接注文** - マクドナルド、スターバックス等の大手チェーンは公式アプリあり - アプリからのモバイルオーダーが最も安全 - QRコードを経由しないため、偽物のリスクゼロ 4. **メニュー表(紙)での注文が可能か確認** - 従来の紙メニュー+口頭注文が最も安全 - QRコードに不安がある場合は紙メニューを依頼 - 多くの店舗は紙メニューも用意している 5. **クレジットカード情報の入力を求められたら一旦中断** - 正規のモバイルオーダーでも、事前決済はあまり一般的ではない - カード情報入力画面が出たら、店員に確認してから入力 - 不審な場合は会計時に直接支払う **特に注意すべきシチュエーション:** - 混雑時(金曜日夜、週末のランチタイム等) - 深夜帯(24時間営業店舗の深夜0時〜早朝5時) - 新規オープン店(システムが不安定、従業員の習熟度が低い) - 観光地の飲食店(外国人観光客が多く、言語の壁がある) [中小企業のフィッシング詐欺対策](/security/scams/phishing/column/defense/sme-measures/)も参考になります。
Q: 企業として偽QRコードを貼られた場合、法的責任を問われますか?
A: **状況によりますが、適切な管理を怠った場合は損害賠償責任を問われる可能性があります。**企業には、顧客の安全を守る「安全配慮義務」があり、これを怠ると法的責任が発生します。 **想定される法的責任:** **1. 民事責任(損害賠償請求):** - **根拠**: 民法709条(不法行為)、同法415条(債務不履行) - **請求内容**: - 被害に遭った顧客からの損害賠償請求 - 被害額+慰謝料+弁護士費用 - **過去の判例**: - セキュリティ管理不備による情報漏洩: 1人あたり5,000円〜50万円 - QRコード詐欺の場合: 実際の被害額(数万円〜数十万円)+慰謝料 - 複数の被害者がいる場合、総額で数百万円〜数千万円規模 - **賠償責任が認められやすいケース**: - 定期的な点検を実施していなかった - 偽QRコードの報告を受けていたが放置した - 改ざん防止策を一切講じていなかった - 従業員への教育を行っていなかった **2. 信用失墜・ブランド毀損:** - 法的責任ではないが、経済的損失は甚大 - 報道により企業イメージが大きく損なわれる - SNSでの炎上(拡散、批判) - 顧客離れ、売上減少(数ヶ月〜数年続く) - 株価への影響(上場企業の場合) **3. 行政処分の可能性:** - **根拠**: 個人情報保護法 - **適用**: 顧客の個人情報(氏名、住所、クレジットカード情報等)が流出した場合 - **処分内容**: - 個人情報保護委員会からの指導・勧告 - 改善命令 - 罰則(6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金) - 公表(企業名、違反内容がWebサイトで公開) **防御策として有効な対応:** 1. **定期的なQRコード点検の実施と記録** - 日次・週次・月次の点検を記録(日時、担当者、結果) - 記録を保管し、「管理していた」ことを証明 2. **タンパープルーフステッカー等の改ざん防止策** - 技術的対策を講じていたことを証明 - 導入の経緯・選定理由を文書化 3. **従業員への定期的な教育** - 研修の実施記録(日時、内容、参加者) - テストの実施と結果の保管 4. **被害発生時の迅速な対応** - 即座に警察通報(通報記録を保管) - 顧客への通知(公式サイト、メール、店頭掲示) - 誠意ある対応(謝罪、補償の検討) 5. **サイバー保険の加入** - 不正アクセスやフィッシング詐欺による損害を補償 - 弁護士費用、調査費用、損害賠償金をカバー - 年間保険料: 数万円〜数十万円(企業規模による) **結論:** 企業には顧客を守る責任があります。「被害者も悪い」という主張は通用せず、管理不備があれば賠償責任を問われます。適切な対策を講じ、記録を残すことが重要です。 詳細は[企業のフィッシング詐欺対策体制](/security/scams/phishing/column/defense/enterprise-security/)を参照してください。
Q: QRコード決済で二段階認証を設定するのは面倒です。本当に必要ですか?
A: **絶対に必要です。**二段階認証を設定していない場合、以下の深刻なリスクがあります。 **二段階認証未設定の3大リスク:** 1. **不正利用時の補償が受けられない可能性** - PayPay、d払い、楽天ペイ等の補償規約では、二段階認証未設定は「重過失」と判定される可能性が高い - 重過失の場合、不正利用されても**補償対象外**となり、全額自己負担 - 数万円〜数十万円の被害を補償なしで負担することになる 2. **アカウント乗っ取りのリスクが10倍以上** - パスワードのみの認証は、フィッシング、パスワードリスト攻撃、ブルートフォース攻撃等で容易に突破される - 2023年のIPA(情報処理推進機構)の調査では、二段階認証未設定のアカウントは設定済みアカウントに比べて乗っ取りリスクが**約11倍** - 一度乗っ取られると、全額を不正送金されるリスク 3. **平均被害額が3倍** - 二段階認証設定済み: 平均被害額 約20万円(設定していても突破される高度な手口の場合) - 二段階認証未設定: 平均被害額 約60万円 - 犯人は「二段階認証未設定=セキュリティ意識が低い=高額を狙える」と判断 **設定の手間 vs リスクの比較:** | 項目 | 設定の手間 | リスク | |------|----------|--------| | **初期設定** | 1回5分程度 | 設定しないと数十万円の損失リスク | | **ログイン時** | 追加で10秒程度 | わずか10秒で数十万円を守れる | | **生体認証併用** | 指紋・顔で0秒 | 手間ゼロで最高のセキュリティ | **設定することのメリット:** - 不正利用時の補償が受けられる(全額補償の可能性が高い) - アカウント乗っ取りのリスクが大幅に減少 - 新しい端末からのログイン時に通知が来るため、不正アクセスに即座に気づける - 高額決済時に追加認証が入るため、不正送金を防げる - 「このアカウントは守られている」という安心感 **手間を最小化する方法:** - **生体認証(指紋・顔)の併用**: ログイン時のパスワード入力が不要になり、指紋や顔でワンタッチログイン可能 - **信頼できる端末の登録**: 自分のスマホを「信頼できる端末」として登録すれば、毎回の認証コード入力が不要 - **認証アプリの使用**: SMSよりも認証アプリ(Google Authenticator等)の方が速く、SIMスワップ攻撃のリスクもない **今すぐ設定すべき理由:** - 設定は5分で完了、一度設定すれば以後の手間は最小限 - **この5分を惜しんで数十万円の被害**に遭うリスクを冒す価値はない - PayPay、d払い、楽天ペイ等の主要アプリは全て無料で二段階認証を提供 - 将来的には二段階認証が標準になり、未設定のアカウントは利用制限される可能性も **設定方法の詳細:** 本記事の「QRコード決済アプリの脆弱性と対策」セクション、または[フィッシング詐欺に強い認証方式](/security/scams/phishing/column/defense/authentication/)を参照してください。 **結論:** 二段階認証の設定は「面倒」ではなく「必須」です。わずか5分の設定で、数十万円の被害と精神的苦痛から自分を守れます。今すぐ設定してください。

