フィッシング詐欺被害の補償制度|銀行・カード・保険の保護範囲完全ガイド

フィッシング詐欺で騙し取られたお金は戻ってくるのか?これは被害に遭われた方が最も知りたい疑問でしょう。結論から言えば、条件を満たせば補償される可能性があります。
金融庁の統計によると、預金者保護法に基づく銀行預金の不正送金被害では約60%が補償対象となり、クレジットカードの不正利用では約85%が全額補償されています。ただし、これらの補償には申請期限があり、銀行は30日以内、クレジットカードは多くの場合60日以内に届け出る必要があります。
本記事では、フィッシング詐欺被害対応の一環として、銀行・クレジットカード・電子マネー・暗号資産それぞれの補償制度、申請手順、補償されないケース、そして補償の可能性を高めるポイントまで、実務的に解説します。被害に遭われた方は、まず緊急対応の30分を実施した上で、本記事の補償申請手順をご確認ください。
なお、フィッシング詐欺の基本知識についても併せてご確認いただくことで、今後の被害防止に役立ちます。

フィッシング詐欺被害の補償制度全体像

フィッシング詐欺による金銭被害の補償制度は、大きく3つの層に分けて理解することができます。

補償制度の3層構造

第1層:法的保護(預金者保護法等)
法律に基づく保護制度。銀行預金の不正送金被害が主な対象。条件を満たせば原則として補償される。
第2層:約款による補償(カード会社規約)
クレジットカード会社や電子マネー事業者が会員規約で定める補償制度。法的義務ではないが、多くの事業者が提供。
第3層:任意保護(サイバー保険)
企業が任意で加入するサイバー保険。個人向け補償制度でカバーされない被害や、企業の事業損害を補償。

補償制度の比較一覧

補償種別 対象 補償率 適用条件 申請期限
預金者保護法 銀行預金 原則100%(過失なし)/75%(軽過失) 銀行へ30日以内に通知 被害後2年
クレカ会員規約 クレジットカード不正利用 原則100% カード会社への通知60日以内 規約による
電子マネー PayPay、楽天ペイ等 サービス毎に異なる 各社規約参照 各社規定(30〜60日)
暗号資産 ビットコイン等 原則補償なし 取引所独自制度のみ 取引所規定
サイバー保険 企業被害全般 契約内容による 保険会社審査 保険契約期間内

重要な注意事項

補償制度について、以下の点を必ずご理解ください。

  • 補償には条件がある:無条件で全額補償されるわけではありません
  • 申請期限を過ぎると補償不可:期限は厳格に適用されます
  • 暗号資産は原則補償対象外:ブロックチェーンの非可逆性により回復困難
  • 重過失の場合は補償されない:パスワードの管理不備等

サイバー保険の詳細についてはフィッシング詐欺とサイバー保険で解説しています。


預金者保護法による補償【銀行口座被害】

銀行口座からの不正送金被害は、預金者保護法(偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律、2005年施行)および全国銀行協会の申し合わせに基づいて補償されます。

対象となる被害

預金者保護法および銀行の補償制度の対象となるフィッシング被害は以下のとおりです。

  • インターネットバンキングでの不正送金:偽サイトで入力したID・パスワードを悪用された被害
  • 偽サイトでのログイン情報窃取:銀行を装ったフィッシングサイトでの情報漏洩
  • フィッシングメール経由の認証情報流出:メールのリンクから偽サイトに誘導された被害
  • マルウェア感染による情報窃取:キーロガー等で認証情報を盗まれた被害

補償率の判定基準

補償率は、被害者の過失の程度によって判定されます。

100%補償(無過失)
以下の条件を満たす場合、原則として全額補償されます。
  • 二段階認証(ワンタイムパスワード等)を設定していた
  • 銀行が推奨するセキュリティ対策を実施していた
  • 不審メールに気づかなかったことに合理的理由がある
  • 被害発覚後、速やかに(数日以内)銀行に通知した
  • 警察への被害届を提出した
75%補償(軽過失)
以下のような軽度の過失がある場合、75%の補償となることがあります。
  • 基本的なセキュリティ対策はしていたが不十分だった
  • 二段階認証を設定していなかった
  • 被害発覚後、30日以内に銀行に通知した
  • 明らかな不注意とまでは言えない状況
補償なし(重過失)
以下のような重大な過失がある場合、補償されない可能性があります。
  • 暗証番号・パスワードをメモして財布等に保管していた
  • 同じパスワードを多数のサービスで使い回していた([パスワードリスト攻撃](/security/accounts/credential-stuffing/)のリスク)
  • 詐欺と知りながら情報を提供した
  • 被害発覚後30日以上放置した
  • 銀行からの注意喚起を無視していた

