フィッシング詐欺の金銭被害回復|返金・補償の完全ガイド

フィッシング詐欺でお金を失ってしまった——そんな絶望的な状況でも、諦めるのはまだ早いかもしれません。適切な手続きを踏めば、被害の全額または一部を回復できる可能性があります。実際、クレジットカードの不正利用被害では約60〜80%が補償対象となり、銀行口座の被害も預金者保護法に基づく補償制度が整備されています。

本記事では、フィッシング詐欺による金銭被害からの回復方法を、被害種別(クレジットカード・銀行口座・電子マネー・暗号資産)ごとに詳しく解説します。各補償制度の申請手順、必要書類、申請期限、成功率まで網羅的にまとめました。ただし、補償申請には期限があり、時間が経つほど回復の可能性は低下します。この記事を読んだら、できるだけ早く行動を開始しましょう。

金銭被害回復の可能性|被害種別ごとの見通し

フィッシング詐欺による金銭被害は、被害の種類によって回復の可能性が大きく異なります。クレジットカードの不正利用は比較的回復しやすい一方、暗号資産の被害は極めて困難です。諦める前に、まずは自分の被害がどの種類に該当するか確認しましょう。詳しい対応の流れは「フィッシング詐欺被害の対応ガイド」でも解説しています。

被害種別 回復可能性 一般的な回復率 申請期限目安 主な条件
クレジットカード不正利用 60〜80% 60〜120日 本人に重大な過失がないこと
銀行口座からの不正送金 中〜高 50〜100% 30日以内推奨 預金者保護法の適用条件を満たすこと
デビットカード不正利用 40〜70% 60日程度 発行会社の規約による
電子マネー・QR決済 低〜中 20〜50% サービスにより異なる 補償制度があるサービスに限る
暗号資産(仮想通貨) 極めて低 5%未満 なし(即時対応必須) 取引所の補償制度がある場合のみ

上記の数値は一般的な目安であり、個別のケースにより異なります。「回復可能性が低い」とされる被害種別でも、諦めずに対応することで回復できた事例は存在します。重要なのは、被害に気づいたらすぐに行動を開始することです。まずは「フィッシング被害直後30分の緊急対応」を参照し、初動対応を確実に行ってください。

回復成功のカギは「スピード」と「証拠」

金銭被害の回復において、最も重要な要素はスピード証拠です。この2つが揃っているかどうかで、回復の成否が大きく左右されます。

スピードの重要性

被害発生から対応開始までの時間が短いほど、回復率は高くなります。一般的に、被害発生から24時間以内に対応を開始した場合、回復率は約1.5倍になるとされています。これは、早期に対応することで口座凍結や取引取消が間に合う可能性が高まるためです。

時間が経過すると、以下のような問題が発生します。

  • 犯人が資金を引き出してしまい、凍結しても残高がない
  • 申請期限を過ぎてしまい、補償の対象外となる
  • 証拠となるメールやサイトが削除され、立証が困難になる

証拠保全の重要性

補償申請には、フィッシング被害に遭ったことを証明する証拠が必要です。以下の証拠は必ず保全してください。

  • フィッシングメール・SMSのスクリーンショット(送信元アドレス、本文、受信日時が分かるもの)
  • 偽サイトのURL・画面キャプチャ(アドレスバーが見える状態で)
  • 取引明細・利用履歴(不正利用の日時・金額・利用先)
  • 通話履歴(電話を受けた場合)
  • カード会社・銀行とのやり取りの記録

証拠保全の詳しい方法は「フィッシング詐欺の証拠保全」で解説しています。今日行動すれば、明日よりも回復の可能性が高くなります。まずは「通報先一覧」を確認し、必要な連絡を開始しましょう。


クレジットカード被害の補償・返金

クレジットカードの不正利用被害は、金銭被害の中で最も回復可能性が高いカテゴリです。多くのクレジットカード会社が不正利用に対する補償制度を持っており、条件を満たせば全額が返金されるケースも珍しくありません。ただし、補償を受けるためには一定の条件と手続きが必要です。

