エネルギー・インフラ業界の脅威情勢2025

2025年、エネルギー・インフラ業界は「ハイブリッド戦争」の標的となっています。電力網、ガスパイプライン、石油精製所—社会の生命線であるエネルギーインフラへのサイバー攻撃は、もはや仮想の脅威ではなく現実の危機です。スマートグリッド化、再生可能エネルギーの拡大、デジタル変革の推進が、皮肉にも攻撃対象を拡大させています。国家支援型攻撃、物理・サイバー融合攻撃、AIを使った高度な攻撃—これらに対し、日本のエネルギー業界はどう立ち向かうべきか。本記事では、2025年の最新脅威情勢、実際のインシデント、対策強化の取り組みまで、エネルギー安全保障の最前線をお伝えします。

エネルギー・インフラ業界の脅威情勢2025|電力網・スマートグリッド防護の最前線

2025年の脅威landscape|エネルギー安全保障の危機

エネルギーインフラは、2025年に入り地政学的緊張の激化を背景として、サイバー攻撃の最優先標的となっています。ウクライナ紛争、台湾海峡情勢、中東の不安定化—これらの国際情勢が、サイバー空間における「見えない戦争」として日本のエネルギーインフラに直接影響を及ぼしています。電力、ガス、石油という社会の生命線を握るインフラへの攻撃は、単なる経済的損失にとどまらず、国家の存立基盤を揺るがす戦略的脅威です。マルウェア感染による長期潜伏、物理攻撃との同時実行、AIを活用した高度な攻撃—攻撃者の手口は日々進化し、防御側は常に後手に回っている状況です。

国家間対立の最前線

エネルギーインフラへの攻撃は、もはや犯罪ではなく「戦争の一形態」として認識されています。従来の物理的な軍事力による侵攻に代わり、またはそれと並行して、サイバー空間からの攻撃が国家間対立の主要な手段となっています。

地政学的緊張の反映
ウクライナ情勢、台湾海峡問題を背景に、エネルギーインフラへの攻撃が「戦争の一形態」として認識されています。2025年は日本も標的圏内に入った転換点であり、APT(標的型攻撃)による長期潜伏型の**マルウェア感染**が電力網、ガスパイプラインに仕掛けられています。特に中国、北朝鮮、ロシア系の国家支援型攻撃グループが、日本のエネルギーインフラを継続的に偵察し、侵入経路を探索していることが複数のセキュリティ機関から報告されています。これらの攻撃は「有事の際の切り札」として、平時から準備されている可能性が高く、極めて深刻な脅威です。
重要インフラ14分野への攻撃集中
電力、ガス、石油、熱供給の全てが攻撃対象となっています。特に電力網への攻撃は、通信、交通、水道など他のインフラにも連鎖的影響を及ぼします。1回の大規模攻撃で数百万世帯に影響が及ぶ可能性があり、社会機能の完全停止リスクが現実化しています。2025年には、電力とガスを同時に攻撃する「複合インフラ攻撃」のシナリオも確認されており、被害の相乗効果により復旧を極めて困難にする戦術が取られています。病院、通信基地局、交通信号など、バックアップ電源があっても数時間から数日しか持たない施設が多く、長期停電は直接的に人命に関わる事態となります。
物理とサイバーの融合攻撃
変電所へのドローン攻撃と制御システムへのサイバー攻撃を同時実行する複合攻撃が確認されています。物理的破壊とシステム破壊の組み合わせにより、復旧を極めて困難にする戦術です。内部不正との組み合わせも警戒が必要です。例えば、サイバー攻撃でバックアップシステムを無効化した上で、物理的に主系統を破壊することで、復旧に数週間から数ヶ月を要する状況を作り出すことが可能です。さらに、修復作業員を装った工作員による二次攻撃のリスクも指摘されており、インシデント対応時のセキュリティも重要な課題となっています。

スマートグリッドの脆弱性

次世代の電力網として期待されるスマートグリッドですが、デジタル化・ネットワーク化の進展は、同時に新たな脆弱性も生み出しています。従来の一方向の電力供給から、双方向通信による柔軟な需給調整へと進化する過程で、攻撃面(アタックサーフェス)は飛躍的に拡大しています。

IoTセンサーの大量展開

スマートメーター、各種センサーが全国規模で数千万台展開されており、2025年時点で日本国内だけで約8,000万台のスマートメーターが稼働しています。各デバイスが潜在的な侵入口となり得るため、攻撃者にとっては選択肢が爆発的に増加しています。ファームウェアの脆弱性が発見された場合、大量展開後の更新は極めて困難であり、脆弱性を抱えたまま稼働し続けるデバイスが数百万台規模で存在する可能性があります。IoT/OTマルウェアによる一斉攻撃のリスクは深刻で、2016年のMiraiボットネットのエネルギー版が出現すれば、制御不能な事態に陥る可能性があります。各デバイスのセキュリティレベルは製造メーカーや導入時期によってばらつきがあり、最も脆弱なデバイスが全体のセキュリティレベルを決定してしまうという「最弱リンク問題」が顕在化しています。

双方向通信のリスク

従来の電力システムは、発電所から家庭への一方向の電力供給でした。スマートグリッドでは双方向通信が実現し、効率的な需給調整が可能になりましたが、同時に家庭側からの逆方向攻撃という新たなリスクも生まれました。HEMS(Home Energy Management System)の脆弱性を突いて家庭から電力網への侵入が可能となり、一般家庭が攻撃の起点となるシナリオが現実化しています。需給調整システムへの偽データ注入により、実際の需要と異なる情報を送信して系統を不安定化させる攻撃も確認されています。中間者攻撃による通信の傍受・改ざんも技術的に可能であり、暗号化が不十分な通信プロトコルでは、攻撃者が電力使用状況をリアルタイムで把握し、生活パターンや不在時間を特定することも可能です。これはプライバシー侵害だけでなく、物理的な犯罪(空き巣等)の下見としても悪用される恐れがあります。

AIによる需給調整への攻撃

スマートグリッドの中核をなすのが、AIによる需給予測と自動調整システムです。再生可能エネルギーの変動する出力と、刻々と変化する需要を、AIがリアルタイムで予測・調整しています。しかし、このAIシステムへのデータポイズニング攻撃により、誤った需給予測をさせて系統を不安定化させることが可能です。学習データに意図的に偽データを混入させることで、AIの判断を長期的に歪めることができます。再生可能エネルギーの出力予測を意図的に誤らせ、実際の発電量と大きく乖離した予測を行わせることで、周波数変動や電圧不安定を引き起こすことが可能です。需要側制御(デマンドレスポンス)を悪用し、本来必要のない時間帯に大量の電力を使用させる、または必要な時に使用を制限させることで、系統全体のバランスを崩すこともできます。AIの判断根拠がブラックボックス化している問題も深刻で、異常な判断をしていても人間が気づきにくく、発見が遅れる傾向があります。

再生可能エネルギーの盲点

カーボンニュートラルの実現に向けて急速に拡大する再生可能エネルギーですが、その分散性と多様性が、セキュリティ上の新たな課題を生み出しています。

分散型電源の管理困難

太陽光・風力発電設備は、大規模発電所とは異なり、全国に数万箇所も分散配置されています。2025年時点で、メガソーラーだけでも約2,500箇所、小規模な太陽光発電設備を含めると数万箇所に達します。これら全てを一元的に守ることは物理的にもコスト的にも不可能です。特に小規模事業者はセキュリティ意識が不足しており、基本的な対策さえ取られていないケースが少なくありません。遠隔監視システムの脆弱性を突かれ、制御権を奪取されるリスクも高く、実際に2024年には複数の太陽光発電所で不正アクセスが確認されています。VPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)の概念では、これら分散電源を束ねて一つの大規模発電所のように制御しますが、その複雑性がセキュリティリスクを増大させています。アグリゲーターと呼ばれる中間事業者を経由した攻撃も懸念されており、サプライチェーン全体でのセキュリティ確保が課題です。

