コンテナエスケープを初心者でも分かりやすく解説

コンテナエスケープは、隔離されたコンテナ環境から「脱出」してホストシステムを侵害するサイバー攻撃の手法です。2024年のRed Hat調査では89%の組織が過去12ヶ月でコンテナまたはKubernetesに関連するセキュリティインシデントを経験し、67%がセキュリティ懸念からコンテナ技術の導入やデプロイを遅らせている実態が明らかになりました。2025年に入っても、runcやNVIDIA Container Toolkitなどコンテナランタイムに重大な脆弱性が発見され続けています。Sysdigの調査によれば、本番環境のコンテナイメージの87%に高または重大な脆弱性が含まれており、適切な対策なしにコンテナ技術を使用することは大きなリスクとなっています。本記事では、コンテナエスケープの仕組み、最新の脅威動向、ホスト侵害からランサムウェア攻撃への発展、そして効果的な対策方法まで、非技術者にも分かりやすく解説します。

コンテナエスケープを初心者でも分かりやすく解説

コンテナエスケープとは?

コンテナエスケープとは、コンテナという隔離された実行環境から「脱出」して、そのコンテナが動作しているホストシステムに不正にアクセスするサイバー攻撃の手法です。別名として「コンテナブレイクアウト」や「ジェイルブレイク」とも呼ばれます。

コンテナ技術は、アプリケーションを独立した環境で動かすための仕組みです。通常、コンテナ内で動作するプログラムは、その外側のシステム(ホストOS)にアクセスできないように設計されています。しかし、コンテナエスケープが成功すると、攻撃者はこの隔離を突破し、ホストシステム全体を侵害できるようになります。

このような攻撃は、コンテナランタイム(コンテナを実行するソフトウェア)の脆弱性、設定の不備、過剰な権限付与などを悪用することで実現されます。特に「特権コンテナ」と呼ばれる、ホストの全デバイスへのアクセスが許可された状態のコンテナは、侵害された場合にコンテナエスケープのリスクが極めて高くなります。

コンテナエスケープを簡単に言うと?

コンテナエスケープを日常生活に例えると、「アパートの一室から脱出して、建物全体の管理室に侵入する」ようなものです。

想像してください。あるアパートでは、各部屋の住人は自分の部屋の中だけで生活でき、他の部屋や建物全体の設備には触れられないようになっています。これがコンテナの隔離状態です。

しかし、もし部屋の鍵に欠陥があったり、壁に穴が開いていたりすると、悪意ある住人は自分の部屋から抜け出して、建物の管理室に侵入できてしまうかもしれません。管理室に入れば、すべての部屋の鍵を手に入れたり、電気や水道を止めたり、他の住人の情報を盗んだりできてしまいます。

コンテナエスケープは、まさにこの「部屋から脱出して管理室に侵入する」攻撃に相当します。一つのコンテナが侵害されるだけで、システム全体が危険にさらされるのです。

コンテナエスケープの現状

コンテナ技術の普及に伴い、コンテナエスケープのリスクは企業にとって深刻な脅威となっています。2024年から2025年にかけて、複数の重大な脆弱性が発見され、世界中の組織に影響を与えています。

Red Hatが2024年に実施した調査によると、89%の組織が過去12ヶ月間にコンテナまたはKubernetesに関連するセキュリティインシデントを経験しています。また、67%の組織がセキュリティ懸念からコンテナ技術の導入やデプロイを遅らせているという結果も報告されています。

Sysdigの2023年の調査では、本番環境で使用されているコンテナイメージの87%に、高または重大な脆弱性が含まれていることが明らかになりました。これは、セキュリティ対策よりも開発スピードを優先する企業の姿勢が、脆弱性の蓄積につながっていることを示しています。