クレジットカード会社の補償制度

クレジットカードの不正利用に対しては、国際ブランド(Visa、Mastercard、JCB、American Express等)および発行会社が補償制度を提供しています。補償には主に2つの方法があります。

  1. 会員規約に基づく補償: カード会社が独自に設けている補償制度
  2. チャージバックによる回復: 国際ブランドのルールに基づき、加盟店から代金を取り戻す制度

補償の一般的な条件は以下の通りです。

  • 不正利用の届出が発生日から一定期間内(通常60〜120日)であること
  • カード会員本人に重大な過失がないこと
  • カード会員規約に違反していないこと
  • 警察への届出が完了していること(求められる場合)
  • 不正利用の調査に協力すること

補償の詳細は各カード会社の会員規約により異なります。不正利用に気づいたら、まずカード会社に連絡し、具体的な補償条件を確認してください。

チャージバック制度の活用

チャージバックとは
クレジットカードの不正利用や商品未着等の問題が発生した際に、カード会社が加盟店から代金を取り戻し、カード会員に返金する制度です。Visa、Mastercard等の国際ブランドのルールに基づいて運用されており、フィッシング詐欺による不正利用も対象となります。
申請期限
不正利用発生から60〜120日が一般的です。カード会社や国際ブランドにより期限が異なるため、できるだけ早めの申請が推奨されます。期限を過ぎると、たとえ不正利用であっても返金を受けられなくなる可能性があります。
成功率
適切な証拠を揃えて申請した場合、60〜80%程度で返金が認められるとされています。ただし、加盟店が異議を申し立てた場合は審査が長引く可能性があります。証拠が不十分な場合は成功率が下がります。
処理期間
申請から結果が出るまで通常1〜3ヶ月かかります。複雑なケースでは6ヶ月以上かかることもあります。この間、一時的に請求が保留されるか、いったん支払った後に返金される形となります。

チャージバック申請の手順

  1. カード会社のカスタマーサポートに連絡し、不正利用を報告する
  2. 不正利用の詳細(日時、金額、利用先等)を伝える
  3. カード会社から送付される「不正利用届出書」に記入・返送する
  4. 求められた場合は追加の証拠書類を提出する
  5. カード会社が加盟店・国際ブランドと交渉する
  6. 審査結果の通知を受け取る
  7. 承認された場合、返金処理(次回請求から差し引き等)が行われる

主要クレジットカード会社の補償内容比較

カード会社 補償制度名 届出期限 補償条件 免責金額 問い合わせ方法
三井住友カード 会員保障制度 届出日から60日前まで 会員規約遵守、重大な過失なし なし 電話・Web
楽天カード 不正利用補償 届出日から60日前まで 会員規約遵守、重大な過失なし なし 電話・Web
JCBカード 会員保障制度 届出日から60日前まで 会員規約遵守 なし 電話
三菱UFJニコス 会員保障制度 届出日から60日前まで 会員規約遵守 なし 電話・Web
イオンカード 盗難・紛失補償 届出日から61日前まで 会員規約遵守 なし 電話
セゾンカード 不正利用補償 届出日から61日前まで 会員規約遵守 なし 電話・Web
オリコカード 不正利用補償 届出日から60日前まで 会員規約遵守 なし 電話
dカード 会員保障制度 届出日から90日前まで 会員規約遵守 なし 電話・Web
au PAYカード 不正利用補償 届出日から60日前まで 会員規約遵守 なし 電話・Web
PayPayカード 不正利用補償 届出日から60日前まで 会員規約遵守 なし Web
エポスカード 会員保障制度 届出日から61日前まで 会員規約遵守 なし 電話・Web
ライフカード 会員補償制度 届出日から60日前まで 会員規約遵守 なし 電話

※上記は2025年11月時点の一般的な情報です。補償内容は変更される場合がありますので、詳細は各社の会員規約・公式サイトをご確認ください。法人カードは補償内容が異なる場合があります。

補償申請の手順と必要書類

申請手順

  1. カード会社に不正利用を電話で連絡する(24時間対応の緊急窓口を利用)
  2. カードの利用停止・再発行手続きを行う
  3. 「不正利用届出書」を受け取り、記入・返送する
  4. 必要書類を準備・提出する
  5. カード会社の調査に協力する
  6. 審査結果の通知を受け取る(1〜3ヶ月程度)
  7. 補償決定の場合、返金処理が行われる

