投資/暗号資産詐欺とは?
投資/暗号資産詐欺とは、高い利益を約束して投資や暗号資産(仮想通貨)への出資を募り、金銭をだまし取るサイバー攻撃の一種です。お金・アカウントを守るために知っておくべき重要な詐欺・なりすまし手口であり、特にSNSやマッチングアプリを通じて被害が拡大しています。
この詐欺の特徴は、詐欺師が長期間かけて被害者との信頼関係を築き、最終的に大金をだまし取る点です。著名人や投資の専門家になりすましたり、魅力的な異性を装ったりしながら、「確実に儲かる」「今だけの特別な投資機会」といった甘い言葉で近づいてきます。
投資詐欺では、実在しない投資商品や、実態のない暗号資産プロジェクトへの投資を勧めます。偽の投資プラットフォームを用意し、あたかも利益が出ているように見せかけることで、被害者にさらなる投資を促します。暗号資産は取引の匿名性が高く、一度送金すると取り戻すことが極めて困難なため、詐欺師にとって格好の手段となっています。
近年特に問題となっているのが、SNS型投資詐欺とロマンス詐欺です。SNS型投資詐欺は、InstagramやFacebookなどのSNSの偽広告を通じて被害者を誘導します。著名な経済評論家や投資家、芸能人の名前や写真を無断使用し、「この投資法で資産が10倍になった」などと宣伝して、偽の投資サイトに誘い込みます。
ロマンス詐欺は、マッチングアプリやSNSで知り合った相手が恋愛感情を抱かせ、信頼関係を築いた後に投資を勧める手口です。特に「ピッグブッチャリング(豚の食肉解体)」と呼ばれる手法は、豚を太らせてから屠殺するように、長期間かけて被害者を「育て」、限界まで資金を搾り取る悪質な詐欺として国際的に問題視されています。
投資/暗号資産詐欺は、不正アクセスやフィッシングといった他のサイバー攻撃と組み合わせて使われることもあります。アカウント乗っ取り(ATO)で奪った著名人のSNSアカウントを悪用して投資詐欺の広告を出したり、偽のログインページで暗号資産取引所のアカウント情報を盗んだりする複合的な手口が確認されています。
投資/暗号資産詐欺を簡単に言うと?
投資/暗号資産詐欺を身近な例でたとえると、「絶対に当たる宝くじがある」と言って近づいてくる詐欺師のようなものです。
街中で突然、「この宝くじは必ず当たります。私も先月1000万円当てました」と声をかけられたら、誰もが怪しいと思うでしょう。しかし、インターネット上では、この怪しい話が非常に巧妙に、信じてしまうような形で仕掛けられています。
例えば、あなたが尊敬しているビジネス評論家や有名投資家の顔写真とともに、「私が推奨する投資法」という広告がSNSに表示されたとします。その人の名前を知っているだけで、「本物かもしれない」と思ってしまいます。しかし実際には、その著名人とは全く関係のない詐欺師が、勝手に名前と写真を使っているのです。
ロマンス詐欺は、さらに巧妙です。マッチングアプリで知り合った魅力的な異性が、数週間から数ヶ月かけて親身になって相談に乗ってくれる。そんな関係性ができた頃に、「実は私、投資で成功していて、あなたにも教えたい」と持ちかけます。これは、友人から「儲かる話がある」と誘われるのに似ていますが、その「友人」は実は最初から詐欺が目的で近づいてきた赤の他の人なのです。
豚の食肉解体(ピッグブッチャリング)という名前の詐欺は、まさにこの「長期戦」の例です。畜産業で豚を飼育する際、すぐに出荷せず、餌を与えて十分に太らせてから出荷する方が利益が大きくなります。詐欺師も同じように、すぐに騙すのではなく、時間をかけて被害者の資産状況を把握し、信頼を得て、「もう少し投資できるはず」と限界まで資金を引き出してから姿を消すのです。
偽の投資プラットフォームは、本物そっくりに作られた「偽物の銀行」のようなものです。あなたがお金を預けると、画面上では「残高が増えています」「利益が出ています」と表示されます。しかし、それは単なる数字の表示で、実際のお金は詐欺師の懐に入っており、引き出そうとした瞬間に「追加手数料が必要」などと言われ、さらに金銭を要求されるか、サイトごと消えてしまいます。
このように、投資/暗号資産詐欺は「うまい話には裏がある」という古典的な詐欺の原則が、インターネットという舞台で、より巧妙に、より大規模に展開されているのです。
投資/暗号資産詐欺の現状
2024年から2025年にかけて、投資/暗号資産詐欺の被害は世界的に急増しており、日本でも深刻な状況となっています。最新のデータから、この脅威の規模と深刻さが明らかになっています。
