セキュア開発(SSDLC)を初心者でも分かりやすく解説

ソフトウェア開発後にセキュリティの穴が見つかったら、修正コストは最大100倍に膨れ上がります。2024年、日本国内では587件のサイバー攻撃被害が公表され、その36.3%が開発段階のセキュリティ対策不足に起因する二次被害でした。ランサムウェア攻撃を受けた組織の平均被害額は2.2億円、業務停止期間は平均10.2日に達しています。セキュア開発(SSDLC)は、こうした被害を防ぐための開発手法です。この記事では、開発の全工程でセキュリティを組み込む方法を、非IT技術者にも分かりやすく解説します。

セキュア開発(SSDLC)とは?サイバー攻撃を防ぐルールと備え

セキュア開発(SSDLC)とは、ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)のすべての段階でセキュリティを組み込む開発手法のことです。SSDLCは「Secure Software Development Life Cycle(セキュア・ソフトウェア・デベロップメント・ライフサイクル)」の略称で、「セキュアSDLC」や「セキュアな開発ライフサイクル」とも呼ばれています。サイバー攻撃に対するルールと備えとして、企業のセキュリティ対策の中核をなす重要な取り組みです。

従来のソフトウェア開発では、開発が完了した後の最終段階でセキュリティチェックを行うことが一般的でした。しかし、この方法では脆弱性が見つかった場合、修正に多大な時間とコストがかかってしまいます。セキュア開発(SSDLC)では、企画・設計・開発・テスト・リリース・運用というソフトウェア開発のすべての工程で、継続的にセキュリティ対策を実施します。

セキュア開発(SSDLC)は、開発の上流工程からセキュリティを考慮することで、脆弱性を早期に発見・修正し、より安全なソフトウェアを効率的に提供することを目的としています。DevSecOpsと密接に関連しており、開発(Development)、セキュリティ(Security)、運用(Operations)の各チームが協力してセキュリティを確保する文化的な取り組みとも連携します。

セキュア開発(SSDLC)を簡単に言うと?

セキュア開発(SSDLC)を家づくりに例えると、「建物が完成してから耐震チェックをする」のではなく、「設計図の段階から耐震性を考え、基礎工事・建築・仕上げのすべての段階で強度を確認しながら建てる」ような方法です。

通常の家づくりでは、すべて建て終わってから「この家は地震に弱いですね」と言われても、建て直すか大規模な補強工事が必要になってしまいます。それと同じように、ソフトウェアも完成してから「このシステムにはセキュリティの穴がありますよ」と言われても、最初から作り直すような大きな手戻りが発生します。

セキュア開発(SSDLC)では、家づくりの最初の設計図の段階から「どこに泥棒が侵入しそうか」「どの部分が壊されやすいか」を考え、建築中も「この壁の強度は大丈夫か」「この窓の鍵は安全か」を確認しながら進めます。このように、最初から最後まで安全性を考え続けることで、丈夫で安心な家=セキュアなソフトウェアを効率的に作ることができるのです。

セキュア開発(SSDLC)の現状

2024年、日本国内では587件ものサイバー攻撃被害が公表されており、1日平均1.7件の被害が発生している状況です。特に注目すべきは、全体の36.3%にあたる213件が他組織で発生したサイバー攻撃による二次被害だったという点です。これは、開発段階でのセキュリティ対策不足が、取引先や顧客を含む広範囲な被害につながることを示しています。

トレンドマイクロとCIO Loungeが実施した調査によると、過去3年間のサイバー攻撃による累計被害額は平均1.7億円に達し、ランサムウェア攻撃を受けた組織では平均2.2億円にも上ります。業務停止期間も平均6.1日、ランサムウェア攻撃では平均10.2日と長期化しており、開発段階でのセキュリティ対策の重要性が一層高まっています。

また、日本の組織におけるパッチ適用に要する平均時間(MTTP)は36.4日と、全体平均の1.2倍に相当する長さです。この遅れは、ソフトウェア開発プロセスにおけるセキュリティ対応の体制不足を示唆しており、セキュア開発(SSDLC)の導入が急務となっています。

2025年のDevSecOps動向では、AI技術を活用したセキュリティテストの自動化が進展し、「シフトレフト」から「シフトエブリウェア」への移行が進んでいます。これは、開発の初期段階だけでなく、すべての段階で適切なセキュリティツールを適用する考え方で、セキュア開発(SSDLC)の成熟度がさらに高まっていることを示しています。

ソフトウェアサプライチェーンのリスクも深刻化しており、2024年には依存関係の脆弱性やCVE IDのないリスク(悪意のあるパッケージなど)が前年比約2倍に増加しました。このような状況下で、開発プロセス全体を通じたセキュリティ対策の実装が、企業のサイバーレジリエンス向上の鍵となっています。

セキュア開発(SSDLC)で発生する被害は?

