公的機関偽装フィッシング詐欺|国税庁・年金機構・自治体なりすまし対策【還付金・給付金詐欺】

「税務署から『還付金があります』というメールが届いた」——このようなメールの大半は偽物です。

2024年、フィッシング詐欺の報告件数は過去最多の171万8,036件に達し、国税庁・日本年金機構・地方自治体などの公的機関を装う手口が深刻な被害を引き起こしています。「未納税金」「年金支給停止」「給付金申請」といった文言で不安を煽り、偽サイトに誘導してクレジットカード情報やマイナンバーを詐取する手口が横行しています。

公的機関を装う詐欺が特に危険な理由は、「権威への服従心理」と「罰則への恐怖」を巧みに利用するためです。「差し押さえ」「受給資格喪失」といった言葉を目にすると、多くの人が冷静な判断力を失ってしまいます。特に高齢者の被害率は高く、複雑な行政手続きへの苦手意識が詐欺師に付け入る隙を与えています。

本記事では、国税庁・年金機構・自治体・警察を装う詐欺の最新手口パターン、公的機関の正式な連絡方法の完全一覧、偽メール・偽サイトの具体的な見分け方、そして家族(特に高齢者)を守るための実践的な対策まで、業界別フィッシング詐欺対策の一環として詳しく解説します。

公的機関偽装フィッシング詐欺の深刻な実態

公的機関を装うフィッシング詐欺は、他の詐欺手口と比較して被害が深刻化しやすい傾向があります。その背景には、統計データに表れる被害の拡大と、人間の心理を巧みに悪用する手口の巧妙さがあります。

2024年の被害統計と特徴

フィッシング対策協議会が公開した「フィッシングレポート2025」によると、2024年のフィッシング詐欺をめぐる状況は過去最悪を記録しました。

フィッシング報告件数の推移
2024年の報告件数は171万8,036件で、2023年の119万6,390件から約1.44倍に増加しました。特に2024年12月は単月で23万2,290件と、月別でも過去最多を更新しています。
公的機関偽装の位置づけ
フィッシング対策協議会の月次報告において、「国税庁」は大量報告を受領したブランドとして継続的にランクインしています。2024年12月には国税庁をかたるフィッシングが1万件以上報告されました。
不正送金被害額
警察庁の発表によると、フィッシングを用いた不正送金事件の被害額は2024年に86億9,000万円に上りました。
年度 報告件数 前年比 備考
2019年 約5万件 - 統計開始初期
2023年 119万6,390件 - 当時の過去最多
2024年 171万8,036件 約1.44倍 過去最多更新

これらの統計は、フィッシング詐欺の認知度向上により報告数が増えている側面もありますが、攻撃自体が増加・巧妙化していることは明らかです。特に公的機関を装う手口は、被害者が「本物かもしれない」と判断を迷いやすく、被害の報告が遅れる傾向があります。

なぜ公的機関偽装が効果的なのか——心理学的背景

公的機関を装うフィッシング詐欺が高い成功率を誇る背景には、ソーシャルエンジニアリングの手法が深く関わっています。人間の心理的弱点を突く複数の要因が組み合わさることで、普段は慎重な人でも騙されてしまうのです。

権威への服従心理
社会心理学で知られるミルグラム実験は、人が権威者からの指示に従いやすい傾向を実証しました。「国税庁」「警察」「裁判所」といった権威ある機関の名前を見ると、多くの人は無意識のうちに従おうとする心理が働きます。詐欺師はこの心理を悪用し、公的機関を騙ることで被害者の警戒心を下げています。
罰則への恐怖
「税金滞納により財産を差し押さえます」「年金の支給を停止します」といった文言は、強い恐怖心を喚起します。恐怖状態に陥ると、人間の脳は冷静な判断よりも危機回避を優先するため、「まず確認しよう」という合理的な思考が働きにくくなります。
複雑な手続きへの苦手意識
税金や年金の制度は複雑で、多くの人にとって完全に理解することは困難です。「よくわからないけど、公的機関からの連絡だから対応しなければ」という心理が、詐欺師に付け入る隙を与えています。
世代間の意識差
特に高齢者層には「お上には逆らえない」「役所の言うことは正しい」という意識が根強く残っている場合があります。この意識が、公的機関を装う詐欺への脆弱性を高めています。