預金者保護法第5条:金融機関は、預金者の請求があったときは、当該預金者に過失がないときは全額を、当該預金者に軽過失があるときは当該預金の額の100分の75に相当する額を、当該預金者に払い戻さなければならない。

申請手順(ステップバイステップ)

銀行への補償申請は、以下の手順で進めます。

  1. 発覚後すぐに銀行のフリーダイヤルに電話(24時間対応の銀行が多い)
  2. 口座の利用停止を依頼(被害拡大防止)
  3. 警察に被害届を提出(受理番号を必ず取得)
  4. 銀行所定の「補償申請書」を入手・提出
  5. 銀行による調査(通常2週間〜1ヶ月)
  6. 補償可否の判定通知
  7. 補償金の入金(判定から1週間程度)

主要銀行の緊急連絡先

銀行名 連絡先 受付時間
三菱UFJ銀行 0120-109-005 24時間
三井住友銀行 0120-28-6079 24時間
みずほ銀行 0120-324-878 24時間
りそな銀行 0120-073-989 24時間
ゆうちょ銀行 0120-108-420 平日8:30-21:00、土日祝9:00-17:00
楽天銀行 0570-02-9910 24時間
住信SBIネット銀行 0570-00-8689 24時間
PayPay銀行 0570-02-0205 24時間
auじぶん銀行 0120-926-800 24時間
イオン銀行 0570-00-1089 9:00-21:00

※連絡先は2025年11月時点の情報です。最新情報は各銀行の公式サイトでご確認ください。

出典: 全国銀行協会「インターネット・バンキングによる預金等の不正払戻し被害と補償」、金融庁「インターネットバンキングの不正送金被害」


クレジットカード会社の補償制度

クレジットカードの不正利用被害は、カード会社の会員規約に基づく補償制度で保護されます。多くのカード会社が「盗難保険」「不正利用補償」を無料で付帯しています。

補償の特徴

クレジットカードの補償制度には、以下の特徴があります。

  • 基本的に100%補償:会員の過失がない場合、全額が補償される
  • カード会費に含まれる無料サービス:追加の保険料は不要
  • 過去60日以内の不正利用が対象:多くのカード会社の場合
  • 警察への被害届提出が必須:補償申請の必須条件

カードブランド別の補償規定比較

カードブランド 補償範囲 申請期限 必要書類 特記事項
VISA 原則全額 60日以内 被害届受理番号、申請書 ゼロライアビリティ制度
Mastercard 原則全額 60日以内 被害届受理番号、申請書 不正使用防止プログラム
JCB 原則全額 60日以内 被害届受理番号、申請書 J/Secure対応
American Express 原則全額 60日以内 被害届受理番号、申請書 オンラインプロテクション
Diners Club 原則全額 60日以内 被害届受理番号、申請書 不正使用補償

補償されないケース

以下のケースでは、クレジットカードの補償が適用されない可能性があります。

  1. カード裏面に署名がない:会員規約違反
  2. 暗証番号をカードに記載:重大な過失
  3. 家族・知人による使用:第三者による不正利用ではない
  4. 商品受領後のクレーム:詐欺ではなく取引トラブル
  5. 申請期限超過:60日を過ぎた申請
  6. 虚偽の申告:詐欺目的の申請

実際の補償事例(匿名化)

ケース1:Amazon偽装メールで3万円被害
状況:Amazonを装ったフィッシングメールからカード情報を入力。翌日に不正利用を発見。
対応:即日カード会社に連絡、警察に被害届提出。
結果:申請から2週間で全額補償。カード番号を変更して再発行。
ケース2:宅配業者偽装SMSで15万円被害
状況:宅配便の不在通知を装ったSMS([スミッシング](/security/scams/phishing/column/techniques/sms-smishing/))から偽サイトに誘導され、カード情報を入力。
対応:1週間後に明細で発見、すぐにカード会社に連絡。
結果:約1ヶ月で全額補償。
ケース3:暗証番号漏洩で50万円被害
状況:フィッシングサイトでカード番号と暗証番号を入力。ATMで現金を引き出された。
対応:2週間後に発覚、カード会社に連絡。
結果:暗証番号の入力は「重過失」と判断され、補償却下。