セキュア開発(SSDLC)を実施しない場合、つまり開発プロセスにおいてセキュリティ対策が不十分な場合、多様な被害が発生します。これらの被害は、開発したソフトウェアに脆弱性が残ったまま運用されることで引き起こされます。

セキュア開発(SSDLC)を怠ることで発生する直接的被害

システムへの不正アクセスとデータ漏洩
開発段階でのセキュリティ対策不足により、SQLインジェクションやXSS(クロスサイトスクリプティング)などの脆弱性がソフトウェアに残存します。これらの脆弱性を攻撃者に悪用されると、顧客情報や機密データが外部に漏洩する事態が発生します。2024年の国内事例では、個人情報漏洩を伴う二次被害が213件発生しており、委託先のシステム開発におけるセキュリティ不備が委託元の信頼喪失につながっています。

ランサムウェア攻撃による業務停止
セキュア開発(SSDLC)が実施されていないシステムは、認証機能の不備やアクセス制御の欠陥を抱えやすく、ランサムウェア攻撃の標的になりやすい状況です。2024年には国内で84件のランサムウェア被害が公表され、平均10.2日間の業務停止と平均2.2億円の被害額が発生しました。実際、物流企業である株式会社関通では、2024年9月のランサムウェア攻撃により約50日間の事業停止と17億円の被害が発生しています。

システム改修の大幅なコスト増加
開発の後期段階や運用開始後に脆弱性が発見された場合、設計段階での発見に比べて修正コストが10倍から100倍に膨れ上がることが知られています。これは、既存のコードの大規模な書き直し、他の機能への影響確認、再テスト、再デプロイなど、多くの工程が必要になるためです。開発初期段階でのセキュリティ対策を怠ったことで、後から莫大な追加投資が必要になります。

セキュア開発(SSDLC)を怠ることで発生する間接的被害

企業の信頼性とブランドイメージの低下
セキュリティインシデントが発生すると、メディア報道や公表により企業の評判が大きく損なわれます。特にBtoB取引においては、セキュリティ管理体制が不十分な企業として認識され、新規取引の機会損失や既存取引の解約につながります。2024年の調査では、サイバー攻撃を経験した企業の多くが顧客からの信頼回復に長期間を要しており、ブランド価値の毀損は金銭的損失以上の影響をもたらしています。

法的責任とコンプライアンス違反
個人情報保護法やGDPR、業界特有の規制基準に違反した場合、行政処分や巨額の罰金が科されます。また、セキュリティ対策が不十分であったことが認められれば、取引先や顧客からの損害賠償請求の対象となります。近年では、サイバーセキュリティ対策の実施状況が取締役の善管注意義務として問われるケースも増えており、経営陣の法的責任も問われる事態となっています。

サプライチェーン全体への影響拡大
自社で開発したソフトウェアの脆弱性が原因で、取引先や顧客が二次被害を受けるケースが急増しています。2024年の国内インシデントでは、業務委託先のセキュリティ侵害により、委託元の地方自治体、金融機関、小売業など多数の組織が情報漏洩被害を公表しました。株式会社イセトーの事例では、同社への攻撃が発端となり、株式会社伊予銀行や複数の信用金庫にも影響が波及し、金融業界全体の信頼性が問われる事態となりました。このように、一つの組織のセキュリティ不備が業界全体に連鎖的な被害をもたらすリスクが高まっています。

セキュア開発(SSDLC)の対策方法|効果的なセキュリティ対策

セキュア開発(SSDLC)を実施するには、ソフトウェア開発ライフサイクルの各段階で適切なセキュリティ対策を組み込む必要があります。これらの対策は、サイバー攻撃から組織を守るための基本的なルールと備えとなります。以下では、開発プロセスの各フェーズにおける具体的な対策方法を解説します。

計画・要件定義フェーズでの対策
プロジェクトの最初期から、セキュリティ要件を明確に定義することが重要です。この段階では、対象システムが扱うデータの種類(個人情報、決済情報など)、想定される脅威、遵守すべき法規制やコンプライアンス基準を特定します。また、リスク評価を実施し、システムに対する潜在的な脅威の優先順位を決定します。セキュリティ予算の確保もこの段階で行い、専門家の配置やツール導入の計画を立てます。