被害事例に見る深刻な影響

公的機関偽装フィッシング詐欺の被害は、金銭的損失だけにとどまりません。以下は実際に報告されている被害パターンを基にした事例です。

【被害事例】
「年金支給停止」を告げる偽メールを受信した年金受給者が、偽サイトで個人情報とマイナンバーを入力。その後、銀行口座から不正送金被害が発生。被害者は「年金が本当に止まる」と誤解し、精神的にも深刻なダメージを受けた。被害届を提出したものの、送金された資金の回収は困難を極めている。

この事例が示すように、公的機関偽装詐欺の被害は多層的です。

  • 金銭的被害:不正送金、クレジットカードの不正利用
  • 精神的被害:騙されたショック、「本当に年金が止まるのでは」という不安
  • 二次被害のリスク:漏洩した個人情報が他の詐欺や犯罪に悪用される可能性
  • 被害回復の困難さ:一度送金された資金の取り戻しは容易ではない

国税庁・税務署を装う詐欺の全パターン

国税庁や税務署を装うフィッシング詐欺は、公的機関偽装の中でも特に多く報告されています。確定申告時期には詐欺メールが急増するため、時期を問わず警戒が必要です。

重要:国税庁は公式に「国税の納付を求める旨や、差押えに関するショートメッセージやメール、LINEによるメッセージを送信することはありません」と明言しています。この原則を覚えておくだけで、多くの詐欺を見抜くことができます。

パターン1:還付金詐欺

還付金詐欺は、「お金がもらえる」という心理を利用した手口です。メールフィッシング詐欺の典型的なパターンとして、多くの被害が報告されています。

偽メールの典型的な件名:

  • 「【重要】令和X年分所得税の還付金について」
  • 「e-Tax税務署からの【未払い税金のお知らせ】」
  • 「【国税庁重要なお知らせ】」
  • 「税務署からのお知らせ【宛名の登録確認及び秘密の質問等の登録に関するお知らせ】」
項目 偽メールの特徴 本物の国税庁の対応
連絡方法 メール・SMSで還付金を通知 書面郵送が原則
宛名 「〇〇様」など曖昧、または名前なし 必ず正確な氏名を記載
送信元ドメイン nta-tax-refund.com、kokuzei.noufu●●.comなど nta.go.jpのみ
口座登録 URLから新規登録を要求 確定申告書記載の口座に自動振込
期限設定 「XX日まで」と緊急性を煽る 余裕のある通知期間
支払い方法 Vプリカなど電子マネーでの支払いを要求 正規の納付方法のみ

本物の還付金手続き:

実際の還付金は、確定申告書に記載した口座に自動的に振り込まれます。国税庁からメールで口座情報の登録を求めることは絶対にありません。還付金の通知は書面で届き、振込は申告から1〜2ヶ月程度で行われます。

パターン2:滞納督促・差押予告詐欺

「税金を滞納している」「財産を差し押さえる」といった脅迫的な文言で恐怖を煽り、偽サイトに誘導する手口です。

心理操作の手口
「最終警告」「財産差し押さえ」「滞納処分執行」など、強い言葉で恐怖を煽ります。「納税確認番号」「滯納金合計:50,000円」など、それらしい情報を記載して信憑性を装うのも特徴です。「指定期限にかかわらず、緊急を要する場合等には差押えを執行することがあります」といった脅迫的な文言で、被害者を焦らせます。
本物の督促との決定的な違い
税務署からの本物の督促は、必ず書面(特定記録郵便等)で届きます。メールのみでの督促は絶対に行われません。また、電話での連絡があった場合でも、「折り返し電話をする」と伝えて一度切り、税務署の代表番号にかけ直すことで真偽を確認できます。

パターン3:e-Tax・マイナポータル偽装

e-Tax(国税電子申告・納税システム)やマイナポータルのログイン画面を精巧にコピーした偽サイトに誘導し、利用者識別番号やパスワードを窃取する手口です。

偽装サイトの特徴:

  • 本物のe-Taxログイン画面とほぼ同一のデザイン
  • 「メンテナンス後の再ログイン」「セキュリティ確認のため」といった口実
  • URLが「nta.go.jp」ではなく、類似した偽ドメイン
  • SSL証明書は取得しているが、無料の証明書を使用

確実な防御法:

  1. ブックマークしたURLのみ使用:e-Taxやマイナポータルは、事前にブックマークした公式URLからのみアクセスする
  2. 検索エンジン経由でのアクセスを避ける:検索結果に偽サイトが表示される可能性がある
  3. メール内リンクは絶対にクリックしない:正規のメールに見えても、リンクは使わない
  4. URLを必ず確認:nta.go.jp(国税庁)またはmyna.go.jp(マイナポータル)であることを確認

時期別の詐欺トレンド

国税庁を装う詐欺には、時期によって傾向があります。特に確定申告期は要注意です。

時期 主な手口 注意すべきポイント
2〜3月(確定申告期) 還付金詐欺、e-Tax偽装ログイン 申告時期に便乗、報告件数が通常の3倍に
11〜12月(年末調整期) 年末調整還付金詐欺 給与所得者を主なターゲットに
4月、7月、12月、2月 固定資産税・住民税納税通知書偽装 納付期限を装って焦らせる
通年 未納督促詐欺、差押予告詐欺 時期を問わず注意が必要

日本年金機構を装う年金詐欺の巧妙な手口

日本年金機構を装うフィッシング詐欺は、特に高齢者をターゲットにした悪質な手口です。年金は生活の糧であるため、「支給停止」という言葉に強い恐怖を感じ、冷静な判断ができなくなる被害者が後を絶ちません。

重要:日本年金機構は公式に「メールで個人情報を求めることは絶対にない」と注意喚起しています。また、日本年金機構の公式LINEアカウントは存在しません。LINEでの手続き案内は100%詐欺です。

パターン1:年金支給停止脅迫型

「年金の支給を停止する」という脅迫で被害者を動揺させ、偽サイトに個人情報を入力させる手口です。

偽メールの典型的な内容
「ねんきん定期便の情報に不備が確認されました」「年金支給を一時停止させていただきます」「受給資格を失う可能性があります」といった内容で、偽のねんきんネットログイン画面に誘導します。
高齢者が騙される理由
年金は多くの高齢者にとって唯一の収入源であり、停止への恐怖は非常に強いものです。また、複雑な年金制度を完全に理解している人は少なく、「よくわからないけど対応しなければ」という心理が働きます。「お役所の言うことは絶対」という意識も、詐欺への脆弱性を高めています。
実際の年金機構の対応
年金支給停止の連絡は必ず書面で届きます。「受給資格喪失」は、死亡届の未提出など特殊な状況でない限り簡単には起こりません。メールで個人情報を求めることは絶対にありません。

パターン2:未納追徴・督促型

若年層をターゲットにした手口も増加しています。国民年金保険料の未納を告げ、偽の納付サイトに誘導します。

偽メールの典型的な内容:

  • 「国民年金保険料にXXヶ月分の未納があります」
  • 「このまま放置すると将来の年金が大幅に減額されます」
  • 「至急、下記URLより納付手続きをお願いします」

若年層が騙される理由:

  • 年金制度の理解が十分でない
  • 「未納」という言葉への罪悪感
  • 「将来の年金減額」への漠然とした不安
  • 正規の督促との区別がつかない

正しい確認方法:

  1. ねんきんネット(公式:nenkin.go.jp)にログインして納付記録を確認
  2. 年金事務所に電話で確認(ねんきんダイヤル:0570-05-1165)
  3. 納付書は日本年金機構から郵送のみで届く

パターン3:ねんきんネット偽装・偽アプリ

デジタル庁からも注意喚起が出されている、特に悪質な手口です。電話とデジタル技術を組み合わせた複合的な詐欺で、ビッシング(音声フィッシング)の要素も含まれています。

手口の流れ:

  1. 年金事務所を騙る電話がかかってくる
  2. 「年金手続きの期限が近い」と告げられる
  3. LINEで「年金機構」というアカウントへの登録を促される
  4. LINE電話で偽のマイナポータルサイトのURLを案内される
  5. 偽サイトから偽アプリ(apkファイル)のダウンロードを促される
  6. アプリ内でマイナンバーカード情報、暗証番号、銀行口座情報を入力させられる

防御の鉄則:

  1. 公式アプリはApp StoreまたはGoogle Playからのみダウンロード
  2. 各ストア以外からのアプリインストールは絶対に行わない
  3. 電話で促されたサイトやアプリには絶対にアクセス・インストールしない
  4. 日本年金機構の公式LINEアカウントは存在しないことを覚えておく

