【技術者向け】ランサムウェア復号ツール完全ガイド|No More Ransom・警察庁ツールの使い方

ランサムウェアに感染し、ファイルが暗号化されてしまった場合でも、すべてのケースで身代金を支払う必要があるわけではありません。攻撃グループの摘発・サーバー押収や、暗号化実装の脆弱性発見により、無料で使える復号ツールが公開されているランサムウェアファミリーが存在します。本記事では、No More Ransomプロジェクトの活用方法、警察庁が開発したLockBit・Phobos対応ツールの入手・使用方法、ID Ransomwareによるランサムウェアファミリーの特定方法、復号成功率を上げるためのポイントを解説します。ただし、復号ツールが存在するのは一部のランサムウェアに限られ、100%の復旧を保証するものではない点にご留意ください。

ランサムウェアに感染し、ファイルが暗号化されてしまった場合でも、すべてのケースで身代金を支払う必要があるわけではありません。攻撃グループの摘発・サーバー押収や、暗号化実装の脆弱性発見により、無料で使える復号ツールが公開されているランサムウェアファミリーが存在します。

本記事では、No More Ransomプロジェクトの活用方法、警察庁が開発したLockBit・Phobos対応ツールの入手・使用方法、ID Ransomwareによるランサムウェアファミリーの特定方法、復号成功率を上げるためのポイントを解説します。

ただし、復号ツールが存在するのは一部のランサムウェアに限られ、100%の復旧を保証するものではない点にご留意ください。


復号ツールの仕組みと利用条件

復号ツールがなぜ存在するのか、どのような条件で利用できるのかを理解することが重要です。

復号ツールはなぜ存在するか

攻撃グループの摘発・サーバー押収
法執行機関によるランサムウェアグループの摘発時に、C2サーバーや復号キーが押収されることがあります。押収された復号キーを基に、被害者向けの復号ツールが開発・公開されます。LockBitの復号ツールはこのパターンで公開されました。
暗号化実装の脆弱性
一部のランサムウェアは、暗号化の実装に脆弱性があり、復号キーなしでもファイルを復元できる場合があります。セキュリティ研究者がこれらの脆弱性を発見し、復号ツールとして公開しています。
復号キーの流出
攻撃グループの内部紛争、メンバーの離脱、活動停止などにより、復号キーが流出・公開されることがあります。

利用条件と限界

特定のランサムウェアファミリーのみ
復号ツールが存在するのは、全ランサムウェアのごく一部です。主要な最新ランサムウェアの多くには、復号ツールが存在しません。まずは感染したランサムウェアのファミリーを特定し、復号ツールの有無を確認する必要があります。
バージョンによる違い
同じランサムウェアファミリーでも、バージョンによって暗号化方式が異なる場合があります。古いバージョン向けの復号ツールが、新しいバージョンには適用できないことがあります。
100%の復旧は保証されない
復号ツールを使用しても、すべてのファイルが復旧できるとは限りません。ファイルの破損、暗号化の不完全性、ツールの互換性などにより、一部のファイルが復元できない場合があります。

No More Ransomプロジェクトの活用方法

No More Ransomは、ランサムウェア被害者を支援するための国際的なプロジェクトです。

No More Ransomとは

欧州刑事警察機構(Europol)等が運営
No More Ransomは、Europol、オランダ警察、セキュリティベンダー(Kaspersky、McAfee等)の協力により2016年に開始されました。現在は世界中の法執行機関とセキュリティ企業が参加しています。
無料の復号ツール提供
プロジェクトのWebサイト(nomoreransom.org)で、130種類以上のランサムウェアに対応した復号ツールを無料で提供しています。ツールは定期的に更新され、新たなランサムウェアへの対応が追加されています。
多言語対応
Webサイトは日本語を含む多言語に対応しており、ツールの使用方法も各言語で説明されています。

利用手順

No More Ransomの利用は以下の手順で行います。

Step 1:サイトにアクセス
No More RansomのWebサイト(https://www.nomoreransom.org/)にアクセスします。日本語版も提供されています。
Step 2:Crypto Sheriffでランサムウェアを特定
「Crypto Sheriff」ツールを使用して、感染したランサムウェアのファミリーを特定します。身代金要求ファイル(ランサムノート)または暗号化されたファイルをアップロードすることで、ランサムウェアを識別できます。
Step 3:対応する復号ツールをダウンロード
ランサムウェアファミリーが特定され、復号ツールが存在する場合は、ダウンロードページに案内されます。ツールと使用方法の説明をダウンロードします。
Step 4:ツールの実行
ダウンロードした復号ツールを、説明に従って実行します。多くのツールは、暗号化されたファイルがあるフォルダを指定して実行する形式です。