必要書類チェックリスト

  • □ 不正利用届出書(カード会社指定フォーム)
  • □ 本人確認書類のコピー(運転免許証、マイナンバーカード等)
  • □ 不正利用の証拠(フィッシングメール・SMSのスクリーンショット)
  • □ 偽サイトのURL・画面キャプチャ(保存している場合)
  • □ 被害届の受理番号(警察に届出済みの場合)
  • □ 取引明細書・利用通知のコピー
  • □ その他カード会社から求められた書類

書類は原本ではなくコピーで可の場合が多いですが、カード会社の指示に従ってください。証拠の保全方法は「フィッシング詐欺の証拠保全」で詳しく解説しています。

補償を受けられないケース

本人の重大な過失
暗証番号をカードに記載していた、他人にカード情報を教えた、フィッシングサイトと認識しながら情報を入力した等のケースです。ただし、巧妙な手口に騙された場合は「重大な過失」と判断されないこともあります。
家族による利用
同居の家族がカード会員の許可なく使用した場合、多くのカード会社では補償対象外となります。この場合は家族間で解決するよう求められます。
申請期限の超過
不正利用発生から60〜120日(会社により異なる)を超えて届け出た場合、補償対象外となる可能性が高くなります。定期的な明細確認が重要です。
会員規約違反
カードの第三者への貸与、現金化目的の利用、規約で禁止された取引等を行っていた場合は補償対象外となります。
暗証番号を使用した取引
ICチップと暗証番号を使用した取引は、本人利用と推定され補償が難しい場合があります。ただし、フィッシングで暗証番号も詐取された場合は交渉の余地があります。

補償対象外と思われるケースでも、状況を詳しく説明することで補償が認められる場合があります。まずはカード会社に相談し、判断を仰ぐことをお勧めします。納得できない場合は、クレジット・貸金業相談窓口や国民生活センターへの相談も選択肢となります。


銀行口座被害の補償・返金

銀行口座からの不正送金被害には、法律に基づく補償制度が整備されています。預金者保護法と全国銀行協会(全銀協)の申し合わせにより、一定の条件下で補償を受けることができます。ただし、補償割合は被害者の過失の度合いによって異なります。

預金者保護法による補償

預金者保護法は2006年に施行された法律で、偽造・盗難カードによる預金の不正払戻し被害を補償する制度を定めています。主にキャッシュカードの不正利用に適用されます。インターネットバンキングの不正送金は直接の対象外ですが、全銀協の申し合わせにより同様の補償が受けられます。

無過失の場合
被害額の100%が補償されます。被害者がフィッシング詐欺に気づかなかったことに過失がない場合が該当します。巧妙な手口に騙された場合は、通常このカテゴリに分類されます。
軽過失の場合
被害額の75%が補償されます。例えば、推測されやすい暗証番号(生年月日、電話番号等)を使用していた場合や、暗証番号を推測可能な場所にメモしていた場合が該当します。
重過失の場合
原則として補償はありません。暗証番号をメモに書いてキャッシュカードと一緒に保管していた場合、他人に暗証番号を教えた場合、フィッシングと知りながら情報を入力した場合等が該当します。

全銀協の申し合わせによる補償

全国銀行協会(全銀協)は、インターネットバンキングの不正送金被害について、預金者保護法に準じた補償を行うことを申し合わせています。2019年には補償範囲を拡大し、法人口座も対象となりました。

補償割合は預金者保護法と同様で、無過失の場合は100%、軽過失の場合は75%、重過失の場合は0%となります。

申請条件

  • 被害発生後速やかに(原則30日以内)銀行に届け出ること
  • 警察への届出を行うこと
  • 銀行の調査に協力すること

各銀行の対応は申し合わせに基づきますが、個別の判断は銀行によって異なる場合があります。不正送金に気づいたら、まず銀行に連絡して具体的な対応を確認してください。

振り込め詐欺救済法による被害回復

振り込め詐欺救済法(正式名称:犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律)は2008年に施行されました。詐欺に使われた口座を凍結し、残っている資金を被害者に分配する制度です。フィッシング詐欺で振り込んでしまった場合にも適用される可能性があります。