地方自治体・市区町村を装う給付金・還付金詐欺

地方自治体を装うフィッシング詐欺は、自治体ごとに制度や対応が異なるため、被害者が真偽を判断しにくいという特徴があります。特に給付金制度が実際に存在するタイミングを狙った詐欺は、非常に巧妙です。

パターン1:給付金詐欺(物価高対策等)

内閣府は公式に以下の注意喚起を行っています。

「電力・ガス・食料品価格高騰対応緊急支援給付金(5万円)に関するお知らせ」などとする詐欺的メールが配信されています。内閣府ではそのようなメールは送信しておりません。

自治体偽装の危険性
自治体ごとに給付金制度や申請方法が異なるため、「自分の自治体はどうなのか」という確認が難しいです。また、実際に給付金制度が存在するタイミングを狙うため、「本物かもしれない」と思わせる巧妙さがあります。5万円程度の少額で警戒心を下げるのも特徴です。
本物の自治体の給付金対応
本物の給付金は、広報誌やホームページで事前に告知されます。申請書は必ず郵送で届き、メールのみでの案内は基本的に行われません。また、すでに口座情報を届け出ている場合は、新たな口座登録を求められることはありません。

パターン2:マイナンバーカード関連詐欺

マイナンバーカードの普及に伴い、カードの更新やマイナポイントを騙る詐欺が増加しています。デジタル庁・総務省からも繰り返し注意喚起が出されています。

偽メールの典型的な件名:

  • 「マイナンバーカードの有効期限について」
  • 「【マイナンバーカード】マイナポイント第2弾で獲得した20,000円ポイントはまもなく失効します」
  • 「電子証明書の更新手続きのお願い」

正しい知識:

項目 有効期限 正しい更新方法
電子証明書 発行から5年 市区町村窓口で更新
カード本体 発行から10年(未成年は5年) 市区町村窓口で更新
オンライン更新 - マイナポータル(myna.go.jp)のみ対応

マイナンバーカードの更新案内は、有効期限の2〜3ヶ月前に市区町村から書面で届きます。メールで更新を促すことはありません。

パターン3:水道料金・税金還付型

少額の還付金を騙る地味ながら効果的な手口です。

偽メールの典型的な内容:

  • 「過去の水道料金に誤りがあり、還付金XX円が発生しています」
  • 「固定資産税の過払いが確認されました」
  • 「下記URLより口座情報を登録してください」
少額還付金の罠
数千円程度の少額であることで信憑性を高め、「得する」心理で警戒心を下げます。水道や電気など日常的なサービスを騙ることで、違和感を減らす効果もあります。
見分けるポイント
水道局や自治体からの還付は書面通知が基本です。口座はすでに登録済みのため、新規登録を求められることはありません。還付が発生する場合も、メールでの連絡は行われません。

警察・裁判所を装う悪質な詐欺

警察や裁判所を装う詐欺は、公的機関偽装の中でも最も悪質な部類に入ります。「逮捕」「出頭」といった言葉は、人に極度の恐怖と混乱を引き起こし、冷静な判断を著しく困難にします。

⚠️ 最も悪質な手口:警察・裁判所を装う詐欺は、心理的ダメージが特に大きく、被害者が誰にも相談できずに孤立するケースが多発しています。「メールで逮捕されることは絶対にない」という事実を、まず覚えてください。

出頭命令・逮捕状詐欺

偽メールの典型例:

  • 「〇〇地方裁判所からの出頭命令書」
  • 「あなたに対する民事訴訟が提起されています」
  • 「XX月XX日までに出頭しない場合、逮捕状を請求いたします」
  • 「詳細は下記URLを確認してください」

心理的ダメージの大きさ:

「逮捕」という言葉は、たとえ身に覚えがなくても強い恐怖を引き起こします。法律知識がないことによる混乱、「誰にも相談できない」という心理、「身に覚えがないのになぜ」という不安が重なり、被害者は冷静な判断ができなくなります。

絶対に知っておくべき事実:

本物の対応 偽物の特徴
裁判所からの連絡は必ず「特別送達」(書留郵便) メールで出頭命令を送る
訴訟の通知は訴状(書面)で届く URLクリックを促す
警察が逮捕状をメールで予告することは絶対にない 期限を設けて焦らせる
事件番号が記載され、裁判所で確認可能 架空の事件番号や番号なし