注意事項

必ずバックアップを取ってから実行
復号ツール実行前に、暗号化されたファイルのバックアップを取得してください。ツールの動作により、ファイルがさらに破損する可能性があります。
隔離環境での実行推奨
ランサムウェアがまだ端末に残っている可能性がある場合は、復号後に再暗号化されるリスクがあります。可能であれば、ランサムウェアを駆除してから、または別の端末にファイルをコピーして復号を行ってください。

警察庁開発ツール(LockBit・Phobos対応)の入手と使い方

日本の警察庁は、ランサムウェア被害者支援のために復号ツールを開発・提供しています。

警察庁の復号ツール

LockBit対応ツール
警察庁は、Europol主導のLockBit摘発作戦で得られた情報を基に、LockBitランサムウェアの復号ツールを開発しました。LockBit 2.0およびLockBit 3.0(LockBit Black)に対応しています。
Phobos対応ツール
Phobosランサムウェアに対応した復号ツールも提供されています。Phobosは中小企業をターゲットにしたランサムウェアとして知られています。
8Base対応ツール
8Baseランサムウェア(Phobosの亜種)に対応したツールも開発されています。

入手方法

警察への届出・相談が必要
警察庁の復号ツールは、一般公開されていません。ランサムウェア被害を警察に届け出・相談することで、ツールの提供を受けることができます。
サイバー犯罪相談窓口への連絡
各都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口に連絡します。被害状況を説明し、復号ツールの提供を依頼します。

利用の流れ

ステップ 内容 ポイント
1 警察への相談 サイバー犯罪相談窓口(#9110)に連絡
2 被害状況の説明 暗号化されたファイル、ランサムノートを提示
3 ランサムウェアの種類特定 警察による分析、または事前特定
4 ツールの提供可否判断 対応ツールの有無を確認
5 ツール提供・使用方法案内 警察の指導のもとで使用

ランサムウェアファミリーの特定方法

復号ツールを探す前に、感染したランサムウェアのファミリーを正確に特定する必要があります。

ID Ransomwareの使い方

ID Ransomwareは、ランサムウェアを特定するための無料オンラインサービスです。

身代金要求ファイルのアップロード
ランサムウェアが作成した身代金要求ファイル(ランサムノート)をアップロードします。ファイル名は「README」「DECRYPT」「HOW_TO_RECOVER」などが一般的です。
暗号化されたファイルのアップロード
暗号化されたファイルをサンプルとしてアップロードします。ファイルの暗号化パターンからランサムウェアを特定します。
判定結果の確認
分析結果として、ランサムウェアのファミリー名、復号ツールの有無、詳細情報へのリンクが表示されます。

その他の特定方法

ファイル拡張子からの推定
暗号化されたファイルに追加される拡張子から、ランサムウェアを推定できる場合があります。例えば「.lockbit」「.phobos」「.cryptolocker」などの拡張子は、ランサムウェアファミリーを示唆しています。
身代金要求画面の特徴
デスクトップに表示される身代金要求画面のデザイン、文言、ビットコインアドレスなどから、ランサムウェアファミリーを特定できる場合があります。
セキュリティベンダーへの相談
使用しているセキュリティ製品のベンダーに相談することで、検体分析とランサムウェアファミリーの特定を依頼できます。

復号成功率を上げるためのポイント

復号ツールを使用する際に、成功率を上げるためのポイントを解説します。

復号前の準備

オリジナルファイルの保全
暗号化されたファイルを別の場所にコピーし、オリジナルを保全します。復号に失敗した場合や、将来新しい復号ツールが公開された場合に備えます。
復号対象のバックアップ
復号ツール実行前に、復号対象のファイルをバックアップします。ツールの動作によりファイルが破損するリスクに備えます。
ランサムウェアの完全駆除確認
ランサムウェアが端末に残っていると、復号後に再暗号化される可能性があります。ランサムウェア対策ソフト(EDR)でスキャンし、完全に駆除されていることを確認してください。