被害回復分配金を受け取る手順

  1. 警察に被害届を提出する
  2. 振込先の金融機関に連絡し、口座凍結を依頼する
  3. 金融機関が口座を凍結し、預金保険機構のWebサイトで公告する
  4. 公告期間中(60日以上)に被害回復分配金の支払申請を行う
  5. 申請内容の審査を受ける
  6. 審査通過後、被害回復分配金が支払われる

分配金額についての注意点

分配金は凍結された口座の残高から支払われるため、被害額の全額が戻るとは限りません。複数の被害者がいる場合は按分されます。また、犯人がすでに引き出していた場合、残高がほとんどないこともあります。それでも申請する価値はあります。諦めずに手続きを進めましょう。

主要銀行の補償対応比較

銀行名 補償制度 届出期限 補償条件 問い合わせ先
三菱UFJ銀行 不正送金補償 速やかに 全銀協申し合わせ準拠 電話・店頭
三井住友銀行 不正払戻し補償 速やかに 全銀協申し合わせ準拠 電話・店頭
みずほ銀行 不正利用補償 速やかに 全銀協申し合わせ準拠 電話・店頭
りそな銀行 不正送金補償 速やかに 全銀協申し合わせ準拠 電話・店頭
ゆうちょ銀行 不正払戻し補償 速やかに 全銀協申し合わせ準拠 電話・店頭
楽天銀行 不正送金補償 速やかに 全銀協申し合わせ準拠 Web・電話
PayPay銀行 不正送金補償 速やかに 全銀協申し合わせ準拠 Web・電話
住信SBIネット銀行 不正利用補償 速やかに 全銀協申し合わせ準拠 Web・電話
auじぶん銀行 不正送金補償 速やかに 全銀協申し合わせ準拠 Web・電話
イオン銀行 不正払戻し補償 速やかに 全銀協申し合わせ準拠 電話・店頭
セブン銀行 不正利用補償 速やかに 全銀協申し合わせ準拠 電話
ソニー銀行 不正送金補償 速やかに 全銀協申し合わせ準拠 Web・電話

※上記は2025年11月時点の一般的な情報です。補償内容・条件は変更される場合があります。「速やかに」とは原則30日以内を指すことが多いですが、具体的な期限は各行にご確認ください。

補償申請の手順と必要書類

申請手順

  1. 不正送金に気づいたら直ちに銀行に連絡する(24時間対応窓口を利用)
  2. 口座の利用停止・ログインパスワードを変更する
  3. 警察に被害届を提出し、受理番号を取得する
  4. 銀行に補償申請書類を提出する
  5. 銀行による調査(1〜2ヶ月程度)を受ける
  6. 補償可否の決定・通知を受け取る
  7. 補償決定の場合、被害額が返金される

必要書類チェックリスト

  • □ 補償申請書(銀行指定フォーム)
  • □ 本人確認書類のコピー
  • □ 被害届受理番号
  • □ フィッシングメール・SMS等のスクリーンショット
  • □ 不正送金の取引明細
  • □ その他銀行から求められた書類

電子マネー・QR決済被害の補償

電子マネーやQR決済の不正利用被害は、クレジットカードや銀行口座に比べて補償が限定的なケースが多いのが現実です。ただし、近年は補償制度を整備するサービスも増えています。また、電子マネー・QR決済自体が補償対象外でも、紐づけられたクレジットカードや銀行口座への補償申請が可能な場合があります。両方に申請することを検討してください。