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フィッシング詐欺の他の手口を知る

QRコード詐欺はフィッシング詐欺の一種です。他の手口も理解し、総合的な防御力を高めましょう。

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被害に遭ってしまったら

万が一被害に遭った場合、迅速な対応が被害を最小限に抑えます。

関連する攻撃手法

QRコード詐欺は他のサイバー攻撃と組み合わされることがあります。

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【重要なお知らせ】

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況に対する法的助言や金融アドバイスではありません。QRコード詐欺の手口は日々進化しており、記載内容はあくまで作成時点(2025年11月21日)の情報です。

実際に被害に遭われた場合

  • 警察相談専用電話: #9110(平日8:30-17:15、各都道府県警察の相談窓口)
  • 緊急の場合: 110番
  • 消費者ホットライン: 188(最寄りの消費生活センターに繋がります)
  • 各決済アプリのカスタマーサポート:
    • PayPay: 0120-990-634(24時間対応)
    • d払い: 0120-613-360(24時間対応)
    • 楽天ペイ: 0570-000-348(9:00-18:00)
    • au PAY: 0120-977-964(9:00-20:00)
    • LINE Pay: LINEアプリ内の問い合わせフォームから

法的な対応が必要な場合

  • 弁護士、司法書士などの専門家にご相談ください
  • 法テラス(日本司法支援センター): 0570-078374(平日9:00-21:00、土曜9:00-17:00)
    • 経済的に余裕がない方への法律相談、弁護士・司法書士の紹介
  • 各都道府県の弁護士会: 法律相談の予約可能

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免責事項

本記事の情報を利用したことによって生じたいかなる損害(直接的損害、間接的損害、特別損害、結果的損害を含む)についても、当サイトおよび執筆者は一切の責任を負いかねます。QRコード詐欺の手口は日々変化しており、本記事に記載されていない新しい手口が出現する可能性があります。

最新の情報は、警察庁、消費者庁、各決済サービス事業者の公式発表をご確認ください。セキュリティ対策は複数の手段を組み合わせることが重要であり、単一の対策に依存することは避けてください。

最終更新日

  • 最終更新日: 2025年11月21日
  • 次回更新予定: 2025年12月21日(または重大な手口の変化があった場合は随時更新)

本記事の作成にあたって

本記事は、警察庁サイバー犯罪対策課の統計データ、各都道府県警察の発表資料、IPA(情報処理推進機構)のセキュリティレポート、各決済サービス事業者の公式情報、および報道各社の記事を参考に作成しました。

実例として紹介した事案は、実際の被害事例を基にしていますが、被害者のプライバシー保護のため、一部の情報を改変・匿名化しています。特定の個人・企業を識別できる情報は含まれていません。

QRコード詐欺から身を守るため、本記事の情報を活用し、日常的なセキュリティ意識を高めてください。不明点や追加の質問がある場合は、専門家(警察、消費生活センター、セキュリティ企業等)にご相談ください。


【この記事を読んだ方へ】

QRコード詐欺は誰にでも起こりうる身近な脅威です。本記事で学んだ知識を、ぜひ家族や友人にも共有してください。特に高齢者やセキュリティ知識が少ない方への情報共有が、被害拡大の防止に繋がります。

「このQRコード、本物かな?」と疑問に思ったら、本記事のチェックリストを思い出してください。3秒の確認が、数十万円の被害を防ぎます。

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京都開発研究所

システム開発/サーバ構築・保守/技術研究

CMSの独自開発および各業務管理システム開発を行っており、 10年以上にわたり自社開発CMSにて作成してきた70,000以上のサイトを 自社で管理するサーバに保守管理する。