日本における被害状況は極めて深刻です。警察庁の発表によると、2024年1月から9月までのSNS型投資詐欺の被害額は703億4千万円に達しました。これは前年同期比で4.7倍という驚異的な増加率です。1件あたりの平均被害額は約1,381万円と非常に高額で、被害者は50代から70代が全体の67.4%を占めています。
さらに、恋愛感情を利用するロマンス詐欺の被害額は、2024年1月から9月で271億円となり、前年同期比で約2.4倍に増加しています。SNS型投資詐欺とロマンス詐欺を合わせた被害額は、2024年通年(暫定値)で1,268億円に達し、従来の特殊詐欺(721億5千万円)を大きく上回る過去最悪の被害規模となりました。
世界的な状況も同様に深刻です。米FBIの調査によると、2024年にアメリカで報告された暗号資産関連の詐欺による損失は93億ドル(約1兆3,020億円)に上り、前年比で66%も増加しました。苦情件数は15万件近くに達し、投資詐欺が最も多い手口となっています。
特に注目すべきは、高齢者層の被害が突出している点です。アメリカでは60歳以上の個人が報告した暗号資産関連犯罪による損失額は28億ドル(約3,920億円)で、どの年齢層よりも高く、2023年の16億5,000万ドル、2022年の10億8,000万ドルから急増しています。日本でも同様の傾向が見られ、デジタル技術に不慣れな高齢者が主なターゲットとなっています。
ブロックチェーン分析企業のチェイナリシスによると、2024年の暗号資産詐欺による収益は少なくとも99億ドル(約1.5兆円)で、より多くのデータが収集されれば過去最高の124億ドル(約1.8兆円)に達する可能性があるとされています。暗号資産詐欺活動は2020年以降、毎年平均24%増加し続けています。
ピッグブッチャリング詐欺の規模も衝撃的です。テキサス大学の研究によると、2020年1月から2024年2月までに、この手口だけで少なくとも753億ドル(約11兆円)が詐欺犯罪ネットワークによって暗号資産取引所に移されたことが判明しています。米国平和研究所の推定では、世界中で最大30万人がこうした犯罪グループによって強制的に詐欺行為を働かされており、2023年末時点で年間約640億ドルが盗まれていると見られています。
詐欺の手口も年々巧妙化しています。生成AI(人工知能)の悪用が新たな脅威として浮上しており、詐欺師はAIを使って魅力的な人物の画像を生成したり、自然な会話を作り出したりしています。AIは詐欺を「指数関数的に拡大させる可能性がある」とチェイナリシスは警告しています。
SNSでの接触経路も多様化しています。日本では、被害者を誘う広告で悪用されたSNSやサイトは、Instagramが29.8%で最も多く、Facebook(17.5%)、投資サイト(14.3%)が続きます。2024年の傾向として、1月から4月には著名人になりすました偽広告を入口とする事案が急増しましたが、7月以降はInstagramなどのダイレクトメッセージで接触した後、LINEでのやり取りに移る事案が目立つようになりました。
ロマンス詐欺では、マッチングアプリを通じて知り合うケースが3割を超えています。詐欺師は魅力的な人物を装い、数週間から数ヶ月かけて信頼関係を築いた後、暗号資産への投資を勧めます。
暗号資産ATMも新たな詐欺の温床となっています。犯罪者は政府関係者やカスタマーサポート担当者を装い、被害者に現金をATMに入金させ、その場で暗号資産に交換して送金させる手口が確認されています。
インターネットバンキングの普及も被害拡大の一因です。非対面で高額送金が可能になったため、従来の金融機関窓口での被害防止策が通用しなくなりました。警察庁の調査では、特殊詐欺のうち500万円以上を振り込ませた事案の60.6%がネット送金で、被害額の67.3%を占めています。
警察庁は2024年1月から「オペレーション・レベルアップ」という取り組みを開始し、数千人の暗号資産投資詐欺被害者を特定して、推定2億8,500万ドル(約400億円)の損失を未然に防ぎました。しかし、それでも被害は増加し続けており、詐欺グループの手口の変化も継続的に観察されています。
このように、投資/暗号資産詐欺は規模、手口の巧妙さ、被害額のいずれにおいても深刻化の一途をたどっており、社会全体での対策が急務となっています。
投資/暗号資産詐欺で発生する被害は?