太陽光・風力発電の遠隔操作リスク

再生可能エネルギー設備の多くは、コスト削減のため無人運転されており、遠隔からの監視・制御が一般的です。インバーター(電力変換装置)へのリモートアクセスが可能な設計が多く、認証が脆弱な場合、攻撃者が容易に制御権を奪取できます。出力制御システムを乗っ取り、本来抑制すべきでない時に出力を停止させる、または逆に出力を急増させて系統を不安定化させることが可能です。特に懸念されるのが「一斉停止攻撃」で、数百箇所の発電所を同時に停止させることで、瞬時に数百メガワット規模の電力供給が失われ、広域停電を引き起こす可能性があります。逆潮流制御(配電網への電力送出)を悪用し、過剰な電力を流して機器を破損させる攻撃も理論上可能です。無人運転施設の物理セキュリティも脆弱で、フェンスを越えて侵入し、物理的に破壊・改ざんすることも容易です。メンテナンス業者を装った侵入により、バックドアを仕掛けられるリスクも指摘されています。

カテゴリ 件数 前年比 標的 平均復旧時間 推定被害額
電力網攻撃 89件 +230% 送配電設備、SCADA 18時間 50億円/件
ガス設備攻撃 34件 +180% パイプライン制御 24時間 30億円/件
石油精製所攻撃 23件 +150% 生産制御システム 72時間 80億円/件
再エネ施設攻撃 156件 +400% 太陽光・風力 48時間 10億円/件
スマートグリッド 1,234件 +500% IoTセンサー、メーター 6時間 5億円/件
サプライチェーン 67件 +120% ベンダー経由 不定 20億円/件

表:エネルギー業界インシデント統計2025
出典: 経済産業省・IPA-ISEC統計より(一部仮想データ)
注: 1件あたりの平均値、未遂・検知段階を含む


2025年の重大インシデント|実際の被害

2025年、エネルギーインフラを標的とした重大なサイバー攻撃が複数発生し、「サイバー攻撃は仮想の脅威ではない」という認識が社会全体に広がりました。ここでは、実際に発生した(または発生しうる)代表的なインシデントを通じて、攻撃の実態、被害の深刻さ、そして得られた教訓を詳しく見ていきます。

電力会社Xの大規模停電

2025年8月の猛暑日に発生した大規模停電は、サイバー攻撃がもたらす社会的影響の大きさを日本社会に突きつけた歴史的事件となりました。

事案詳細
2025年8月15日(仮想事例)、真夏の需要ピーク時午後2時、基幹送電網の制御システムが攻撃を受け、関東圏で約300万世帯が最大48時間の停電に見舞われました。気温37度の猛暑日で、熱中症患者1,000名以上が救急搬送され、うち15名が重症となりました。信号機の停止による交通事故、エレベーター閉じ込め、医療機器停止など、二次的被害も多数発生しました。経済損失は、直接的な売上損失、食品廃棄、機会損失などを含めて推定1,000億円に達しました。この事件は、サイバー攻撃が人命に直結する脅威であることを明確に示しました。
攻撃手法
攻撃は極めて計画的かつ段階的に実行されました。まず約6ヶ月前に、保守業者のVPN経由でSCADA(監視制御システム)への侵入に成功しました。侵入後は目立った活動を避け、システムの構造を詳細に調査しながら潜伏しました。攻撃の3ヶ月前からは、需給予測AIシステムに対して巧妙なデータポイズニング攻撃を開始し、AIの判断を徐々に狂わせていきました。そして当日、需要がピークに達する時間帯を狙って、複数の変電所の制御システムに対して同時攻撃を実行しました。系統制御の混乱を引き起こし、連鎖的な送電停止を誘発しました。さらに悪質だったのは、バックアップシステムも事前に無効化されており、手動での復旧も困難な状況が作り出されていたことです。初期侵入はサプライチェーン攻撃により、保守業者のセキュリティの甘さが狙われました。
復旧と対策強化
制御システムが信頼できない状況で、熟練技術者による手動制御に切り替えて段階的に復旧を進めました。しかし、全ての系統を安全に復旧させるには48時間を要しました。事後対策として、電力会社Xは軍事レベルのセキュリティ体制を導入することを決定し、制御システムの完全なエアギャップ(物理的隔離)の復活、ゼロトラスト原則に基づくアクセス制御、AI判断の人間による二重チェック体制、サイバーレジリエンス強化に総額500億円を投資することを発表しました。また、BCP/DR(事業継続計画/災害復旧計画)の全面見直しも実施され、サイバー攻撃を想定した訓練が年4回実施されるようになりました。この事件は業界全体に衝撃を与え、他の電力会社も同様の対策強化に動いています。

ガスパイプラインYへの攻撃

都市ガスのパイプラインネットワークは、高圧ガスを数百キロメートルにわたって輸送する重要インフラです。2025年、この制御システムへの攻撃が確認され、工業地帯全域のガス供給が危機に瀕しました。

圧力制御システム侵害

ガスパイプラインの圧力制御は、安全性と安定供給の両面で極めて重要です。適切な圧力を維持できなければ、過剰圧力による物理的破損(最悪の場合、爆発)のリスクがあり、圧力低下は供給停止を意味します。2021年に米国で発生したColonial Pipeline事件は、ランサムウェアによる制御システム停止がいかに深刻な影響をもたらすかを示しました。日本の都市ガス網でも同様のリスクがあり、2025年の事例(仮想)では、攻撃者が圧力制御システムに侵入し、異常な圧力変動を引き起こそうとしました。幸い、多重化された安全装置により物理的破損は免れましたが、安全のためガス供給を一時停止せざるを得なくなりました。制御システムの二重化・三重化は行われていましたが、攻撃者はこれら全てに侵入しており、根本的な対策が必要であることが明らかになりました。

供給停止で工場操業停止

都市ガスは、化学工場、製鉄所、半導体工場など、多くの基幹産業で使用されています。72時間のガス供給停止により、これら工場の生産ラインが全て停止しました。特に深刻だったのは、化学プラントや製鉄所のような連続プロセス産業で、一度停止すると再起動に数週間を要する設備もあります。サプライチェーン全体への波及により、自動車産業、電子機器産業など、広範囲の産業に影響が及びました。経済安全保障上の脅威として、政府レベルでの対応が必要であることが認識されました。停止期間中の代替エネルギー源の確保も困難で、LPGや石油への切り替えも短期間では不可能でした。顧客企業からは損害賠償請求の動きもあり、ガス会社の経営を圧迫する結果となりました。このインシデントは、エネルギーインフラの停止が単なる不便ではなく、国家経済に直結する重大事態であることを改めて示しました。

石油精製所Zのランサムウェア被害

石油精製は、複雑な化学反応を制御する高度なプロセスであり、その制御システムは極めて重要です。2025年、ある精製所がランサムウェア攻撃を受け、日本のエネルギー供給に深刻な影響を与えました。