主要サービスの補償制度

サービス名 補償制度 補償条件 補償上限 届出期限 申請方法
PayPay あり 不正利用と認定された場合 全額 60日以内 アプリ・電話
楽天ペイ あり 不正利用と認定された場合 全額 60日以内 アプリ・電話
d払い あり 不正利用と認定された場合 全額 60日以内 電話
au PAY あり 不正利用と認定された場合 全額 60日以内 アプリ・電話
メルペイ あり 不正利用と認定された場合 全額 速やかに アプリ
LINE Pay あり 不正利用と認定された場合 10万円 速やかに アプリ
Suica(モバイル) 限定的 紛失届提出後の不正利用 残高 速やかに 駅窓口・電話
PASMO(モバイル) 限定的 紛失届提出後の不正利用 残高 速やかに 駅窓口・電話
nanaco 原則なし - - - -
WAON 原則なし - - - -

※上記は2025年11月時点の一般的な情報です。補償内容・条件は変更される場合があります。プリペイド型電子マネー(nanaco、WAON等)は補償制度がないことが多いため、紐づけた決済手段への補償申請を検討してください。

補償申請の手順

一般的な申請手順

  1. 不正利用に気づいたら直ちにサービスのサポートに連絡する
  2. アカウントの利用停止・パスワード変更を行う
  3. 不正利用の詳細を報告する(日時、金額、取引内容)
  4. サービス提供者による調査を受ける
  5. 補償可否の決定・通知を受け取る
  6. 補償決定の場合、残高への返金またはアカウントへの補填が行われる

電子マネー・QR決済が補償対象外の場合でも、紐づけたクレジットカードや銀行口座への補償申請が可能な場合があります。両方に申請することをお勧めします。

補償対象外のケースと対処法

補償対象外となりやすいケース

  • パスワードや認証情報を自ら入力してしまった場合(フィッシング被害の多くがこれに該当)
  • アカウント管理が不十分と判断された場合
  • 届出が遅れた場合

対処法

補償対象外と言われても、状況を詳しく説明し再検討を求めることができます。また、消費生活センター(188)への相談や、紐づけ元のクレジットカード・銀行への補償申請を並行して行うことも重要です。詳しい相談先は「通報先一覧」を参照してください。


暗号資産(仮想通貨)被害の回復

暗号資産の被害回復は極めて困難です。この現実を最初にお伝えしなければなりません。しかし、それでも諦める前に取りうる対応策があります。関連する詐欺手口については「投資・暗号資産詐欺」も参照してください。

暗号資産被害の現実

取引の不可逆性
暗号資産の取引は原則として取り消しができません。一度送金すると、技術的に元に戻す方法がないのです。銀行振込のような「組み戻し」は存在しません。
匿名性の高さ
ブロックチェーン上の取引は追跡できますが、ウォレットアドレスの所有者を特定することは困難です。犯人が特定されなければ回収は不可能です。
国際的な性質
暗号資産詐欺は国境を越えて行われることが多く、海外の犯罪者に対する法的措置は極めて困難です。国際的な捜査協力には時間がかかります。
回復率の現実
暗号資産詐欺被害の回復率は5%未満とも言われています。大半のケースでは被害額を取り戻すことができません。

それでも対応すべき理由があります。対応しなければ回復率は0%です。また、警察への届出は将来の被害防止にもつながります。取引所の補償制度が適用される可能性もゼロではありません。

取引所への連絡

連絡すべき事項

  • 不正アクセス・不正送金の報告
  • 自分のアカウントの利用停止依頼
  • 送金先アドレスの情報提供(凍結依頼)
  • 取引所の補償制度の確認

国内主要取引所(bitFlyer、Coincheck、GMOコイン、bitbank、DMM Bitcoin等)の問い合わせ窓口に連絡してください。24時間対応でない場合が多いため、まずメールで連絡し、電話でフォローアップすることを推奨します。

取引所のセキュリティ上の問題による被害は補償される場合がありますが、フィッシング等の利用者側の被害は補償対象外が多いです。各取引所の利用規約をご確認ください。

追跡・回収サービスについて

Chainalysis、Elliptic等のブロックチェーン分析企業が存在し、暗号資産の流れを追跡することは技術的に可能です。取引所等で現金化された場合に特定できる可能性があります。ただし、これらは主に法執行機関や大企業向けのサービスです。