実務的アドバイス

  • 利用明細は毎月必ず確認:不正利用の早期発見が重要
  • 不審な利用を見つけたら即座に連絡:24時間対応の窓口へ
  • カード停止中も補償申請は可能:停止後に申請手続きを進める
  • 複数カードを持つ場合は各社に連絡:被害の有無を確認

電子マネー・QR決済サービスの補償【重要】

電子マネーやQR決済サービスは、銀行やクレジットカードより補償が限定的です。サービスごとに補償制度が異なるため、事前の確認が重要です。

サービス別の補償制度

PayPay
補償内容:原則として被害金額を補償
条件
  • 二段階認証設定済み
  • 不正利用の通知から30日以内の申請
  • 警察への届出必須
補償限度額:原則全額(ケースにより審査)
過去の補償率:約70%(PayPay公表データ)
楽天ペイ
補償内容:不正利用補償制度あり
条件
  • 二段階認証設定推奨
  • 速やかな通知
補償限度額:サービス規約に基づく
注意:チャージ済み残高は原則補償対象外
LINE Pay
補償内容:損害補償制度(原則10万円まで)
条件:利用規約遵守
補償限度額:10万円
期限:不正利用から60日以内
d払い
補償内容:不正利用被害の補償あり
条件:dアカウントの適切な管理
補償限度額:ケースにより判断
期限:発覚後速やかに届出
au PAY
補償内容:不正利用補償制度
条件:au IDの適切な管理
補償限度額:規約に基づく
期限:発覚後速やかに届出
メルペイ
補償内容:補償制度あり(条件付き)
条件:本人確認済み、規約遵守
補償限度額:ケースにより判断
期限:利用規約参照

電子マネー特有のリスク

電子マネーには、銀行やクレジットカードにはない特有のリスクがあります。

  • チャージ型は残高消失リスク:一度チャージした残高が不正利用されると回復困難
  • 即時決済のため取消困難:銀行振込のような組戻しができない
  • 補償上限額が設定されている場合が多い:高額被害は全額補償されない可能性
  • 規約が頻繁に改定される:最新の補償内容を確認する必要あり

【重要な注意】
電子マネーは銀行やクレジットカードより補償が限定的です。

  • 高額チャージは避ける
  • 二段階認証は必須設定
  • 定期的に利用履歴を確認
  • 不審な取引を発見したら即座に連絡

暗号資産(仮想通貨)の補償の現実【回復困難】

暗号資産(仮想通貨)のフィッシング被害は、原則として補償されません。これはブロックチェーン技術の特性によるものです。

回復が困難な理由

  1. 取引の非可逆性:ブロックチェーン上の取引は取り消せない
  2. 匿名性:ウォレットアドレスから犯人を特定することが困難
  3. 国際送金:海外のウォレットに送金されると法執行の限界
  4. 規制の未整備:暗号資産に対する消費者保護法制が不十分

取引所の独自補償制度

一部の暗号資産取引所は、独自の補償制度を設けています。ただし、条件が厳しく、補償額も限定的です。

取引所 補償制度 条件 限度額
bitFlyer 不正出金補償 二段階認証設定済み、規約遵守 最大500万円
Coincheck 補償制度あり 規約準拠、審査通過 ケースバイケース
bitbank 限定的 要審査 非公開
GMOコイン 制度あり 規約準拠 ケースにより判断

実際の被害事例

【匿名事例】 2024年、ある投資家がビットコイン5BTC(当時約4,000万円相当)をフィッシング詐欺で失いました。取引所を装った偽サイトでウォレットの秘密鍵を入力したところ、数分後に全額が海外のウォレットに送金されました。警察に相談しましたが、海外送金のため追跡は事実上不可能と告げられ、回収を断念しました。

暗号資産の被害防止策

暗号資産は補償がないため、予防が全てです。

  • ハードウェアウォレットの使用:秘密鍵をオフラインで管理
  • 二段階認証の徹底:取引所アカウントの保護
  • 公式サイトのブックマーク:検索結果からのアクセスを避ける
  • 少額での取引開始:被害を最小限に抑える