複数ツールの試行

バージョン違いのツール
同じランサムウェアファミリーでも、複数のバージョンに対応した復号ツールが存在する場合があります。1つのツールで復号できなくても、別バージョンのツールを試すことで成功する可能性があります。
別プロジェクトのツール
No More Ransom以外にも、セキュリティベンダー各社が独自の復号ツールを提供している場合があります。Kaspersky、Emsisoft、Avast等のサイトも確認してください。

復号ツールがない場合の選択肢

対応する復号ツールが存在しない場合の選択肢を解説します。

データ復旧業者への相談

専門業者の活用
ランサムウェアの復号を専門とするデータ復旧業者に相談することができます。一部の業者は、独自の復号手法を保有している場合があります。
費用と成功率の検討
データ復旧業者のサービスは高額であり、成功率も保証されません。費用対効果を慎重に検討し、復旧対象データの価値と比較して判断します。業者選定にあたっては、実績や評判を十分に確認してください。

将来の復号可能性

復号キーの公開を待つ
攻撃グループの摘発や活動停止により、将来的に復号キーが公開される可能性があります。すぐに復号できない場合でも、暗号化ファイルを保管しておくことで、将来の復号に備えることができます。
暗号化ファイルの保全
暗号化されたファイルを安全な場所に長期保管します。ストレージコストと復旧対象データの価値を比較して、保管の要否を判断します。

バックアップからの復旧

バックアップの確認
復号ツールがない場合、バックアップからの復旧が最も確実な方法です。バックアップ戦略に基づき、感染前の状態に復旧します。
バックアップの安全性確認
バックアップデータ自体がランサムウェアに感染していないか、暗号化されていないかを確認してから復旧します。

よくある質問(FAQ)

Q: 復号ツールを使えば100%ファイルが復旧できますか?
A: いいえ、100%の復旧は保証されません。復号ツールの互換性、ファイルの破損状態、暗号化の完了状況などにより、一部のファイルが復旧できない場合があります。重要なファイルについては、復号後に内容を確認し、問題がないことを確認してください。
Q: 復号ツールの使用に費用はかかりますか?
A: No More Ransomプロジェクトや警察庁の復号ツールは無料で提供されています。ただし、一部のセキュリティベンダーが提供する高度な復号サービスは有料の場合があります。無料ツールで復号できない場合に、有料サービスを検討することもできます。
Q: 復号ツールを使用するとセキュリティリスクがありますか?
A: 公式ソース(No More Ransom、警察庁、信頼できるセキュリティベンダー)から入手した復号ツールであれば、セキュリティリスクは低いです。ただし、非公式サイトで配布されている「復号ツール」を称するプログラムには、新たなマルウェアが含まれている可能性があります。必ず公式ソースからダウンロードしてください。
Q: 身代金を支払えば確実に復号できますか?
A: いいえ、身代金を支払っても復号キーが提供される保証はありません。支払い後に復号キーが提供されないケース、復号キーが正常に動作しないケースが報告されています。また、身代金の支払いは犯罪組織への資金提供となり、さらなる攻撃を助長する可能性があります。まずは復号ツールやバックアップからの復旧を検討し、警察への相談を推奨します。
Q: ランサムウェアの種類がわからない場合はどうすればよいですか?
A: ID Ransomware(https://id-ransomware.malwarehunterteam.com/)に身代金要求ファイルまたは暗号化されたファイルをアップロードすることで、ランサムウェアファミリーを特定できます。また、警察のサイバー犯罪相談窓口やセキュリティベンダーに相談することで、特定を支援してもらうこともできます。

まとめ:復号ツール活用のポイント

まず特定から
ID Ransomwareやセキュリティベンダーの支援を受けて、感染したランサムウェアのファミリーを正確に特定します。
公式ソースを利用
復号ツールは必ずNo More Ransom、警察庁、信頼できるセキュリティベンダーの公式サイトから入手します。非公式サイトからのダウンロードは避けてください。
バックアップを取ってから実行
復号ツール実行前に、暗号化ファイルのバックアップを取得します。復号に失敗した場合や将来の復号に備えます。
復号ツールがない場合の備え
対応ツールがない場合でも、暗号化ファイルを保管しておくことで、将来の復号可能性に備えることができます。バックアップからの復旧も検討してください。

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システム開発/サーバ構築・保守/技術研究

CMSの独自開発および各業務管理システム開発を行っており、 10年以上にわたり自社開発CMSにて作成してきた70,000以上のサイトを 自社で管理するサーバに保守管理する。