個人向けの回収サービスも存在しますが、高額な費用(数十万円〜数百万円)がかかり、成功率は非常に低いです。費用対効果を慎重に検討してください。

⚠️ 警告:「被害回復詐欺」に注意

「お金を取り戻します」と連絡してくる業者は詐欺の可能性が極めて高いです。 被害者リストを入手した詐欺師が二次被害を狙う手口です。絶対に追加の金銭を支払わないでください。 正規の回復手段は公的機関(警察、弁護士)を通じてのみ行ってください。


民事訴訟による被害回復

補償制度で回復できなかった場合、民事訴訟という選択肢があります。ただし、加害者の特定が必要であり、現実的なハードルがあります。詳しくは「フィッシング詐欺の法的対応」で解説しています。

少額訴訟の活用

少額訴訟制度は、60万円以下の金銭請求に使える簡易な訴訟手続きです。原則1回の審理で判決が出され、弁護士なしでも手続き可能です。

活用できるケース

  • 加害者が特定されている場合
  • 加害者の住所がわかる場合
  • 被害額が60万円以下の場合

手続きの流れと費用

簡易裁判所に訴状を提出します。手数料は請求額の1%程度(例:50万円の請求で5,000円)で、郵便切手代が数千円かかります。詳細は最寄りの簡易裁判所にお問い合わせください。

弁護士への相談

弁護士への相談を検討すべきケース

  • 被害額が高額(100万円以上)の場合
  • 加害者が特定されており、損害賠償請求を検討する場合
  • 補償申請が不当に拒否されたと考える場合
  • 複雑な事案で専門家の判断が必要な場合

費用の目安

  • 初回相談:無料〜1万円程度(30分〜1時間)
  • 着手金:10万円〜30万円程度
  • 成功報酬:回収額の15〜20%程度

費用対効果を検討し、被害額と回収可能性に見合うか判断が必要です。

法テラス(法律支援)の活用

収入・資産が一定以下の場合、無料法律相談や弁護士費用の立替制度を利用できます。法テラス・サポートダイヤル(0570-078374)にお問い合わせください。経済的に弁護士費用が難しい場合は、まず法テラスにご相談ください。


税務上の取り扱い

詐欺被害による損失は、一定の条件を満たせば税務上の控除を受けられる可能性があります。ただし、適用には専門的な判断が必要なため、税理士または税務署への相談をお勧めします。

雑損控除の申請

雑損控除とは、災害・盗難・横領により生活に通常必要な資産に損害を受けた場合に、所得税の控除を受けられる制度です。詐欺被害も「横領」に準じて適用される可能性があります。

適用条件の概要

  • 損害が「生活に通常必要な資産」に対するものであること
  • 損害額が一定の計算式を超えること
  • 確定申告で申請すること

必要書類の例

  • 被害届の受理証明書
  • 被害額を証明する書類(取引明細等)
  • その他税務署から求められた書類

重要な注意事項

雑損控除の適用可否は個別の状況により異なります。必ず税理士または税務署にご相談の上、申請してください。本記事は税務アドバイスではありません。


被害回復の成功事例

実際に被害を回復できた事例を紹介します。すべてのケースで同様の結果が得られるわけではありませんが、参考にしてください。

クレジットカード被害からの回復事例

事例1:早期発見で全額補償

40代会社員のAさんは、フィッシングメールから偽のECサイトに誘導され、カード情報を入力してしまいました。翌日に30万円の不正利用に気づき、即日カード会社に連絡。警察に届出を行い、フィッシングメールのスクリーンショット等の証拠を保全しました。約2ヶ月後、全額が補償されました。

成功のポイント:早期発見・早期対応、証拠の保全

事例2:SMSのスクリーンショットが決め手に

30代主婦のBさんは、SMS経由で偽の宅配サービスサイトにアクセスし、カード情報を入力しました。1週間後に50万円の不正利用を発見。カード会社に連絡し、チャージバックを申請しました。SMSのスクリーンショットを保存していたことが証拠となり、約3ヶ月後に全額返金されました。

成功のポイント:SMSのスクリーンショットを保存していた

銀行被害からの回復事例

事例1:軽過失でも75%補償

50代自営業のCさんは、銀行を装ったメールからログイン情報を詐取され、100万円が不正送金されました。即日銀行に連絡し、口座凍結を依頼。警察にも届出を行いました。推測されやすい暗証番号を使用していたため「軽過失」と判断されましたが、預金者保護法に準じた補償により75万円(75%)が補償されました。