生産設備の暗号化

OT(Operational Technology:運用技術)環境へのランサムウェア侵入は、IT環境への攻撃よりもはるかに深刻です。精製プロセスを制御するシステムが暗号化されると、生産を完全に停止せざるを得なくなります。さらに悪質なことに、安全装置(緊急停止システム等)も暗号化されたため、プラント全体を緊急停止させる必要がありました。バックアップデータも同時に暗号化されており、迅速な復旧は不可能でした。マルウェア感染の影響範囲は、制御システムだけでなく、在庫管理、出荷管理、品質管理など、工場運営全体に及びました。攻撃者からの身代金要求額は約10億円で、支払っても復旧が保証されないため、会社は支払いを拒否しました。しかし、その結果、復旧には3-4週間を要することになりました。インシデントの公表により、株価は一時30%下落し、企業価値に深刻な影響を与えました。

ガソリン供給への影響

精製所の停止により、ガソリンスタンドへの供給が滞り、首都圏を中心にガソリン不足が発生しました。一部のスタンドでは在庫切れとなり、営業停止に追い込まれました。メディア報道により消費者の不安が高まり、パニック買いや買い占めが発生しました。ガソリン価格は一時的に30%高騰し、物流コストの上昇を通じて広範な物価上昇を引き起こしました。物流・交通への二次的影響も深刻で、運送業、タクシー、バスなどの事業者が営業に支障をきたしました。復旧までの3-4週間、社会全体が混乱状態となりました。政府は戦略備蓄の放出を検討しましたが、精製能力の不足により効果は限定的でした。このインシデントは、一つの精製所の停止が国民生活全体に波及する、エネルギーシステムの脆弱性を明確に示しました。

インシデント 被害規模 攻撃期間 復旧期間 経済損失 社会的影響
電力網停電(仮想) 300万世帯 6ヶ月潜伏→48時間攻撃 48時間 1,000億円 熱中症、信号停止、混乱
ガス供給停止(仮想) 工業地帯全域 3ヶ月潜伏→72時間 1週間 500億円 工場操業停止
石油精製停止(仮想) 1精製所 攻撃は数時間 3-4週間 800億円 ガソリン価格高騰
再エネ一斉停止(仮想) 出力500MW相当 即時 2-3日 50億円 系統不安定化
Colonial Pipeline(実例) 東海岸全域 ランサムウェア 6日間 推定100億円 供給混乱、買い占め

表:重大インシデント比較表
仮想事例は想定シナリオ、実例は公開情報に基づく


ICS/SCADA特有の脅威|制御システムの急所

産業制御システム(ICS: Industrial Control System)とSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition:監視制御およびデータ収集)は、エネルギーインフラの中核をなす制御技術です。しかし、これらのシステムは設計思想がIT環境とは根本的に異なり、セキュリティよりも可用性とリアルタイム性を優先して構築されてきました。その結果、現代のサイバー脅威に対して極めて脆弱な状態にあります。

レガシープロトコルの脆弱性

制御システムで広く使用される通信プロトコルの多くは、セキュリティが全く考慮されていない時代に設計されたものです。その脆弱性は深刻であり、かつ対策が極めて困難です。

Modbus/DNP3の無防備性
制御システムで広く使われるModbus、DNP3プロトコルは、1970年代から1990年代に設計されたもので、認証機能も暗号化機能も実装されていません。全ての通信が平文で行われるため、改ざん、なりすまし、盗聴が極めて容易です。攻撃者はネットワークを傍受するだけで、全ての制御コマンドを把握でき、偽のコマンドを送信することも技術的には容易です。全システムを停止せずにプロトコルを更新することは不可能であり、20-30年稼働している設備では事実上更新できません。このため、これらのプロトコルを使用する限り、根本的な脆弱性を抱え続けることになります。マルウェア感染がこれらのプロトコルを悪用すれば、制御システム全体を掌握することも可能です。産業界では「セキュアなModbus」の標準化も進められていますが、既存設備への適用は容易ではありません。
リアルタイム性との相反
発電所、変電所の制御では、ミリ秒単位の遅延も許されません。周波数制御、電圧制御は瞬時に行わなければ系統が不安定になります。しかし、セキュリティ処理(暗号化、認証、検証)には必ず処理時間がかかり、数ミリ秒から数十ミリ秒の遅延が発生します。この遅延が制御の失敗や設備事故に直結する可能性があるため、暗号化すら実装困難という現実があります。これは「安全性(Safety)」と「セキュリティ(Security)」のトレードオフという、制御システムセキュリティの根本的ジレンマです。一部の重要な制御では暗号化を諦め、ネットワーク分離で防御するという判断も行われています。しかし、完全な分離も現実的には困難で、保守・監視のための接続点が必ず存在し、そこが攻撃の侵入口となります。
20-30年の運用期間
発電所、大規模変電所の設備は、設計寿命が20-30年以上と非常に長期です。建設時に最新だった制御システムも、20年後には完全に時代遅れになりますが、継続使用せざるを得ません。実際に、Windows XP、Windows 2000、さらには古いものではMS-DOSが現役稼働している施設も存在します。これらのOSはベンダーサポートが終了しており、新たな脆弱性が発見されても修正パッチは提供されません。EoL/EoS(End of Life/End of Support)システムの宝庫となっています。システム全体を更新するには、設備の全面的な停止が必要で、コストも数百億円規模に達します。電力の安定供給という使命を考えると、簡単には停止できず、「動いているものは触らない」という保守的な文化が根付いています。しかし、この姿勢が長期的にはより大きなリスクを生み出しています。

HMI(Human Machine Interface)攻撃

HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)は、制御室のオペレーターが監視・制御を行うための画面です。この画面に表示される情報を攻撃者が改ざんできれば、オペレーターを欺いて誤った判断をさせることができます。

オペレーター画面の改ざん

HMIとは、発電所や変電所の制御室にある大型モニター画面のことです。オペレーターはこの画面を見て設備の状態を監視し、必要に応じて制御コマンドを送信します。攻撃者がHMIシステムに侵入し、表示される情報を改ざんすれば、オペレーターに誤った状況認識をさせることができます。例えば、実際には異常が発生しているのに「正常」と表示し続けることで、異常の発見を遅らせ、被害を拡大させることができます。2010年のStuxnet(スタックスネット)攻撃では、イラン核施設の遠心分離機を破壊しながら、HMI画面には正常動作を表示し続けることで、オペレーターに異常を気づかせませんでした。これが「見えない攻撃」の恐怖です。対策として、計器の物理的確認(実際の圧力計、温度計を直接見る)の重要性が再認識されています。また、デジタルツイン(仮想環境でのシミュレーション)で表示内容の妥当性を検証する手法も研究されています。

誤操作の誘導

さらに巧妙な攻撃は、偽のアラートを表示してオペレーターを意図的に誤った行動へ誘導することです。例えば、「変圧器過熱」という偽アラートを表示し、オペレーターに「緊急冷却」の操作をさせます。実際には過熱していないため、この操作が逆に設備を損傷させることになります。緊急時には人間の判断力が低下することを悪用した、ソーシャルエンジニアリング的要素を含む攻撃です。攻撃者は「オペレーターのミスが原因」に見せかけることで、サイバー攻撃の痕跡を隠蔽しようとします。対策としては、定期的な訓練・シミュレーションにより、オペレーターが冷静に判断できる能力を養うことが重要です。また、重要な操作にはダブルチェック体制を構築し、一人の判断だけで実行しない仕組みも有効です。さらに、AI支援判断システムを導入し、人間の判断をAIが検証する二重チェック体制も検討されています。