2025年に入っても、コンテナエスケープを可能にする脆弱性の発見は続いています。特に注目すべきは、2025年1月に公開されたrunc(コンテナランタイムの中核ソフトウェア)の3つの脆弱性(CVE-2025-31133、CVE-2025-52565、CVE-2025-52881)です。これらは、マウント処理のレースコンディション(タイミングの問題)を悪用することで、ホストシステムへの不正アクセスやシステムクラッシュを引き起こす可能性があります。

また、2025年1月にはNVIDIA Container Toolkit(GPU対応コンテナを構築・実行するツール)にも重大なコンテナエスケープ脆弱性(CVE-2025-23266)が発見されました。これは、悪意あるコンテナイメージが環境変数を操作することで、ホスト上でroot権限を取得できるというものです。

日本国内でも、2024年上半期にクラウド環境への侵害事例が前年同期と比較して増加傾向にあることがトレンドマイクロの調査で報告されています。これらの被害には、クラウドサービスの停止、情報漏洩、データ削除などが含まれており、コンテナ環境を含むクラウドインフラのセキュリティ対策の重要性が高まっています。

コンテナエスケープで発生する被害は?

コンテナエスケープが成功すると、攻撃者はコンテナの隔離を突破してホストシステムに到達します。この段階で、攻撃の影響範囲は単一のコンテナから、そのコンテナが動作しているサーバー全体、さらには同じインフラ上で動作する他のシステムへと拡大します。

コンテナエスケープで発生する直接的被害

ホストシステムの完全な侵害

コンテナエスケープに成功した攻撃者は、ホストOSへの管理者権限(root権限)を取得できます。これにより、ホスト上で動作するすべてのコンテナ、保存されているデータ、システム設定にアクセス可能となります。攻撃者はシステムファイルの改ざん、重要なプロセスの停止、マルウェアのインストールなどを自由に実行できるようになります。

機密データの大規模漏洩

ホストシステムにアクセスできるようになった攻撃者は、そこに保存されている認証情報、APIキー、データベースの接続情報などの機密情報を窃取できます。これらの情報を使って、さらに別のシステムやクラウドサービスに侵入し、顧客情報、財務データ、企業秘密などを盗み出すことが可能です。実際、2025年のIBMのデータ漏洩コスト調査では、認証情報の侵害による被害の特定と封じ込めに最も時間がかかることが報告されており、平均的なデータ漏洩コストは440万ドル(約6億円)に達しています。

ランサムウェア攻撃の実行

コンテナエスケープは、ランサムウェア攻撃の足がかりとして利用されることがあります。トレンドマイクロの事例報告では、コンテナイメージを不正にデプロイした後、コンテナエスケープによってホストに侵入し、ランサムウェアでホストごと暗号化する攻撃が観測されています。ホスト全体が暗号化されると、そこで動作していたすべてのサービスが停止し、事業継続に重大な影響を与えます。

コンテナエスケープで発生する間接的被害

横展開による被害の拡大

コンテナエスケープによってホストシステムを侵害した攻撃者は、そこを足がかりとして同じネットワーク内の他のシステムへ横展開(ラテラルムーブメント)を行います。クラウド環境やKubernetesクラスターでは、複数のノード(サーバー)が相互に接続されているため、一つのノードの侵害が連鎖的に他のノードへと広がり、インフラ全体が危険にさらされます。

サービス停止と事業への影響

コンテナエスケープによる攻撃は、重要なシステムの停止を引き起こす可能性があります。2024年6月に発生したKADOKAWAグループのランサムウェア被害では、大規模なシステム停止が発生し、出版、映像、ゲームなど複数の事業に影響が及びました。こうしたサービス停止は、売上損失、顧客の信頼喪失、ブランドイメージの低下につながります。実際、2024年のKubernetesセキュリティ調査では、46%の組織がセキュリティインシデントによる収益損失を経験しています。

サプライチェーン全体への波及

コンテナエスケープによって侵害されたシステムが、他の企業にサービスを提供している場合、被害はサプライチェーン全体に波及します。2024年の日本国内のセキュリティインシデント統計では、印刷業務の委託先企業のランサムウェア被害により、複数の委託元企業が影響を受けた事例が報告されています。このような二次被害は、直接攻撃を受けていない企業にも情報漏洩やサービス停止をもたらします。