投資/暗号資産詐欺によって発生する被害は、金銭的損失だけでなく、被害者の人生に深刻な影響を与えます。この被害は直接的なものと間接的なものに分けられ、その影響は長期間にわたって続きます。お金・アカウントを守ることの重要性は、この被害の深刻さからも明らかです。
詐欺師は様々な手口を組み合わせて被害者に近づきます。ソーシャルエンジニアリングで心理的な隙をつき、フィッシングで個人情報を盗み、最終的に投資詐欺で大金をだまし取るという、複数の攻撃手法を連携させた巧妙な犯罪です。
被害者の多くは、自分が詐欺に遭っていることに気づかないまま、繰り返し送金してしまいます。詐欺師は「もう少し投資すれば大きな利益が得られる」「今引き出すと損をする」「手数料を払えば全額返金される」などと巧みに言葉をかけ、被害者が冷静な判断をできない状況に追い込みます。
投資/暗号資産詐欺で発生する直接的被害
投資/暗号資産詐欺の直接的被害は、被害者の生活基盤そのものを破壊する深刻なものです。
最も明白な直接的被害は、金銭の喪失です。平均被害額は1件あたり1,381万円と非常に高額で、中には数千万円から億単位の被害に遭うケースもあります。多くの被害者が老後の蓄え、子供の教育資金、住宅購入のための貯金など、人生をかけて貯めた資金を失っています。暗号資産での送金は銀行振込と異なり、一度送金すると取り消しができず、詐欺師を特定することも極めて困難なため、資金を取り戻せる可能性はほとんどありません。日本では、警察に被害届を出しても、国際的な犯罪組織が関与しているケースが多く、犯人の特定や逮捕に至らないことがほとんどです。
アカウント情報の窃取も深刻な直接的被害です。詐欺師は投資を勧める過程で、「本人確認のため」「口座開設のため」と称して、運転免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書の写真、銀行口座情報、暗号資産取引所のログイン情報などを要求します。これらの情報が詐欺師の手に渡ると、アカウント乗っ取り(ATO)や不正アクセスに悪用され、さらなる被害につながります。特に暗号資産取引所のアカウント情報が盗まれると、保管していた暗号資産が全て盗まれる可能性があります。また、盗まれた個人情報は、犯罪組織間で売買され、別の詐欺や犯罪に使われることもあります。
二次被害・追い詐欺のリスクも高まります。一度詐欺に遭った被害者のリストは、詐欺グループ間で共有されることがあります。詐欺師は「被害を回復できます」と装って再び接近し、弁護士や消費者センター職員を名乗って「手数料を払えば返金手続きができる」と嘘をつき、さらに金銭をだまし取ります。また、「別の投資で損失を取り戻せる」と持ちかけて、再び投資詐欺に誘い込むケースもあります。被害者は藁にもすがる思いで信じてしまい、被害が拡大します。
投資/暗号資産詐欺で発生する間接的被害
金銭的損失以上に深刻なのが、被害者の心と生活に及ぼす間接的被害です。
精神的苦痛と健康被害は、多くの被害者が経験する深刻な問題です。大金を失ったショック、詐欺に気づいた時の絶望感、自分を責める気持ちなどから、うつ病、不安障害、不眠症などの精神疾患を発症する被害者が少なくありません。ロマンス詐欺の場合は、金銭的損失に加えて、信頼していた相手に裏切られたという心の傷も深く、立ち直るまでに長い時間がかかります。アメリカのFBIの報告では、2024年の取り組みで42人の被害者が自殺防止のための支援機関につなげられており、詐欺被害が生命に関わる深刻な事態を招くこともあることが示されています。高齢者の場合、詐欺被害のストレスが認知機能の低下や身体疾患の悪化につながることもあります。