差押予告詐欺への対処法

「差し押さえ」「強制執行」といった言葉を見て動揺した場合の対処法です。

確認方法:

  1. 裁判所ホームページで事件番号を検索(架空の番号であれば詐欺確定)
  2. 裁判所に直接電話で確認(メールに記載の番号ではなく、公式サイトで調べた番号に)
  3. 法テラス(0570-078374)に相談
  4. 警察相談専用電話(#9110)に連絡

心理的対処:

  • メールを見て動揺したら、まず深呼吸して落ち着く
  • 「メールだけで逮捕されることは絶対にない」と自分に言い聞かせる
  • 必ず家族や信頼できる人に相談する
  • 一人で判断せず、第三者の意見を聞く

公的機関の正式な連絡方法【必ず覚える】

この節は、公的機関偽装フィッシング詐欺から身を守るための最も重要な情報です。公的機関がどのような方法で連絡してくるか(そして、どのような方法では連絡してこないか)を知っておくことで、詐欺を見抜く力が大幅に向上します。

機関別の正式な連絡方法一覧

機関名 正式な連絡方法 公式ドメイン 絶対にしないこと
国税庁・税務署 書面郵送が基本、e-Tax登録者へのお知らせメール nta.go.jp メールでの還付金通知、SMSでの納付督促、LINEでの連絡
日本年金機構 書面郵送 nenkin.go.jp メールで個人情報要求、LINEでの手続き案内
厚生労働省 書面郵送 mhlw.go.jp メールでの緊急連絡、個人への直接メール
警察・裁判所 特別送達(書留郵便) courts.go.jp / npa.go.jp メールで出頭命令、逮捕予告、差押予告
地方自治体 広報誌・書面郵送 各自治体.lg.jp 突然のメール給付金案内、SMS連絡
デジタル庁 マイナポータル内通知 digital.go.jp / myna.go.jp 直接メール連絡、SMS連絡

絶対に覚えるべき3つの鉄則

フィッシング対策の基本5原則を踏まえ、公的機関偽装詐欺に特化した3つの鉄則を紹介します。

【鉄則1】公的機関からのメール=まず疑う
公的機関は基本的に書面郵送で重要な連絡を行います。緊急の場合は電話を使いますが、その場合も「折り返し電話をする」と伝えて一度切り、公式サイトで調べた番号にかけ直すことで真偽を確認できます。メールのみでの重要連絡は原則として行われません。「公的機関からのメール」を見たら、まず詐欺を疑うことが重要です。
【鉄則2】個人情報・金銭をメールで要求=100%詐欺
マイナンバー、銀行口座情報、クレジットカード番号、暗証番号・パスワード——これらの情報をメールで求められたら、それは100%詐欺です。公的機関がメールでこれらの情報を求めることは絶対にありません。どんなに本物らしく見えても、この原則を忘れないでください。
【鉄則3】不安になったら公式サイトの連絡先に電話
メール内のリンクは絶対に使わないでください。不安になったら、検索エンジンで公式サイトを探し、公式サイトの「お問い合わせ」ページに記載された電話番号に連絡してください。本物の職員であれば、この確認行動を歓迎します。

家族(特に高齢者)を守るための対策

公的機関偽装フィッシング詐欺の被害者は高齢者に多い傾向があります。高齢者のフィッシング詐欺対策は、家族全体で取り組むべき課題です。

事前の情報共有と家族ルール

詐欺被害を防ぐ最も効果的な方法は、被害に遭う前に家族で対策を共有しておくことです。

家族会議で決めるルール:

  1. 公的機関からメールが来たら、必ず家族に見せる
  2. 電話がかかってきても、その場で判断しない
  3. 「折り返し電話する」と伝えて一度切る
  4. 家族に相談してから対応する

印刷して渡すチェックリスト:

以下のチェックリストを印刷し、電話の近くや冷蔵庫など目につく場所に貼っておくことをお勧めします。

【詐欺かもしれない?チェックリスト】

□ 「還付金」「給付金」のメール → 詐欺の可能性大
□ 「年金停止」「差押」の脅し → まず家族に連絡
□ 「今日中に」「至急」と急かされる → 一度冷静になる
□ メールのリンクをクリックするよう促される → 絶対にクリックしない
□ 口座番号や暗証番号を聞かれる → 100%詐欺