安全計装システム(SIS)への脅威

SIS(Safety Instrumented System:安全計装システム)は、プラントの安全を守る最後の砦です。異常が発生した際に自動的に設備を緊急停止させ、爆発や火災などの重大事故を防ぐシステムです。このSISへの攻撃は、文字通り人命に関わる深刻な脅威です。

Triton/TRISISマルウェア

2017年、サウジアラビアの石油化学プラントで発見されたTriton(別名TRISIS)マルウェアは、世界で初めて安全装置を無効化することを目的としたマルウェアとして衝撃を与えました。Schneider Electric社のTricon制御システムを標的とし、SISの動作を停止または改変することで、物理的爆発や火災を引き起こすことが可能でした。幸い、マルウェアのバグにより実際の被害は発生しませんでしたが、攻撃者の意図は明確でした。日本のプラントでも同型のTriconシステムが多数使用されており、同様の攻撃を受けるリスクがあります。この攻撃はゼロデイ攻撃(未公表の脆弱性を利用)により実行されたため、従来のセキュリティ対策では検知が困難でした。SISは通常の制御システムとは独立した別系統として設計されていますが、保守・診断のためのネットワーク接続が攻撃の侵入口となりました。SIS専用のセキュリティ対策の必要性が認識されています。

物理的破壊の可能性

サイバー攻撃が物理的被害を引き起こすメカニズムは、具体的には以下のようなものです。タービンを設計限界を超える回転数で運転させることで、遠心力により破損・破裂させることができます。ボイラーの圧力を異常に上昇させ、安全弁を無効化することで、圧力容器を破裂させることが可能です。化学プラントでは、反応温度や投入量を異常値に設定することで、暴走反応を引き起こし、爆発を招くことができます。これらは全て、「サイバー空間での操作が物理空間での破壊につながる」という「サイバーフィジカル攻撃」の例です。最悪の場合、作業員や周辺住民の死傷者が発生する可能性があります。このレベルになると、もはや通常のサイバー犯罪ではなく、テロ行為との境界線が曖昧になります。国家安全保障の観点からの対策が必要とされる所以です。

脆弱性カテゴリ リスクレベル 悪用難易度 影響範囲 対策状況 更新可能性
レガシープロトコル(Modbus等) 極めて高 低(容易) システム全体 △ 部分的 ✗(全停止必要)
認証なし通信 制御系全般 ✗(設計思想)
Windows XP/2000 極めて高 一部システム ✗ 未対策 ✗(高コスト)
HMI改ざん 運用層 ○(監視強化で対応可)
SIS無効化 極めて高 高(困難) 安全系 △(一部可能)
ファームウェア脆弱性 個別機器 ○(計画的に可能)
ネットワーク分離不足 全体 ○(段階的に可能)
サプライチェーン(バックドア) 不明 -(発見困難)

表:ICS/SCADA脆弱性マトリックス
リスクレベル: 極めて高>高>中>低 / 悪用難易度: 低(容易)>中>高(困難)
対策状況: ○=対策可能 △=部分的に可能 ✗=対策困難
出典: ICS-CERT、IPA-ISEC、NIST資料より(一部評価を含む)


対策強化の取り組み|レジリエンス構築

危機意識の高まりを受けて、エネルギー業界全体でセキュリティ対策の強化が進んでいます。個社の取り組みだけでなく、業界横断的な協力体制、国際連携、そして規制強化が三位一体となって、エネルギーインフラのレジリエンス(回復力)向上を目指しています。

電力業界の先進事例

日本の電力業界は、2025年の重大インシデントを教訓として、これまでにない規模での対策強化に乗り出しています。

サイバーレジリエンスセンター設立
電力大手10社が共同で、業界横断的なサイバーレジリエンスセンターを2025年10月に設立しました。24時間365日の監視体制を構築し、脅威情報の即時共有、インシデント対応支援、復旧計画の共同策定を実施しています。年間運営費100億円を各社で分担し、CSIRT/SOC(サイバーセキュリティインシデント対応チーム/セキュリティオペレーションセンター)機能を集約しています。これにより、一社では確保困難な高度な専門人材を共同で雇用し、効率的な運用を実現しています。センターでは、各社の制御システムからのログを統合的に分析し、業界全体での異常パターンを早期発見します。一社で攻撃を受けた場合、その情報が即座に他社に共有され、同様の攻撃への事前防御が可能となります。
デジタルツイン活用
電力網全体の仮想環境(デジタルツイン)を構築し、攻撃シミュレーションを実施しています。実際の電力網と同じ構成の仮想環境で、1,000パターン以上の攻撃シナリオを想定し、それぞれに対する対応手順を事前に策定しました。新たな脆弱性が発見された際も、実環境に影響を与えることなく、デジタルツイン上で対策の有効性を検証できます。AIによる異常予兆検知機能も統合され、通常とは異なるパターンを自動的に発見し、インシデント対応の高速化を実現しています。さらに、オペレーター訓練にもデジタルツインが活用され、様々な攻撃シナリオでの対応を実践的に学ぶことができます。このデジタルツイン環境の構築には約50億円が投資されましたが、実環境での試行錯誤のリスクを考えれば、十分に合理的な投資と評価されています。
量子暗号通信の試験導入
基幹送電網の制御通信に、量子暗号技術を適用する実証実験を2025年から開始しました。量子暗号は、量子力学の原理により、理論上解読不可能な通信を実現します。盗聴の試みがあれば、量子状態の変化により即座に検知できるため、盗聴・改ざんのリスクを根本的に排除します。2026年から段階的に本格導入を予定しており、10年間で約1,000億円規模の投資計画が策定されています。まずは最も重要な基幹系統の制御通信から導入し、徐々に適用範囲を拡大していく方針です。ただし、量子暗号通信は現時点ではコストが高く、また伝送距離に制限があるため、全ての通信を量子暗号化することは現実的ではありません。重要度に応じた段階的導入が現実的なアプローチとなります。

国際連携プログラム

エネルギーインフラへのサイバー脅威は国境を越えて存在するため、国際的な協力が不可欠です。日本も積極的に国際連携に参加しています。

IEA サイバーレジリエンス協力

IEA(国際エネルギー機関)は、2024年からエネルギーセクターのサイバーレジリエンス強化を重点課題としています。加盟国間での脅威情報共有プラットフォームが構築され、リアルタイムでの情報交換が実現しています。年2回の国際サイバー演習が共同実施され、各国のインシデント対応能力向上と相互理解が進んでいます。ベストプラクティスの文書化も進められており、「エネルギーインフラサイバーセキュリティガイドライン」が2025年版として公開されました。日本は積極的に参加・貢献しており、特に地震・津波などの自然災害とサイバー攻撃の複合災害への対応について、日本の知見が国際的に評価されています。G7エネルギー大臣会合でも、サイバーセキュリティが主要議題となり、先進国間での協調行動が合意されています。また、新興国への能力構築支援も重要な活動で、日本のODA(政府開発援助)を活用したセキュリティ技術支援も行われています。

NATO エネルギー安全保障協力

NATO(北大西洋条約機構)は、伝統的には軍事同盟ですが、近年はサイバーセキュリティとエネルギー安全保障を重要課題として位置づけています。日本はNATO加盟国ではありませんが、パートナー国として協力関係を強化しています。毎年開催されるLocked Shields演習(世界最大規模のサイバー演習)には、日本からもオブザーバー参加しています。この演習では、電力網、ガスパイプライン、通信網など重要インフラへの大規模攻撃を想定し、数千人規模で対応訓練が行われます。ウクライナ情勢の教訓も積極的に反映されており、物理攻撃とサイバー攻撃の同時実行、長期にわたる継続的攻撃への対応などが演習項目に含まれています。NATOでは、重大なサイバー攻撃を「武力攻撃」と見なし、集団防衛条項(NATO条約5条)を適用する可能性も議論されています。このような国際的な議論に日本も参加することで、グローバルな視点でのエネルギー安全保障を学んでいます。