成功のポイント:即日対応、警察への届出

事例2:振り込め詐欺救済法で一部回復

60代会社員のDさんは、フィッシング詐欺で200万円を振り込んでしまいました。警察への届出後、金融機関経由で被害回復分配金を申請。犯人の口座には一部の資金しか残っていませんでしたが、被害額200万円のうち40万円(20%)を回復できました。

成功のポイント:諦めずに申請手続きを完了させた

回復が難しかった事例から学ぶ

事例1:対応の遅れ

フィッシング被害から3ヶ月後に気づいて申請したEさんは、申請期限を過ぎていたため補償対象外となりました。

教訓:定期的な取引明細の確認が重要

事例2:証拠不足

フィッシングメールを削除してしまったFさんは、被害を証明する証拠が不十分と判断されました。

教訓:怪しいメール・サイトは削除せず、必ず証拠として保全する

事例3:暗号資産被害

暗号資産を詐取されたGさんは、取引所に連絡しましたが回復できませんでした。

教訓:暗号資産は回復が極めて困難。予防が最重要

証拠保全の重要性については「フィッシング詐欺の証拠保全」で詳しく解説しています。


二次被害に注意

フィッシング詐欺の被害者は、二次被害に遭うリスクが高いことを認識してください。「被害回復を装った詐欺」と「漏洩した個人情報の悪用」という2つのリスクに特に注意が必要です。

「被害回復詐欺」に注意

詐欺被害者のリストを入手した犯罪者が、「お金を取り戻します」と連絡してくる手口があります。弁護士、警察、金融機関、回収業者を装い、「回収のための手数料」「着手金」等の名目で金銭を要求します。支払っても回収されることはなく、さらに被害が拡大します。

見分け方

  • 突然連絡してくる(正規の機関は被害者に営業しない)
  • 先払いの手数料を要求する
  • 具体的な根拠なく「必ず取り戻せる」と断言する
  • 急がせる、決断を迫る
  • 連絡先が携帯電話のみ

⚠️ 警告

「お金を取り戻す」と連絡してくる見知らぬ相手には、絶対に金銭を支払わないでください。

被害回復は、警察、弁護士(日本弁護士連合会のWebサイトで検索可能)、金融機関の正規窓口を通じてのみ行ってください。

個人情報の悪用に注意

フィッシング詐欺で漏洩した個人情報は、犯罪者間で売買されることがあります。同じ情報を使って別の詐欺に利用される可能性があり、数ヶ月〜数年後に再び被害に遭うケースもあります。

継続的な対策

  • クレジットカードの利用明細を毎月確認する
  • 銀行口座の取引履歴を定期的にチェックする
  • 不審なメール・電話への警戒を継続する
  • 可能であればパスワードを定期的に変更する
  • 信用情報の定期的な確認(CIC、JICC、KSC)を行う

将来の被害に備えて「フィッシング詐欺とサイバー保険」の活用も検討してください。また、フィッシング詐欺の補償制度全般については「フィッシング詐欺被害の補償制度」で詳しく解説しています。


被害回復チェックリスト

被害回復に向けたアクションを時系列で整理しました。このチェックリストに従って、漏れなく対応を進めてください。

【即日対応】

  • □ 被害に気づいたらすぐにカード会社・銀行・サービス提供者に連絡
  • □ カード・口座・アカウントの利用停止
  • □ 警察に相談・被害届の提出(#9110)
  • □ 証拠の保全(メール、SMS、サイト画面等のスクリーンショット)
  • □ パスワードの変更(被害サービスおよび同じパスワードを使用していた他のサービス)

【1週間以内】

  • □ 補償申請書類の準備・提出
  • □ 必要書類の収集(本人確認書類、取引明細等)
  • □ 消費生活センターへの相談(必要に応じて)

【1ヶ月以内】

  • □ 補償申請の進捗確認
  • □ 追加書類の提出(求められた場合)
  • □ 振り込め詐欺救済法に基づく申請(該当する場合)