家族関係の破綻も重大な間接的被害です。多額の資金を失ったことを家族に打ち明けられず、一人で抱え込む被害者は少なくありません。ロマンス詐欺では、家族が「それは詐欺だ」と警告しても、「この人だけは本物」と信じ込んで聞き入れず、家族との関係が悪化します。詐欺が発覚した後も、「なぜそんな話を信じたのか」「なぜ相談しなかったのか」と家族から責められ、関係修復が困難になるケースがあります。配偶者に内緒で老後資金を失った場合、離婚に至ることもあります。また、子供の教育資金や住宅ローンの返済資金を失った場合、家族全体の生活設計が崩壊してしまいます。
社会的信用の失墜と孤立も深刻です。詐欺被害に遭ったことを知られると、「だまされやすい人」「判断力がない人」というレッテルを貼られることを恐れ、被害を隠そうとする人がいます。その結果、警察への被害届も出さず、誰にも相談できないまま孤立してしまいます。特に高齢者の場合、「認知症が始まったのでは」と疑われることを恐れて、家族にも相談できないことがあります。ロマンス詐欺の被害者は、「恋愛詐欺に引っかかるなんて恥ずかしい」という気持ちから、周囲に打ち明けられず、心の傷を抱えたまま過ごすことになります。職場で詐欺被害が知られた場合、信用を失い、人間関係に影響が出ることもあります。
経済的困窮と生活の破綻も避けられません。老後資金を失った高齢者は、年金だけでは生活できず、生活保護を受けざるを得なくなるケースがあります。住宅ローンや借金の返済ができなくなり、自己破産に追い込まれる人もいます。子供の進学を断念せざるを得なくなったり、自宅を売却せざるを得なくなったりと、人生設計が根底から崩れてしまいます。特に、詐欺被害を取り戻そうとして新たに借金をしてしまい、多重債務に陥るケースは深刻です。一度詐欺に遭った人が、「この投資で取り戻せる」という別の詐欺にも引っかかり、被害が雪だるま式に増えていくこともあります。
投資/暗号資産詐欺の見分け方と対策
投資/暗号資産詐欺から身を守るには、詐欺の特徴を知り、適切な対策を講じることが重要です。ここでは、非IT技術者の方にも分かりやすく、実践的な見分け方と対策を解説します。
まず最も重要なのは、「うまい話には必ず裏がある」という原則を忘れないことです。「確実に儲かる」「元本保証で高利回り」「今だけの特別な投資機会」といった甘い言葉は、すべて詐欺の常套句だと認識しましょう。正当な投資には必ずリスクが伴い、リスクなしで高い利益を得られることはありません。
詐欺の警告サインを知ることも重要です。SNSやマッチングアプリで知り合ったばかりの相手が投資の話を持ち出してきたら、まず疑うべきです。特に、最初は日常的な会話をしていたのに、ある程度親しくなった頃に突然「実は投資で成功していて…」と切り出されたら、ピッグブッチャリング詐欺の可能性が高いです。
著名人の名前や写真を使った投資広告も要注意です。有名な経済評論家、実業家、芸能人などが「推奨している」という投資情報は、本人の許可なく名前と写真が悪用されているケースがほとんどです。気になる場合は、その著名人の公式ウェブサイトやSNSアカウントで事実確認をしましょう。本物であれば、公式な場所で発信しているはずです。