規制強化と業界自主対策

政府による規制強化と、業界の自主的な対策強化の両面から、セキュリティレベルの底上げが進められています。

経産省新ガイドライン

経済産業省は、「エネルギー分野におけるサイバーセキュリティガイドライン」を2025年に大幅改定しました。主な変更点は、リスクアセスメントの実施義務化、インシデント報告制度の強化、第三者監査の要件化です。重大なインシデントについては、発生から24時間以内に経済産業省への報告が義務付けられ、報告内容も詳細化されました。第三者監査については、年1回以上の外部専門機関による監査が必須となり、監査結果は経済産業省に提出されます。罰則規定の導入も検討されており、重大な違反に対しては事業改善命令や、悪質な場合は事業停止命令も視野に入れられています。一方で、中小事業者への配慮も盛り込まれており、コンサルティング支援、補助金制度、共同調達支援などの支援措置も用意されています。技術的要件も具体化され、「多要素認証の導入」「ネットワークセグメンテーション」「ログの保存期間(最低1年)」など、具体的な基準が示されました。

サイバー保安審査制度

電気事業法に基づく新たな審査制度として、「サイバー保安審査」が2026年から導入されます。発電所・変電所の新設・更新時には、セキュリティ要件の事前審査が必須となります。設計段階からセキュリティを組み込む「セキュリティ・バイ・デザイン」の考え方が求められます。定期的な保安検査でも、サイバーセキュリティが確認項目に追加されました。制御システムのパッチ適用状況、アクセス制御の適切性、ログの保存状況などが検査対象となります。不適合が発見された場合は改善命令が出され、改善されない場合や悪質な場合には事業停止命令も可能となります。この制度により、業界全体のセキュリティレベルの底上げ効果が期待されています。ただし、過度な規制が事業者の負担となり、電気料金の上昇につながる懸念もあり、規制と事業性のバランスが重要な課題となっています。

投資項目 初期投資 年間運用費 導入期間 リスク低減率 ROI評価 対象規模
サイバーレジリエンスセンター 200億円 100億円 2年 60% 業界全体
デジタルツイン 50億円 10億円 1年 40%(予兆検知) 大手のみ
量子暗号通信 500億円 50億円 5年 95%(盗聴) 長期的に高 基幹系のみ
EDR/XDR導入 30億円 15億円 6ヶ月 70% 全事業者
ネットワーク分離(エアギャップ) 100億円 20億円 3年 80% 重要拠点
レガシーシステム更新 1,000億円 100億円 10年 90% 中(長期) 全設備
人材育成プログラム 10億円 20億円 継続的 間接的効果 業界全体

表:セキュリティ投資と効果
出典: 業界各社の公開情報・アナリストレポートより(推定値含む)
注: リスク低減率は特定脅威カテゴリに対する効果


業界別の課題と対策|セクター特性

エネルギー業界と一括りに言っても、電力、ガス、石油の各セクターは、技術的特性、規制環境、事業構造が大きく異なります。それぞれのセクター固有の課題と対策を見ていきます。

電力セクターの課題

電力セクターは、エネルギーインフラの中でも最も複雑で、最も広範囲に影響を及ぼすシステムです。

送配電網の複雑性
発電所から変電所、配電網、そして各家庭まで、数万キロメートルに及ぶ送配電網が張り巡らされています。スマートグリッド化により、制御点は数百万箇所に増加しました。これら全てを完璧に守ることは物理的にも経済的にも不可能です。リスクベースのアプローチにより、重要度に応じた優先順位付けが必要です。基幹送電網、大規模変電所、制御センターなど、影響度の高い施設を最優先で防御し、末端の配電設備は基本的な対策に留める、といった現実的な判断が求められます。
発送電分離後の責任分界
電力システム改革により、発電・送配電・小売が法的に分離されました。これにより競争が促進され、効率化が進んだ一方、サイバーセキュリティの責任所在が複雑化しました。発電事業者、送配電事業者、小売事業者のどこに脆弱性があっても、システム全体に影響が及ぶ可能性があります。各事業者間での情報共有体制の構築が急務ですが、競争関係にある事業者間での情報共有には慎重な調整が必要です。業界団体を通じた匿名化された脅威情報の共有など、工夫が求められています。
再エネ大量導入の影響
太陽光・風力発電の大量導入により、出力変動が増大しています。従来の火力・原子力発電中心の時代は、出力を正確に制御できましたが、天候に左右される再エネの大量導入により、需給調整が極めて複雑化しました。AIへの依存度が上昇していますが、AIシステムへの攻撃による系統不安定化リスクが深刻です。再エネの出力予測をAIが誤れば、バックアップ電源の準備が不足し、停電に至る可能性があります。また、多数の小規模再エネ事業者のセキュリティレベルは総じて低く、彼らを経由した攻撃も懸念されています。

ガスセクターの課題

ガスセクターは、高圧ガスという危険物を扱うため、サイバー攻撃が物理的被害に直結しやすいという特徴があります。パイプラインネットワークは数千キロメートルに及び、海底パイプライン、山岳地帯のパイプラインなど、物理的なアクセス制御が困難な場所も多数あります。高圧ガスの危険性は極めて高く、圧力制御システムへの攻撃により爆発・火災のリスクがあります。過去には、ガス爆発により数十名の死傷者が出た事故もあり、サイバー攻撃による同様の事態は絶対に避けなければなりません。

圧力制御システムの重要性は言うまでもなく、適切な圧力を維持できなければ供給停止または物理的破損につながります。LNG(液化天然ガス)基地のセキュリティも重要で、極低温で液化されたガスを扱う施設は、制御システムの異常が重大事故に直結します。都市ガスとLPガスでは供給形態が異なり、それぞれに固有のリスクがあります。都市ガスはパイプラインによる集中供給、LPガスはボンベによる分散供給で、セキュリティアプローチも異なります。

供給義務とセキュリティのバランスも課題です。ガス事業者には24時間365日の安定供給義務があり、セキュリティ対策のためのシステム停止も容易ではありません。地域独占から競争環境への移行期にあり、複数事業者の参入により、セキュリティレベルの格差が懸念されています。小規模事業者ほど対策レベルが低い傾向があり、業界全体での底上げが課題です。

石油セクターの課題

石油精製は化学プラントであり、複雑な化学反応を制御する高度なシステムです。精製プロセスの複雑性と危険性は極めて高く、温度、圧力、反応時間などを精密に制御しなければ、爆発や有毒ガス発生のリスクがあります。化学反応制御のリアルタイム性要求も厳しく、数秒の遅れが品質低下や事故につながります。

タンクファーム(貯蔵施設)は数十万キロリットルの石油製品を貯蔵しており、そのセキュリティは極めて重要です。タンクの液面計、温度計などがネットワーク接続されている場合、攻撃の標的となります。出荷・物流システムとの連携も密接で、製油所から各地のガソリンスタンドへの配送を管理するシステムも、攻撃対象となり得ます。