詳細は暗号資産・仮想通貨フィッシング詐欺で解説しています。


企業向けサイバー保険による補償

企業がフィッシング詐欺やビジネスメール詐欺(BEC)の被害に遭った場合、個人向けの補償制度は適用されません。サイバー保険への加入が重要です。

サイバー保険でカバーされる損害

  1. 直接損害:詐欺による金銭被害そのもの
  2. 対応費用:フォレンジック調査、復旧作業、専門家への相談
  3. 事業中断損害:営業停止による逸失利益
  4. 賠償責任:顧客の個人情報漏洩に対する損害賠償
  5. 風評被害対策費用:広報対応、危機管理コンサルティング

主要保険会社の比較

保険会社 商品名 年間保険料目安 補償限度額 対象企業規模
東京海上日動 サイバーリスク保険 20万円〜 1億円〜 大企業・中堅企業
損保ジャパン サイバー保険 15万円〜 5,000万円〜 中堅企業
三井住友海上 サイバープロテクター 10万円〜 3,000万円〜 中小企業対応
あいおいニッセイ同和 サイバーセキュリティ保険 10万円〜 3,000万円〜 中小企業対応
AIG損保 サイバーエッジ 30万円〜 5億円〜 グローバル企業

保険金支払いの条件

サイバー保険で補償を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 一定レベルのセキュリティ対策の実施:ファイアウォール、ウイルス対策ソフト等
  • 被害発生後の速やかな通知:保険会社への報告
  • 調査への協力:フォレンジック調査等への協力
  • 再発防止策の実施:保険会社が求める対策の実行

サイバー保険の詳細はフィッシング詐欺とサイバー保険で解説しています。


補償を受けられないケース【必読】

補償申請が却下される典型的なパターンを理解し、同様の事態を避けることが重要です。

重過失が認められるケース

補償対象外となる行動
  • パスワードをメモに書いて財布やスマホケースに保管していた
  • 「123456」「password」等の推測容易なパスワードを使用していた
  • 同じパスワードを10以上のサービスで使い回していた
  • フィッシングメールと知りながら(または疑いながら)情報を入力した
  • 二段階認証を意図的に無効化していた
  • 銀行やカード会社からのセキュリティ警告を無視していた
  • 被害に気づいて1ヶ月以上放置した

申請期限超過

各サービスの申請期限
  • クレジットカード:多くの場合60日以内
  • 銀行預金:30日以内(預金者保護法)
  • 電子マネー:30〜60日以内(サービス毎に異なる)
⚠️ 期限を1日でも過ぎると補償不可の可能性が高い

虚偽申告・詐欺目的

以下の行為は補償却下だけでなく、刑事告訴の対象となる可能性があります。

  • 自作自演の偽装被害
  • 被害額の水増し
  • 重要事実の隠蔽
  • 複数の金融機関への二重申請

補償対象外の取引

以下の被害は、フィッシング詐欺の補償制度の対象外です。

  • 投資詐欺:元本保証を謳う詐欺的投資スキーム
  • ロマンス詐欺ソーシャルエンジニアリングによる自主的な送金
  • ギャンブルサイトでの損失:本人の意思による賭博
  • 商品未着トラブル:詐欺ではない取引上の問題

補償申請の実務と必要書類

補償申請を成功させるためには、正確な手続き完全な書類準備が不可欠です。

申請ステップ(銀行の例)

【STEP1】緊急連絡(被害発覚後すぐ)

  • [ ] 銀行フリーダイヤルに電話
  • [ ] 口座番号と被害状況を報告
  • [ ] 口座の利用停止を依頼
  • [ ] 担当者名と受付番号をメモ

【STEP2】警察への届出(当日〜翌日)

  • [ ] 最寄りの警察署に出向く
  • [ ] 被害届を提出
  • [ ] 受理番号を取得(必須)
  • [ ] 調書のコピーを依頼

【STEP3】証拠保全(並行実施)

  • [ ] フィッシングメール/SMSのスクリーンショット
  • [ ] 偽サイトのURL記録
  • [ ] 取引履歴の印刷
  • [ ] 時系列メモの作成

詳細は証拠保全の方法をご確認ください。

【STEP4】補償申請書の提出(3日以内推奨)

  • [ ] 銀行所定の申請書を入手
  • [ ] 必要事項を正確に記入
  • [ ] 被害届受理番号を記載
  • [ ] 証拠書類を添付

【STEP5】銀行による調査(2週間〜1ヶ月)

  • [ ] 調査への協力
  • [ ] 追加資料提出(求められた場合)
  • [ ] 経過確認の電話

【STEP6】補償金の受領(判定後1週間)