投資プラットフォームやアプリの安全性も確認が必要です。日本で暗号資産の取引を行う事業者は、金融庁への登録が義務付けられています。金融庁のウェブサイトには登録業者一覧が公開されているので、利用前に必ず確認しましょう。登録のない業者を通じた取引は、詐欺のリスクが極めて高いです。また、「このアプリを使えば簡単に稼げる」と特定のアプリのダウンロードを勧められた場合、そのアプリ自体が詐欺目的で作られた偽物の可能性があります。
送金を急がせる行為も典型的な詐欺の手口です。「今日中に入金しないとチャンスを逃す」「限定〇名様」「あと〇時間で締切」など、焦らせて冷静な判断をさせないようにするのは、詐欺師の常套手段です。正当な投資機会であれば、じっくり考える時間を与えてくれるはずです。
個人情報の要求にも注意が必要です。投資を始める前に、運転免許証やマイナンバーカードの写真、銀行口座情報、暗号資産取引所のログイン情報などを求められることがありますが、正規の金融機関以外に提供してはいけません。特に、SNSやメッセージアプリで知り合った相手に、このような情報を渡すのは絶対に避けましょう。
実践的な対策として、まず情報収集と確認を徹底することが重要です。投資話を持ちかけられたら、その場で決断せず、必ず時間を置いて冷静に考えましょう。家族や信頼できる友人、専門家に相談することも効果的です。第三者の客観的な意見を聞くことで、詐欺かどうか見極めやすくなります。
金融機関や消費者センターへの確認も有効です。怪しいと感じたら、最寄りの消費生活センター(消費者ホットライン188)、警察の相談窓口(#9110)、金融庁の金融サービス利用者相談室などに相談しましょう。特に暗号資産に関する投資話については、金融庁に登録されている業者かどうかの確認が必須です。
SNSやマッチングアプリでの行動にも注意が必要です。知らない人からの友達申請やメッセージには安易に応じないこと、プロフィール写真が美男美女すぎる場合は警戒すること、間違いを装ったメッセージ(「久しぶり」「覚えてる?」など)には返信しないことが基本です。もし返信してしまい、親しくなった相手が投資の話を始めたら、その時点で関係を断つべきです。
暗号資産の取り扱いには特に慎重になりましょう。暗号資産は一度送金すると取り消せず、匿名性が高いため詐欺師の追跡が困難です。知人以外から「この暗号資産取引所に送金して」と言われたら、ほぼ間違いなく詐欺です。また、暗号資産ATMでの送金を指示された場合も、詐欺の可能性が非常に高いです。
家族間でのコミュニケーションも重要な対策です。特に高齢の家族がいる場合、投資詐欺について話し合い、「怪しい投資話が来たら必ず相談する」というルールを作っておきましょう。ロマンス詐欺に遭っている人は、詐欺だと指摘されても認めたがらない傾向があるため、強く反対するだけでなく、寄り添って話を聞く姿勢も大切です。
インターネットバンキングを利用している場合は、送金限度額の設定を見直しましょう。高額な送金が必要ない場合は、1日あたりの送金限度額を低めに設定しておくことで、万が一詐欺に遭った場合の被害を最小限に抑えられます。
教育と意識向上も長期的な対策として重要です。警察庁や消費者庁、金融庁などが発信する詐欺に関する最新情報を定期的にチェックし、新しい手口について学ぶことで、被害を未然に防ぐことができます。
万が一詐欺に遭ってしまったら、すぐに警察に被害届を出し、金融機関や暗号資産取引所にも連絡しましょう。被害を取り戻せる可能性は低いですが、早期の対応が重要です。また、「被害回復」を謳う二次詐欺にも警戒が必要です。
投資/暗号資産詐欺の対策を簡単に言うと?