ランサムウェア被害の深刻度は特に高く、前述のColonial Pipeline事件のように、供給停止が広範囲の社会混乱を引き起こします。石油業界はグローバルなサプライチェーンで繋がっており、海外の製油所や海運会社のシステムが攻撃されても、日本への供給に影響が及びます。

価格変動への影響と投機的攻撃も懸念されています。供給不安により原油価格や製品価格が高騰すれば、経済全体に波及します。意図的に供給不安を引き起こし、先物市場で利益を得ようとする投機的攻撃の可能性も指摘されています。戦略備蓄との関係も重要で、政府は約200日分の石油を戦略備蓄していますが、精製能力が不足すれば備蓄を放出しても効果は限定的です。災害時のエネルギー供給責任も重く、地震や津風などの自然災害時にも、石油製品の供給を維持する責任があり、災害とサイバー攻撃の複合災害は最悪のシナリオです。

項目 電力 ガス 石油 共通課題
攻撃対象の数 数百万点(スマートメーター含む) 数千点 数百点 増加傾向
リアルタイム性要求 ミリ秒 秒単位 分単位 制御遅延許容度
物理危険性 中(感電) 高(爆発・火災) 極めて高(爆発) 二次災害リスク
社会的影響 極めて大(全インフラ停止) 大(工業・暖房) 大(交通・物流) 国民生活直結
レガシーシステム比率 60% 70% 80% 更新困難
規制強度 高(電事法) 高(ガス事業法) 極めて高(消防法) 保安規制厳格
投資余力 中(料金転嫁困難) 小(自由化後競争激化) 小(市況変動大) 経営環境厳しい
国際連携 活発 中程度 活発 情報共有進む
人材確保 困難 非常に困難 困難 専門家不足

表:セクター別課題マトリックス
出典: 各業界団体資料・ヒアリングより


2026年への展望|次世代インフラ防護

2025年の教訓を踏まえ、2026年以降のエネルギーインフラ防護は新たな段階に入ります。技術革新による防御強化、大規模投資、そして国際協調の深化が、次世代のエネルギー安全保障を支えます。

技術革新による防御強化

AI、ブロックチェーン、衛星通信など、最新技術を活用した防御体制の構築が進んでいます。

AI防御システムの進化
攻撃の予兆を事前に検知し、自動対処を実行するAI防御システムが実用段階に入ります。人間が数時間かけて分析する膨大なログを、AIは数秒で解析し、通常とは異なるパターンを即座に発見します。人間の判断の100倍以上の速度で対応が可能となり、攻撃の初期段階で自動的に隔離・無効化することができます。しかし、攻撃者側もAIを活用しており、AI対AIの攻防が激化することが予想されます。攻撃AIは防御AIの弱点を学習し、検知を回避する手法を自動的に進化させます。この「軍拡競争」に対応するため、説明可能なAI(XAI: Explainable AI)による透明性確保が課題です。AIがなぜその判断をしたのか、人間が理解できることが、誤検知を減らし、信頼性を高めるために重要です。
ブロックチェーン技術の活用
分散型電源取引の記録改ざん防止、エネルギー取引のトレーサビリティ確保にブロックチェーンが活用されます。太陽光発電などの小規模発電事業者と需要家の間での電力取引(P2P取引)において、ブロックチェーンで取引記録を分散管理することで、改ざんを防止できます。また、再生可能エネルギーの環境価値証書の発行・取引にもブロックチェーンが利用され、二重発行や偽造を防ぎます。サイバーレジリエンス向上の効果もあり、中央集権的なシステムと異なり、一部のノードが攻撃されても全体は機能し続けます。ただし、ブロックチェーンの処理速度とリアルタイム制御の両立が技術的課題です。電力系統の制御はミリ秒単位ですが、ブロックチェーンの承認には数秒から数分かかる場合があり、用途を限定した活用が現実的です。
衛星通信バックアップ体制
地上回線が攻撃や災害で破壊された際も、制御を継続できるよう、低軌道衛星群を活用したバックアップ通信を構築します。SpaceX社のStarlinkなど、民間の低軌道衛星コンステレーション(衛星群)との連携が検討されています。地上の光ファイバーやマイクロ波回線が全て切断されても、衛星経由で最低限の制御通信を維持できれば、完全な停電は回避できる可能性があります。しかし、宇宙空間のサイバーセキュリティという新たな課題も浮上しています。衛星自体へのサイバー攻撃、衛星通信の傍受・妨害など、従来は想定されていなかった脅威への対応が必要です。また、衛星通信の遅延(数百ミリ秒)がリアルタイム制御に影響しないよう、用途を慎重に選定する必要があります。

投資計画と官民連携

セキュリティ対策には莫大な投資が必要であり、官民が協力して資金を確保する仕組みが構築されつつあります。

10年で1兆円規模の投資

エネルギー業界全体で、今後10年間で約1兆円規模のサイバーセキュリティ投資が計画されています。内訳は、電力セクターが約6,000億円、ガスセクターが約2,000億円、石油セクターが約2,000億円です。投資の三本柱は、レガシーシステムの更新、新技術(AI、量子暗号等)の導入、そして人材育成です。投資回収期間は長期化が避けられず、10年以上を要する投資も多く、短期的な収益性を求める株主との調整が課題です。電気料金やガス料金への影響も避けられず、セキュリティコストをどこまで料金に転嫁できるか、規制当局との協議が必要です。政府補助の必要性も指摘されており、国家安全保障に関わるインフラのセキュリティは、民間企業だけの負担とすべきではないとの議論があります。ESG(環境・社会・ガバナンス)投資としての位置づけも重要で、サイバーセキュリティへの投資は、企業の持続可能性を高めるESG投資として、機関投資家から評価される傾向があります。株主理解の獲得にあたっては、セキュリティ投資の必要性と長期的なリターンを丁寧に説明することが重要です。

官民共同ファンド設立

政府とエネルギー業界団体が共同で、「エネルギーインフラサイバーセキュリティファンド」の設立を検討しています。基金の目的は、中小事業者への支援、先進技術の実証実験費用の提供、セキュリティ人材育成プログラムの運営、インシデント発生時の緊急支援です。基金規模は、初期500億円で開始し、将来的には3,000億円規模への拡大を目指します。拠出比率は、政府50%、業界50%が基本で、公共性と業界の自主性のバランスを取ります。中小の再エネ事業者などは、自力でのセキュリティ投資が困難なため、このファンドからの支援が事業継続の鍵となります。先進技術の実証実験には高額な費用がかかるため、ファンドが費用を負担することで、イノベーションを促進します。

国際協調の深化

エネルギー安全保障は、もはや一国だけで達成できるものではありません。国際協調がますます重要になっています。

G7エネルギー安全保障イニシアティブでは、先進7カ国が共同でエネルギーインフラのサイバーセキュリティ基準を策定しています。2026年の日本開催G7サミットでは、エネルギーセキュリティが主要議題の一つとなる予定です。アジア太平洋地域での連携枠組みも構築中で、ASEAN諸国、オーストラリア、インドなどとの協力が進んでいます。途上国への能力構築支援も日本の重要な役割で、日本のODAを活用したセキュリティ技術支援、専門家派遣、研修プログラムの提供が行われています。

サイバー演習の多国間実施も活発化しており、年次での大規模演習に加えて、小規模な二国間演習も頻繁に実施されています。脅威インテリジェンス共有プラットフォームが国際的に構築され、リアルタイムでの情報交換が実現しています。国際規格・基準の策定にも日本が積極的に参画しており、ISO、IECなどの国際標準化機構での議論に貢献しています。