コンテナエスケープの対策方法

コンテナエスケープを防ぐためには、コンテナ環境の構築から運用まで、複数の層でセキュリティ対策を実施する必要があります。単一の対策では不十分であり、包括的なアプローチが求められます。

コンテナランタイムとソフトウェアの定期的な更新

コンテナエスケープの多くは、コンテナランタイム(runc、containerdなど)やDocker、Kubernetesといったコンテナ基盤の脆弱性を悪用します。これらのソフトウェアは定期的にセキュリティアップデートがリリースされるため、パッチを迅速に適用することが重要です。特に、CVSSスコアが8.0以上の高リスク脆弱性については、発見後できるだけ早く対応する体制を整える必要があります。

特権コンテナの使用制限

特権コンテナ(Privileged Container)は、ホストのすべてのデバイスにアクセスでき、セキュリティ機能も無効化されるため、侵害された場合のリスクが極めて高くなります。開発や検証目的で一時的に必要な場合を除き、本番環境では特権コンテナの使用を避けるべきです。コンテナオーケストレーション(Kubernetes等)では、PodSecurityPolicyやPodSecurityStandardsを使用して、特権コンテナの作成を制限できます。

最小権限の原則に基づいた設定

コンテナには、実行に必要な最小限の権限(Linuxケーパビリティ)のみを付与します。CAP_SYS_ADMIN(システム管理権限)、CAP_NET_ADMIN(ネットワーク設定権限)、CAP_SYS_PTRACE(プロセストレース権限)など、強力な権限は特に慎重に扱う必要があります。また、コンテナをroot権限で実行せず、非特権ユーザーとして実行することで、仮に侵害されても攻撃者の行動を制限できます。

ユーザーネームスペースの活用

ユーザーネームスペースを有効化すると、コンテナ内のroot権限がホスト上では非特権ユーザーにマッピングされます。これにより、たとえコンテナ内でroot権限を取得されても、ホストシステムへの影響を最小限に抑えることができます。Sysdigの勧告でも、ユーザーネームスペースの有効化が最も効果的な対策の一つとして挙げられています。

セキュリティプロファイルの適用

AppArmor、SELinux、Seccompなどのセキュリティプロファイルを使用して、コンテナが実行できるシステムコールや操作を制限します。これらは「ホワイトリスト方式」で許可された操作のみを実行できるようにするため、未知の脆弱性を悪用した攻撃の影響を軽減できます。

コンテナイメージのセキュリティ検証

信頼できないソースからのコンテナイメージは使用せず、Docker Official ImagesやVerified Publisherからのイメージのみを使用します。また、イメージのビルド前とデプロイ前に脆弱性スキャンを実施し、既知の脆弱性を含むイメージを本番環境に展開しないようにします。Amazon ECRやDocker Hub、その他のコンテナレジストリには、自動スキャン機能が用意されています。

ランタイムセキュリティ監視の導入

FalcoやSysdig Secureなどのランタイムセキュリティツールを使用して、コンテナの実行時に不審な動作を検知します。これらのツールは、コンテナからホストへの不正なファイルアクセス、疑わしいシステムコールの実行、ネットワーク通信の異常などをリアルタイムで監視し、コンテナエスケープの試みを早期に発見できます。

機密情報の適切な管理

パスワード、APIキー、秘密鍵などの機密情報をコンテナイメージにハードコードしてはいけません。AWS Secrets Manager、Azure Key Vault、HashiCorp Vaultなどのシークレット管理サービスを使用して、機密情報を安全に保管し、必要な時のみコンテナに提供する仕組みを構築します。

ボリュームマウントの制限

ホストのディレクトリやソケット(特に/var/run/docker.sockなど)をコンテナにマウントすると、コンテナエスケープのリスクが高まります。必要な場合でも、読み取り専用でマウントし、書き込み権限は最小限に制限します。

ネットワークセグメンテーション

コンテナ間やコンテナとホスト間のネットワーク通信を適切にセグメント化し、不要な通信経路を遮断します。Kubernetesでは、NetworkPolicyを使用してPod間の通信を制御できます。これにより、一つのコンテナが侵害されても、他のコンテナやサービスへの横展開を防ぐことができます。

コンテナエスケープの対策を簡単に言うと?