投資/暗号資産詐欺の対策を日常生活に置き換えて考えてみましょう。
これは、知らない人から「おいしい儲け話」を持ちかけられた時の対応に似ています。
道端で突然、「この袋の中には100万円入っています。今すぐ10万円払えば、この袋を差し上げます」と声をかけられたら、誰もが「怪しい」と思うでしょう。しかし、この声をかけてくる人が、数週間前から毎日顔を合わせて挨拶をしてくれる「良い人」だったらどうでしょうか。あるいは、尊敬している有名人の顔写真付きで「私も買いました」と書かれたチラシを持っていたら、少し信じてしまうかもしれません。
投資詐欺は、まさにこの「信頼関係の悪用」です。対策の基本は、「どれだけ親しくなっても、お金の話が出たら一度立ち止まる」ことです。
レストランに例えると分かりやすいかもしれません。新しいレストランに行く前、あなたは何を確認しますか?メニューの価格、お店の評判、衛生管理の状態などを確かめるはずです。それと同じように、投資の話が来たら、「このお店(投資先)は本当に存在するのか」「他のお客さん(投資家)の評判はどうか」「保健所(金融庁)の許可は得ているか」を確認する必要があります。
特に重要なのは、「家族や友人に相談する」ことです。恋に落ちている時は周りが見えなくなる、というのと同じで、投資で儲かると思い込んでいる時も冷静な判断ができません。第三者の目があることで、詐欺を見抜ける可能性が高まります。
「急がせる」のも詐欺の特徴です。本当に良い商品なら、「今日中に決めないと」と急がせる必要はありません。レストランで「今すぐ注文しないと料理を作らない」と言われることはないのと同じです。
このように、投資詐欺対策は特別な知識がなくても、日常的な「用心深さ」と「確認の習慣」で実践できるものです。
投資/暗号資産詐欺に関連した攻撃手法
投資/暗号資産詐欺は、他の詐欺・なりすまし手法と密接に関連しながら実行されます。ここでは特に関連性の高い3つの攻撃手法について解説します。
ロマンス詐欺との関連
投資/暗号資産詐欺とロマンス詐欺は、しばしば一体となって実行されます。実際、ロマンス詐欺の最終目的の多くが暗号資産への投資勧誘です。
ロマンス詐欺では、詐欺師がマッチングアプリやSNSで魅力的な異性を装い、恋愛感情を抱かせます。数週間から数ヶ月かけて信頼関係を築いた後、「実は暗号資産の投資で成功していて、あなたにも教えたい」「一緒に投資して将来の資金を作ろう」などと持ちかけます。恋愛感情があるため、被害者は疑うことなく投資話を受け入れてしまいます。
ピッグブッチャリング詐欺は、まさにこの手法の典型例です。詐欺師は恋人を装い、日常的な会話を重ねながら、被害者の資産状況を探ります。十分な信頼関係ができたと判断すると、少額の投資から始めさせ、「利益が出た」と偽の報告をして、徐々に投資額を増やしていきます。最終的に、被害者が持っている資産を限界まで投資させた後、連絡を絶ちます。
この手法の特徴は、被害者が詐欺だと気づきにくい点です。恋愛感情があるため、周囲から「それは詐欺だ」と指摘されても、「この人だけは本物」と信じ込んでしまいます。家族との関係が悪化するケースも多く、孤立した被害者はますます詐欺師に依存してしまいます。
対策としては、オンラインで知り合った相手が投資の話を持ち出した時点で、関係を見直すべきです。本当に相手を思っているなら、リスクのある投資を勧めることはありません。また、会ったことがない相手にお金を送ることは絶対に避けるべきです。
フィッシングとの関連
投資/暗号資産詐欺では、フィッシングが情報窃取の手段として頻繁に使われます。
典型的な手口は、詐欺師が偽の暗号資産取引所のログインページを用意し、被害者を誘導するものです。本物そっくりに作られた偽サイトで、被害者がメールアドレスとパスワードを入力すると、その情報が詐欺師に盗まれます。盗まれたログイン情報を使って、詐欺師は本物の取引所にログインし、被害者の暗号資産を全て盗み出します。