設計フェーズでの対策
設計段階では、脅威モデリングを実施することが効果的です。これは、システムのアーキテクチャ図を作成し、「攻撃者の視点」で脆弱性となりうる箇所を特定する手法です。認証・認可の仕組み、データの暗号化方法、アクセス制御の設計など、セキュリティ機能を設計に組み込みます。また、「セキュアバイデザイン」の原則に従い、デフォルトで安全な設定にする、最小権限の原則を適用する、多層防御を実装するなどの対策を設計に反映させます。

開発・実装フェーズでの対策
コーディング段階では、セキュアコーディング基準に従った開発が必須です。OWASP Top 10などの既知の脆弱性を理解し、SQLインジェクション、XSS、CSRF、認証・認可の不備などを防ぐコーディング技術を実践します。また、静的アプリケーションセキュリティテスト(SAST)ツールを開発環境に組み込み、コードを書いている段階でリアルタイムに脆弱性を検出します。依存関係にあるオープンソースライブラリやコンポーネントの脆弱性を管理し、既知の問題がないバージョンを使用することも重要です。

テストフェーズでの対策
テスト段階では、複数のセキュリティテスト手法を組み合わせます。動的アプリケーションセキュリティテスト(DAST)では、実際に動作しているアプリケーションに対して攻撃をシミュレートし、実行時の脆弱性を検出します。ペネトレーションテストでは、セキュリティ専門家が実際の攻撃手法を用いてシステムの堅牢性を評価します。また、脆弱性スキャンツールを使用して、設定ミスや既知の脆弱性がないかを自動的にチェックします。これらのテストで発見された問題は、リリース前に必ず修正する体制を整えます。

リリース・デプロイフェーズでの対策
本番環境へのリリース前に、セキュリティ設定の最終確認を行います。本番環境での不要なサービスやポートの無効化、適切なファイアウォール設定、ログ記録の有効化などを実施します。また、本番環境へのデプロイプロセス自体もセキュアに保つため、CI/CDパイプラインにセキュリティチェックを組み込み、承認プロセスを明確にします。バックアップ体制を整え、インシデント発生時に迅速に復旧できる準備も行います。

運用・保守フェーズでの対策
リリース後も継続的なセキュリティ対策が必要です。システムの監視体制を構築し、不審なアクセスや異常な動作を早期に検知します。新たに発見された脆弱性情報を継続的に収集し、必要に応じてセキュリティパッチを適用します。日本の平均パッチ適用時間が36.4日と長いことを考慮すると、迅速なパッチ適用プロセスの確立が重要です。また、インシデント対応計画を策定し、万が一の侵害発生時に適切に対処できる体制を整えます。

組織的な取り組み
セキュア開発(SSDLC)の成功には、技術的対策だけでなく組織文化の醸成も重要です。開発者向けのセキュリティ教育を定期的に実施し、最新の脅威や対策手法について学ぶ機会を提供します。開発チーム、セキュリティチーム、運用チームが密に連携するDevSecOpsの体制を構築し、セキュリティを全員の責任として位置づけます。また、セキュリティ対策の実施状況を経営層に報告し、必要な予算やリソースの確保について経営判断を仰ぐ体制を整えます。

セキュア開発(SSDLC)の対策を簡単に言うと?

セキュア開発(SSDLC)の対策を料理に例えると、「完成した料理を食べてから味付けを直す」のではなく、「レシピを考える段階から味のバランスを計画し、材料選び・調理・盛り付けのすべての段階で味見をしながら作る」ような方法です。

料理人が新しい料理を作るとき、最初に「どんな味にしたいか」を決め、そのために「どんな材料が必要か」「どんな調理法がいいか」を考えます(これが計画・設計段階)。材料を選ぶときは、新鮮で安全なものを選び、傷んでいるものは使いません(これがセキュアなライブラリの選択)。調理中も常に味見をして、「塩が足りないかな」「火が強すぎないかな」と確認しながら進めます(これが開発中のテスト)。

お客さんに出す前には、見た目や味、温度を最終チェックし(これがリリース前のテスト)、提供後もお客さんの反応を見て次回の改善に活かします(これが運用での監視と改善)。このように、最初から最後まで、そしてその後も、品質と安全性を確認し続けることで、お客さんに安心して喜んでもらえる料理=セキュアなソフトウェアを提供できるのです。

セキュア開発(SSDLC)に関連した攻撃手法

セキュア開発(SSDLC)が適切に実施されていないシステムは、さまざまなサイバー攻撃の標的となります。ここでは、開発段階のセキュリティ不備と特に関連性の高い攻撃手法について解説します。