  • [ ] 補償可否の通知受領
  • [ ] 補償金の入金確認
  • [ ] 口座の通常利用再開

必要書類一覧

書類名 入手先 必須度 備考
補償申請書 金融機関 ★★★★★ 所定様式
被害届受理番号 警察署 ★★★★★ 必須
本人確認書類 自宅 ★★★★★ 運転免許証、マイナンバーカード等
取引明細 金融機関 ★★★★☆ 3ヶ月分推奨
フィッシングメール/SMS 自身で保存 ★★★★☆ スクリーンショット可
時系列説明書 自身で作成 ★★★☆☆ A4 1枚程度
届出印 自宅 ★★★☆☆ 銀行届出印

時系列説明書のテンプレート

令和○年○月○日
○○銀行 御中

フィッシング詐欺被害の経緯説明

私は、以下の経緯でフィッシング詐欺の被害に遭いました。

【被害発生日時】令和○年○月○日 午後○時頃

【被害金額】金○○万円

【詐欺の手口】
○月○日午後○時頃、「○○銀行」を名乗るSMSを受信しました。
「お客様の口座に不正アクセスの疑いがあります」との内容で、
記載されたURLをクリックしたところ、貴行のログイン画面と
思われるページが表示されました。

口座の安全を確認するため、口座番号、暗証番号、ワンタイム
パスワードを入力しました。

その後、○月○日に口座残高を確認したところ、○○万円が
見覚えのない口座に送金されていることを発見しました。

【被害発覚後の対応】
・○月○日○時:貴行フリーダイヤルに連絡、口座凍結を依頼
・○月○日:○○警察署に被害届を提出(受理番号:○○○○)
・○月○日:本申請書を提出

【セキュリティ対策の状況】
・二段階認証:設定済み
・パスワード管理:推測困難なものを使用、他サービスと別
・ウイルス対策ソフト:○○を導入済み

以上、ご確認のほどよろしくお願いいたします。

令和○年○月○日
住所:○○県○○市○○
氏名:○○ ○○(署名・捺印)
電話:○○○-○○○○-○○○○

補償金の受領後にすべきこと

補償金を受け取った後も、再発防止と継続的な監視が重要です。

必須対応5項目

  1. セキュリティ設定の見直し

    • 二段階認証の有効化(全サービス)
    • パスワードの変更(被害を受けたサービスと同じパスワードを使用していた全サービス)
    • パスワード管理ツールの導入検討
  2. 定期監視の開始

    • 月1回の取引明細確認を習慣化
    • 不審なログイン通知の設定
    • クレジットスコア・信用情報の監視
  3. 家族への共有

    • 被害経験の共有
    • 同様の詐欺手口への警戒呼びかけ
    • 緊急連絡先の共有
  4. 関連サービスの確認

  5. 教訓の記録

    • 何が原因だったか
    • どうすれば防げたか
    • 今後の注意点

再発防止の詳細はフィッシング詐欺対策の基本5原則をご確認ください。


補償の可能性を高める5つのポイント

補償申請の成功率を高めるための実務的なポイントを解説します。

  1. 速やかな通報(24時間以内推奨)

    • 発覚後すぐに金融機関へ連絡
    • 「気づいた時間」を正確にメモ
    • 夜間・休日でも遠慮せず連絡(24時間対応の窓口へ)
  2. 徹底した証拠保全

    • メール・SMSは削除せず保存
    • スクリーンショットは日時入りで撮影
    • 通話記録も証拠になる(着信履歴等)
    • 可能ならスマホ全体のバックアップ
  3. 警察への速やかな届出

    • 「受理番号」の取得が最優先
    • 詳細な調書作成を依頼
    • 担当刑事の連絡先を確保
    • 調書のコピーを依頼
  4. 一貫性のある説明

    • 時系列を正確に整理
    • 矛盾のない説明を心がける
    • 記憶が曖昧な部分は「不明」と明記
    • 推測と事実を明確に区別
  5. 事前対策の実施履歴

    • 二段階認証設定の証明(設定画面のスクリーンショット等)
    • セキュリティソフト導入履歴
    • パスワード管理ツールの使用
    • 定期的な明細確認の習慣
      → これらは「過失なし」の証明になる

補償不可だった場合の次の手段

補償が認められなかった場合でも、諦める必要はありません。

異議申し立て

金融機関の決定に不服がある場合、以下の手段があります。

  • 金融機関への再審査請求:追加証拠を添えて再度申請
  • 金融ADR(裁判外紛争解決)
    • 全国銀行協会相談室
    • 日本クレジットカード協会
    • 生命保険協会(保険関連)
  • 弁護士会の紛争解決センター:弁護士による調停