また、「本人確認が必要」「セキュリティ強化のため」などと称して、偽のメールを送り、リンクをクリックさせる手口もあります。リンク先は本物の取引所を装った偽サイトで、そこで入力した情報が全て盗まれます。
SMS(ショートメッセージ)を使ったスミッシングも増えています。「あなたのアカウントに不正アクセスがありました。すぐに確認してください」などのメッセージとともに、偽サイトへのリンクが送られてきます。焦った被害者がリンクをクリックしてログイン情報を入力すると、アカウントが乗っ取られます。
対策としては、メールやSMSのリンクを安易にクリックしないこと、ログインは必ず公式アプリや、ブックマークしておいた公式サイトから行うこと、二要素認証(2FA)を必ず設定することが重要です。
ソーシャルエンジニアリングとの関連
投資/暗号資産詐欺は、ソーシャルエンジニアリングの技術を駆使して実行されます。
ソーシャルエンジニアリングとは、人間の心理的な隙や行動のミスにつけ込んで情報を入手したり、特定の行動をとらせたりする手法です。投資詐欺では、以下のような心理テクニックが使われます。
権威性の悪用では、著名な投資家や経済評論家の名前を騙り、「この人が推奨しているなら安心」と思わせます。社会的証明では、「すでに多くの人が利益を得ています」「あなたの友人の○○さんも参加しています」などと言って、信頼性を演出します。
希少性の原理も頻繁に使われます。「今だけの限定募集」「あと〇名で締切」などと言って、「今決断しないとチャンスを逃す」という焦りを生み出します。返報性の原理では、最初に無料の投資情報や少額のプレゼントを提供し、「何かお返しをしなければ」という心理を利用します。
一貫性の原理も巧妙です。最初に少額の投資をさせ、「もうここまで投資したのだから、続けないと損」という心理に陥らせます。親近感の構築では、共通の趣味や出身地の話題で親しくなり、警戒心を解きます。
これらのテクニックは、ピッグブッチャリング詐欺で特に効果的に使われます。詐欺師は被害者の心理を読み取り、その人に最も効果的なアプローチを選びます。
対策としては、こうした心理テクニックが存在することを知り、「焦らされている」「権威に頼っている」と感じたら一度立ち止まることです。また、決断前に必ず第三者に相談し、客観的な意見を聞くことが重要です。
投資/暗号資産詐欺のよくある質問
- SNSで知り合った人から投資を勧められましたが、詐欺でしょうか?
- SNSやマッチングアプリで知り合ったばかりの相手が投資を勧めてくる場合、詐欺の可能性が非常に高いです。特に、最初は日常的な会話をしていたのに、親しくなった頃に突然「実は投資で成功していて…」と切り出されるのは、ピッグブッチャリング詐欺の典型的な手口です。正当な投資家や金融の専門家が、SNSで知らない人に個別に投資を勧めることはありません。もし既に個人情報を教えてしまった場合は、それ以上の情報提供を止め、金銭の要求があっても絶対に応じないでください。すでに送金してしまった場合は、すぐに警察に相談しましょう。恋愛感情が芽生えている場合でも、お金の話が出た時点で詐欺を疑うべきです。
- 著名人が推奨している投資広告は信用できますか?
- SNSに表示される著名人の顔写真付き投資広告のほとんどは、本人の許可なく名前と写真が悪用されている詐欺です。実際、多くの著名人が「このような投資を推奨したことはない」と公式に否定しています。本物かどうか確認するには、その著名人の公式ウェブサイトや公式SNSアカウントをチェックしてください。本当に投資を推奨している場合は、公式な場所で発信しているはずです。また、クリックした先の投資サイトが金融庁に登録されている業者かどうかも確認しましょう。登録業者でない場合、詐欺である可能性が極めて高いです。有名人の名前を使った広告だからといって安心せず、必ず裏付けを取ることが重要です。
- 暗号資産の投資は全て危険なのですか?