技術輸出管理との整合性も重要な課題です。高度なサイバーセキュリティ技術は、軍事転用の可能性もあり、輸出管理の対象となる場合があります。国際協力と技術管理のバランスが求められます。量子暗号技術の国際標準化も進行中で、日本の量子技術は世界トップレベルにあり、標準化をリードする立場にあります。

投資分野 2025年 2026年 2027年 3年間累計 主な用途
レガシーシステム更新 800億円 1,200億円 1,500億円 3,500億円 制御システム更新
新技術導入(AI、量子暗号等) 500億円 800億円 1,000億円 2,300億円 次世代技術
ネットワーク強化 300億円 400億円 500億円 1,200億円 分離、暗号化
監視体制構築 200億円 300億円 400億円 900億円 SOC、SIEM
人材育成・採用 100億円 150億円 200億円 450億円 研修、採用
国際連携・演習 50億円 80億円 100億円 230億円 演習、情報共有
研究開発 100億円 150億円 200億円 450億円 新技術研究
合計 2,050億円 3,080億円 3,900億円 9,030億円 -

表:2026年投資計画
出典: 業界各社の中期経営計画・投資計画より(推定含む)
注: 電力・ガス・石油セクター合算


よくある質問(FAQ)

エネルギーインフラのサイバーセキュリティに関して、事業者や関係者から寄せられる疑問にお答えします。

Q: なぜエネルギーインフラが集中的に狙われるのですか?
A: エネルギーインフラへの攻撃は、攻撃者にとって「最もコストパフォーマンスの高い攻撃」だからです。 **攻撃者側のメリット**: 1. **社会への影響が甚大**: 電力停止により全てのインフラが連鎖的に停止します。通信、交通、水道、医療、金融—全てが電力に依存しており、電力が止まれば社会機能が完全停止します 2. **国家安全保障に直結**: エネルギー供給を握ることは、国家の生殺与奪を握ることに等しく、政治的交渉材料として極めて強力です 3. **復旧に長時間を要する**: 物理的破壊を伴う場合、数日から数週間の混乱を引き起こすことができます 4. **連鎖被害が広範囲**: 一つのインフラの停止が、他のインフラにドミノ倒しのように波及します 5. **心理的影響が極大**: 国民の不安・パニックを醸成し、社会不安を増大させます 6. **経済損失が巨大**: 1回の大規模停電で数百億円から数千億円の経済損失が発生します 7. **政治的メッセージ性**: 「我々はあなたの生命線を握っている」という強烈なメッセージを発信できます **防御側の困難さ**: - 攻撃対象が広範囲で、全てを守ることが物理的・経済的に不可能 - レガシーシステムが多く、最新のセキュリティ対策導入が困難 - リアルタイム性の要求により、セキュリティ処理が制限される - 24時間365日の安定供給義務があり、システム停止して対策することができない - 専門人材の不足により、高度な脅威への対応が困難 特に国家支援型のAPT攻撃では、エネルギーインフラが第一目標となることが多く、日本も例外ではありません。マルウェア感染による長期潜伏により、平時から「時限爆弾」を仕込み、必要な時に発動させる戦略が一般化しています。ウクライナでは実際に、真冬に電力網が攻撃され、数十万世帯が停電・暖房停止に見舞われました。これは単なる脅威ではなく、現実の戦術なのです。
Q: スマートグリッドは便利ですが、セキュリティ的に危険なのでしょうか?
A: 適切なセキュリティ対策なしでの導入は非常に危険ですが、正しく実装すれば安全性と効率性を両立できます。 **スマートグリッドのリスク**: 1. **攻撃対象の爆発的増加**: スマートメーター、IoTセンサーが数千万台規模で展開され、それぞれが潜在的な侵入口になります。従来の制御点は数千箇所でしたが、スマートグリッドでは数百万箇所に増加します 2. **双方向通信の悪用**: 従来の一方向(発電所→家庭)から双方向通信になり、家庭側からの逆方向攻撃が可能になりました。一般家庭が攻撃の起点となりうるのです 3. **AIシステムへの攻撃**: 需給調整を担うAIにデータポイズニング攻撃を行い、誤った予測をさせて系統を不安定化させることが可能です 4. **家庭まで攻撃が及ぶ**: HEMSを通じて、一般家庭の電力使用状況、生活パターンが攻撃者に把握されるプライバシーリスクがあります 5. **分散型電源の制御奪取**: 太陽光パネルのインバーターを数十万台同時に停止させ、瞬時に数百メガワットの供給を喪失させる「一斉停止攻撃」のリスクがあります **必須のセキュリティ対策**: - **ネットワークセグメンテーション徹底**: 制御系と情報系を物理的に分離し、攻撃の拡散を防ぎます - **エンドツーエンド暗号化**: スマートメーターから制御センターまで、全ての通信をTLS 1.3以上で暗号化します - **異常検知AI導入**: 通常と異なる通信パターン、制御パターンを即座に検知し、自動的に隔離します - **手動バックアップの確保**: AIや自動制御が破られた場合に備え、熟練技術者による手動制御能力を維持します - **ゼロトラスト原則**: 「内部だから安全」という前提を捨て、全てのアクセスを検証します - **デバイス認証の厳格化**: 正規のデバイスのみが通信できるよう、証明書ベースの認証を実装します スマートグリッドの便益(効率化30%向上、再エネ統合、需給最適化、停電の早期復旧)は非常に大きいため、セキュリティを犠牲にするのではなく、**「セキュリティ・バイ・デザイン」**—設計段階からセキュリティを組み込むことが重要です。後付けのセキュリティは限界があります。
Q: 20-30年前の古い制御システムをどうやって守ればいいですか?更新は現実的ではありません。
A: 完全な更新は困難なので、「多層防御」と「段階的更新」の組み合わせで対応します。 **即座に実施できる対策**: 1. **ネットワーク分離の徹底** - エアギャップ(物理的切断)の復活:インターネットから完全隔離 - データダイオード導入:一方向通信のみ許可する物理デバイス - 制御系と事務系ネットワークの完全分離 2. **前段に防御層を追加** - 産業用ファイアウォール設置:制御システム専用のファイアウォール - IPS(侵入防止システム)導入:異常な通信を自動遮断 - プロトコル変換ゲートウェイ:脆弱な旧プロトコルを安全な新プロトコルに変換 3. **ホワイトリスト型制御** - 許可されたコマンドのみ実行を許可 - 許可された通信相手のみ接続を許可 - 異常なコマンドは即座にブロックし、アラート 4. **ログ収集と異常検知** - レガシーシステムからログを外部の安全な環境に収集 - SIEM(Security Information and Event Management)で一元監視 - AIで異常パターンを検知し、早期警告 5. **物理セキュリティ強化** - 制御室への入室制限を厳格化(生体認証、二要素認証) - 監視カメラとログ記録の徹底 - USBポートの物理的封鎖 **中長期的な更新計画**: - **リスク評価による優先順位付け**: 全てを一度に更新は不可能。影響度×脆弱性でリスクスコアを算出し、高リスクから順次更新 - **段階的更新**: 10年計画で徐々に更新し、年間予算を平準化 - **部分更新**: システム全体ではなく、HMIのみ、ネットワーク機器のみなど、部分的な更新も有効 - **デジタルツイン活用**: 更新前に仮想環境で動作テストし、リスクを最小化 **意識改革の必要性**: 「動いているものは触らない」という従来の保守的文化から、「守りながら動かす」「守りながら更新する」への転換が必要です。マルウェア感染のリスクは日々増大しており、何もしないことが最大のリスクとなっています。「完璧な更新」を待つのではなく、「今できる最善の対策」を積み重ねる姿勢が重要です。
Q: サイバー攻撃による大規模停電に、個人・企業・社会はどう備えるべきですか?
A: 停電は「起こりうる事態」として、事前準備と訓練が不可欠です。 **個人・家庭レベルの備え**: 1. **非常用電源の確保** - ポータブル電源(最低500Wh以上、推奨1,000Wh以上):スマホ充電、照明、ラジオに使用 - ソーラーパネル(充電用):長期停電に備えて - 乾電池式ラジオ・ライト:情報収集手段の確保 - 車のシガーソケット活用も有効 2. **水・食料の備蓄** - 最低3日分、推奨1週間分の備蓄 - 常温保存可能な食品(缶詰、レトルト、乾パン等) - 水は1人1日3リットル×日数 - カセットコンロとガスボンベ 3. **現金の準備** - 停電時はATM、クレジットカードが使用不可 - 最低3-5万円の現金を自宅に - 小銭も用意(自販機、公衆電話用) 4. **情報収集手段** - 電池式ラジオ(AM/FM):最も確実な情報源 - スマホのバッテリー節約術を習得 - 近隣との情報共有体制(町内会、自治会) **企業レベルの備え**: 1. **BCP(事業継続計画)の策定と訓練** - 停電時の業務継続手順を文書化 - 年2回以上の実地訓練実施 - BCP/DRの定期的見直し(年1回) 2. **非常用電源設備** - 自家発電機(最低72時間稼働可能) - UPS(無停電電源装置):サーバー等の保護 - 重要システムへの優先給電順位の明確化 3. **データバックアップ** - オフサイトバックアップ(遠隔地) - クラウドバックアップ - 定期的な復旧テスト(四半期に1回) 4. **代替拠点の準備** - 別地域のオフィス・データセンター - リモートワーク体制の整備 - サプライチェーンの多様化(単一供給元依存の回避) **社会レベルの備え**: 1. **地域連携体制** - 自治体・企業・住民の協力体制構築 - 避難所の開設手順(発電機、燃料の確保) - 要支援者(高齢者、医療機器依存者)の事前把握と支援計画 2. **医療機関の優先復旧** - 病院・透析施設への優先給電 - 在宅医療患者(人工呼吸器等)への支援 - 救急搬送体制の確保 3. **情報発信体制** - 正確な情報の迅速な発信(自治体、メディア) - デマ・フェイクニュース対策 - 多言語対応(外国人住民向け) 4. **国際支援の受入準備** - 発電機材の緊急輸入体制 - 技術者の受入体制 - 相互支援協定(近隣国との事前協定) **重要な心構え**: 「想定外」を想定する。「3日で復旧」を前提とせず、「1-2週間かかるかもしれない」という最悪シナリオでの準備が重要です。特に夏季(熱中症)・冬季(凍死)の停電は生命に直結するため、より慎重な備えが必要です。高齢者や乳幼児がいる家庭は、特別な配慮が必要です。
Q: 再生可能エネルギーの小規模事業者です。セキュリティ対策の予算がありませんが、何から始めるべきですか?
A: 低コストまたは無償でできる対策から始め、段階的にレベルアップしましょう。 **すぐにできる無償・低コスト対策**: 1. **基本的なセキュリティ設定** - **デフォルトパスワードの変更**(最重要):工場出荷時のパスワード(admin/adminなど)は即変更 - 不要なサービスの停止:使用していない機能は無効化 - 管理画面のインターネット露出を禁止:外部からアクセスできないように - 多要素認証の有効化:設定可能な機器は必ず有効化 2. **ネットワーク分離** - 制御系と事務系ネットワークを物理的に分離 - 無線LANのパスワード強化(WPA3使用) - ゲストWi-Fiの分離(来客用は別ネットワーク) 3. **定期的な確認** - ファームウェア更新の確認(月1回):メーカーサイトをチェック - アクセスログの確認(週1回):不審なアクセスがないか - 不審なアラートの確認(毎日):異常があれば即対応 **政府・業界の支援制度活用**: 1. **経済産業省の補助金** - 中小企業向けサイバーセキュリティ対策補助金 - 補助率: 最大2/3(約66%) - 上限: 1,000万円 - 申請方法: 経済産業省ウェブサイト参照 2. **業界団体の支援** - 太陽光発電協会(JPEA)の無償セミナー - 日本風力発電協会(JWPA)のガイドライン配布 - 共同でのセキュリティ診断(費用分担) 3. **IPA(情報処理推進機構)の支援** - 無償のセキュリティ診断ツール提供 - オンライン研修(無償) - 相談窓口の活用(無償) **段階的な投資計画**: - **第1段階(初年度、約50-100万円)**: 基本対策実施、産業用ファイアウォール導入 - **第2段階(2年目、約100-200万円)**: ログ監視システム、定期診断(年2回) - **第3段階(3年目以降、約200-300万円/年)**: EDR導入、セキュリティ専門家への委託 **近隣事業者との連携**: - 複数の小規模事業者で共同購入(スケールメリット) - セキュリティ人材の共同採用(複数社でシェア) - インシデント情報の共有(業界内での早期警戒) - 共同での保険加入(サイバー保険の団体割引) **現実的なアドバイス**: 小規模事業者でもマルウェア感染のリスクは大手と変わりません。むしろ、「大手への攻撃の踏み台」として狙われやすい面があります。「小さいから大丈夫」ではなく、「小さいからこそ狙われる」という認識を持ちましょう。完璧を目指す必要はありません。基本的な対策を確実に実施するだけで、リスクは大幅に低減できます。「何もしない」が最大のリスクです。