コンテナエスケープ対策を日常生活に例えると、「アパートの防犯対策を多層的に強化する」ようなものです。

まず、各部屋の鍵を最新の防犯性の高いものにアップグレードします(ソフトウェアの更新)。これは、古い鍵の欠陥を悪用されないための基本です。

次に、一部の住人が「管理室と同じ鍵」を持てる特別な部屋(特権コンテナ)については、本当に必要な場合以外は作らないようにします。どうしても必要な場合でも、厳格な審査と監視を行います。

さらに、各部屋の住人には「自分の部屋の中でできること」を最小限に制限します(最小権限の原則)。たとえば、部屋の住人が建物全体の電気や水道を操作できないようにするのと同じです。

加えて、各部屋の入口に防犯カメラを設置し(ランタイムセキュリティ監視)、不審な動きがあればすぐに管理人に通知される仕組みを作ります。たとえば、夜中に部屋の壁をドリルで削り始めたら、即座にアラートが鳴るようなシステムです。

そして、各部屋に入居する前に、その人が信頼できるかどうかを確認します(コンテナイメージの検証)。身元不明の人を入居させないのと同じです。

最後に、各部屋の間に頑丈な壁を作り(ネットワークセグメンテーション)、一つの部屋で問題が起きても他の部屋に影響が広がらないようにします。

このように複数の対策を組み合わせることで、一つの防御が破られても他の防御で攻撃を食い止めることができるのです。

コンテナエスケープに関連した攻撃手法

コンテナエスケープは単独で発生することは少なく、他のサイバー攻撃と組み合わせて使用されることが一般的です。特に、クラウド・ソフトの供給リスクに関連する攻撃手法との連携が頻繁に見られます。

サプライチェーン攻撃との関連

サプライチェーン攻撃では、攻撃者は開発プロセスやソフトウェア供給の過程に侵入し、悪意あるコードを混入させます。コンテナ環境では、汚染されたコンテナイメージがレジストリに公開され、それを使用した組織がコンテナエスケープの被害を受けるという連鎖が発生します。

たとえば、攻撃者がDockerHubやGitHubなどのパブリックレジストリに、正規のイメージに似た名前の悪意あるイメージを公開します(タイポスクワッティング)。開発者が誤ってそのイメージをダウンロードし、本番環境にデプロイすると、コンテナ内で悪意あるコードが実行されます。このコードはコンテナランタイムの脆弱性を悪用してコンテナエスケープを実行し、ホストシステムを侵害します。

さらに深刻なのは、CI/CDパイプライン(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)自体が侵害されるケースです。攻撃者がビルドシステムやコンテナレジストリに不正アクセスし、正規のビルドプロセスに悪意あるコードを注入すると、組織は気づかないうちに脆弱なコンテナを本番環境に展開してしまいます。実際、2024年のKubernetesセキュリティ調査では、44%の組織がCI/CDパイプラインの弱点に直面していることが報告されています。

クラウド設定不備との関連

クラウド設定不備は、コンテナエスケープの成功率を大幅に高める要因となります。適切に設定されていないクラウド環境では、攻撃者はコンテナエスケープ後の横展開が容易になり、被害が拡大します。

たとえば、KubernetesのAPIサーバーが適切な認証なしでインターネットに公開されている場合、攻撃者は外部から直接アクセスして悪意あるコンテナをデプロイできます。このコンテナにコンテナエスケープを実行する機能を組み込んでおけば、クラスター内のノードを次々と侵害できます。