- 暗号資産自体は合法的な金融商品であり、適切に運用すれば投資対象となり得ます。しかし、高い匿名性と取引の不可逆性から、詐欺に悪用されやすいのも事実です。安全に暗号資産投資を行うには、金融庁に登録された暗号資産交換業者を利用することが必須です。金融庁のウェブサイトで登録業者一覧を確認できます。未登録の業者や、個人間での直接取引は避けるべきです。また、「確実に儲かる」「元本保証」などと謳う投資話は全て詐欺です。暗号資産は価格変動が激しく、投資にはリスクが伴います。自分で十分に調査し、理解した上で、余剰資金の範囲内で投資することが基本です。知人や SNSで知り合った人の勧めで安易に始めるのは危険です。
- 既に投資してしまいましたが、お金は取り戻せますか?
- 残念ながら、暗号資産詐欺で失ったお金を取り戻すのは極めて困難です。暗号資産の送金は銀行振込と異なり取り消しができず、犯人の多くが海外にいて特定も困難です。しかし、諦めずに以下の対応を取りましょう。まず、すぐに警察に被害届を出してください。捜査に役立つ情報(詐欺師とのやり取りの記録、送金履歴など)は全て保存しておきます。暗号資産を送金した取引所にも連絡し、口座の凍結を依頼します。消費生活センター(188)や、弁護士にも相談しましょう。ただし、「被害金を取り戻せます」と接触してくる業者は、二次詐欺の可能性が高いので注意してください。正規の弁護士や消費者センター以外に、追加の費用を払って被害回復を依頼するのは避けるべきです。早期の相談と対応が重要です。
- 家族が投資詐欺に遭っているようですが、どうすればいいですか?
- 家族が詐欺に遭っている場合、強く反対するだけでは逆効果になることがあります。特にロマンス詐欺では、「この人だけは本物」と信じ込んでおり、詐欺だと指摘されると家族との関係が悪化し、ますます詐欺師に依存してしまいます。対応のポイントは、感情的に否定せず、寄り添って話を聞く姿勢を持つことです。「どんな人?」「どんな投資内容?」と質問し、一緒に調べることを提案しましょう。投資先が金融庁に登録されているか、著名人の名前が使われている場合は本人の公式情報と照合するなど、客観的な事実確認を一緒に行います。それでも聞き入れない場合は、消費生活センターや警察に相談し、専門家のアドバイスを求めましょう。高額な送金を止めるため、銀行口座やインターネットバンキングの送金限度額を制限することも検討してください。何より、孤立させないことが重要です。
- マッチングアプリで知り合った相手は本物か詐欺師かどう見分けられますか?
- マッチングアプリでの詐欺師には共通の特徴があります。プロフィール写真が美男美女すぎる、モデルのような写真を使っている場合は要注意です(盗用された写真の可能性が高い)。メッセージのやり取りを早々にLINEやWhatsAppなどの別のアプリに移そうとします。会おうと提案しても、「仕事で海外にいる」「親の介護で会えない」など、様々な理由をつけて実際には会いません。プロフィールに投資や暗号資産の話題が多い、または会話の中で頻繁にお金や投資の話が出てきます。数週間から数ヶ月親しくなった後、突然「投資で成功している」と言い出し、投資を勧めてきます。こうした特徴が複数当てはまる場合、詐欺の可能性が非常に高いです。何より、実際に会ったことがない相手にお金を送ることは絶対に避けてください。
- 詐欺に遭わないために普段から気をつけることは何ですか?
- 日常的に実践できる予防策として、まず情報収集の習慣をつけることが重要です。警察庁や消費者庁が発信する詐欺に関する最新情報を定期的にチェックし、新しい手口を知っておきましょう。SNSでは、知らない人からの友達申請やメッセージに安易に応じないこと、プライバシー設定を見直して個人情報の公開範囲を制限することが基本です。投資に関しては、「確実に儲かる」「元本保証で高利回り」などの謳い文句は全て詐欺だと認識しましょう。金融商品を購入する前に、必ず金融庁の登録業者かどうか確認する習慣をつけてください。家族や友人との定期的なコミュニケーションも重要です。「怪しい投資話が来たら相談する」というルールを作っておくことで、詐欺を未然に防げます。また、インターネットバンキングの送金限度額を必要最小限に設定しておくことで、万が一の被害を最小限に抑えられます。最も大切なのは、「うまい話には裏がある」という健全な疑いの心を持ち続けることです。
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