法的手段

民事訴訟
少額訴訟:60万円以下の請求。手続きが簡易で弁護士なしでも可能。
通常訴訟:60万円超の請求。弁護士への依頼推奨。
注意:訴訟費用と勝訴可能性を慎重に検討すること。
刑事告訴
警察への被害届に加えて、刑事告訴を行うことで、犯人が検挙された場合に損害賠償を請求できる可能性があります。ただし、フィッシング詐欺の犯人は海外にいることが多く、検挙・回収は困難です。

詳細はフィッシング詐欺の法的対応をご確認ください。

税務上の対応

補償が受けられなかった場合、雑損控除の適用を検討できます。

  • 対象:詐欺による損失(一定の条件あり)
  • 控除額:損失額から総所得金額の10%を差し引いた額
  • 必要書類:被害届受理証明書、損失額の証明
  • 申請方法:確定申告時に申請

※適用可否は個別の状況により異なります。税理士にご相談ください。

金銭被害回復の詳細はフィッシング詐欺の金銭被害回復で解説しています。


よくある質問(FAQ)

Q1: 被害に遭ってから1ヶ月経ちましたが、今から補償申請できますか?
A: 金融機関や補償制度によって期限が異なります。銀行の預金者保護法は30日以内が原則、クレジットカードは60日以内が多いです。期限を過ぎていても、まずは金融機関に相談してください。事情により例外的に認められるケースもあります。ただし、早期の申請ほど補償される可能性が高いことは確かです。
Q2: 二段階認証を設定していなかったのですが、補償は受けられますか?
A: 二段階認証未設定の場合、「軽過失」と判断される可能性があります。この場合、預金者保護法では75%の補償となることがあります。ただし、他のセキュリティ対策を実施していた、速やかに通報した等の事情があれば、100%補償される場合もあります。金融機関の審査次第となります。
Q3: 家族が私のカードで被害に遭った場合も補償されますか?
A: 家族による使用は原則として補償対象外です。ただし、家族が本人の知らないうちにカード情報を盗まれて被害に遭った場合は、状況次第で補償される可能性があります。まずは正直にカード会社に相談することが重要です。
Q4: 暗号資産をフィッシング詐欺で失いましたが、補償はありますか?
A: 残念ながら、暗号資産は預金者保護法やクレジットカード補償の対象外です。一部の取引所が独自の補償制度を設けていますが、条件が厳しく補償額も限定的です。暗号資産は「補償がないもの」として扱い、予防に最大限の注意を払う必要があります。
Q5: 警察に被害届を出したくないのですが、補償は受けられますか?
A: 多くの場合、警察への被害届提出と受理番号の取得は補償の必須条件です。被害届を出さないと補償申請自体ができない金融機関がほとんどです。また、被害届は詐欺グループの検挙にも繋がるため、社会的責任としても提出が推奨されます。通報先については[フィッシング詐欺の通報先一覧](/security/scams/phishing/column/incident-response/report-authorities/)をご確認ください。
Q6: 補償金はいつ振り込まれますか?
A: 金融機関の調査に通常2週間から1ヶ月かかり、補償が認められた場合はその後1週間程度で振り込まれることが多いです。ただし、被害額が高額な場合や調査が複雑な場合は2〜3ヶ月かかることもあります。
Q7: 補償金には税金がかかりますか?
A: フィッシング詐欺の補償金は、失った金銭の回復であり所得ではないため、原則として課税されません。ただし、元金以上の金額が支払われた場合(慰謝料等)はその部分が課税対象となる可能性があります。税務については税理士にご相談ください。

重要なお知らせ

  • 本記事の情報は2025年11月時点のものです
  • 補償制度は金融機関や法改正により変更される可能性があります
  • 実際の補償申請にあたっては、必ず当該金融機関の最新規約をご確認ください
  • 本記事の情報に基づく判断により生じた損害について、当サイトは一切の責任を負いかねます
  • 個別の事案については、弁護士等の専門家にご相談されることを強くお勧めします



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京都開発研究所

システム開発/サーバ構築・保守/技術研究

CMSの独自開発および各業務管理システム開発を行っており、 10年以上にわたり自社開発CMSにて作成してきた70,000以上のサイトを 自社で管理するサーバに保守管理する。