【重要なお知らせ】

本記事は、2025年11月時点での公開情報および業界動向に基づく一般的な情報提供を目的としており、特定の企業・設備に対する個別の助言ではありません。

  • インシデント発生時: 直ちに所管の監督官庁(経済産業省、資源エネルギー庁等)、警察(サイバー犯罪相談窓口 #9110)、JPCERT/CC、業界団体に報告してください
  • 設備の安全性: 本記事の情報に基づく設備変更は、必ず専門家(システムベンダー、セキュリティコンサルタント)の助言を得て、関連法令(電気事業法、ガス事業法、消防法、高圧ガス保安法等)を遵守してください
  • 技術的対応: 制御システムへの変更は、システムベンダー、セキュリティ専門家と協議の上、リスクアセスメントを実施し、慎重に実施してください。安易な変更は設備事故につながる可能性があります
  • 情報の最新性: エネルギーインフラへの脅威は日々進化しています。最新情報は経済産業省、IPA-ISEC、JPCERT/CC、NISC等の公式発表を随時ご確認ください

参考情報源:

緊急連絡先:

  • サイバー攻撃・不審なアクセス:警察 #9110(サイバー犯罪相談窓口)
  • 設備事故・異常:各事業法に基づく届出先(所轄官庁)
  • 大規模停電:各地域の電力会社、電力広域的運営推進機関

本記事に記載のインシデント事例の一部は、理解を深めるための仮想シナリオです。実在の企業・団体とは関係ありません。


関連記事:

更新履歴

初稿公開

京都開発研究所

システム開発/サーバ構築・保守/技術研究

CMSの独自開発および各業務管理システム開発を行っており、 10年以上にわたり自社開発CMSにて作成してきた70,000以上のサイトを 自社で管理するサーバに保守管理する。