困ったら → #9110(警察相談専用電話)

実践的なロールプレイ訓練

知識として知っているだけでは、実際の詐欺に遭遇したときに対応できないことがあります。家族で定期的にロールプレイを行い、対応を体に覚えさせることが効果的です。

家族でやる詐欺対策訓練の例:

練習1:電話での詐欺
家族A:「税務署ですが、還付金があります。口座番号を教えてください」
家族B:「そうですか。念のため確認しますので、税務署の電話番号を教えてください」
家族A:「今すぐ手続きしないと、還付金を受け取れなくなりますよ」
家族B:「大丈夫です。税務署に折り返し電話して確認します」

繰り返し練習する一言:

  • 「ありがとうございます。確認してから折り返します」
  • 「家族と相談してから決めます」
  • 「今日は決めません。明日また連絡します」
  • 「急いでいるのは理解しますが、確認させてください」

テクノロジーの活用

スマートフォンやパソコンの設定を適切に行うことで、詐欺メールに触れる機会自体を減らすことができます。

スマホの推奨設定:

  • 迷惑メールフィルター:最強レベルに設定
  • 非通知電話:着信拒否に設定
  • 知らない番号:留守電対応に設定

推奨ツール・サービス:

  • 詐欺電話防止機能付き電話機(警告メッセージを自動再生)
  • セキュリティソフトのフィッシング対策機能
  • 家族間の情報共有アプリ(不審な連絡があったらすぐ共有)
  • SMS詐欺(スミッシング)対策アプリ

偽メール・偽サイトにアクセスしてしまった場合の対処

万が一、偽メールのリンクをクリックしたり、偽サイトに情報を入力してしまった場合は、迅速な対応が被害を最小限に抑える鍵となります。フィッシング被害直後30分の緊急対応を参考に、落ち着いて行動してください。

緊急対応フローチャート

【STEP 1】すぐにやること(5分以内)

  • □ インターネット接続を切る(Wi-Fiオフ、機内モード)
  • □ 入力した情報を紙にメモ(何を、どこに入力したか)
  • □ 偽サイトや偽メールのスクリーンショットを保存

【STEP 2】金銭被害の防止(10分以内)

入力した情報によって対応が異なります。

入力した情報 優先対応
クレジットカード番号 カード会社に即電話(カード裏面の番号)→利用停止を依頼
銀行口座情報・暗証番号 銀行に電話→不正送金がないか確認→口座監視を依頼
マイナンバー 市区町村に連絡→カード機能停止を検討→警察に被害届
ID・パスワード 該当サービスのパスワードを即変更→二段階認証を設定

【STEP 3】公的機関への報告(30分以内)

  • □ 警察相談専用電話:#9110
  • □ 消費者ホットライン:188
  • □ 偽装された公的機関に詐欺被害を報告(例:国税庁偽装なら国税庁に報告)

【STEP 4】二次被害の防止

  • □ 同じパスワードを使っている全サービスでパスワード変更
  • □ 二段階認証の設定(設定していない場合)
  • □ クレジットカードの利用明細を定期的に確認
  • □ 信用情報機関への照会(身に覚えのない借入がないか確認)

相談窓口一覧

被害に遭った場合や、詐欺かどうか判断に迷う場合は、以下の窓口に相談してください。フィッシング詐欺の通報先一覧も併せてご確認ください。

相談内容 窓口名 連絡先 受付時間
詐欺全般 警察相談専用電話 #9110 平日8:30〜17:15(各都道府県で異なる)
消費者トラブル 消費者ホットライン 188 地域により異なる
マイナンバー関連 マイナンバー総合フリーダイヤル 0120-95-0178 平日9:30〜20:00、土日祝9:30〜17:30
年金関連 ねんきんダイヤル 0570-05-1165 平日8:30〜17:15
法的相談 法テラス 0570-078374 平日9:00〜21:00、土曜9:00〜17:00
フィッシング報告 フィッシング対策協議会 info@antiphishing.jp 24時間(メール)

よくある質問(FAQ)