また、AWS、Azure、GCPなどのクラウドプロバイダーでコンテナサービスを使用する際、IAM(Identity and Access Management)ロールやサービスアカウントに過剰な権限が付与されていると、コンテナエスケープ後に攻撃者がクラウドリソース全体にアクセスできるようになります。たとえば、コンテナに付与されたサービスアカウントが、本来必要のないS3バケットやデータベースへのアクセス権限を持っている場合、コンテナエスケープ後にこれらのリソースから機密データを窃取できます。

2024年上半期の日本国内では、クラウド環境への侵害事例が増加しており、その多くが設定不備を起点としていると考えられます。コンテナエスケープとクラウド設定不備は相互に影響し合い、被害を増幅させる関係にあります。

シークレット漏洩との関連

シークレット漏洩(機密情報の露出)は、コンテナエスケープの前後で発生し、攻撃の効果を高めます。攻撃者はまずコンテナイメージや環境変数に含まれる認証情報を窃取し、それを使ってシステムに侵入してコンテナエスケープを実行します。また、コンテナエスケープ後にホストシステムから追加の認証情報を盗み出し、さらなる攻撃に利用します。

具体的には、開発者がAWS認証情報、データベースパスワード、APIキーなどをコンテナイメージにハードコードしてしまうケースが頻繁に見られます。これらの情報はイメージレイヤーに永続化されるため、たとえ後で削除しようとしても、イメージの履歴に残り続けます。攻撃者はパブリックレジストリに公開されたイメージや、侵害したプライベートレジストリからこれらのシークレットを抽出します。

コンテナエスケープに成功した攻撃者は、ホスト上の/root/.aws/credentials、/var/run/secrets/kubernetes.io/serviceaccountなどのファイルから、さらなる認証情報を取得できます。これらの情報を使って、他のクラウドサービス、データベース、APIにアクセスし、被害範囲を拡大します。

2025年のIBMの調査によると、認証情報の侵害による被害は特定と封じ込めに最も時間がかかることが報告されています。コンテナエスケープとシークレット漏洩が組み合わさると、攻撃者は長期間にわたってシステム内に潜伏し、継続的にデータを窃取できる状態になります。

コンテナエスケープのよくある質問

Q: コンテナ技術を使っていなければ、コンテナエスケープの心配はありませんか?

A: はい、コンテナ技術(Docker、Kubernetes、containerdなど)を使用していない環境では、コンテナエスケープのリスクは存在しません。しかし、現代のクラウドサービスやWebアプリケーションの多くはコンテナ技術を基盤としているため、知らないうちにコンテナ環境を利用している可能性があります。たとえば、AWS ECS、Azure Container Instances、Google Cloud Runなどのマネージドコンテナサービスを使用している場合、コンテナエスケープのリスク評価が必要です。また、利用しているSaaS製品やクラウドサービスの提供事業者がコンテナ技術を使用している場合、その事業者がコンテナエスケープ攻撃を受けると、間接的に影響を受ける可能性があります。

Q: 仮想マシンとコンテナでは、どちらがセキュリティ上安全ですか?

A: 一般的に、仮想マシン(VM)の方がコンテナよりも強固な隔離を提供します。仮想マシンは完全に独立したゲストOSを実行するため、あるVMから別のVMやホストへの脱出は非常に困難です。一方、コンテナは同一のホストOSのカーネルを共有するため、カーネルレベルの脆弱性やランタイムの欠陥が隔離の突破につながる可能性があります。ただし、これはコンテナが「危険」というわけではありません。適切なセキュリティ対策(最小権限の原則、ランタイムセキュリティ監視、定期的な更新など)を実施すれば、コンテナも安全に使用できます。また、コンテナの軽量性と起動速度の速さは、仮想マシンにはない大きな利点です。最近では、AWS FargateやgVisorのように、コンテナと仮想マシンの利点を組み合わせた技術も登場しています。

Q: コンテナエスケープが発生したかどうかは、どうすれば分かりますか?