【継続的に】

  • □ 取引明細の定期的な確認
  • □ 不審な連絡への警戒(二次被害防止)
  • □ 税務上の取り扱いの確認(確定申告時期)

初動対応の詳細は「緊急30分対応」を参照してください。


よくある質問(FAQ)

Q: フィッシング詐欺で失ったお金は全額戻ってきますか?
A: ケースバイケースです。クレジットカードの不正利用は約60〜80%が補償対象となり、全額返金されることも多いです。銀行口座の被害は、過失の度合いにより100%、75%、または0%と分かれます。電子マネーや暗号資産は回復が難しいケースが多いです。いずれの場合も、早期に対応を開始することで回復の可能性は高まります。
Q: 補償申請の期限はいつまでですか?
A: 被害種別により異なります。クレジットカードは一般的に不正利用発生から60〜120日、銀行は速やかに(原則30日以内が推奨)、電子マネー・QR決済はサービスにより異なります。いずれも期限を過ぎると補償を受けられなくなる可能性が高いため、被害に気づいたら即日対応を開始してください。
Q: 自分にも過失がありますが、補償は受けられますか?
A: 過失の度合いによります。巧妙なフィッシング詐欺に騙されたことは、通常「重大な過失」とは判断されません。推測されやすい暗証番号の使用等は「軽過失」とされ、銀行の場合75%の補償となることがあります。暗証番号を他人に教えた場合等は「重過失」とされ補償対象外となる可能性があります。まずは申請し、カード会社・銀行の判断を仰いでください。
Q: 暗号資産の被害は取り戻せますか?
A: 現実的には非常に困難です。暗号資産の取引は技術的に取り消しができず、匿名性も高いため、回復率は5%未満とも言われます。それでも、取引所への連絡、警察への届出は行ってください。対応しなければ回復率は0%です。また、「お金を取り戻します」と連絡してくる業者は詐欺の可能性が高いため、絶対に金銭を支払わないでください。
Q: 弁護士に依頼すると費用はいくらかかりますか?
A: 初回相談は無料〜1万円程度、着手金は10万円〜30万円程度、成功報酬は回収額の15〜20%程度が目安です。被害額や回収可能性を考慮して費用対効果を検討してください。収入・資産が一定以下の場合は、法テラス(0570-078374)の無料相談や弁護士費用立替制度を利用できます。
Q: 被害回復を謳う業者から連絡がありました。信用していいですか?
A: 信用しないでください。それは「被害回復詐欺」の可能性が極めて高いです。詐欺被害者のリストを入手した犯罪者が、「お金を取り戻します」と連絡してくる手口です。絶対に金銭を支払わないでください。正規の被害回復は、警察、弁護士(日本弁護士連合会のWebサイトで検索可能)、金融機関の正規窓口を通じてのみ行ってください。
Q: 税金の控除は受けられますか?
A: 詐欺被害は「雑損控除」の対象となる可能性があります。ただし、適用には一定の条件があり、個別の状況により異なります。確定申告時に申請が必要です。詳細は税理士または最寄りの税務署にご相談ください。被害届の受理証明書や取引明細等の書類が必要になります。

重要なお知らせ

  • 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況に対する法的・税務的助言ではありません
  • 各金融機関・サービス提供者の補償内容は変更される場合があります。詳細は各社の公式情報をご確認ください
  • 実際に被害に遭われた場合は、警察(#9110)や消費生活センター(188)などの公的機関にご相談ください
  • 法的な対応が必要な場合は、弁護士などの専門家にご相談ください
  • 税務上の取り扱いについては、税理士または税務署にご相談ください
  • 記載内容は作成時点(2025年11月)の情報であり、制度や手口は変更される可能性があります

フィッシング詐欺の全体像については「フィッシング詐欺とは?2025年最新の手口から対策まで完全ガイド」をご覧ください。


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京都開発研究所

システム開発/サーバ構築・保守/技術研究

CMSの独自開発および各業務管理システム開発を行っており、 10年以上にわたり自社開発CMSにて作成してきた70,000以上のサイトを 自社で管理するサーバに保守管理する。