Q1: 本物の公的機関と偽物の見分け方は?
A: 最も確実なのは、メール内のリンクを絶対に使わず、公式サイトを検索して直接連絡することです。公的機関の重要な連絡は必ず書面(郵便)で届きます。メールのみでの重要連絡は原則として行われません。送信元のドメインが「.go.jp」であっても、偽装されている可能性があるため、ドメインだけで判断せず、内容と連絡方法を総合的に確認してください。不安な時は、家族に相談するか、#9110(警察相談専用電話)に電話してください。
Q2: 「〇〇様」と名前が書いてあれば本物?
A: いいえ、名前が正確に書いてあっても偽物の可能性があります。過去の情報漏洩事故などで個人情報が流出していれば、詐欺師も正確な名前を把握しています。名前の有無だけで本物・偽物を判断せず、送信元ドメイン、連絡方法(書面かメールか)、要求されている内容(個人情報や金銭の要求があるか)で総合的に判断してください。
Q3: 公的機関から電話がかかってくることはある?
A: はい、正当な理由で公的機関から電話がかかってくることはあります。ただし、その場で個人情報や金銭に関する判断を求められることはありません。電話がかかってきた場合は、「折り返し電話をする」と伝えて一度切り、公式サイトで調べた代表番号にかけ直すことで真偽を確認できます。本物の職員であれば、この対応を拒否することはありませんし、むしろ慎重な対応を評価するでしょう。
Q4: e-Taxやマイナポータルを安全に使うには?
A: 必ずブックマークした公式URL(e-Taxはnta.go.jp、マイナポータルはmyna.go.jp)からアクセスしてください。検索エンジンの結果やメール内のリンクは使わないようにしましょう。また、二段階認証を設定し、パスワードは他のサービスと使い回さないことが重要です。公共のWi-Fiでは利用を避け、自宅の安全なネットワークで利用することをお勧めします。
Q5: 高齢の親が騙されないか心配です
A: 事前の対策が最も効果的です。「公的機関からのメールは詐欺の可能性が高い」ことを繰り返し伝え、「何か届いたら必ず家族に見せる」というルールを決めておきましょう。チェックリストを印刷して電話の近くに貼っておくのも効果的です。また、詐欺対策のロールプレイを定期的に行い、「確認してから折り返します」という一言を自然に言えるよう練習することも推奨します。迷惑電話防止機能付きの電話機の導入も検討してください。
Q6: 実際に未納や滞納がある場合はどうする?
A: 心当たりがある場合でも、メール内のリンクは絶対に使わないでください。国税庁や年金機構の公式サイトから直接確認するか、税務署・年金事務所に電話で問い合わせてください。本物の督促であれば、公式ルートで対応が可能です。実際に滞納がある場合、税務署や年金事務所は分割払いなどの相談にも応じています。焦って詐欺サイトに情報を入力するよりも、公式ルートで落ち着いて対応する方が安全です。
Q7: 詐欺メールを受信しただけで危険?
A: メールを受信しただけでは被害は発生しません。危険なのは、リンクをクリックして偽サイトにアクセスし、個人情報を入力することです。不審なメールは開封せずに削除するのが最善ですが、開封してしまった場合も、リンクをクリックしなければ問題ありません。ただし、添付ファイルを開くと[マルウェア感染](/security/devices/malware-infection/)のリスクがあるため、心当たりのない添付ファイルは絶対に開かないでください。

【重要なお知らせ】

  • 本記事は一般的な詐欺手口の解説であり、特定の政治的立場を表明するものではありません
  • 公的機関への信頼を損なう意図はなく、詐欺から身を守る情報提供が目的です
  • 実際の公的機関のサービスは適切にご利用ください
  • 被害に遭われた場合は、警察(#9110)や各公的機関にご相談ください
  • 記載内容は作成時点(2025年11月)の情報であり、手口は日々進化している可能性があります

参考情報


本記事はフィッシング詐欺トピッククラスターの業界別フィッシング詐欺対策カテゴリに属するコンテンツです。


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📊 業界別年間被害額(2025年)

  • 金融業界:6,200億円
  • EC・通販:450億円
  • 医療機関:120億円
  • その他:230億円

更新履歴

初稿公開

京都開発研究所

システム開発/サーバ構築・保守/技術研究

CMSの独自開発および各業務管理システム開発を行っており、 10年以上にわたり自社開発CMSにて作成してきた70,000以上のサイトを 自社で管理するサーバに保守管理する。