A: コンテナエスケープの検知には、ランタイムセキュリティ監視ツールの導入が効果的です。Falco、Sysdig Secure、Aqua Securityなどのツールは、以下のような異常な動作を検知できます:コンテナからホストファイルシステムへの不正アクセス試行、通常使用されないシステムコールの実行(特にmount、unshareなど)、/procや/sysディレクトリへの疑わしい書き込み、コンテナからホストプロセスへのアクセス試行、予期しないネットワーク接続などです。また、定期的なログ分析も重要です。コンテナログ、Kubernetesの監査ログ、ホストOSのシステムログを統合して分析し、時系列での異常なパターンを検出します。たとえば、深夜に突然コンテナが再起動したり、通常とは異なるユーザーアカウントでの操作が記録されていたりする場合は、侵害の兆候かもしれません。

Q: 小規模な企業でもコンテナエスケープ対策は必要ですか?

A: はい、企業規模に関わらず、コンテナ技術を使用しているすべての組織にとってコンテナエスケープ対策は重要です。むしろ、小規模企業の方がセキュリティリソースが限られているため、一度侵害されると回復が困難になる可能性があります。幸いなことに、基本的な対策の多くはコストをかけずに実施できます。たとえば、特権コンテナを使用しない、コンテナをroot権限で実行しない、ソフトウェアを定期的に更新する、といった設定変更だけでもリスクは大幅に低減できます。また、クラウドプロバイダーが提供する無料のセキュリティツール(AWS Security Hub、Azure Security Center、Google Security Command Centerなど)を活用することで、予算をかけずにセキュリティレベルを向上させることができます。

Q: コンテナイメージのスキャンだけで、コンテナエスケープは防げますか?

A: いいえ、コンテナイメージのスキャンは重要な対策の一つですが、それだけでは不十分です。イメージスキャンは、イメージに含まれる既知の脆弱性を検出できますが、設定不備、過剰な権限付与、ランタイムでの異常な動作などは検出できません。また、スキャン時点では未発見だったゼロデイ脆弱性(公開されていない新しい脆弱性)は検出されません。包括的な対策には、イメージスキャンに加えて、ランタイムセキュリティ監視、最小権限の原則の適用、ネットワークセグメンテーション、定期的な脆弱性パッチの適用、インシデント対応計画の策定などが必要です。セキュリティは「層」で考えるべきであり、複数の防御層を組み合わせることで、一つの防御が突破されても他の層で攻撃を食い止めることができます。

Q: Kubernetesを使用している場合、特に注意すべき点はありますか?

A: Kubernetesを使用している場合、コンテナエスケープのリスクはさらに複雑になります。なぜなら、一つのノード(サーバー)でコンテナエスケープが成功すると、Kubernetesクラスター全体への横展開が容易になるからです。特に注意すべき点として、KubernetesのAPIサーバーへのアクセス制御を厳格に設定し、不要なインターネット公開を避けることが重要です。また、RBACポリシーを適切に設定し、各サービスアカウントには最小限の権限のみを付与します。PodSecurityStandardsまたはPodSecurityPoliciesを使用して、特権Podの作成を制限することも効果的です。さらに、NetworkPolicyを設定してPod間の通信を制御し、侵害されたPodから他のPodへの横展開を防ぎます。ノードのOSとKubernetesコンポーネント(kubelet、kube-proxyなど)を常に最新の状態に保つことも忘れてはいけません。Kubernetes環境では、コンテナレベルとオーケストレーションレベルの両方でセキュリティ対策が必要です。

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京都開発研究所

システム開発/サーバ構築・保守/技術研究

CMSの独自開発および各業務管理システム開発を行っており、 10年以上にわたり自社開発CMSにて作成してきた70,000以上のサイトを 自社で管理するサーバに保守管理する。