サプライチェーン攻撃との関連

サプライチェーン攻撃は、セキュア開発(SSDLC)と密接に関連する脅威です。開発プロセスにおいて、外部のオープンソースライブラリや開発ツール、依存関係のあるコンポーネントを使用することが一般的ですが、これらにセキュリティ上の問題があると、開発したソフトウェア全体が脆弱になります。

2024年には、ソフトウェア依存関係の複雑化により、CVE IDのない脆弱性やリスク(悪意のあるパッケージ、タイポスクワッティングなど)が前年比約2倍に増加しました。XZ Utils CVE-2024-3094のように、信頼されているオープンソースコンポーネントに悪意のあるコードが挿入される事例も発生しています。セキュア開発(SSDLC)では、使用するすべての外部コンポーネントのセキュリティを継続的に評価し、脆弱性が発見された際に迅速に対応する体制が必要です。

危険なファイルアップロードとの関連

危険なファイルアップロードは、Webアプリケーションの開発段階でセキュリティ対策が不十分な場合に残る典型的な脆弱性です。ファイルアップロード機能の実装時に、アップロードされるファイルの種類やサイズ、内容の検証が適切に行われていないと、攻撃者が悪意のあるスクリプトやマルウェアをサーバーにアップロードし、実行させることができます。

セキュア開発(SSDLC)の設計段階で、ファイルアップロード機能に対する脅威モデリングを実施し、適切な検証ロジックを設計に組み込むことが重要です。実装段階では、ファイル拡張子だけでなくMIMEタイプやファイル内容の実際の検証、ファイル名のサニタイズ、アップロードされたファイルの実行権限の制限などの対策を実装します。テスト段階では、さまざまな種類の悪意のあるファイルをアップロードするテストケースを用意し、防御が機能することを確認します。

依存関係の脆弱性(OSS)との関連

現代のソフトウェア開発では、オープンソースソフトウェア(OSS)の利用が不可欠ですが、これらの依存関係に含まれる脆弱性は深刻なセキュリティリスクとなります。依存関係の脆弱性は、開発者が直接書いたコードではないため、存在に気づきにくく、発見が遅れがちです。

セキュア開発(SSDLC)では、開発の初期段階から使用するOSSライブラリのセキュリティ評価を行い、既知の脆弱性がないバージョンを選択します。また、Software Bill of Materials(SBOM)を作成し、使用しているすべてのコンポーネントとそのバージョンを管理します。開発中および運用中も、ソフトウェアコンポジション解析(SCA)ツールを使用して依存関係の脆弱性を継続的にスキャンし、新たに発見された脆弱性に迅速に対応する体制を整えます。

2024年の傾向として、依存関係の脆弱性だけでなく、Dependency Confusion(依存関係かく乱)や悪意のあるパッケージの混入など、攻撃者がソフトウェアサプライチェーンを標的とする手法が多様化しています。セキュア開発(SSDLC)において、依存関係の管理とセキュリティ検証は、今後ますます重要な要素となっていきます。

セキュア開発(SSDLC)のよくある質問

セキュア開発(SSDLC)は中小企業でも必要ですか?

はい、企業規模に関わらずセキュア開発(SSDLC)は重要です。むしろ、2024年の統計では、ランサムウェア被害を受けた組織の6割以上が中小企業でした。中小企業は大企業に比べてセキュリティ投資が限られるため、攻撃者から「狙いやすい標的」と認識されています。

また、中小企業が開発したソフトウェアやシステムの脆弱性が原因で、取引先の大企業が二次被害を受けるケースが急増しています。株式会社イセトーの事例のように、一つの中小企業への攻撃が複数の金融機関に影響を及ぼすこともあります。取引先からのセキュリティ要求も年々厳しくなっており、セキュア開発(SSDLC)の実施は、ビジネス継続の必須条件となりつつあります。

中小企業でも、すべての対策を一度に実施する必要はありません。まずは脅威モデリングや基本的なセキュアコーディング基準の導入から始め、段階的に対策を拡充していくアプローチが現実的です。

セキュア開発(SSDLC)を導入すると開発スピードが遅くなりませんか?

セキュア開発(SSDLC)を適切に実施すれば、長期的には開発スピードを向上させることができます。確かに、各開発段階でセキュリティチェックを追加することで、短期的には作業工程が増えるように感じられるかもしれません。

しかし、開発の後期段階や運用開始後に脆弱性が発見された場合、修正には開発初期段階の10倍から100倍のコストと時間がかかります。セキュア開発(SSDLC)では、各段階で問題を早期に発見・修正するため、大規模な手戻りを防ぐことができます。

また、静的コード解析(SAST)やソフトウェアコンポジション解析(SCA)などのツールを自動化し、CI/CDパイプラインに組み込むことで、人手による作業を最小化できます。2025年のトレンドでは、AI技術を活用したセキュリティテストの自動化も進んでおり、開発者の負担を増やさずにセキュリティレベルを向上させることが可能になっています。

DevSecOpsの調査では、セキュア開発(SSDLC)を成熟させた組織は、脆弱性の修正にかかる時間が大幅に短縮され、結果として市場投入までの時間も短縮できることが報告されています。

セキュア開発(SSDLC)とDevSecOpsの違いは何ですか?

セキュア開発(SSDLC)とDevSecOpsは密接に関連していますが、焦点が異なります。セキュア開発(SSDLC)は「何を」すべきか、つまりソフトウェア開発ライフサイクルの各段階で実施すべきセキュリティ活動を定義するフレームワークです。一方、DevSecOpsは「どのように」実施するか、つまりセキュリティを開発・運用プロセスに統合する文化的・組織的アプローチです。

具体的には、セキュア開発(SSDLC)では、計画・設計・開発・テスト・リリース・運用の各段階で必要なセキュリティ対策(脅威モデリング、セキュアコーディング、ペネトレーションテストなど)を定義します。DevSecOpsは、これらの対策を開発者・セキュリティ専門家・運用担当者が協力して実施する体制と文化を構築します。

両者は補完的な関係にあり、セキュア開発(SSDLC)が「設計図」であれば、DevSecOpsはそれを「実現する方法」と言えます。実際、多くの組織では、セキュア開発(SSDLC)をベースとしてDevSecOpsの実践を進めており、両方を組み合わせることで最も効果的なセキュリティ体制を構築できます。

既存の開発プロジェクトにセキュア開発(SSDLC)を導入するにはどうすればいいですか?

既存プロジェクトへのセキュア開発(SSDLC)の導入は、段階的なアプローチが効果的です。まず、現状のセキュリティ成熟度を評価することから始めます。OWASP SAMMやNISTのSecure Software Development Frameworkなどの成熟度モデルを使用して、現在のセキュリティ対策の実施状況を把握します。

次に、最も影響が大きく、実施しやすい対策から優先的に導入します。例えば、静的コード解析(SAST)ツールの導入は比較的容易で、既存のコードベースの脆弱性を発見できるため、初期段階での導入に適しています。また、開発者向けのセキュリティ教育を実施し、セキュアコーディングの基本を習得してもらうことも重要です。

CI/CDパイプラインにセキュリティチェックを組み込み、新しいコードが追加されるたびに自動的にセキュリティテストが実行される仕組みを構築します。この際、最初は警告レベルに設定し、開発者が慣れてきたらビルドを失敗させる設定に変更するなど、段階的に厳格化していくことが受け入れられやすくなります。

また、既存のシステムについては、脆弱性スキャンやペネトレーションテストを実施し、優先度の高い脆弱性から順次修正していきます。すべてを一度に実施しようとするのではなく、継続的改善の姿勢で取り組むことが成功の鍵です。

セキュア開発(SSDLC)を実施すれば、サイバー攻撃を完全に防げますか?

いいえ、セキュア開発(SSDLC)を実施してもサイバー攻撃を完全に防ぐことはできません。サイバーセキュリティには「完全な安全」は存在せず、常に新しい脅威や攻撃手法が出現するため、継続的な対策が必要です。

セキュア開発(SSDLC)の目的は、ソフトウェアに内在する脆弱性を可能な限り減らし、攻撃を受けた場合の被害を最小化することです。適切に実施されたセキュア開発(SSDLC)により、既知の脆弱性パターン(OWASP Top 10など)に対する耐性は大幅に向上し、攻撃者にとって侵入が困難なシステムを構築できます。

また、ゼロデイ攻撃のように、まだ知られていない脆弱性を突く攻撃に対しても、多層防御の原則に基づいて設計されたシステムは、被害の拡大を防ぐことができます。セキュア開発(SSDLC)は、侵入を前提とした設計(Assume Breach)の考え方も取り入れており、万が一侵入された場合でも、重要なデータへのアクセスを制限する、異常を早期に検知するなどの対策を組み込みます。

セキュア開発(SSDLC)は、完璧な防御を目指すのではなく、リスクを許容可能なレベルまで低減し、インシデント発生時に迅速に対応できる体制を整えることを目的としています。

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初稿公開

京都開発研究所

システム開発/サーバ構築・保守/技術研究

CMSの独自開発および各業務管理システム開発を行っており、 10年以上にわたり自社開発CMSにて作成してきた70,000以上のサイトを 自社で管理するサーバに保守管理する。